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コラム COLUMN

M&A事業承継

55歳から始める”事業承継”

全国的に経営者の高齢化が進んでいます。そのような中で、「いつ」「どのようなタイミング」で、事業承継の準備を進めてよいか分からないという経営者が多数いらっしゃいます。「事業承継」は事業経営を行う上で必ずくる未来です。いつ頃から、事業承継を考え始めるべきか、事業承継の進め方をまとめました。

記事のポイント

  • 事業承継は長期戦。65歳までに社長職を交代する等、事業承継の準備を55歳から始めよう。
  • 選択肢は「親族内承継」「従業員承継(MBO)」「得意先への引継ぎ」「第三者承継(M&A)」。
  • 事業承継に正解はない。総合的な判断が必要。信頼できる相談先を見つけることが重要。


なぜ「55歳」から?

帝国データバンクの統計によると、全国の経営者の平均年齢は59.9歳となっており、経営者の年齢層が高齢化していることが指摘されています。一般的に事業承継の検討には時間を要します。決断したからと言って、すぐに承継できるというものでもなく、関係者との調整や、税務・財務的な手続き等も含めると、事業承継の方向性を決定してからでも数年を要するのが事業承継です。事業承継は、検討・実行・承継してからのフォローまで含めると長い時間が必要なため、この期間を乗り越えるだけの体力・気力が必要です。

「一生涯を経営者で終える」と既に決定している経営者は別ですが、事業承継はあらゆる経営者にとって、どのような結果であれ、必ず来る未来です。筆者の主観で理想を申し上げると、65歳までには社長職を交代し会長職になることが理想です。事業承継における検討・意思決定・実行・フォローといった一連の流れを実行するためには、単純な手続きのみで引き継げばよいというものではなく、経営者自身の健康・気力・意思決定力等を考えると、55歳という年齢から検討を始めること重要です。その年齢であれば、一度方向性を決めて、上手くいかなかったとしても、別の方向性を検討することができます。そのため、55歳~60歳までには、事業承継に向き合う機会が必要です。

(参考)帝国データバンク「全国社長年齢分析(2020年)

STEP1:親族内承継の検討

事業承継を考える場合、まず最初の手段として、ご自身・ご子息・子女や、兄弟・親戚等、経営者の親族への承継を考える必要があります。一般的に日本はファミリー企業が多いことで有名です。様々な事業承継のケースを見ても、「自分の子供に継いで欲しい」という想いは、経営者の誰しもが考える選択肢であり、この選択肢の可能性を検討し、結論を出しておく必要があります。

親族内承継を検討する際には2つポイントがあります。一つは後継者候補となる親族の「経営者の適性」です。経営者の適性は一朝一夕で身につくものではありません。経営そのものの経験の有無や、従業員・取引先との関係性等、自社の事業について特にマネジメントの部分で適正があるかを判断する必要があります。親族内承継を選択する多くの経営者は、早いタイミングで、後継者候補を自社に呼び戻す等して、経営に早くから関わらせていることが多いです。このように経営者適性を判断し、育成するための十分な期間が確保できるのが親族内承継の特徴です。

二つ目のポイントは、相続税・贈与税の検討です。会社の株式や資産を引き継ぐ場合、相続税・贈与税を納める必要があります。自社の業績・株価に応じて相続税・贈与税の額は変わります。こちらについては、事業承継に詳しい税理士等の専門家にどのような対策があるかを事前に相談しておくことが必要となります。

特に、上記一つめのポイントで一番大事なことは「親子間のコミュニケーション」です。父親と息子が、対等な立場で、会社の事業承継について率直に意見交換できるというケースは稀です。地域企業の場合、「息子は地域外(主に東京・大阪等の首都圏、海外)へ行ってしまった」という場合が多く、経営に忙しい社長は、家族とのコミュニケーションを母親に任せがちです。母親を介したコミュニケーションだけでは、事業承継の深い話をすることは難しいです。55歳という年齢になると、残された期間は後10年程度であることを強く意識し、早めに子供と向き合うことが必要となります。

STEP2:従業員承継(MBO=Management Buy Out)の検討

もう一つの大きな手段は、従業員(役員含む)へ引継ぐことです。上記の親族内承継と同じく、「経営者の適性」を判断する必要があります。従業員への承継においても、経営者としての育成期間は必要です。もし親族があまり経営に関わってこなかったという場合、普段から業務に従事している役員や従業員への承継は、比較的現実的な選択肢のように思えます。

従業員承継の場合、注意すべきポイントは、上記の「社長就任」の意思があるかという点と、「自社株買い取り」の意思と資金力があるかです。事業を引き継ぐ場合、その会社の株式を買い取ることとなります。株式を買い取るためには資金が必要であり、後継者候補はこの資金を準備する必要があります。金融機関でも、従業員承継向けの融資メニューは存在していますが、個人で借金を抱えてでも、その会社を引き継ぐという強い意思が必要となります。

(参考)従業員に事業を引き継ぐ?MBOのリアル

株式は別の者が所有し、経営者は別の者が行うという、いわゆる「所有と経営の分離」という方法や、ファンドを活用する等の方法もありますが、それぞれメリット・デメリットもあり、従業員承継はなかなか思うように進まないというのが現状です。小規模な企業の場合、従業員の経営者育成にチャレンジしてみたが、難しかったという結論を出されている方も多いように見受けます。

(参考)事業承継の3つのタイプと「所有と経営の分離」

STEP3:得意先への事業引継ぎ

事業を引き継ぐ選択肢の一つに、得意先への事業引継ぎがあります。このケースは、特に取引先の依存度が一社に集中している場合に起こりやすいケースです。取引先として、自社のビジネスの業界や、事業に詳しく、相手先の経営者が信頼できる経営者であれば、現実的な選択肢であるように思えます。事業引継ぎ後を考えても、事業面でのシナジー効果を検討しやすい一方で、これまでの関係性もあり、交渉面ではなかなか本音が言いづらい等のケースもありますが、事業引継ぎの有力な選択肢となります。

(参考)買手企業がお得意先の場合はどうするの?取引先とのM&Aのポイントを解説!

STEP4:第三者への承継(M&A)の検討

M&Aは第三者に会社の事業を引き継ぐことを指します。上記の「得意先への事業引継ぎ」も手法としては、M&Aの手法を用いることとなります。得意先以外の候補も含めて、第三者へ事業を引き継ぐという選択肢もあります。第三者に事業を引き継ぐことは、「自社事業の継続」「買手との相乗効果(シナジー効果)による事業成長」「雇用の継続」「取引先・仕入先との取引継続」「オーナー家株主に株式譲渡代金が入る」等のメリットがあります。ここで必要なのは、事業承継の選択肢の中で、「M&A」も選択肢の一つに考えておくということです。M&A以外の選択肢も様々なメリットがあります。全ての選択肢を比較考量する中で、M&Aについてもその中の一つに入れておくことが重要であると考えます。

(参考)M&Aで第三者に事業承継するメリットとは?

STEP5:総合的な判断

これまで4つのステップを示しましたが、これらは必ずしも順番である必要はありません。情報の取扱いに十分注意した上で、様々な選択肢の可能性を検討し、総合的に判断していく必要があります。事業承継は多種多様であり、経営者だけではなく、親族・株主・取引先・従業員等、様々な関係者が絡みますので、正解はありません。加えて、事業承継までの期間も長くなるため、「なんのために事業承継するのか」という目的をきちんと定めておくことが必要です。目的の中には、「事業を継続すること」「従業員の雇用を継続すること」等の事業面もあれば、「なるべく高く株式を売却する」といった株式オーナーとしてのメリットを追求する場合や、「自分の親族に継がせたい」等、ファミリーとしての側面もあります。自分自身として、どの方向性で事業承継を進めたいかの検討を進める中で、目的を固め、意思決定をした上で、具体的な取組に行動していくことが必要です。円滑に進めるためには、55歳くらいから検討を進めていくことをおススメします。

(参考)事業承継の基本!3つのタイプを解説

おわりに

今回は、事業承継を進める中で、「55歳」を一つの区切りとして、承継の選択肢や、それぞれのポイントを挙げました。事業承継は経営者にとって「いつか来る未来」です。新型コロナウイルス等、経営環境が目まぐるしく変わる中で、事業承継のことまで手が回らないとう経営者の方も多いと思いますが、そのような中でも、着実に検討を進める必要があります。ただ、相談できる先が少ないというのも現実です。上記のような総合的な判断を相談できる専門家や公的機関等、信頼できるパートナーを見つけておくことも一つの手段となります。


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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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