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コラム COLUMN

DX推進で地域から世界で戦えるものづくり企業を|東洋電装株式会社

広島県広島市に拠点を置き、制御盤システム事業からスタートし、M&Aを活用しながら、様々な領域に事業を展開し、成長した東洋電装株式会社。新しく立ち上げた拠点を「DX工場」と位置づけ、日本のものづくりを世界で戦える産業とすることを目指し、ものづくり企業のDXを推進する同社のこれまでの軌跡や、DXに懸ける想いについて、代表取締役社長 桑原 弘明 氏にインタビューしました。


技術を強みに、地域ものづくり企業の可能性に挑戦

地域の中小企業に可能性を感じ、ものづくり会社を承継

我々はグループで7つの事業を展開しています。東洋電装では、祖業である制御盤システム事業をはじめ、空調システム事業、高速道路システム事業、IoTシステム開発事業を行い、関連会社では、ロボットSI事業、衛星通信システム事業、介護関連事業を行っています。


東洋電装は私の父が1973年に立ち上げました。私自身は2代目となります。会社を継ぐ前は、20年間三菱電機の関連会社に在籍していました。私が39歳だったとき、ちょうど大企業において、コンプライアンスの意識が高まった時期でした。「このまま大企業にいては面白くない。もっと自由に経営に関わりたい。」という気持ちで、東洋電装に入りました。当時は、まだ20人くらいの規模でした。私の父は、自分の会社を子供へ継がせるつもりはなく、私が戻らなければ会社を畳む予定だったと聞いていました。そのため、父から継いで欲しいという要請はなかったのですが、私自身が、大手メーカーに在籍し続けるよりは、地域の中小企業の経営に可能性を感じて挑戦するために、会社を承継することを決意しました。東洋電装に入る際に、妻には少しだけ文句は言われましたが、大きくは反対されなかったので、感謝しています。

戻ってきた当時、現在のように様々な事業を展開しておらず、制御盤システム事業のみでした。私は、最初は営業から入りましたが、入社して3年目あたりから、新規事業として取り組んだ高速道路向けのシステム事業を担当しており、その事業が波に乗り始めました。高速道路システム事業は、主にNEXCO西日本をお取引先として、高速道路内の非常電話機の通信インフラを構築する事業です。電話機だけでなく、高速道路に巡らされた光ファイバーを通じて、電光掲示板に事故情報を掲載したり、パトロール車の情報をリアルタイムで把握できるシステムを構築する等、利用方法は多岐に渡ります。前職に在籍していた時代からインフラ系の通信ネットワークのビジネスチャンスだと感じていた予想が当たり、現在、当社の中でも一番勢いのある事業へと成長しました。ものづくり企業でインフラに参入できている企業はあまり多くないこともあり、この事業をきっかけにたくさんの問い合わせを頂くことになりました。


M&Aを通じて、様々な分野へ新事業を展開

ロボットSI事業を担うバロ電機工業は、M&Aで会社を引き継ぐことが始まりでした。バロ電機工業は、大手自動車メーカーのサプライヤーでしたが、後継者不在という課題を抱えていました。広島県事業承継・引継ぎ支援センターにご相談されていたところ、銀行経由で、当社に経営資源の引継ぎを打診され、当社と同じ領域だったこともあり、同センターの1号案件として、会社の引き継ぎを行いました。ただ、当時は、サプライヤーとしての売上が9割だったことに対する危機感もあり、M&Aで引き継いでからは、同社の技術力を活かす形で、ロボットSI事業を新規事業として取り組みました。現在は、「提灯(ちょうちん)」の折り機をロボットで実現し、職人不足の課題に対応する等に取り組んでおり、新規事業の売上が7割に達しました。

⇒提灯の折りをロボットで実現

衛星通信事業については、事業譲渡により譲り受けた事業をTD衛星通信システムとして立ち上げました。元々は広島県内の通信工事会社が展開していた事業でしたが、経営資源の集中を図るため、防災関連の事業と近しいこともあり、事業のみを当社で引き受けました。衛星通人事業は、スカパーJSATホールディングス、IPSTARと当社の3社しか展開していないニッチな市場となります。

また、介護関連システム事業を展開するZIPCAREも「まもるーの」という見守りシステムの事業を譲受し、関連するSI事業を東洋電装が担う形で展開しています。こちらについても、高齢化社会といった時代的な要請もあり、近年成長の兆しが見える事業となっています。

テクノロジーが成長の原動力、よろず相談ができる技術者が集まる企業文化

今後の東洋電装グループの成長目標は、売上規模10億円企業が10社集まり、合計100億円規模のグループへと成長することです。これまでを振り返って、我々がものづくり企業として成長できた強みは「テクノロジー」であり、高い技術を持った技術者が一番重要な経営資源だと認識しています。

東洋電装には父が築き上げた技術者を中心とすると企業文化が存在します。祖業である制御盤システム事業についても、ダムや発電所、工場に導入されるため、量産型ではなく、カスタマイズで開発・製造してきました。そういった実績を通じて、ものづくりの技術について、まずは何でも相談していただけるような、よろず相談窓口となる技術者が、東洋電装に集まるようになりました。単純に製品を製造して納めるだけでなく、顧客の困っている課題に対して、ソリューションを提供できる技術者の集団です。技術者なので、マーケティングに弱いことが課題ですが、これまでは父や私のような経営層が中心となり、新しい市場分野に参入し、技術を強みに事業を展開するきっかけをつくり、マーケティングの課題を補ってきました。事業のきっかけをつくった後は、担当する技術者自身が顧客の接点として機能し、新しい課題を発掘し、相談を受けることで、次の事業に繋げていく。そういったサイクルが東洋電装グループが成長できた要因です。

「DX工場」を立ち上げ、地域ものづくり企業のDXをリード

東洋電装では、IoT開発事業部を中心に、ものづくり中小企業のDXを推進しています。具体的には、新しく立ち上げた可部事業所を「DX工場」と位置づけ、広島のものづくり企業のDX拠点として、テストフィールド兼ショールームとして機能させています。また、広島工業大学と連携し、ものづくりにおける「マスカスタマイゼーション(大量生産を表すマスプロダクションと受注生産を指すカスタマイゼーションの掛け合わせ)」を研究するフィールドとして機能も持ち合わせています。一般向けに工場見学を実施しており、既に100回以上、ものづくり企業のDXにご関心を持って頂いた皆さまにお越しいただきました。

我々のDX工場では、「オフィスDX」と「製造現場DX」という主に2つのDXに取り組んでいます。

「オフィスDX」は、QRコードを利用した受付管理や、静脈認証によるスマート開錠、在籍・出退・トイレの空き状況等を常に見える化等、オフィスシーンにおいてデジタルを活用することによる業務の効率化に取り組んでいます。これらの仕組みは、当社だけでなく、様々な企業に導入可能なシステムであり、既に大手企業を始め、我々がDXを支援している先もあります。

⇒QRコードを利用した受付システム
⇒利用状況・使用予定が一目で分かる会議室システム

⇒ミーティングスペースの様子

⇒AIを活用した静脈認証による開錠システム

⇒会議室の利用状況を把握するセンサー

⇒満空状況が一目で分かるトイレシステム

⇒トイレにはアンケートを設置

⇒出退勤・在籍状況が一目で分かる


「製造現場DX」は、カメラを活用することで、導線のムダを洗いだし、作業の手順を見直すことで、35.6%の業務改善を実現することができました。
東洋電装では、「FRICS Fab」をビジョンとして掲げており、「Flexibility(柔軟な対応)」「Reliability(信頼性)」「Innovation(技術革新)」「Consideration(考慮)」「Sustainability(持続性)」の頭文字をとったFRICSを実現するため、中小工場におけるDXにおいて「手作業が多い中で、デジタル技術をどのように導入すればよいかわからない」という課題を解決することを目指しています。

⇒タブレットを利用した製造の様子
⇒完成した制御盤
⇒導線を分析するためのカメラ


東洋電装が考えるDXは3つのステージに分かれます。第一段階は、アナログからの脱却を目指す「デジタル化」。その次に、デジタル化した情報を活かして既存業務の改善に繋げていくシステム化。最後に、デジタルとシステムを活用することで新規事業の創造に繋げていくDX化であり、エンジニア一人一人がイノベーションを創出できる場所を目指しています。DX工場もまだまだこれからですが、一つずつステージをあげていきます。



DXの推進が、世界で戦えるものづくり産業を生み出す

我々がDXに取り組む理由は、中小製造業のDXの遅れを取り戻し、世界と戦える日本のものづくり産業を興していきたいという想いがあります。広島という地域においても、既存の産業構造に組み込まれず、独自に製造技術を持った企業が存在しています。そういった自社ブランドでものづくりを進めてきた企業の価値をもっと前面に出していきたいと強く思います。

日本のものづくり産業の強みは、擦り合わせや、突き詰め方であり、グローバルにおいてもレベルが高いと感じますし、そのやり方が日本人の特徴に合っていると思います。ただ、その特徴を強く打ち出すためにもDXの取組を進めることが必須となります。3-40年前の成功体験にしがみつき、そこに引きずられるのではなく、勇気を持ってデジタル化を進めることにより、日本のものづくり企業の強みを打ち出し、中小ものづくり産業を世界で戦える状態にする。これが、私の最後のミッションです。地域企業から、世界を相手に技術者が輝き、活躍している姿は捨てたくない、ものづくりの経営者としてそう思います。



概要

会社名東洋電装株式会社
代表者名代表取締役社長 桑原 弘明
設立1973年12月
従業員数約120人(グループ全体)
資本金10,150,000円
本社所在地広島県広島市安佐南区緑井4丁目22番25号
事業内容制御盤製作及びシステム開発 等
関連会社バロ電機工業株式会社
株式会社TD衛星通信システム
株式会社ZIPCARE
株式会社TD Holdings
HPhttps://t-denso.com/



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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