令和4年度経済産業省概算要求が2021年8月31日に発表されました。発表された施策の中から、地域や中小企業の皆さまにお役に立ちそうな施策をピックアップして、ポイントをお伝えします。特に地域中小企業向けの施策のポイントをまとめた「令和4年度 地域・中小企業・小規模事業者関係の概算要求等のポイント」では、「事業再構築」「承継・再生」「生産性の向上」が大きなテーマとして掲げられています。
「概算要求」とは?
「概算要求」は政策のトレンドを抑えるために有効な資料です。
国家予算は年度ごとに発表されます。予算が対外的に公表されるタイミングは、①概算要求、②予算案、③予算の3つに分けられます。概算要求は各省庁が取りまとめ、次年度に要求したい予算を公表するものです。概算要求に基づき、財務省との折衝が行われ、査定されます。そのため、概算要求段階の事業が「予算案」として発表される段階で減額、変更又はなくなる場合もあります。変更の可能性はありますが、次年度の政策のトレンドを抑えるためには有効なツールです。概算要求は、財務省との折衝が終わった後に12月に予算案として公表され、国会審議を経て、予算として成立します。
地域・中小企業向けの施策をピックアップ!
「令和4年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について」の中から、「地域」「中小企業」に関する事業をピックアップします。
※各施策に付したコメントについては、あくまで本記事筆者の感想となります。制度詳細を希望される方は、施策を担当する組織へ直接ご確認ください。
中⼩企業再⽣⽀援・事業承継総合⽀援事業
令和3年度と同様、経済産業省政策において「承継・再生」は大きなテーマとなっています。内容は、昨年度とほぼ内容で、「中小企業再生支援協議会」と「事業承継・引継ぎ支援センター」の二本立てとなっております。昨年度より、大胆な増額要求となっていることにも注目です。
事業承継・引継ぎ再生支援事業
前年度は、「事業承継」に特化した施策でしたが、令和4年度からは新しく「事業再生」の要素が加わりました。事業承継を契機とした経営革新に係る費用を補助する制度と、事業引継ぎ(第三者へのM&A)時の仲介・FA手数料が対象となる事業は昨年度と同様ですが、加えて事業再生についても支援対象となりました。なお、M&Aに利用できる専門家活用費用については、新設された「中小M&A支援機関に係る登録制度」に対するもののみであることが明記されています。令和4年度の中小企業政策の大きなテーマである「承継・再生」の中心的な施策となっていることから、こちらの予算も前年度と比較して大幅な増額要求であることに注目です。
ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業
こちらについては、いわゆる「事業再構築補助金」が本予算として計上されていることに注目です。「事業再構築指針」の要件を満たす新分野展開や業態転換等に取り組むプロジェクトを最大2年間支援する事業です。ただし、令和2年度第三次補正予算で計上された1兆1,485億円には及ばない額となっています。同じ施策の中に、いわゆる「ものづくり補助金」の中でも、複数の中小企業が連携するタイプの事業が入っています。
「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」については、新規要求ではあるものの、補正予算と比較すると少額であるため、補正予算でどのような措置がされるか注目です。
成長型中小企業等研究開発支援事業
いわゆる「サポイン」と呼ばれる研究開発を支援する事業が名前を変えました。研究開発や、革新的なサービスモデルの開発を支援する制度です。
海外展開のための支援事業者活用促進事業
海外販路開拓やブランディングを支援するいわゆる「JAPANブランド」事業です。昨年度は、「観光」の文字も見受けられましたが、今年度は資料に「観光」の文字は確認できませんでした。昨年度と異なり、「支援パートナー制度」や、JETROを通じた現地ニーズを情報収集する制度も盛り込まれています。
地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業
商店街を支援することを目的とした補助事業です。前年度計上された事業と同じく、都道府県・市町村等の地方公共団体が支援する場合に限り補助を行う形になっています。経済産業省予算の中で、ハード(建物)が補助対象となる数少ない事業です。地方公共団体の支援が前提となることで、より地域の意図が反映されやすい制度になっていますす。ただし、前年度とは異なり、「観光」という文字はなくったことに注目です。AIカメラの導入等のDXの要素や、テナントミックス(最適なテナント構成)が支援対象となっています。
地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業
ベンチャー、中小企業等が連携し、複数地域で課題解決・付加価値向上を行う取組を支援する事業です。唯一「創業」の文字が入っている事業であり、起業家教育についても盛り込まれています。
地域未来DX投資促進事業
「地域未来牽引企業」等のDXを支援する事業となっています。具体的には、地域の関係者が一体となって地域企業のDXをサポートする事業を支援する内容や、実証事業の経費補助が盛り込まれています。
カーボンニュートラルに向けた自動車部品サプライヤー事業転換支援事業
製造業のサプライヤー関係について、電気自動車へのシフトによる事業再構築を見据えて、相談窓口の解説や、専門家マッチングを行う事業です。
グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業
経済産業省によるスタートアップ支援です。J-Startupとは、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムであり、世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目的にしています。内容は昨年度とほぼ同様です。減額要求になっていることにも注目です。
研究開発型スタートアップ支援事業
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に展開する研究開発型のスタートアップ支援プログラムです。大学発ベンチャー等の基礎技術の開発が必要なビジネスを目指す方は注目すべき施策です。VC等を認定し、連携して事業開発を行う点も特徴であり、昨年度から大幅な増額要求となっています。
おわりに
令和4年度経済産業省概算要求の中でも、「地域」「中小企業」関連で注目すべき施策をピックアップしました。上記以外にも予算事業はございますので、詳細が知りたい方は、ぜひ経済産業省のHPをご覧ください。再度になりますが、現時点ではあくまで要求段階であり、予算として成立するタイミングでは、現時点とは異なる可能性があることにご留意ください。
令和4年度の概算要求は、地域・中小企業関連では、「事業再構築」「承継・再生」「生産性の向上」がテーマとなっており、コロナによる景気変動を踏まえた施策となっております。経産省関連の要求から「観光」の文字が消えたことも印象的でした。ただし、あくまで本予算となりますので、補正予算が編成された際に、何が盛り込まれるかは注目です。政策のトレンドとして、コロナからの経済回復をいかに図るか、DXを通じた生産性向上にいかに取り組むかが課題だと見受けますが、具体的な施策の中身についてこれまでとあまり変わり映えがしない印象でした。また、引き続き、当社が取り組む「事業承継」についても主要な施策として掲げられています。政策のトレンドはありますが、行政による支援が有機的に繋がることで、民間企業の活力の復活を期待します。
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