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コラム COLUMN

M&A・事業承継で使える補助金、令和3年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の概要を解説


「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」は、M&A・事業承継において利用できる補助金です。具体的には、M&AのFA・仲介会社等の専門家への費用の支援を受けることができます。「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」が、2021年9月30日(木)から公募が開始します。以前公募された事業(令和2年度補正予算)と比べて、M&AのFA・仲介費用はM&A支援機関登録制度に登録された者への費用に限る等の変更点があります。本コラムでは、令和3年度当初予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」についてポイントを説明します。

《参考》事業承継・引継ぎ補助金 事務局HP
 https://jsh.go.jp/r3/
 ※公募要領等はこちらからご覧頂けます。

※具体的な補助金に関するご質問は、事務局へ直接お問い合わせください。
(事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)お問い合わせ先)
 【電話】 03-6636-7935


記事のポイント

  • 令和3年度当初予算 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の概要を解説。
  • これまでの補正予算との大きな違いは「補助上限(400万円⇒250万円)」「仲介・FA費用の対象は「登録M&A支援機関」に限定」



過去の「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」と大きな変更点

M&Aで利用できる、高い採択率の補助金

「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」は、FA・仲介会社等の専門家への費用に対する支援を受けられる補助金です。2021年度は、令和2年度第3次補正予算として、過去2回の公募がありました。いずれも採択率が80%前後であり、高い採択率となっています。

【過去の採択率】
1次公募(公募期間:2021/6/11~2021/7/12):採択件数346件(申請数:412件、採択率:83.9%)
2次公募(公募期間:2021/7/13~2021/8/13):採択件数330件(申請数:419件、採択率:78.7%)

(参考)
事業承継・M&Aで使える補助金、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)を解説
二次公募が開始!「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」を利用する際のポイントは?

補助上限が減額、仲介・FA費用の対象は「登録M&A支援機関」に限定

今回公募が開始するのは令和3年度当初予算の補助事業です。令和2年度第3次補正予算の補助上限が400万円(廃業を伴う場合は+200万円)だったのに対して、令和3年度当初予算では、補助上限が250万円(廃業を伴う場合は+200万円)に変更されています。

また、委託費の中で、FA・M&A仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録された登録 FA・M&A 仲介会社による FA 又は M&A 仲介費用のみを補助対象経費とすることになっています。具体的には、M&Aによる経営資源引継ぎにおいて、FA・仲介会社を利用し、その手数料・報酬について、本補助金を利用しようとした場合、「M&A支援機関登録制度」に登録されているFA・M&A仲介会社のみが対象となります。

これは、2021年8月24日に開始された「M&A支援機関登録制度」と連動することにより、生じた要件となります。「M&A支援機関登録制度」は、経済産業省が「中小M&A推進計画」に基づき、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に創設された制度です。
現時点では、以下の493社が登録支援機関として登録されています。そのため、FA・M&A支援機関の手数料・報酬について本制度を利用しようとした場合、この登録支援機関を経由する必要があります。M&A登録支援機関は、登録の際に、経済産業省が公表する「中小M&Aガイドライン」の遵守について宣言しているため、適切なM&A仲介・FA業務の遂行が期待されます。

(参考)
「M&A支援機関に係る登録制度」が創設!制度の概要とポイントは?
・中小企業庁:M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の公表(中間結果)について




「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の概要

制度の主な概要は、これまで公募された令和2年度第3次補正予算分の事業と大きく変更はありません。改めてポイントを説明します。

「買い手支援型(Ⅰ型)」と「売り手支援型(Ⅱ)」の2つに分かれる

対象となる経営資源引継ぎは、「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」の2つの類型に分かれています。それぞれ以下の要件を満たす必要があります。

買い手支援型(Ⅰ型)

事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすこと。

  • 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
  • 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。


売り手支援型(Ⅱ型)

事業再編・事業統合に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすこと。

  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。



誰が使える?補助対象者について

経営資源引継ぎの要件を満たす最終契約書の契約当事者となる中小企業者等が対象となります。ただし、売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡に関しては、経営資源引継ぎの要件を満たす株式譲渡に伴い異動する株式を発行している中小企業と、対象会社と共同申請した対象会社の議決権の過半数を有する株主が対象となります。

「経営資源引継ぎの要件」とは?

補助事業期間中に、経営資源を譲り渡す者(=被承継者)と経営資源を譲り受ける者(=承継者)の間で、事業再編・事業統合が着手もしくは実施される予定であること、又は廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であることが必要です。また、経営資源引継ぎは、それぞれパターンにより区分整理がされています。

ここで言う「着手」とは、専門家等との補助対象経費にかかる契約締結日を着手時点とし、補助事業期間内に当該契約が締結されることであり、「実施される予定」とは、補助事業期間内に事業再編・事業統合に関する相手方との基本合意書又は最終契約書が締結されることとなります。

ただし、不動産業を買収する場合は、原則として常時使用する従業員1 名以上の引継ぎが行われることが必要となります。不動産以外の業種の場合でも、1名以上の従業員の引継ぎが行われていない場合、要件を満たしていないと事務局が判断する可能性があります。

経営資源引継ぎに係る区分整理

(注 1)被承継者が法人又は個人事業主であること
(注 2)共同申請の場合
(注 3)個人事業主を含む
(注 4)第三者割当増資、株式交換、株式移転、新設合併、吸収合併、吸収分割、事業譲渡
※ 対象会社の出資持分の譲渡の場合の類型番号は株式譲渡に準ずる。
※ 新設分割した後に分割承継会社を株式譲渡する場合、分割会社を対象会社とみなし、類型番号は株式譲渡(対象会社の単独申請)に準ずる。
※ 物品・不動産等の物的資産のみの売買は事業譲渡に該当しない。


対象外になる例

以下のように、M&A後に被承継者の議決権が過半数にならない場合や、既に過半数の議決権を保有している会社をM&Aする場合等は、交付申請不可となります。また、いわゆる不動産M&Aと呼ばれるような、不動産売買を目的とするM&Aは対象外となっています。



一つのM&Aで「買い手」「売り手」が利用可能

補助金の交付申請は、補助対象者及び補助対象経費を負担する者、並びに補助対象経費に掛かる契約主体者となる者が行うものとされています。

また、同一の補助対象事業において、「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」各1社が交付申請が行うことが可能です。かみ砕いて説明すると、一つのM&Aの案件に対して、買い手側・売り手側の両方とも申請することが可能となっています。ただし、同一の者による複数の交付申請は不可となっており、交付申請は原則1申請のみとなっています。売り手支援型(Ⅱ型)で、同一の被承継者が複数の対象会社を異なる承継者に引き継ぐ場合は複数の交付申請が可能となります。

なお、売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡の場合で、支配株主が交付申請をする場合は対象会社との共同申請が必須となります。

補助事業期間は?

交付決定日~2021年12月31日までとなっています。
なお、今回の事業では事前着手は認められていません。

何の経費が対象になるか?補助対象経費

個別の費目については、以下のとおりです。詳細は公募要領をご覧ください。


委託費について

M&AのFA・仲介会社に支払われる経費は、「委託費」として計上します。

委託費のうち、FA・M&A 仲介費用の基本合意に基づく「中間報酬」については、補助事業期間内に以下 A 又は B を行い、補助事業期間内に支払った経費が補助対象経費となります。
また、FA・M&A 仲介費用の最終契約に基づく「成功報酬」については、補助事業期間内に以下 A 又は C を行い、補助事業期間中に支払った経費を補助対象経費となります。
なお、2021 年 9 月 17 日前に締結した FA・M&A 仲介会社との委任契約に専任条項があり、相見積を取得することが FA・M&A 仲介会社との契約上困難な場合は、当該補助対象経費について、相見積の取得は不要となります。

A. 選任専門家と契約書を締結
B. 交渉相手と基本合意書を締結(意向表明書は不可)
C. 交渉相手と最終契約書を締結

この委託費のうち、FA又は仲介業務に係る、相談料、着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬、価値算定費用等の中小 M&A に関する手数料については、「M&A 支援機関登録制度」に登録された登録 FA・仲介業者が支援したものに限定されますのでご注意ください。具体的に対象となる経費は以下のとおりです。

対象とならない経費は以下のとおりです。デューデリジェンス業務のみの場合の費用は、登録機関に限られませんが、デューデリジェンスが主な内容であるものの、支援内容にマッチングや中小M&Aも手続進行に関するものを含み、実質的にFA・仲介業務である場合は、登録機関に限られます。

(対象外となる経費)

  • 再生計画書の作成等のコンサルティング費用
  • 経営資源引継ぎに伴う債務整理(法的整理及び私的整理を含む)手続に係る費用
  • FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用
  • バリューアップのためのコンサルティング費用
  • 経営資源引継ぎを伴わない不動産売買に係る費用

補助上限額、補助率について

補助率1/2、補助上限額250万円(廃業費用を含む場合450万円)となっています。ただし、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は、上限が125万円となることに注意が必要です。


申請期間と申請方法

申請期間

2021年9月30日(木)~2021年10月21日(木)18:00

申請方法

原則、jGrantsを用いた電子申請となります。
申請するためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウント取得には時間を要するため、早めの申請が必要となります。


「相見積」について

補助金は価格の妥当性を証明するため、原則相見積が必要です。本補助金でも、「原則として2者以上の相見積の取得が必須」とされています。一方、M&Aについては情報の機密性等の諸事情により、相見積ができないケースも存在します。本補助金では以下の条件において、相見積が不要となっていますので、相見積が用意できない場合には、こちらの条件に当てはまるかどうかをご確認ください。

条件①:補助対象経費において、選定先以外の 2 者以上に見積を依頼したが、全ての専門家・業者から見積を作成できないと断られた

  • 2者以上の専門家・業者から見積を断られた事が確認できる書面(電子メールの写し等)の添付が必須。
  • 明らかに業務外の専門家・業者に見積を依頼している場合(FA・仲介費用の見積を建設会社に依頼する等)は見積として認められない。

条件②:FA・仲介費用において、専門家費用がレーマン表により算出された金額以下

  • FA・仲介の選定専門家の FA・仲介費用見積額が、レーマン表により算出される金額(着手金含む報酬総額)よりも低い金額又は同額の場合は相見積の取得が不要。
  • ただし、以下全てに対応する必要がある。
    ①「関与専門家選定理由書」に譲渡額又は移動総資産に基づくレーマン表での報酬総額の試算額を記載。
    ②譲渡額又は移動総資産が未定の場合は、想定金額を「関与専門家選定理由書」に記載(FA・仲介専門家に確認の上、想定金額の根拠理由を詳細に記載すること。想定金額の根拠理由が未記載又は不明確な場合は、相見積不要な条件に該当しないため注意)。
    ③見積書に記載の FA・仲介費用見積額が譲渡額をベースに算出されている場合は、譲渡額に基づくレーマン表での報酬総額と FA・仲介費用見積額の比較、見積書に記載の FA・仲介費用見積額が移動総資産をベースに算出されている場合は、移動総資産に基づくレーマン表での報酬総額と FA・仲介費用見積額の比較を行う(見積書と委託契約書の FA・仲介費用の算出方法が同じであることが前提)。
    ④FA・仲介費用の最低報酬額がレーマン表での報酬総額を上回らないこと。
    ※ 譲渡額又は移動総資産が少額であり、レーマン表での報酬総額を委託契約書で定められているFA・仲介費用の最低報酬額が上回る場合は、相見積を取得すること。
  • FA・仲介費用は、FA・仲介専門家との委託契約に基づき支払う費用であり、着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬の費用形態を指します。



条件③:システム利用料において、成功報酬のみの M&A のマッチングサイトに複数登録して、成功報酬を申請する

  • 登録したことを証する複数のマッチングサイトの登録画面等のスクリーンショット等の提出が必須。
  • 成功報酬のみの特定サイト 1 社のみに登録をする場合は、相見積が必要。
  • 着手金等のランニングコストが係るマッチングサイトは、相見積が必要。

条件④:FA・M&A 仲介費用において、2021 年 9 月 17 日前に FA・M&A 仲介業者と専任条項がある委任契約を締結し、補助事業期間中に締結した基本合意又は最終契約に基づく中間報酬又は成功報酬

  • 2021 年 9 月 17 日前に FA・M&A 仲介業者と専任条項がある委任契約を締結しており、相見積を取得することが FA・M&A 仲介業者との契約上困難な場合は、補助事業期間中に相手方と基本合意又は最終契約を締結し、FA・M&A 仲介業者との委任契約に基づく中間報酬・成功報酬を支払う場合、当該補助対象経費に対する相見積の取得は不要。
  • 弁護士及び税理士等の専門家との顧問契約等は、2021 年 9 月 17 日前に締結していたとしても本条件の対象外。
  • 当該 FA・M&A 仲介業者との契約が実際の業務提供実態と異なる場合等、社会通念上適切な契約でないと事務局が判断した場合は補助対象外。



おわりに

令和3年度当初予算の「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」について、概要とポイントを解説しました。大きな変更点は、①補助上限が400万円⇒250万円へ減額(補助率も2/3⇒1/2へ)、②仲介・FA費用の対象を「登録M&A支援機関」に限定となります。

①については、FA・仲介会社へ依頼する場合、M&Aに係る費用そのものが、補助上限以上のケースが多いため、そこまで問題にはならないと認識しています。②については、登録されたM&A支援機関がどの程度の数になるか、登録M&A支援機関が本補助金をどこまで推進するかによると考えられます。いずれにしても、過去2回の2021年度と比較して、利用できる機会が限られることになるため、申請件数が減少する可能性はありますが、これまでも高い採択率であったため、この傾向は維持される可能性が高いと考えられます。



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所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
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URL  :https://cregio.jp/

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