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コラム COLUMN

地域支援制度

令和5年度経済産業省概算要求が発表!地域・中小企業等関連のポイントを解説

令和5年度経済産業省概算要求が2022年8月31日に発表されました。盛り込まれた施策の中から、地域や中小企業の経営者の皆さまへ、「スタートアップ支援」「M&A・事業承継支援」「様々な経営支援」「商店街支援」に関連し、お役に立ちそうな施策をピックアップして、ポイントをお伝えします。地域中小企業向けの施策のポイントをまとめた「令和5年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント」では、「コロナ長期化・原材料価格高騰等の危機への対応」「創業・事業承継を通じた挑戦・自己変革の推進」「成長分野等への挑戦に向けた投資の促進」「地域課題解決に向けた取組への支援の拡充」「伴走支援・人材確保支援等」が項目として記載されています。

「概算要求」とは?

「概算要求」は政策のトレンドを把握するために有効な資料の一つです。

国家予算は年度ごとに発表され、対外的に公表されるタイミングは、①概算要求(概ね8月末頃)、②予算案(概ね12月末頃)、③予算(概ね4月頃)の3つに分けられます。概算要求は各省庁が取りまとめ、次年度に要求したい予算を公表するものです。概算要求に基づき、財務省との折衝が行われます。そのため、実際に「予算案」として発表されるタイミングでは、概算要求と比較して、減額や変更又はなくなる可能性もあります。このように、変更の可能性はありますが、次年度の政策のトレンドを抑えるためには有効なツールとなっています。

地域・中小企業向けの経済産業施策をピックアップ!

令和5年度経済産業政策の重点、概算要求・税制改正要望について」中から、「地域」「中小企業」に関する事業をピックアップします。(※各施策に付したコメントについては、あくまで筆者の感想となります。制度詳細を希望される方は、施策を担当する組織へ直接ご確認ください。)

スタートアップ支援関連

ユニコーン創出支援事業

昨年度まで「グローバル・スタートアップ・エコシステム強化事業(予算規模4.7億円)」として、主にJ-Startupの国内外の支援を目的としていた事業ですが、令和5年度より「ユニコーン創出支援事業」という名前で新規予算となり、概説明資料から”J-startup”の文字は消え、代わりに”ユニコーン企業”という言葉が使われるようになりました。主にスタートアップのイベント出展や、マッチング・資金調達等を目的としたメンタリング支援、表彰・調査等が実施内容として挙げられています。


研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業

大学等に眠る技術シーズを活かす等、研究開発を伴うスタートアップを支援する事業です。これまでもNEDOにより実施してきた研究開発費を支援する制度に加え、人材発掘・確保に関する事業も盛り込まれています。


ムーンショット型研究開発事業

上記と同じように研究開発が伴うスタートアップを支援する事業に類されますが、「ムーンショット(難しいが、実現すれば大きな効果をもたらすような、壮大な計画や試み)」の名がつくように、将来の産業・社会の在り方を変革する、より野心的な構想を掲げ、実現することが目的となっています。構想は大きいですが、予算額自体は4.8億円と昨年度と同規模要求に留まっています。



大企業等人材による新規事業創造促進事業

大企業に勤める人材が、出向等の形で、自ら起業する場合の事業を支援する制度です。これ以外にも、大企業人材の創造性を磨くためのリカレント教育や、人材多様性の確保を目的とした事業も盛り込まれています。



地域・企業共生型ビジネス導入・創業促進事業

こちらは創業そのものを支援する事業ではないですが、ベンチャー・中小企業等が、自ら若しくは複数者で連携し、複数地域(5地域以上)で共通した課題解決を行う事業を中心に、経営戦略の実現を担う人材等の確保等の総合的な事業を実施するとのことです。


中小企業信用補完制度関連補助・出資事業

新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」にも記載され、ニュース等でも話題となった”創業融資の個人保証不要”に関する事業がこちらに含まれます。創業時の経営者保証を不要にする新たな信用保証制度を創設することが盛り込まれていますが、あくまで信用保証制度となるため、最終的に個人保証を求めるかどうかは金融機関の判断となります。とはいえ、こういった制度が呼び水となり、個人保証を必要としない創業融資が拡大していくことが期待される制度となっています。



M&A・事業承継支援関連

中小企業活性化・事業承継総合支援事業

現在も整備されている事業承継の公的な相談機関である事業承継・引継ぎ支援センターに関する事業です。こちらの中に、以前は”再生支援協議会”という名称だった、中小企業活性化協議会の事業も含まれています。規模が小さい中小企業にとって、事業承継について何でも相談できる事業承継・引継ぎ支援センターは重宝されていると様々な地域でお話を聞きますので、引き続き継続して欲しい事業です。



事業承継・引継ぎ支援事業

事業承継・引継ぎ補助金は令和5年度も継続して要求されます。M&Aを実施する際に専門家に支払う費用を対象とした「専門家活用型」や、経営資源の引継ぎに伴った新事業を後押しする「経営革新型」も盛り込まれており、これまでと同様の事業となっています。M&Aで活用できる「専門家活用型」は補助上限400万円・補助率1/2となっており、補正予算と比較すると支援の幅は狭くなっていますが、昨年度事業と同じ条件となっています。



後継者支援ネットワーク事業

事業承継関連で、唯一新規に要求されている事業です。現在の「アトツギベンチャー」の流れを汲む事業だと思いますが、内容はコミュニティの構築や、ピッチイベントの開催等、ネットワークやイベント活動を展開する内容となっています。現在の流れが、経済産業省の予算となることで、どのような変化がもたらされるか注目です。



様々な経営支援関連

地域未来DX投資促進事業

地域におけるDX投資を促進するための事業です。具体的には、DXの専門家が支援する費用の補助や、デジタル技術を活用した新事業の実証、デジタル人材育成の施策が含まれています。



中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業

中小企業が経営で悩んだ際の公的な経営相談拠点「よろず支援拠点」の事業です。拠点運営に加え、専門家派遣の支援が組み合わさっています。



小規模事業対策推進等事業

こちらは「経営支援発達支援計画」の認定を受けた商工会議所・商工会が、計画に基づき、販路開拓や、事業計画の策定に関する費用を支援するものです。商工会議所・商工会とよく連携している企業は注目したい制度です。



成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)

ものづくり企業の成長を後押しする事業です。元々、サポイン(サポーティング・インダストリーの略)と呼ばれていた事業で、先端技術を活用する事業の研究開発や試作品開発等を支援するための事業です。研究開発要素の多い中小企業が、大学や公設試等の研究機関と連携して行う事業に、よく利用されています。



ものづくり等高度連携・事業再構築促進事業

事業者が連携し、「事業再構築指針」の要件を満たす事業を支援する事業です。連携体の構築や、事業再構築指針を満たせるか等、要件が多い補助金となっています。



海外展開のための支援事業者活用促進事業

海外展開や、海外を見据えた全国展開の販路開拓の支援する補助金です。最近はめっきり中小企業の販路開拓系の補助金が減る中で、唯一生き残っている補助金と言えます。自社だけでなく、海外展開支援実績のある支援パートナーとの連携が必須となっており、パートナーと既に連携しているところは使いやすいですが、そうでないところはハードルを感じる補助金です。



商店街支援関連

地域の持続的発展のための中小商業者等の機能活性化事業

施設整備系の予算が比較的少ない経済産業省の予算の中で、比較的継続している事業がこちらの商店街向けの補助金です。インバウンド需要が高まった時は、宿(ホテル・旅館)の設備補助等で利用した商店街もありました。デジタル活用等のソフト事業、魅力的設備を整備するハード事業に加えて、専門人材を活用する事業も組み込まれています。




おわりに

令和5年度経済産業省概算要求において、「地域」「中小企業」関連で注目すべき施策について、ポイントをお伝えしました。中小企業向けの施策をまとめた「令和5年度 中小企業・小規模事業者・地域経済関係 概算要求等ポイント」では、昨年度には記載されていなかった「創業」の文字が復活しましが、創業に対する直接的な予算措置ではなく、「経営者保証を不要とする保証制度創設」という間接的な支援施策が盛り込まれています。

「新しい資本主義」でも注目されたスタートアップ関連施策では、過去実施された内容の事業が多く、新設された「ユニコーン創出事業」も、これまでのJ-Startup関連事業と同様であることが予想される一方、「J-Startup」という言葉がどこにいってしまうのかが気になります。全体的なスタートアップ関連の施策では、創業融資で経営者保証を必要としない信用保証制度の創出の他は、引き続き研究開発系のスタートアップを中心とした施策が展開されることとなりました。M&A・事業承継関連では、「後継者支援ネットワーク事業」が新設された他は、これまでと同様の事業が継続することとなりました。その他の経営支援関連も、これまで同様の事業が継続されており、目新しい事業は確認できませんでした。

中小企業がよく利用する「持続化」「もの補助」「IT導入補助金」といった、比較的使いやすい予算事業は、補正予算に計上されることが多く、今年度も、そもそも補正予算は組まれるのか、組まれた場合、補正予算にどのような事業が盛り込まれるのかは注目したいところです。


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