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コラム COLUMN

M&A支援機関登録制度の詳細を解説、いよいよ登録受付が開始

中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するための「M&A支援機関登録制度」が、2021年8月24日より運用が開始されました。8月2日時点で既に制度概要について公表されていた本制度について、登録申請を行うための受付が開始した形になります。登録申請を行うための要件や具体的な内容について解説します。

なお、制度の趣旨等については、以下のコラムをご参考ください。
(参考コラム)「M&A支援機関に係る登録制度」が創設!制度の概要とポイントは?

※中小企業庁HP「M&A支援機関に係る登録制度の申請受付開始について」


記事のポイント

  • 「M&A支援機関に係る登録制度」の登録申請が開始。
  • 登録機関のメリットは「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の支援」「登録による信用向上」が考えられる。
  • 登録機関は「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣誓。ガイドラインに沿った取組と実績報告が求められる。



「M&A支援機関登録制度」に申請するための手続き

支援機関にとっての登録のメリット

M&A支援機関登録制度に登録されるメリットとして以下の2つが考えられます。メリットだけではなく、要件を満たすために必要な対応が求められることに注意が必要です。

事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象となる

中小企業庁が実施する「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」におけるFA・仲介業務に係る手数料については、登録制度にあらかじめ登録された FA仲介業者によるもののみが対象となります。M&Aにおいて、「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」を利用する場合、登録済みのFA・仲介会社へ依頼した場合にのみ利用できることとなります。

登録機関としての信用が得られる

M&A支援機関登録制度は、行政機関による登録制度です。登録の要件として、行政機関が定める中小M&Aガイドラインを遵守することが求められており、登録されることで、支援機関の信用力の向上に寄与する可能性があります。


登録に必要な主な4つの要件

支援機関登録制度に必要な要件として、主なものは以下のとおりです。

【主な遵守事項】

  1. 中小 M&A ガイドラインの遵守を宣言すること
  2. FA・仲介業者において定める料金表(料金を定めた規程類等)を提出すること
  3. 登録後の遵守事項を履行することを誓約すること
  4. 登録を希望する FA・仲介業者は、秘密保持義務条項の規定内容に関わらず、顧客中小企業者等による情報提供窓口への相談等の行動を制約しないこと

中小M&Aガイドラインに基づき、遵守事項が明示されており、この遵守事項に遵守する旨を宣言し、履行することを誓約する必要があります。加えて、料金体系を明確に示すため、料金表の提出が必要です。本制度では、登録制度に加えて、登録機関に関する苦情に対する情報提供窓口が設けられる制度となっており、内容によっては取消しを受ける場合もあります。そのため、情報提供窓口への相談等の行動を制約しないことが求められます。

上記以外にも、「反社会的勢力に該当せず、今後においても、反社会的勢力との関係をもつ意思がないこと」「 経済産業省の所管補助金交付等の停止及び契約に係る指名停止措置を受けていないこと」「上記の他、登録申請の手続きの際の項目についても確認の上、宣誓をすること」が規定されています。

中小M&Aガイドラインに基づく遵守事項

中小M&Aガイドラインに基づく遵守事項が掲げられており、これらの項目について遵守する旨の宣言が必要となります。主な遵守事項は以下のとおりですが、M&A仲介業務に関する料金・利益相反・バリュエーション・DD(デューデリジェンス)に関する考え方についてモデルを示した内容になっています。

【主な遵守事項】

  • 契約締結前に重要な事項について明確に説明する
  • 専任条項について、合理的な理由がない場合、セカンドオピニオンを許容する
  • 専任期間を6~1年以内が目安
  • 中途解約できることを明記する条項を設ける
  • テール期間は最長2~3年以内が目安
  • テール条項の対象は、M&A専門業者が関与・接触し、紹介した譲り受け側に限定する
  • 仲介者であること、特に両当事者から手数料を受領する場合にはその旨を伝える
  • 利益相反のおそれがある事項については明示的に説明する
  • 確定的なバリュエーションを実施せず、必要に応じて専門家等の意見を求めるよう伝える
  • DD(デューデリジェンス)を自ら実施しない

【遵守事項一覧】

(出典:中小企業庁「M&A 支援機関登録制度公募要領」)


登録申請の方法と必要な書類

登録申請は電子上の申請フォームに入力し、必要書類をPDF又は画像ファイルで提出することなります。企業名等の基本的な事項の入力と、中小M&Aガイドライン遵守に関する宣誓は、申請フォームで行う必要があります。

添付する書類には、以下のとおりです。

【添付する書類】

  • 料金表
  • 会社概要(実施体制図が記載されているもの)
  • 履歴事項全部証明書(3か月以内に発行されたもの)


登録の対象者はM&A仲介・FA会社

登録の対象はM&AのFA・仲介業務を行う者となります。FA・仲介業務を専業で行う者に限らず、例えば仲介業務を行う銀行も対象となります。具体的には、FA・仲介業務に係る契約書を締結し、マッチング支援やM&Aの総合的な支援を行う者、又はFA・仲介業務に係る「相談料」「着手金」「中間報酬」「成功報酬」等の手数料を受け取って支援する者となります。

デューデリジェンス業務のみを行う士業等専門家は対象となりません。加えて、M&Aマッチングサイトの登録代行を請け負う支援機関や、M&Aプラットフォーマーは本制度の対象ではありません。


登録後の遵守事項

登録機関は、登録後、以下の事項を遵守する必要があります。

自社のHPで中小M&Aガイドラインを遵守していることを宣言

HPにおいてチェックを入れた遵守事項一覧を掲載する必要があります。HPがない場合、会社概要やパンフレットに記載することが求められます。

FA・仲介業務の契約締結時に、中小企業者等に中小M&Aガイドラインの遵守について説明

M&Aに関するFA・仲介業務を実施する際、契約締結時に顧客である中小企業者等へ、中小M&Aガイドラインの遵守について資料を用いて説明する必要があります。

毎年度、実績報告を提出

登録機関は、毎年度、中小M&Aを支援し、成約した案件について、必要な事項を報告する必要があります。成約に至らなかった案件は除かれます。実績報告の内容は、個人情報や企業情報等を識別・特定できない形態に加工して、利用・公表されることがあります。

提出期間は、2022年5月末となっています。事前に「実績報告延長申請書」を提出した場合に限り、2022年6月末まで延期されます。

実績報告で求める項目は、成約した事業者名等の案件に関する情報となります。事業承継・引継ぎ補助金交付案件については、成約した事業者名の明記が求められますが、それ以外の場合、明記は必須ではなく、可能な範囲での報告となります。


登録取消しにいて

以下の場合、取消しの対象となります。登録が取り消された場合、その旨が公表されます。

  • 不正な方法で登録申請した場合
  • 正当な理由なく実績報告を行わない場合
  • 自社のHP等で中小 M&A ガイドラインの遵守を宣言している旨の公表を行わない場合
  • 情報提供受付窓口に不適切な対応に係る相談等が多く寄せられている場合等であって登録 FA・仲介業者として登録を継続することが適切ではないと判断された場合


事務局について

本事業を委託されているのは、M&A支援を行う株式会社レコフから、出版事業と情報提供サービスを分社化して設立された株式会社レコフデータとなります。

事務局の問い合せ窓口は以下のとおりです。

URL:https://ma-shienkikan.go.jp
E-mail:touroku-support@ma-shienkikan.go.jp
電話:03-6867―1351(10 時~17 時 平日のみ)


公募期間

公募期間は2021年8月24日(火)~9月21日(火)です。

9月6日(月)18時までに申請があったものについては、9月上中旬頃に公表され、9月21日(火)18時に申請があったものは、9月下旬に公表されます。


おわりに

M&A支援機関の登録制度の趣旨等については、以下のコラムをご参考ください。
(参考コラム)「M&A支援機関に係る登録制度」が創設!制度の概要とポイントは?

登録に必要な主な要件は、「中小M&Aガイドライン」遵守の宣言となっています。くまで宣言となりますので、登録の要件の難易度はそれ程高くありません。遵守事項の内容を見ると、「料金」「利益相反」「専任条項」「テール期間」等、これまでM&A仲介業務で論点になりやすかった点について言及されており、今後のM&AのFA・仲介業務の規範が示される形となっています。登録を行うためには「中小M&Aガイドライン」を読み込み、理解することが必要です。

その他、取消しに関する規定もあり、中小M&Aガイドラインに遵守しない場合、取消しが公表されることで、信用を失う等の影響が考えられます。中小M&Aガイドラインを軸に、中小企業が安心してM&Aに取り組める環境の整備が期待されます。


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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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