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コラム COLUMN

「M&A支援機関に係る登録制度」が創設!制度の概要とポイントは?

2021年8月2日、経済産業省は、「中小M&A推進計画」に基づき、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に、「M&A支援機関に係る登録制度」の創設を発表しました。M&A支援機関登録制度の概要とポイントについて解説します。

※経済産業省HP「M&A支援機関に係る登録制度の創設について


記事のポイント

  • 「M&A支援機関に係る登録制度」は、「中小M&A推進計画」に基づき、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に創設されたもの。
  • 制度により「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)の支援を登録機関に限定」「情報提供受付窓口の創設」が開始。
  • 登録機関は「中小M&Aガイドライン」への遵守を宣誓。中小M&A市場の環境整備に期待。



「M&A支援機関に係る登録制度」のポイントまとめ

何のための制度か?制度の趣旨・目的は?

「中小M&A推進計画」について

「M&A支援機関に係る登録制度」は、2021年4月に中小企業庁が公表した中小M&A推進計画」に基づいて創設されたものです。こちらの計画は、経営者の高齢化や新型コロナウイルス感染症の影響に対応し、中小企業の貴重な経営資源が散逸することを回避するとともに、事業再構築を含めて生産性の向上等を図るため、中小企業の貴重な経営資源を将来につないでいくことを目的に策定されました。

同計画において2021年度中に取り組む内容として盛り込まれていたのが、以下の2点となります。

  1. 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A 支援機関の登録制度を創設し、M&A 支援機関の活用に係る費用の補助については、予め登録された機関の提供する支援に係るもののみを補助対象とすることとする。
  2. 登録したM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口も創設する。

制度の趣旨・目的

「中小M&A推進計画」では、「中小企業における M&A 支援機関に対する信頼感醸成の必要性」への対応の一つとして、今回の登録制度を位置づけており、「中小 M&A の急拡大に伴って M&A 支援機関の数が年々増加する中、十分な知見・ノウハウ等を有しない M&A 支援機関の参入も懸念されつつあり、①M&A に関する知見に乏しい中小企業が適切な支援のあり方を判断できない、②支援機関による支援に伴うトラブルに関する情報を行政が把握する仕組みがないといった問題が指摘され始めている。また、仲介に関する利益相反の懸念も指摘されている。」という課題への対応が本制度の趣旨となります。


制度の概要とポイント

制度の概要

M&A支援機関に係る登録制度の設に伴い、以下の取組が開始されます。

① 事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の対象となる支援の限定
事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)において、M&A支援機関の活用に係る費用(仲介手数料やフィナンシャルアドバイザー費用等に限る。)については、予め登録されたM&A支援機関の提供する支援に係るもののみが補助対象となります。

※「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」(補正予算分)に関するコラムはこちら
「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」を解説、M&Aに活用できる!

② 情報提供受付窓口の創設
登録されたM&A支援機関による支援を巡る問題等を抱える中小企業等からの情報提供を受け付ける窓口が創設されます。

登録の対象は?

M&A支援機関(M&A専門業者(仲介業者、FA)、金融機関、商工団体、士業等専門家、M&Aプラットフォーマー、事業承継・引継ぎ支援センター等)のうち、ファイナンシャルアドバイザリー業務又は仲介業務を行う者が対象になります。業種は問わず、例えば、仲介業務を行っている金融機関も対象となります。

登録の要件は?

登録の要件は、「中小M&Aガイドラインの遵守を宣言すること」です。「中小M&Aガイドライン」において定める各事項について、宣誓書を提出する形で宣言します。項目に応じて、「規定内容そのままの遵守を求める」場合と、「中小M&Aガイドラインの趣旨に則った遵守を求める」場合が存在します。

※「中小M&Aガイドライン」に関するコラムはこちら
中小M&Aガイドライン、徹底解説!

※「強度」欄について
◎…具体的な行動が規定されているもの。(「必要」「すべき」等)
〇…抽象的な行動が規定されているもの。(「必要」「すべき」等)
△…訓示的な内容。(「望まれる」「留意すべき」「必要に応じて」等)

※「◎」事項+特記事項 ⇒ 規定内容そのままの遵守
 「〇」「△」事項   ⇒ 中小M&Aガイドラインの趣旨に則った遵守を求める


登録後に求められる対応

登録したFA・仲介事業者は、以下の対応が求められます。また、登録機関は経済産業省HPに掲載されることとなります。

  1. 要件を充足している旨を自社HPで掲載
  2. 要件を充足している旨を顧客に書面で事前説明
  3. 毎年度、実績報告を提出

また、毎年度の実績報告提出の際に、登録継続申請手続きを設けることとなり、支援実績が芳しくない等、一定の要件に該当する場合、登録の継続が認められない場合や、登録の要件を充足しないと判断された場合、登録の取消しを行うことが定められています。

実績報告とは?

補助金交付案件について、以下を実績報告時に報告することとなります。

(報告項目)
・譲渡側、譲受側の別
・業種
・資本金額
・従業員数
・所在する都道府県
・譲渡価額、譲受価額
・譲渡側の純資産、純利益、純借入債務(借入金-現金預金)
・手数料の金額(相談料、着手金、中間報酬、成功報酬の別)
・相談の端緒(自社開拓、センター、金融機関、商工団体、士業等専門家の別) 等

補助金交付案件でない案件についても、以下項目に限って、匿名で報告することが登録FA・仲介会社に義務づけられます。それ以外の項目の開示は任意とする形になります。

(義務付けられる報告項目)
・譲渡側、譲受側の別
・業種
・所在する都道府県
※上記以外について任意。

今後のスケジュール

8月中旬に申請受付が開始し、9月中旬に締め切り、登録支援機関が公表されます。
事業承継・引継ぎ補助金(令和3年度当初予算)の公募開始は9月下旬が予定されています。



「M&A支援機関登録制度」創設による今後の中小企業M&A業界

中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築するために「M&A支援機関登録制度」が創設されます。内容を見ると、登録要件は「中小M&Aガイドラインへの遵守」を宣誓することであり、制度による効果として「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)を登録M&A支援機関に限ること」「情報提供受付窓口の創設」となっています。

制度そのものが「登録制度」となっており、宅地建物取引業法のように、M&AのFA・仲介業そのものを規制したり、許認可を得た者しか事業をできないような強い内容にはなっていないところが特徴です。

上記の制度の効果が、M&AのFA・仲介事業者にとってどのようにインセンティブとして働くかによって、どれだけのFA・仲介業者が登録するかに影響が出ると考えられますが、登録した場合、国の制度に登録されるという信用力は働くものと想定されます。一方、FA・仲介事業者を利用する中小企業経営者においても、登録事業者は、中小M&Aガイドラインを遵守することとなりますので、事前に中小M&Aガイドラインの内容をしっかりと把握しておき、ガイドラインから逸脱した取組がないかどうかをチェックすることが可能なるため、制度を把握しておくことが求められます。

登録したFA・M&A仲介業者は、実績報告を義務付けられるため、国による中小M&A市場の実態把握と、中小M&Aガイドラインに基づいた、中小M&A市場の環境整備が進むことが期待されます。



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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