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コラム COLUMN

M&A事業承継

販売シナジーを創出するための6つの手法

M&Aを行う大きな目的の一つはシナジー効果を生み出すことです。M&Aを実行する前は、どのようなシナジー効果が見込まれるかを分析し、検討を進めます。このシナジー効果について、戦略が記載された情報は多数ありますが、具体的にシナジー効果を出すための戦術や方法論を掲載している情報は意外に少ないのが実情です。本コラムでは、対面営業がメインのBtoBビジネスを念頭に、M&Aにおいて特に「販売シナジー」を出すための具体的な方法論について考察しました。

記事のポイント

  • クロスセルによる販売シナジーを創出するためには、「個別商談の積上げ」が必要。
  • 具体的な方法論は「会議での積極的な情報共有」「共同勉強会」「出向の活用」「人材のトレード」「社長の部下を子会社シナジー担当に任命」「人事評価制度に組み込む」。
  • 泥臭く、地道な人材の交流がM&Aによるイノベーション創出を加速化。



販売シナジーを出すための戦術論

BtoBビジネスを営むA社(買手企業)が、同じくBtoBビジネスを展開するB社(売手企業)をM&Aにより子会社化し、主にB社の販売ネットワークへ、A社の商品を販売する、また逆にB社の商品をA社の販売ネットワークで販売することをシナジー効果として期待したケースを想定してお伝えします。この手法は、「クロスセル」と呼ばれる、シナジー効果の中でも、特に販売シナジーを創出するための手法の一つです。



クロスセルを実行するための具体的な手法

主にBtoBビジネスにおけるクロスセルで重要なのは「個別商談の積上げ」です。M&A実施直後は、買手企業・売手企業それぞれにおいて、各社が扱う商品の知識が不足している状況です。クロスセルによる販売シナジー効果を創出するためには、買手企業と売手企業の商品・顧客に関する情報格差を埋め、それぞれの販売ネットワークに商品を展開するために、一歩一歩地道な積み上げを行うことが必要です。

会議での積極的な情報共有

A社とB社で共同で会議を開催し、商品知識や販売ネットワークにおける顧客ニーズの把握、販売戦略の検討を行います。M&Aは異なる文化を持つ組織同士が統合されることで、初めてシナジー効果を発揮します。劇的な方法論ではないですが、コミュニケーション方法の確立と意見交換を定期的に実行できる仕組みをつくることが重要です。

共同勉強会

A社が持つ商品・顧客、B社が持つ商品・顧客について共同勉強会を開催します。上記の「会議での積極的な情報共有」と趣旨は同じであり、それぞれの情報格差を埋めるための手法となります。特定の商品等に的を絞り、どのような特徴・強みがあるか、競合他社におけるポジションや、売り込み方等を勉強会を通じて把握することで、営業社員の商品・顧客属性に関する理解を促進させ、販売シナジーが出やすい環境を整備します。

出向の活用

A社からB社へ、又はB社からA社に人材を出向させます。上記の会議や勉強会だけだと、情報のインプットが中心となってしまい、実際に効果を発揮するまで時間がかかります。既に具体的な商品ノウハウや顧客の特徴を掴んでいる社員を、それぞれの会社へ出向させ、販売してみることで、顧客の反応や結果をフィードバックすることが可能となります。

人材のトレード

A社の社員とB社の社員をトレードする方法です。趣旨や目的は上記「出向」と同じですが、「出向」だと一方的に送るだけになってしまい、どちらかの人員がマイナスになってしまうことが想定されます。なるべくどちらか一方が負担を強いられないために、双方が人材を出し合い、販売シナジーが創出できる環境を整備します。

社長の部下を子会社シナジー担当に任命

A社社長の直下の人材をシナジー担当に任命します。シナジーは待っているだけで自然と起こるものではありません。誰かが中心となり、積極的に行動を起こしていく必要があります。社長に近い人材を特命のシナジー担当とすることでシナジー創出に向けた動きを企画し、具体的に実行していきます。

人事評価制度に組み込む

シナジーを双方の人事の評価制度に組み込む方法です。例えば、A社社員がB社製品を販売した場合に、人事評価上のインセンティブを付与する(B社社員がA社製品を販売した場合も同様)ケースが考えられます。取り扱う商品によりインセンティブの内容について検討する必要はありますが、積極的にシナジーを生み出す動きのモチベーションを人事評価で後押しする効果が見込めます。


意外と泥臭い?販売シナジーの創出方法

上記以外にも様々な販売シナジーを創出する方法はあると思いますが、一見して意外と地味な作業が多いと思われたかと思います。M&Aを検討する際に、シナジー効果を思い描くことはワクワクしますが、実際に実行する段階になるとこういった地道な作業が必要になります。繰り返しますが、販売シナジー創出に必要なのは、「個別商談の積上げ」です。上記の例だと、A社・B社それぞれの人材が営業同行等を繰り返し、商品知識と顧客特性を理解し、実際に販売していくことでしか、効果は発揮されません。組織的な手法としては上記のような方法が考えられますが、地道な営業同行を繰り返すことが基本的かつ重要な取組みとなります。

行政も後継者不在企業の課題解決の手法としてM&Aを推進し始める中、中小企業の中でもM&Aという手法が一般化しつつあります。そのような状況の中で、今後は初めてM&Aでグループを形成する企業も増加傾向となることが予測されます。M&Aの機運が高まると、M&Aという行為そのものに注目が集まりがちですが、実際はM&A後にどのような効果を出していくかが重要となります。

上記のとおり、販売シナジーを出すために人材の交流が肝となります。異なる組織で人材が交流することはイノベーションの創出にも繋がります。販売シナジーを創出する際は、そういった「人材の交流」に注目することで、様々なM&Aの効果の促進を見込むことが可能です。



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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