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コラム COLUMN

M&A

M&Aしくじり先生!買い手側の上手くいかなかったM&A事例


M&Aは買い手企業にとっても様々なリスクを孕んでいます。今回は、過去取り扱ったM&Aの中で、買い手企業側に注目し、特にM&A後の経営について当初の意向に沿わなかったケースを中心にいくつかご紹介します。M&Aは案件ごとに異なるため、一概に同様の可能性があるとは言えませんが、M&Aを活用し、企業の成長を目指す皆さまにとって何かの気づきになれば幸いです。

記事のポイント

  • M&Aにおいて買収後に上手くいかなかった事例を紹介。
  • 買収監査(デューデリジェンス)やシナジー効果をどう見込むか等、様々なポイントが存在。
  • 買い手企業にとっても、売り手企業の理解は必要。
  • 様々な角度での情報収集がM&Aを上手く活かせる一歩。

M&Aにおける買い手企業の失敗とは?その事例を紹介

M&Aにおける買い手企業の失敗には大きく2つに分類できます。一つは「M&Aにより買収したいが、実現できなかった」というケースと、「M&Aによる買収は実現できたが、M&A後の経営が上手くいかなかった」というケースがあります。今回は「M&Aによる買収は実現できたが、M&A後の経営が上手くいかなかった」という事例をいくつかご紹介します。

赤字企業を買収!黒字化を目指したが、達成できず…。M&A後の経営戦略

とある大手企業が将来の成長性を見込み、M&A検討時点で赤字(営業赤字1~2億円程度)の小売業をM&Aにより買収しました。買い手企業は、同社の中堅エースを子会社社長として派遣し、再建にチャレンジしました。
果敢に経営再建に挑みましたが、マネジメントが上手くいかず、現場では従業員の遅刻、無断欠勤が頻発してしまい、社長の部下となるはずの店長の遅刻も見受けられる始末。社内報告も疎かで、約束・期限を破ることが常態化してしまいました。このような風土・組織で、質の良い商品・サービスをお客さまへ提供できるはずがなく、顧客離れが深刻化してしまい、M&A後も売上は昨年対比70%台が継続し、経営はより深刻な事態となりました。
その結果、経営建て直しの前に、買い手企業の気力と資金が尽きてしまい、再建を断念。子会社は破産する結果になりました。

改めて振り返ると、上記の事例は、以下の点が失敗要因として大きかったと思います。

  • 買い手企業にとって異業種の買収だった。
  • 買い手企業から子会社(売り手企業)の社長に派遣した人物に経営経験がなかった。
  • 買い手企業において、M&A後の緊急かつ明確な改善プランがなく、M&A後に考えようとしていた。

経営難で赤字企業を再建することが上手な買い手企業も一定割合い存在するため、「赤字だからM&Aすべきではない」ということではありません。ただし、同業(売り手企業の事業のノウハウ・経験がある)、又は異業種でも再建経験が豊富(赤字企業を黒字化させるノウハウ・経験がある)のどちらかは必要だと感じています。

また、M&Aでは「M&A後の経営プランをM&A前に計画し、M&Aをした当日から実行していくことが重要」と言われますが、赤字企業の場合は特にそういった迅速な対応が重要になると思います。日々の資金流出に加え、事業や店舗の競争力が日に日に劣化している可能性があるため、早期の打ち手、改善が必要です。

過度な成長期待は命取り!冷静な判断が必要

とある企業は、M&Aで買収する際、売り手企業の利益計画(具体的には、利益が実績1億から将来3億に伸びる計画)をもとに、株価を評価しM&Aを実行しました。
しかし、M&A後、なかなか利益が伸びず、投資回収に時間がかかってしまいました。買い手企業にとっては、新規事業の買収だったこともあり、成長市場の中で売上・利益ともに成長させている売り手企業だったため、将来成長を見込んでのM&Aでしたが、市場環境において競合との競争も激しくなり、M&A後の事業成長が伸び悩んだ事例でした。

M&Aを事業の成長戦略において、成長にかける時間と、ビジネスモデルを取得するため、新規事業取得と位置付ける積極的な買い手企業も存在します。買い手企業にとっては、新規分野・成長分野における事業は、どうしても将来成長に期待を持ってしまいます。
「隣の芝生は青い」とは言いますが、M&Aにおいても、新規事業における成長性・市場性、競合の状況、売り手企業の事業の優位性等、冷静に分析して判断する必要があります。

高すぎる営業権、長すぎる年数!M&Aにおける価値基準の重要性

とある企業がM&Aにより株式を取得する際、株価の評価において営業権を利益の15年分で評価しました。買い手企業の経営者からは、「後で冷静に考えるとあまりに高い買い物をしてしまった。」という声が聴かれました。

M&Aにおいて、買い手企業は取得したいと思う会社の株価をどのように評価するかは重要な論点の一つです。その中でも、いわゆる「高値掴み」には様々な例があります。以下がその事例です。

  • M&Aが入札方式であり、買い手企業にとってはどうしても取得したい理由があった。ただし、検討期間がタイトであり、強い競合がいるらしいとの情報もあり、無理な価格をつけてしまった。
  • 社内的な事情(例:今期の投資予算を消化したい、中期経営計画の今期中の買収目標を達成しなければいけない、等)で、買い手企業にとってM&A自体が目的化し、目的達成のために高い株価をつけてしまった。

上記はあくまで例示なので、その他にも色々とありますが、売り手企業の事業が魅力的な案件であり、かつ、競合が多い場合、買い手企業において、どこまで買収価格を出すか悩むことも多いです。悩む中でも、M&Aにあたり、自社の価値判断基準を持つことが重要です。また、価格と事業を天秤にかける中で、「M&Aできなければ、その会社とは縁がなかった」と割り切る勇気も必要だと思います。


短期間で複数のM&Aを実行…!リソースの判断と投資回収のバランスが重要

M&Aを積極的に活用し、事業の成長を目指したとある企業は、3年間で10社をM&Aにより取得しました。M&Aの費用を借入金でまかなっていたため、その企業の借入金は3年前の3倍となり、財務状況が悪化しました。
M&Aにより取得した企業の成長を期待していましたが、M&Aした企業の経営にかける人手が足りず、子会社の管理・経営改善を十分に行えないとう状況になってしまい、投資回収が遅れてしましましました。
結果、借入金の返済が苦しくなり、借入金をお願いしていた銀行にリスケ(借入条件の変更)をお願いせざるを得なくなりました。

M&A及びM&A後の経営には、経営資源の投下(人、モノ、金、情報、時間)が必要です。短期間に複数のM&Aを実行すると、特に人、金が足りなくなってしまうことがあります。人に関しては、経営を任せられる人材が必要であり、常にM&Aの際に議論になります。M&Aにより事業を取得するだけでなく、その後の経営状況を考えた上で投資回収とのバランスを考えることが必要です。

M&A後、中堅営業マンが数名退職!売り手企業の「人」「組織」の重要性

とある企業は更なる商圏拡大のため、同業の卸売業をM&Aにより取得しました。M&Aで取得した3ヶ月程度で、売り手企業の中堅営業マンが複数名退職してしまいました。顧客が営業マンと密接だったこともあり、結果として一部の取引先は取引がなくなってしまいました。

このケースでは、M&Aにおける買収監査(デューデリジェンス)において、組織・人員の確認を十分に行っていませんでした。直近3年程度の人員の推移、退職者の状況・理由、現在の従業員の担当業務・能力・モチベーションなど細かくヒアリングをしていれば、M&A前に状況を把握をし、違う手を打てていた可能性がありました。買収監査(デューデリジェンス)をきちんと行うと共に、その中でも財務や法令順守状況だけではなく、組織・従業員に関する確認・把握も重要です。

M&A後の簿外債務の発覚!親しき仲でも、デューデリジェンスの重要性

とある買い手企業は、知人である企業オーナーからM&Aによる事業譲渡の相談を受けました。買い手企業オーナーはM&Aの提案を受け入れ、売り手企業オーナーとよく知った仲だったこと、また、株式価格も3,000万円と少額だったこともあり、買収監査(デューデリジェンス)をなるべく簡易な方法で実施しました。
買収監査(デューデリジェンス)の内容は、買い手企業の経理社員による財務書類の最低限の数値確認と、売り手企業オーナーへのヒアリングのみを行いました。売り手企業の顧問税理士との面談は行いましせんでした。
M&A後、売り手企業に4,000万円の簿外債務(買掛金の粉飾)があることが発覚しました。表明保証違反による損害賠償請求を行うも、全額は回収できませんでした。また、係争に労力・時間を奪われた上、損益も、認識していたより悪かったため、再建に苦労しました。

こちらのケースにおける学びとして、買い手企業は、オーナー同士の信頼関係の有無、投資額の大小に関わらず、必ず十分な買収監査(デューデリジェンス)を実施すべきということです。買収監査(デューデリジェンス)では、売り手企業の顧問税理士へのヒアリングも行うことが多く、本件でも顧問税理士へのヒアリングを行っていればM&A前に簿外債務が発覚していた可能性が高かったと思います。オーナー同士の信頼関係は重要ですが、返って仇になってしまった事例でした。

M&A後を左右するシナジー効果!双方の理解が必要

関東の設備工事業を営む会社が、北陸で設備工事業を営む企業をM&Aにより買収しました。買い手企業はオフィスビルに強く、売り手企業は製造プラントに強いという特徴がありました。
買い手企業にとっては、製造業・プラント向けの市場獲得・ノウハウ獲得に期待したM&Aであり、M&Aで取得したノウハウを活かし、関東における製造業・プラント向けのサービス展開を目論みました。
しかし、M&A後、子会社から親会社への出向・転勤を希望する者がおらず、人事交流による相互理解・ノウハウ共有ができませでした。その結果、クロスセルのための営業展開もできませんでした。

M&Aによる買い手企業が目指すシナジー効果は、ひらたく言うと以下の2つに分類することができます。

  1. お客様向けに、一緒に商談をする(販売シナジー)
  2. 管理業務・本社業務のうち、一緒にできることを一緒にやる(コストシナジー)

これらのシナジー効果を発揮するためには、従業員の理解と具体的な協力・行動が不可欠です。買い手企業の社員、売り手企業の社員いずれにも、行われるM&Aの意義、目的、戦略を十分に浸透させる必要があります。また、売り手企業・買い手企業の双方から、シナジー効果を追及するのためのプロジェクトメンバーを抜擢し、相互の事業内容・サービス内容の理解を深めて、具体的行動をさせるような取組も必要です。

おわりに

今回は買い手企業の事例を中心に、M&Aをしたが、M&A後の経営において上手くいかなかった事例を取り上げ、それぞれのケーススタディからの学びや論点をまとめました。こちらも、それぞれの事情があるため、全てを共通事項として捉えることは難しいですが、M&Aを成長戦略におく中での参考になれば嬉しく思います。

M&A後の経営はやってみなければ分からない部分もありますが、売り手企業・買い手企業双方の理解が進むことで、未然に防げるケースもあります。そのための、M&Aプロセスにおける買収監査(デューデリジェンス)の重要性や、どういったシナジー効果を目指すか等、迅速なM&Aへの対応の中でも、慎重かつ大胆に進める必要があります。上記のような事例を事前に頭に入れておくだけでも、未然に防げる部分もあるかもしれませんですし、M&Aの専門家とコミュニケーションすることで事前に情報収集し、様々な角度でM&Aを捉えておくことも一案です。買い手企業、売り手企業の双方がM&A後もそれぞれの道を歩みだせるような方向性が一番望ましく思います。



クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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