新型コロナウイルスの経済的な影響により、様々な補助金メニューが用意されるようになりました。補助金をビジネスの資金調達として位置づけた時に、どのような影響が出るのでしょうか。銀行からの融資(間接金融)や、投資家・事業会社からの投資(直接金融)等、いわゆる通常の資金調達と補助金は少し性質が異なるため、資金調達の手段として補助金を活用する場合、気を付けた方がよい点についてまとめました。
記事のポイント
- 補助金は、キャッシュが振り込まれるのは「原則最後」。
- 会計上は「雑収入」で整理。一時的な売上(収益)となるので、補助金依存度が高いビジネスは注意が必要。
- 補助金は自己負担額が存在。何が補助対象経費か把握しておくことが必要。
キャッシュインは原則最後
通常の資金調達の場合、事業がスタートする前に入金されます。補助金の場合は、原則「事後支払い(精算払い)」であることに注意が必要です。一般的な補助金の場合、実際のキャッシュが振り込まれるのは事業が終了し、必要な書類について所管官庁や事務局等の確認を経た上で、額が確定し、請求書を提出した後に振り込まれる流れになります。そのため、事業を企画・実行してからお金が振り込まれるまでの期間が長いという特徴があります。国の会計年度は毎年4月1日に始まり、翌年3月31日に終了します。そのため、3月に事業が終了し、実際にお金が振り込まれるのは4月というケースが多いです。
多くの事業の場合、事業を実施する前にキャッシュが必要であることが多いです。補助金については、上記のとおり、事後的に振り込まれる形になりますので、その間の繋ぎ資金を、金融機関から融資をしてもらう等のキャッシュフローの対策が必要となります。補助金をキャッシュフロー対策としてしまう場合、この流れについて留意すべきです。
コロナ対策の補助金の場合、上記の例外規定(=前払い)が可能な旨を記載する場合がありますが、「原則は」後払いである点に留意が必要です。原則を外れることを嫌うのが補助金という制度であることを留意すると、補助金申請のタイミングでその原則を破る行為を審査する側がどう判断するかという視点も必要となります。
補助金の会計処理は?
補助金は、通常の資金調達とは異なる会計処理が必要になります。融資で入金があった場合、仕訳のタイミングで「借入金」という勘定項目として処理し、貸借対照表(B/S=バランスシート)に表記される形になります。補助金を会計処理の中で仕訳する場合は、一般的には「雑収入」として計上することになります。補助金は一時的には売上(収益)として計上されることに留意が必要です。キャッシュフローが既に回っているビジネスモデルの場合、補助金はあくまで「臨時的な売上」と整理することができますが、一度売上として認識してしまうと、その売上がなくなってしまうのは、経営者にとっては恐怖でしかありません。次期の経営計画を立てる際に、売上を立てることが重要なビジネスであり、補助金への依存度が大きい場合、「補助金=その会社のビジネス」となってしまい、必然的に依存性が高いビジネスになってしまいます。公共向けのサービスを提供している会社の場合は異なりますが、あくまで補助金は一つのプロジェクトに対する支援となりますので、キャッシュフローが見えないビジネスに対して、補助金を前提に事業計画を立てることは、あまりおススメしません。いずれにしても、補助金は「臨時的な売上」と強く認識することが必要になります。
補助金でも「手出し」はある
補助金の中では、「補助率」という言葉を見かけます。これは、補助金が入る割合の話であり、例えば補助率2/3の場合、1/3の自己負担金が必要となります。銀行で運転資金を借りる場合や、投資家から事業全体について調達を行う場合とは異なり、あくまでプロジェクトベースに対して、自己負担額があるという認識は必要です。中には「補助率100%」という補助金もありますので、補助金の利用を考える場合、その制度の補助率について留意が必要となります。
また、補助金の対象となる経費の中に「補助申請のための書類整理をする人件費」という項目は存在しません。補助金ごとに補助対象経費が設定されており、補助対象外の経費については自己負担となります。自己負担、即ち手出しが存在しますので、補助金の金額で全て賄うことを考えてしまうと、事業計画そのものが狂ってしまうことに注意が必要です。
おわりに
補助金と直接金融・間接金融を比較されると「現金が入金される」という結果は同じですが、「着金のタイミング」「会計処理上の仕訳」では、上記のように異なる点が存在します。特に着金のタイミングについては、キャッシュフローを考える上で、非常に重要なポイントです。また、自己負担をどのように読み込むかでも、その補助事業を有効に使えるかどうか異なります。補助制度を利用する場合、これらの違いを認識することで、より上手く補助金を活用することが可能となります。
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