後継者不在率57.2%まで改善|M&A時代に変わる事業承継と地域格差の現実
2022年11月、帝国データバンクは「全国企業『後継者不在率』動向調査(2022年)」を公表しました。この調査によると、全国の後継者不在率は57.2%となり、調査開始以来初めて60%を下回る結果となっています。
一見すると、事業承継を取り巻く環境は着実に改善しているように見えますが、その内訳を詳しく見ると、承継の「方法」や「地域」によって状況は大きく異なります。特に注目すべきは、親族承継が減少する一方で、M&Aなど第三者への承継が初めて2割を超えた点です。
本記事では、全国データの変化を整理したうえで、中国・四国地域における後継者不在率の実態や地域間格差、そしてM&A増加が示す事業承継の構造変化について解説します。「自社の承継はまだ先」と考えている経営者にとっても、今後の選択肢を考えるヒントとなる内容です。
目次
記事のポイント
- 全国の後継者不在率は57.2%で、調査開始時より初めて60%を下回る。
- 島根県・鳥取県・山口県では依然として後継者不在率は高止まり。
- 業種別では依然として「建設業」の後継者不在率が高く63.4%だが、改善傾向。
- 後継者の就任経緯ではM&A等による事業承継が初の2割超え。
全国では急速改善、中国地域では依然として課題
後継者不在率は57.2%まで低下、過去最低を更新

2022年11月に帝国データバンクが公表した「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」では、2022年の後継者不在率は、57.2%となりました。
これは2011年の調査開始以降、過去最低となり、初めて60%を下回り、5年連続で改善したこととなります。
調査では、コロナ禍で自社事業の将来性に改めて向き合った中小企業が多い中で、地域金融機関をはじめ、事業承継の相談窓口が普及し、事業承継を支援するメニューが全国的に整ったことが大きく寄与したとされています。
島根県・鳥取県は依然として高水準、全国ワースト水準

出典:帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」
都道府県別のトップ10を見ると、島根県は75.1%と全国で最も高く、次いで鳥取県が71.5%と、2番目に高くなっています。
島根県については、前年の72.4%よりも悪化しており、事業承継課題の深刻さがうかがえます。山口県も65.3%で全国8番目となっていますが、前年の71.0%と比較して改善しています。
下位10位では、三重県が後継者不在率29.4%と、驚異的な数値になっています。10社に7社は後継者が決まっている状況であり、上記の島根県とは対照的な状況です。
改善の理由として、「地域金融機関等の密着支援」「経営・商圏が比較的安定している企業も多い」ことが挙げられています。
都道府県別に見る後継者不在率と地域間格差
島根県・鳥取県は依然として高水準、全国ワースト水準
中国・四国地域の直近の後継者不在率の推移は以下のとおりです。

(出典)帝国データバンク「後継者不在率動向調査」を当社で加工
中国地域では、山陰(鳥取県・島根県)は高く、山陽(岡山県・広島県・山口県)は相対的に低くなっています。
その中でも、島根県のみ上昇傾向です。四国地域では、徳島県・香川県が上昇傾向となっています。これまでの後継者不在率は全国的に高い状況でしたが、地域間でも格差が出るようになりました。
業種別でも改善、「建設業」が依然として高い傾向

(出典)帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査(2022年)」
業種別の後継者不在率では、全業種で前年を下回って過去最低となり、かつ、70%を下回っています。不在率が高い順では、建設業(63.4%)、サービス業(62.2%)、不動産業(57.5%)となっています。
M&Aによる事業承継が増加、承継方法の転換点に

後継者の就任経緯では、「同族承継」の割合が34.0%と前年と比較して下がる一方で、「内部昇格」「M&Aほか」の割合が上昇しています。
特に「M&Aほか」は、調査開始以降初めて2割を超えており、第三者への承継割合が増加していることが分かります。
事業承継は親族に継ぐことが当たり前の時代から、社内での内部昇格や、第三者に引き継ぐことが選択肢となる時代へと変化しつつあります。
おわりに
全国的には後継者不在率が改善し、事業承継を巡る環境は確実に変化しています。しかしその一方で、地域別に見ると、鳥取県・島根県・山口県など依然として高い地域もあり、事業承継の課題は「全国一律」では語れない段階に入っています。
特に、親族承継を前提としない内部昇格やM&Aといった承継方法が増加している点は、中小企業にとって大きな転換点です。事業承継は「いつか考える問題」ではなく、経営戦略の一部として早期に検討すべきテーマになりつつあります。
今後は、地域経済の特性や業種特性を踏まえたうえで、どの承継方法が自社にとって現実的なのかを見極めることが重要になります。後継者不在率の改善が続くかどうかは、行政・金融機関・専門家による支援だけでなく、経営者自身が早い段階から選択肢を持てるかどうかにかかっています。
事業承継やM&Aは、企業の存続だけでなく、その後の成長を左右する重要な意思決定です。地域ごとの実情を正しく理解し、自社に合った承継の形を検討することが、これからの中小企業経営において欠かせない視点となるでしょう。
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クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
URL:https://cregio.jp/
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