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コラム COLUMN

クラウドファンディングで広がる資金調達の可能性、M&A・事業承継との関係性

「クラウドファンディング」により資金調達の可能性が広がっています。従来、資金調達の手段は金融機関を通じた「融資」や、投資家・VCから出資を募る「投資」といった方法が一般的でした。近年は「クラウドファンディング」という概念が広がり、資金調達の手段が多様化しています。改めてクラウド・ファンディングの概要を説明し、M&A・事業承継との関係について考察しました。

記事のポイント

  • クラウドファンディングは「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」の造語。インターネットを介して不特定多数の人々から資金調達を行うことを指す。
  • クラウドファンディングには「寄付型」「購入型」「融資型」「株式投資型」の4つのタイプが存在。それぞれリターンが異なる。
  • 目的に応じて資金調達の手段を選ぶことが重要。M&A・事業承継では借入や資本政策の視点で注意が必要。



クラウドファンディングとは?

クラウドファンディング(Crowdfunding)の定義について、クラウドファンディング大手であるCAMPFIREによると、<「群衆(クラウド)」と「資金調達(ファンディング)」を組み合わせた造語で、「インターネットを介して不特定多数の人々から少額ずつ資金を調達すること>と定義されています。(出典:CAMPFIRE「クラウドファンディングとは?」)

資金調達の手段としては、地域では通常では、金融機関から借り入れを行う「融資」という形態が一般的です。近年は、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から出資を募り資金を調達する「投資」の存在も大きくなりました。クラウドファンディングは新しい資金調達の手法として注目されています。

クラウドファンディングの大手企業

クラウド・ファンディングについては、日本国内大手としては「CAMPFIRE」「READYFOR」「Makuake」の3社が挙げられます。

株式会社CAMPFIRE(2011年設立)が運営。「一人でも多く一円でも多く、想いとお金がめぐる世界をつくる。」をミッションに掲げ、グループサービスとして融資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Owners」、株式投資型クラウドファンディング「CAMPFIRE Angels」等も運営。

READYFOR株式会社(2014年設立)が運営。「誰もがやりたいことを
実現できる世の中をつくる」をビジョンに掲げ、法人向けに「READYFOR.Biz」も展開。

株式会社マクアケ(2013年設立)が運営。「世界をつなぎ、アタラシイを創る」をミッションに掲げる。サイバーエージェントの新規事業として立ち上げ、2019年に上場。


また、日本国内だけでなく、海外でもKICSTARTERという有名なクラウドファンディングサイトが存在し、2009年にアメリカで設立されたKICSTARTER社が運営しています。このように世界的にもクラウドファンディングという資金調達手法が広がっています。



クラウドファンディングの4つの種類

クラウドファンディングには、主に「寄付型」「購入型」「融資型」「株式投資型」といった4つの類型が存在します。

寄付型

クラウドファンディングサイトで支援を募り、支援者から集めた資金を「寄付」という形で、支援を受けたい者に資金が提供されます。寄付という形態であるため、基本的にはリターンはありません。社会貢献的な要素が強いプロジェクトに馴染むタイプとなります。支援者は寄付金控除等の税制優遇を受けることができることも特徴です(一定の要件あり)。

購入型

クラウドファンディングサイトで支援を募り、支援者はリターンとして支援金額に応じた商品やサービスを受け取る形になります。そのため、資金調達というよりは「事前購入」という性格が強く、まだ存在していないプロダクト・サービスを開発前から事前に購入顧客を募り、その資金でプロダクト・サービスを製作・提供することが可能となります。開発しようとしているプロダクト・サービスが世の中にどの程度ニーズがあるか把握できるためテストマーケティングとしても活用できます。

支援には「All or Nothing型」と呼ばれる目標となる支援金額に達した場合にのみプロジェクトが実施される場合と、「All in型」と呼ばれる目標となる支援金額に達しなくてもプロジェクトが実施されるタイプの2種類があります。

融資型

クラウドファンディングサイトで支援を募り、複数の支援者から小口の資金を集めて大口化し、支援を受けたい者が借り手となり、クラウドファンディングを運営する企業が、融資という形で資金を提供します。支援者は金利によりリターンを受け取ることができます。融資という形態であるため、支援者にとっては、借り手企業が返済できない場合、投資した資金(元本)が戻ってこないリスクがあります。

株式投資型

クラウドファンディングサイトで支援を募り、支援者は投資を行う代わりに、対象となる株式会社の未公開株式を受け取ることができます。支援した会社がIPO・M&Aに至れば大きなリターンを期待することができます。また、支援者はエンジェル税制等の優遇措置を受けることができます(一定の要件あり)。

ただし、「1人の投資家が1つの会社に投資できる金額は年間50万円まで」「同一の会社が資金調達を行うことができる金額は、1年間に1億円未満」といった金融商品取引法の規制があるため、株主が小口化・分散化しやすいという特徴があります。



ベンチャーへのクラウドファンディング投資は広がるか?注目される「FUNDDINO MARKET」

株式投資型クラウドファンディング「FUNDINNO(ファンディーノ)」等を運営する日本クラウドキャピタルは、2021年10月26日に財務省関東財務局において第一種金融商品取引業への変更登録が完了したことに加え、ベンチャー株式のセカンダリーマーケット「FUNDINNO MARKET(ファンディーノマーケット)」創設準備を進める旨のプレスリリースを打ち出しました。

(参考)日本クラウドキャピタル「日本初、ベンチャー企業の株式がオンラインでいつでも注文可能に。第一種金融商品取引業への変更登録が完了。

リリースでは、「日本証券業協会が提供する株主コミュニティという制度を活用し、個人投資家がいつでもベンチャー企業の株式を、オンラインで注文する事が可能となる国内初のサービス」であり、「法人投資家の利用への拡大も順次進める」とされています。「株主コミュニティ」の制度は、日本証券業協会のHPにおいて「地域に根差した企業等の資金調達を支援する観点から、非上場株式の取引・換金ニーズに応えることを目的として、2015年5月に創設された非上場株式の流通取引・資金調達の制度」と解説されています。

同じくリリースにおいて、上記サービスの対象について「FUNDINNO MARKETでは、ファン投資家の資金と応援により、IPOやM&Aなどのエグジットを目指すベンチャー企業だけでなく、地域経済を支える中小企業や社会課題解決を目指すソーシャルベンチャーなどが活用いただけます。」と記載されています。依然として金融商品取引法の規制がある中で、株主コミュニティといった制度や、クラウドファンディング経由でのベンチャー企業への投資の浸透がどこまで進むか、今後の展開に注目が集まります。


クラウドファンディングとM&A・事業承継

クラウドファンディングの中でも上記のとおり様々な種類が存在する中で、M&A・事業承継においてどのように捉えるべきでしょうか。

M&A・事業承継を検討する経営者にとって、「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングについては、資金調達というよりはテストマーケティング的に利用することが有効です。事業を考える中で、「寄付型」「購入型」のクラウドファンディングを実施することで、展開しようとする事業にどういった顧客層が関心を持つかを把握することができます。「寄付型」「購入型」は実施したとしても借入金が増えたり、株主が増える訳ではありません。例えば、事業承継の後継者が新事業展開を企画する中で、クラウドファンディングをすることでテストマーケティングをしてみるといった利用の仕方が考えられます。

「融資型」「株式投資型」については、M&A・事業承継を検討する経営者にとっては注意が必要です。「融資型」は借入と同じになるので、他の金融機関の条件等も比較して、なぜ融資型クラウドファンディングを実施するのかを見極める必要があります。あくまで借入であることを意識して活用を検討する必要があります。「株式投資型」については、金融商品取引法の規制があり、株主が小口化・分散化しやすいという傾向があります。M&Aを検討する際に、株式が集約化しているかどうかは重要なポイントです。小口株主の株式の売却は、当然小口株主の同意が必要なため、「株主が増えすぎた場合、M&A・事業承継をスムーズに行えるか」ということを考えないといけません。現実的に考えて、M&A・事業承継を考える経営者にとって、「株式投資型」のクラウドファンディングを利用することは難しいケースも多いと考えます。



最後に

クラウドファンディングの4つのタイプとM&A・事業承継における論点について整理しました。今後も新しい資金調達の手段が増えていくことが想定されますが、M&A・事業承継に限らず、重要なのは「目的」を定めて、それぞれの手段の「メリット・デメリット」を見定めることです。テストマーケティングの視点では「寄付型」「購入型」でクラウドファンディングを通じて、先に事業の原資を集めることは潜在顧客を見える化するためにも有効です。ただし、「融資型」「株式投資型」の場合は、借入を増やすことや、株式が分散することについて注意を行う必要があります。

日本クラウドキャピタル社等のサービスが広がることで、ベンチャー企業においてもクラウドファンディングにより多様なファイナンスの可能性が広がりますが、いずれにしても、目的を持って資金調達の方法を選択することにより、事業成長のチャンスを見出すことが可能となります。

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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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