コラム COLUMN

インタビュー

「世の中にないものをつくる」強い個の集団であり続けることが組織力の源泉、世界を駆ける半導体搬送ロボットメーカー|ローツェ株式会社

広島県福山市に本社を置き、半導体製造で使用するウエハ搬送ロボットの製造を中心にグローバルで事業を拡大させるものづくり企業、ローツェ株式会社

「世の中にないものをつくる」を理念として掲げ、力を持つエンジニアが共創する場であり続けることで、組織としての力を強化。ローツェのこれまでの歩みや、事業承継の経緯、成長を可能とした理由について代表取締役社長 藤代祥之氏にインタビューしました。

力あるエンジニアが集まり、新しいものをつくる場として誕生

ローツェ外観

ローツェは主に半導体製造工場で使われるウエハを搬送するロボットを製造しており、全世界の半導体工場で使われています。現在当社の取締役相談役である崎谷 文雄が1985年に創業しました。崎谷が岡山に本社を置く半導体製造装置メーカーに勤めていたとき、モーターを制御する新しいコントロールの仕組みを思いつきました。

製品化を提案しましたが、それが認められなかったので、自ら会社を立ち上げたのが、設立のきっかけです。現在の主力であるウエハ搬送ロボットは、当初、本人としてはそれほど価値を感じていなかったと聞いています。「搬送ロボットをつくって欲しい」という依頼が増え、元々はコントローラーの会社として立ち上げたのが、徐々にロボットをつくる会社に変化していきました。

現在は、ウエハ搬送ロボットの無塵搬送技術を応用する形で、FPD(フラットパネルディスプレイ)搬送ロボットを開発し、今後の市場成長を見据えて、ライフサイエンス関連装置の開発も手掛けています。

ローツェの社是である「世の中にないものをつくる」が生まれたのも創業当時です。まだ小規模だったローツェが資本力のある大企業に打ち勝つことを考えたとき、世の中にない新規性が高いものをつくれば、メディアの注目を集めることができる。

技術に投資することで、効率的に商品の宣伝が可能になる。だから、世の中にないものをつくろう、というのが最初の思考プロセスでした。この考え方は今でも組織文化として根づいています。「我々はローツェだから、他の真似はしたくないよね」という感覚を多くの社員が持っています。

「ローツェ」という名前の由来は、山の名前です。世界最高峰エベレストの横に位置し、エベレストが高いがゆえに目立ちませんが、お客様をエベレストと見立て、お客様がNo.1(エベレスト)になって頂くために、我々はその隣に寄り添い、同じ山の土台を共有しながら、支えるという意味を込めています。

漢字をあてると「楽孜」となります。「楽」=たのしい、おおらか、たやすい、「孜」=勤勉、すぐれた、という意味があり、崎谷としては、「ものづくりエンジニアの楽園」がつくりたいと思っていました。力を持ったエンジニアが集まり、一緒になって新しいものをつくる場、それがローツェです。

「強み」は高品質、理念を軸に自律的なものづくり文化が形成

ローツェ取り扱い製品一覧

ローツェの一番根っこにあるのは「製品力」です。我々はメーカーなので「いかに高品質な製品をつくるか」という点で、現在は世界中のお客様から一定の評価をいただいています。ローツェは早いタイミングで海外進出を行いました。

当時から品質の高い設計・製造ができるというベースはありましたが、十分にその価値を海外のお客様に訴求しきれていない時期もありました。ただ、一度、海外のお客様に使っていただけると、その良さを実感していただき、それが後押しになり、ご愛顧いただくようになり、現在もシェアを伸ばしています。

よく「ローツェの価値を体現する仕組みは何か?」と聞かれますが、正直、私も完全に整理し、理解できているとは言えません。「ローツェのロボットは壊れない・壊れにくい」といったお客様の声や、データからも製造品質が高いことは証明されています。ただ、一体何があってその品質を創り出せているのか、自分で納得がいくまで調べ尽くせていない、と言い換えた方が良いのかもしれません。

ベトナム工場では、他社と比較して、品質チェックについては十分に時間をかけて実施していますし、内製化と垂直統合型のこだわり、素材加工から製造の最終工程までをローツェグループ内で実施しています。「設計品質が高い」という点は、高品質の製品を創り出す要因の一つかもしれません。

普通の製品は、経年劣化して性能が落ちてくるのですが、ローツェの商品は耐久性が高いことで評価されています。設計段階から、細かく設計し、パーツの選定にこだわり、「クリーン搬送」と「壊れにくさ」をものすごく意識して設計しています。内製化にもこだわっています。

設計・製造・販売・アフターサービスはグループ内で完結しています。海外の取引先も多くありますが、顧客層の広いコントローラー事業以外は、グループが直接販売しています。お客様の声を聞かないとつくれないですからね。内製化によるコスト削減という意味ではなく、高品質にこだわるために重要なことだと思っています。

ただ、そのノウハウをテキストにまとめて、門外不出のマニュアルがある訳でもなく、共有や仕組み化を徹底している訳ではありません。社員一人一人がノウハウを持ち、業務の中で勉強し、研鑽していく。グループの経営においても同じことが言えます。

ローツェでは、グループ子会社ごとに組織文化なども若干違います。半導体業界では、お客様が求めるスピードがものすごく早いので、求められる品質に差はあるものの、台湾・韓国はビジネススピードが早いです。同じ文化圏での顧客折衝、各子会社のモチベーションを高く維持する意味でも、なるべく現地の方が社長になる方針にしており、大きな権限を持たせています。

「世の中にないものをつくる」この理念だけはグループに参加するメンバー全員が共有しています。その理念が軸になっているからこそ、立場関係なく意見を言い合える関係が構築されている感覚はありますね。

会議室に呼ばれ事業承継、想いだけでは理解が足りない

ローツェ代表取締役社長 藤代祥之氏

私は崎谷相談役からすると娘婿にあたります。元々、京都に住んでいました。子育てのタイミングで実家である岡山県井原市に帰ると決めました。

仕事は決めておらず、地元にどんな会社があるか分からないままでしたが、そのタイミングで、崎谷相談役が京都に来て「1度ローツェを受けてみれば」と提案してくれました。無事、試験にも合格し、2006年秋にソフトウェアエンジニアとして入社しました。

入社してから3年間はソフトウェアエンジニアとして勤めました。ある日、急に会議室に呼ばれ「ソフトウェア製品販売のビジネスを新規に開始するから、部長をやってくれ」と言われました。ちょうどリーマンショックの後で、取引をしていたアメリカのソフトウェア販売会社が、財務状況が悪化したので出資して欲しいと言われ、ローツェとして、出資する代わりに代理店の権利をくれと要求したことで、ソフトウェア販売ビジネスが社内に立ち上がりました。

3名の社員が転籍する形で、私の部下となりましたが、私自身は、そのソフトウェアをローツェ製品に組み込む、エンジニアという立場だったので、ソフトウェア販売は経験がありませんでした。ちょうど29歳のときでしたが、10歳上・20歳上の部下から色々教えを請いながら、ソフトウェア販売事業を経験することができました。

再び3年が経ったタイミングで、同じように会議室に呼ばれ、今度は専務になりました。2年間専務を務めた後、同じように会議室に呼ばれ、社長交代を告げられました。専務を打診され、役員になった時から、どこかで社長へのレールを敷かれた感覚もあったので、社長就任自体には、それほど驚きませんでした。

経営者という立場になるにあたり、ローツェは既に組織として出来上がっていたので「必要に応じて、これまでを壊して、次に向けて創りたい」という想いはありました。そういう想いって大体失敗しますよね(笑)。

社長に就任したばかりで全体像が見えていない中で、理解が浅かったんだと思います。私が部長だった頃を思い出しても、もちろん当時も必死に頑張っていましたが、今振り返ると「よくあんなクオリティでやっていたな」と思います。

専務の時も、社長の時も、社長になり8年経った今でも、昔を振り返るとそう思う時があります。勢いだけでもダメですし、色々と分かってないことがあっただろうなと思います。新しく就任した人は「何か変えよう」と意気込むと思うのですが、何を変えて、何を変えないか、変えるとすればどう変えるか、みたいなところに思慮が足りないし、自分もそうだった気がしますね。

当たり前のレベルを上げる、ものづくりを志向する強い個が集まることで組織が強化

ローツェ代表取締役社長 藤代祥之氏2

半導体業界の力強さも支えとなり、社長就任時に掲げていた売上目標の1,000億円が見えるところまできました。数字だけでなく、本質的なところでお伝えすると、ローツェの社長としてやらないといけない一番重要なことは「当たり前の感覚を引き上げること」だと思っています。

会社で働く従業員一人一人が「何を当たり前と感じるのか」が、その会社の力だと思います。お客様からのお問合せに、3日かけて回答するのが普通と思う会社と、レスポンスを返すのは2時間以内にすべきという会社もあり、その基準をどこに置くのか、なにを普通と感じるのかが、会社の文化であり、力です。少しでもいいので、設計・製造・品質、全てにおいて当たり前を引き上げていく。そうすることで、強い会社となり、生き残ることができる。

ローツェはどこまでいっても「個の集団」です。ローツェという場で研鑽を磨き、能力を上げ、その結果、組織の力が強くなっていく。従業員たちは能力があるので、極端な話、例えローツェが明日なくなったとしても、他の会社に行くことができるので困らない、という集団であってほしい。

ただ、ローツェという場にいると、能力あるメンバーと、もっと面白いことができる。だから一緒にいる。ローツェは、そういう能力のある人間が面白いことをするためにたまたま集まったという場であって欲しいなと願っています。そういう感覚でいると経営者としての意思決定も思い切ることができます。従業員は明日ローツェがなくなっても生きていけると仮定すると、大胆な意思決定ができる。

半導体は変化が激しい業界です。利益の確実性が高い未来だけに投資していると成長できません。よくも悪くも変化するので、そこにどう立ち向かうか。絶対守らないといけないものを抱えてしまうと、大きな意思決定ができなくなり、遅れてしまう。逆説的ですが、半導体業界で生き抜いていくためには、そういう感覚だと思います。だから成長していける。

最近はグループの中でも、ベトナムの従業員数が増えています。一方で日本のエンジニアは、賃金も高く、本社が福山市にあるせいかもしれませんが、なかなか採用することが難しくなっている印象です。

グローバル環境が変化する中で、日本と海外の関係性も変わってきています。コロナ禍までは、ベトナム子会社の役割は、日本側が設計したものを、図面にすることでした。コロナが明け、ベトナムのメンバーが日本にきて一緒に研修する機会をつくりましたが、いずれも意識が高く、成長したいという意欲が伝わってきます。

彼らの方が、生産現場にも近いので、期待以上に成長し、レベルが上がったことを実感しました。現在は、日本とベトナムが一緒に仕事ができる体制に変わりつつあります。懸念としては、日本のエンジニアはどう食べていくのかということです。給与水準が2国間で比較したとき、まだベトナムの方が低い一方で、それぞれのパフォーマンスが近づいてくる。ローツェはグローバルな会社であり続けたいと思っています。

その中で、ローツェ・ジャパンとしてどのような付加価値を出していくか。先ほどお伝えしたとおり、どこまでいっても個の戦いなので、フラットな競争になった時に、ギラギラした目をした若いベトナムのエンジニアや、勢い溢れる中国勢にどう勝っていくのか。これからの日本のエンジニアが世界を相手に切磋琢磨する姿に期待しています。

M&Aでは技術力を重視、企業文化との親和性

我々がM&Aで重視しているのは技術です。対象とする会社が保有する特許や、テクノロジーを大事にしており、我々の事業と高いシナジーが見込めるのであれば、積極的に活用したいと考えています。M&Aが目的ではないので、技術を大切にする企業文化や、グループになることで一緒にできるような何かがあることが大事です。

直近、イアスという東京都の半導体工場で使用される不純物分析装置の製造を行う企業にグループに入っていただき、その時は資本政策のコンサルティング会社としてクレジオ・パートナーズさんにもご協力いただきました。イアスは非常に稀なケースだと思います。まだPMIの途中ではありますが、企業文化や事業において非常に親和性があると思っています。

学ぶべきところを学ぶ、グローバルで活躍することで地域貢献に繋げる

半導体という業界にいる我々の感覚からすると、地域か、グローバルかという問いはあまり関係ありません。本当の意味で地域をよくするためには、グローバルで活躍し、広い世界を見た上で、地域をどうしたいかを考える必要があるのではと思います。我々もグローバルで成果を挙げ、結果として地元に貢献できるといいなと考えています。

もし事業成長のために海外市場への展開に悩んでいる経営者がいたら、迷わず「行け」と言いますね。グローバルを「世界」という解像度で捉えている限りは難しいですね。ビジネスにおいて、どこまでいっても人の繋がりは非常に重要です。

「世界」ではなく、アメリカの中でも「カリフォルニア」、カリフォルニアの中の「サンノゼ」とか、自分で足を運んで、現地のビジネスパーソンと繋がり、「世界」の解像度を上げていかないと、自分の視野が狭くなってしまいます。

事業承継については、千差万別ですね。私は承継した立場ですが、先代の考え方は様々なので、承継する側はコントロールできないと考えています。ただ、先代の経営者は承継するまでは経営を続けていたので、学ぶべきところはたくさんあると思います。変化は必要なので、変化していくのですが、先代から何をエッセンスとして学ぶかが事業承継において非常に重要だと思います。

企業情報|ローツェ株式会社

会社名 ローツェ株式会社
代表者名 代表取締役社長 藤代 祥之
創業年 1985年3月
資本金 982百万円
従業員数 239名、連結:3,894名(2023年11月末現在)
本社所在地 広島県福山市神辺町道上1588-2
事業内容 半導体・FPD関連装置・ライフサイエンス関連装置・モーター制御機器等の自動化装置の開発設計・製造・販売
HP https://www.rorze.com/

中国・四国エリアのM&A・事業承継事例

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
URL:https://cregio.jp/

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