70歳からの起業!M&A後の第二の人生とシニア起業の可能性
「事業承継やM&Aを終えた経営者は、その後どのように人生を過ごすべきか?」これは多くの経営者に共通する大きなテーマです。
会社は経営者にとって人生そのものであり、引退後に生き甲斐を失ってしまうと感じる方も少なくありません。近年は経営者の高齢化が進み、事業承継やM&Aの件数が増える中で、承継後のキャリアやライフプランをどう描くかが重要な課題となっています。
本記事では、その一つの答えとして注目される「70歳からの起業」という選択肢に焦点を当て、M&A後の過ごし方やシニア起業の可能性についてわかりやすく解説します。
目次
M&Aした後、経営者はどう過ごすべきか?
承継方法によってその後の人生は変わる
事業承継には大きく3つのパターンがあります。
- 親族内承継
- 従業員承継(MBO)
- 第三者承継(M&A)
どの方法を選ぶかによって、先代経営者が承継後に会社とどう関わるかは大きく変わります。
親族内承継・従業員承継は「段階的な引退」がしやすい
社内に後継者を持つケースでは、事前に育成を進めておくことが多く、先代が会長職に就任して一定期間サポートするなど、自然な形でバトンタッチができるのが特徴です。
- 会長として見守る
- 必要に応じて助言する
- 時期を見て完全リタイア
といった、緩やかな承継が実現しやすいパターンです。
第三者承継(M&A)は「関与度合いが交渉で決まる」
M&Aの場合、株主が変わるため、先代がどこまで会社に残るかは買手企業との交渉によって決まるのがポイントです。
- 一定期間アドバイザーとして残ってほしい
- 会長職として引継ぎをお願いしたい
- すぐに経営から離れてほしい
など、案件によって求められる関わり方は異なります。
引継ぎ期間も短期(数ヶ月)/中期(半年〜1年)/長期(数年)と幅があり、契約時の調整が非常に重要になります。
関連記事:M&A引継ぎ期間の目安|短期・長期パターンと経営者が注意すべき点
共通するのは「いずれは経営から離れる」という現実
どんな承継方法でも、最終的に先代が経営から退くタイミングは訪れます。
会社は経営者にとって人生の中心であり、「会社が生き甲斐だった」という方ほど、引退後に心の空白が生まれやすいものです。
当社の支援事例でも、承継後の過ごし方はさまざまです。
- 事業売却後すぐに新しいビジネスを始めた方
- 趣味だった旅行に時間を使い始めた方
- 家族との時間を大切にするライフスタイルへ切り替えた方
いずれも正解であり、重要なのは自分がどう生きたいかを事前に決めておくことです。
人生プランは「株価・退職金」にも影響する
特にM&Aの場合、
- 退職後にどれだけ資金が必要か
- 再挑戦するか、ゆっくり過ごすか
といった人生プランによって、株価評価や退職金の設計に影響が出ることがあります。
後になって「もっと準備しておけばよかった」と後悔しないためにも、M&Aの検討段階から承継後の人生をセットで考えることが大切です。
提案:まずはセミリタイアして自分を取り戻す
どのように過ごすかは人それぞれですが、当社として一つ有力な選択肢として提案したいのが、一旦経営から離れ、セミリタイア期間を設けたうえで再び「起業」という新しい挑戦を選ぶことです。
長年の経験・人脈・判断力を備えたシニア経営者だからこそ、70代からの起業は、むしろ最も成功確率が高いタイミングになり得ます。
70歳から起業は非常識?おススメする理由
経営者としての経験・ネットワークを活かす
これまで深く経営に関わってきた方には、経営者として特有のスキルとネットワークを持っています。
市場の変化が激しい昨今では、情報をキャッチアップするだけでも大変ですが、経営者としての経験による大胆な決断力と、足りないリソースを補うネットワークを活かすことができれば、全く何もない状況から起業するケースと比較して、成長速度が早まることが予想されます。
ただし、M&Aの場合、最終契約において競業避止義務が課せられた場合、M&A前に携わったビジネスと、全く同じビジネスはできなくなることに注意が必要です。
M&Aで獲得した資金を活かす
M&Aによって得た資金は、その後の人生設計やビジネス展開において大きな武器となります。単に預金として保有するのではなく、適切な運用や再投資を行うことで、さらなる成長につなげることが可能です。
例えば、資産管理会社を設立して運用基盤を整える方法や、売却資金をもとに新規ビジネスへ投資し、第二の事業を立ち上げる方法があります。ゼロから資金を集めて起業する場合と比べ、資金面での余裕がある点は大きなアドバンテージです。
適切な戦略を立てれば、M&Aで得た資金は「守る資産」にとどまらず、「攻めの資産」として活用できるのです。
高齢起業の方が成長できる?
American Economic Association(米国経済学会)が発表した「Age and High-Growth Entrepreneurship」というレポートを紹介した記事(ダイヤモンド社 ハーバード・ビジネス・レビュー「起業家として成功したいなら若いうちに挑戦すべきという思い込み」によれば、起業と年齢には意外な関係があることがわかります。
同レポートでは、米国で数年間にわたり起業した創業者の年齢を分析。その結果、創業から5年間で急成長を遂げた上位0.1%のスタートアップの創業者は、平均年齢が45歳でした。さらに、50代後半までは起業年齢が高いほど成功率が上がる傾向も示されています。
もちろん「年齢が高ければ必ず成功する」とは言えませんが、この調査は経験や人脈を積み重ねたシニア起業家こそ、大きな成長を実現できる可能性を秘めていることを示唆しています。
高齢起業向け支援制度
40歳以上の方が、起業する場合、従業員の雇い入れの経費を補助する制度を厚生労働省が設けています。起業時の年齢が60歳以上の場合、助成額上限200万円(助成率2/3)、40歳~59歳の場合、助成額上限150万円(助成率1/2)となっています。こういった制度を活用することもおススメです。
(参考)厚生労働省「中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)」
日本政策金融公庫でも、「女性、若者/シニア起業家支援資金」というメニューがあり、「女性または35歳未満か55歳以上の方であって、 新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方」を対象に起業を支援するための融資制度を設けています。
(参考)日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」
上記の他、シニア起業を対象とした支援制度を都道府県庁や市区町村が設けている場合もあります。
おわりに
当社では、M&Aによって事業承継を終えた経営者の方々と多く接してきました。中には「これからどう過ごすべきか」と悩まれる方もいれば、「ワシはこういう新しいビジネス考えとるんや」と前向きに歩み出す方もいらっしゃいます。
M&A後の人生は、自ら新たに事業を立ち上げるだけでなく、これまで培った経験やネットワークを若手起業家や後継経営者にシェアすることも、立派なビジネスや社会貢献につながります。
事業承継を終えると、これまで人生そのものであった「会社」との関わりが薄れ、生き甲斐を見失ってしまうこともあります。だからこそ、経営者として培った知識・経験・人脈を有効に活用し、新しい挑戦や社会との関わりを持つことが、充実したセカンドライフを築くカギとなります。
M&A後はゴールではなく、新しいスタートです。これまでの歩みを力に変え、次の人生をより豊かに切り拓いていただきたいと思います。
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クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。URL:https://cregio.jp/
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