ものづくり補助金とは?設備投資で使える補助額・対象経費・注意点を解説
設備投資は、生産性向上や新規事業に欠かせない一方で、機械装置やシステム導入にはまとまった資金が必要になります。こうした負担を軽減する制度として活用されているのが、経済産業省が実施する「ものづくり補助金」です。
本補助金は、設備投資を中心に支援対象が広く、上限額も比較的大きいことから、機械・設備の更新やIT投資を検討する中小企業にとって有力な選択肢となります。
本記事では、ものづくり補助金の概要や対象となる投資・経費、申請時の注意点をわかりやすく整理します。
※本記事は2021年3月時点の制度内容(令和元年度補正・令和二年度補正)をもとに作成しています。申請を検討される場合は、必ず最新の公募要領をご確認ください。
目次
記事のポイント
- ものづくり補助金は中小企業者が「設備投資」を行う際に利用できる補助金。
- 令和三年度補正により「低感染リスク型ビジネス枠」が追加。
- 賢い補助金活用のためには事務コストとの比較が必要。
ものづくり補助金の特徴
ものづくり補助金の最大の特徴は、中小企業の「設備投資」を対象としていることです。
設備投資とは具体的に、「機械・装置、工具・器具」や「専用ソフトウェア・情報システム」の購入・構築等を指します。また、補助上限額も1,000万円と比較的に大きいことから、利用しやすい補助金です。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
2020年11月現在において公募中の補助金の正式名称は「令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」となります。
通称として「ものづくり補助金」と呼ばれており、補正予算ではここ数年は毎年度計上されている補助金です。
《参考:ものづくり補助事業公式ホームページ「ものづくり補助金総合サイト」》
新型コロナウイルスに関連した特別対応
「特別枠」による拡充措置(令和元年度・令和二年度)
「令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」における「特別枠」とは、新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために「前向きな投資」を行う事業者に対して、優先的に支援することを指します。「前向きな投資」に当てはまるのは以下の3類型となっています。
【A類型】サプライチェーンの毀損への対応
顧客への製品供給を継続するために必要な設備投資や製品開発を行うこと。
【B類型】非対面型ビジネスモデルへの転換
非対面・遠隔でサービスを提供するビジネスモデルへ転換するための設備・システム投資を行うこと。
【C類型】テレワーク環境の整備
従業員がテレワークを実践できるような環境を整備すること。
上記に該当する場合、補助率の上限がA類型の場合2/3に、B・C類型の場合3/4に引き上げられます。
加えて、「特別枠」の場合、「広告宣伝費・販売促進費」も対象となります。また、「事業再開枠」による支援拡充も行われました。中小・小規模事業者の事業再開を後押しするために、新型コロナウイルス感染拡大予防の投資に対する定額補助(10/10、上限50万円)を別枠で上乗せするものです。こちらは、特別枠で採択された事業者のみが対象となります。
令和三年度補正から「低感染リスク型ビジネス枠」が追加
令和三年度補正予算から「低感染リスク型ビジネス枠」が追加されました。
「低感染リスク型ビジネス枠」は、上記の「特別枠」と似ており、以下の要件に合致する場合申し込むことができます。
・物理的な対人接触を減じることに資する革新的な製品・サービスの開発
・物理的な対人接触を減じる製品・システムを導入した生産プロセス・サービス提供方法の改善
・ウィズコロナ、ポストコロナに対応したビジネスモデルへの抜本的な転換に係る設備・システム投資
以前の特別枠と同じように、「低感染リスク型ビジネス枠」は、補助率が2/3となり、補助対象経費の中に「広告宣伝費」「販売促進費」が対象となる等、支援が拡充されています。
「ものづくり補助金」を「低感染リスク型ビジネス枠」で申し込むべき理由
公募要領に以下の記載があります。
低感染リスク型ビジネス枠の要件を満たす申請は、当該枠で不採択の場合、通常枠で再審査されます。ただ
出典:令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領〔一般型(新特別枠含む)・グローバル展開型〕(6次締切分)公募要領 P6
し、低感染リスク型ビジネス枠の申請が通常枠で採択された場合や確定検査の際に、低感染リスク型ビジネス枠の要件を満たしていないことが発覚した場合等は、通常枠の補助率等が適用されますので、ご注意ください。
こちらは、低感染リスク型ビジネス枠で不採択だった場合、低感染リスク型ビジネス枠の要件を満たしていれば、通常枠で加点した形で再審査となります。一度失敗しても自動的に再申請される形になり、加点も行われているため、採択される可能性は、通常枠で申請するより高くなります。
「ものづくり補助金」の概要
誰が使えるの?補助対象者について
中小企業者・特定非営利活動法人が対象となります。
特定非営利活動法人は、以下の要件を満たすことが必要になります。・広く中小企業一般の振興・発展に直結し得る活動を行う特定非営利活動法人であること。
・従業員数が300人以下であること。
・法人税法上の収益事業(法人税法施行令第5条に規定される34業種)を行う特定非営利活動法
人であること。
・認定特定非営利活動法人ではないこと。
・交付決定時までに補助金の事業に係る経営力向上計画の認定を受けていること。
補助金はいくら?補助上限額・補助率について
ものづくり補助金では、事業類型に応じて補助上限額・補助率が設定されていました。
一般型では最大1,000万円、グローバル展開型では最大3,000万円が上限とされていました。
| 補助上限 | 一般型 | 1,000万円 |
| グローバル展開型 | 3,000万円 | |
| 補助率 |
通常枠・グローバル展開型 |
中小企業 1/2 小規模企業者・小規模事業者 2/3 |
| 低感染リスク型ビジネス枠特別枠 | 2/3 |
何の事業が対象になるの?補助対象事業について
補助対象事業の類型
「令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」は、「一般型」と「グローバル展開型」に分かれています。もう一つ「ビジネスモデル構築型」というタイプがありますが、こちらに関しては少し趣旨が異なります。
一般型は、《中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援》するものとなっています。
グローバル展開型については、海外展開事業が対象となります。海外展開事業は具体的には、①海外直接投資、②海外市場開拓、③インバウンド市場開拓、④海外事業者との共同事業のいずれかになります。
補助対象事業の要件
申請にあたり、以下の要件を満たす必要があります。特徴的な項目のみピックアップします。
○以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加。〇応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること。
○以下に同意の上、事業計画を策定・実行すること。
出典:令和元年度補正・令和二年度補正ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金公募要領〔一般型(新特別枠含む)・グローバル展開型〕(6次締切分)公募要領 P8
・申請時点で、申請要件を満たす賃金引上げ計画を従業員に表明することが必要です。交付後に表明していないことが発覚した場合は、補助金額の返還を求めます。
・なお、財産処分や収益納付等も含め、補助金等の返還額の合計は補助金交付額を上限とします。
何の経費が対象になるの?補助対象経費について
補助対象となるのは以下の経費です。
| 機械装置・システム構築費 | ① 専ら補助事業のために使用される機械・装置、工具・器具(測定工具・検査工具、電子計算機、デジタル複合機等)の購入、製作、借用に要する経費 ② 専ら補助事業のために使用される専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築、借用に要する経費 ③ ①若しくは②と一体で行う、改良・修繕又は据付けに要する経費 |
|
技術導入費 |
本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費 |
|
専門家経費 |
本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費 |
|
運搬費 |
運搬料、宅配・郵送料等に要する経費 |
|
クラウドサービス利用費 |
クラウドサービスの利用に関する経費 |
|
原材料費 |
試作品の開発に必要な原材料及び副資材の購入に要する経費 |
|
外注費 |
新製品・サービスの開発に必要な加工や設計(デザイン)・検査等の一部を外注(請負、委託等)する場合の経費 |
|
知的財産権等関連経費 |
新製品・サービスの開発成果の事業化にあたり必要となる特許権等の知的財産権等の取得に要する弁理士の手続代行費用や外国特許出願のための翻訳料など知的財産権等取得に関連する経費 |
|
海外旅費 |
海外事業の拡大・強化等を目的とした、本事業に必要不可欠な海外渡航及び宿泊等に要する経費 |
|
広告宣伝・販売促進費 |
本事業で開発する製品・サービスにかかる広告(パンフレット、動画、写真等)の作成及び媒体掲載、展示会出展(海外展示会を含む)、セミナー開催、市場調査、営業代行利用、マーケティングツール活用等にかかる経費 |
上記が補助対象経費となります。補助対象にならない経費もございますので、詳しくは公募要領をご参照ください。
いつまでが対象なの?補助事業実施期間・スケジュールについて
一般型とグローバル展開型で分かれていますが、交付決定日を起算日として10~12か月となっており、年度を超えた事業期間となっていることが特徴です。(一般型)交付決定日から10ヶ月以内(ただし、採択発表日から12ヶ月後の日まで)。
(グローバル展開型)交付決定日から12ヶ月以内(ただし、採択発表日から14ヶ月後の日まで)。
申請期間と申請方法
2021年9月時点では、8次公募中であり、申請期間の締切は2021年11月11日(木) 17:00となっています。
申請方法は電子システムからの申請となります。申請するためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウント取得には時間を要するため、早めの申請が必要となります。
中国・四国地域の「ものづくり補助金」採択案件
ものづくり補助金は、実際に中国・四国地域の中小企業でも幅広く活用されています。以下は、過去に採択された事例の一部です。
中国地方ものづくり補助金の採択事例
- 鳥取県:N.K.Cナーシングコアコーポレーション合同会社
- 島根県:有限会社一福
- 岡山県:株式会社瀬戸内クラフト
- 広島県:株式会社櫟
- 山口県:株式会社梅本商会
四国地方ものづくり補助金の採択事例
- 徳島県:‐
- 香川県:株式会社高松花市場
- 愛媛県:有限会社今治空調設備
- 高知県:‐
以下のサイトより、ものづくり補助金を活用した案件を検索し、内容を知ることが可能です。
おわりに
ものづくり補助金は、補正予算の度に計上されてきた実績のある補助金であり、中小企業が機械設備やシステム等への設備投資を検討する際の有力な選択肢の一つです。投資額が大きくなりやすい分野を対象としている点は、本補助金の大きな特徴といえるでしょう。
一方で、申請にあたっては事業計画の策定や各種要件への対応が求められ、採択後も交付決定や実績報告など一定の事務負担が継続的に発生します。補助金額の大きさだけに目を向けるのではなく、こうした事務コストや自社の経営計画との整合性を踏まえたうえで、本当に自社にとって有効な制度かどうかを冷静に見極めることが重要です。
設備投資や事業成長の手段として補助金を活用する際は、制度の内容を正しく理解し、必要に応じて専門家の意見も参考にしながら検討することをおすすめします。
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クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。 URL:https://cregio.jp/
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