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コラム COLUMN

M&A事業承継

機械器具卸売業におけるM&Aでおさえるべきポイント

機械器具卸売業は、製造事業者(メーカー)と小売事業者・ユーザーを繋ぐ重要な役割を果たしており、「自動車」「食品製造」「化学工業」等、日本のものづくり産業において欠かすことのできない産業です。自社が位置する産業に合わせた変化が求められる業態であり、近年は日本のものづくり産業においてもめまぐるしい変化が起こっていることから、その変化に対応するためのM&Aの活用が注目されています。本コラムでは、機械器具卸売業におけるM&Aのポイントをまとめました。

記事のポイント

  • 機械器具卸売業の課題は、「卸売業の高付加価値化」「取引先の業界の影響を大きく受ける」「バックオフィス機能が弱い」「仕入価格の高騰化への対応」。
  • M&Aを通じて「バックオフィスの一元管理」「共同仕入で仕入値を下げる」「グループ全体で支え合う体制を構築」が可能。
  • 地域や業界においてもM&Aが実行されている。

機械器具卸売業界の概要

機械器具卸売業の動向

経済産業省発表の商業動態調査より、2021年の機械器具卸売業の商業販売額は106.4兆円であり、下記のグラフを見ると、2008年のリーマンショック以降の落ち込みから、近年は若干回復傾向にあることが分かります。他方、インターネットの普及により、販売チャネルが変化しており、卸を介さない直販等のモデルも増加している状況で、卸事業者の中でも、業界情報の提供等、独自の付加価値を加える等の取組が見られます。

(出典)経済産業省「商業動態調査

機械器具卸売業は、取扱製品によって大きく「産業機械器具」「電気機械器具」「自動車」「その他機械器具」に分かれます。より具体的な商品分類では、測定具や切削工具、電動工具、作業工具、治具、制御機器といった品目に分かれ、より具体的には、ドリルやカッター等の機械製作に必要な部品や工具、機器類等の多様な製品を取り扱う商社としての機能を有しています。


機械器具卸売業界の課題

機械器具卸売業界の課題として、「後継者の不在」「卸売業の高付加価値化」「取引先の業界の影響を大きく受ける」「バックオフィス機能が弱い」「仕入価格の高騰化への対応」が挙げられます。



後継者の不在

2021年の全国全業種での後継者不在率は帝国データバンクの調査によると65.1%であり、機械器具卸売業においても同様に、経営者の高齢化に伴う、後継者不在が大きな課題となっています。

卸売業の高付加価値化

インターネットの普及により、卸を介さずメーカーが直販するケースや、機械器具に特化した販売プラットフォーム等の出現により、機械器具卸売業の付加価値が相対的に低くなったため、顧客ニーズの把握や対応、顧客に役立つ情報提供等、選ばれる商社として、新しい付加価値を提供する業態への変化が求められています。

取引先の業界の影響を大きく受ける

機械器具卸売の事業者はその専門性が特徴の一つであるため、取引先が産業分野に特化する傾向があります。例えば自動車メーカーが大きな取引先であれば自動車産業の動向に左右され、取引先が食品メーカーであれば食品産業に、化学メーカーであれば化学産業に左右される可能性が大きい業態です。

バックオフィス機能が弱い

機械器具卸売業は、商品の専門知識を有した販売のプロです。そのため、経営者は売ることについては得意であり、強化している一方、経理・財務、営業管理、販売管理といった管理業務は後回しになる傾向が多く、バックオフィス機能が弱いことが課題として挙げられます。

仕入価格の高騰化への対応

燃料・資材の高騰化により、取り扱う商品が高騰化する可能性があり、利益を確保するためにも、仕入値をいかに抑えられるかが、機械器具卸売業の課題の一つとして挙げられます。


機械工具卸売業におけるM&A

M&Aで解決できる課題

機械工具卸売業において、M&Aで解決できる経営課題は「後継者不在の課題解決」「バックオフィスの一元管理」「共同仕入で仕入値を下げる」「グループ全体で支え合う体制を構築」が挙げられます。

後継者不在の課題解決

M&Aを通じて、株式を第三者に引き継ぐことで、現経営者は譲渡対価を得つつ引退し、新しい親会社に経営を引き継ぐことが可能となります。経営を引き継ぐことで、従業員の継続雇用や取引先との取引の維持が可能となります。引き継いだ後は、親会社の経営者が子会社の社長を兼務する場合や、親会社から公認の経営者が派遣されることが一般的です。売手企業の経営者が継続して勤務を望む場合は、引継ぎ等を目的に、一定期間の間、会長職として在任するケースがあります。

バックオフィスの一元管理

機械器具卸売業の会社の大きな課題の一つである管理業務について、M&Aを通じて、買手となる親会社が一元的に担うことで強化することができます。親会社が持つシステムや仕組みを導入し、管理業務を親会社に任せることで、商社の販売業務に集中することができます。特に親会社がバックオフィスのデジタル化を進めている場合や、一部アウトソーシングにより経理を行う等、先進的な取組をしている場合、その仕組みや人材を利用することが可能であり、自社のバックオフィス機能をM&Aを通じて強化することができます。

共同仕入で仕入値を下げる

商品を仕入れる際に、仕入額の規模に応じて、その料率が変わり、取扱額が大きくなればなるほど、安く商品を仕入れることができます。M&Aでグループを形成することで、親会社と一体となって商品を仕入れ、取引額の規模を大きくすることができれば、その分、仕入値が下がり、同じ販売額でも利益を確保することが可能になります。

グループ全体で支え合う体制を構築

機械器具卸売業は取引先の影響を大きく受ける事業です。M&Aでグループを形成することで、そのリスクを低減することができます。具体的には、A社は主な取引先が自動車業界、B社は主な取引先が食品産業、C社は主な取引先が化学産業だった場合、それぞれが単体のままだと各産業の影響に強く左右されますが、A,B,C社がグループを形成することができれば、どれか一つの産業に厳しい局面や大きな変化があった場合でも、他の業界の企業が支えることが可能であり、グループとして取引先のポートフォリオを形成することができます。


機械工具卸売業界におけるM&A事例

吉岡機工

広島県広島市に本社を置き、80年続く機械工具専門商社の吉岡機工株式会社は、東京都で同じく機械工具の販売を行う株式会社利工堂を子会社化しました。
(記事)広島で80年続く機械工具の専門商社。東京の同業を引き継ぎ

Cominix

大阪府大阪市に本社を置く、切削工具・耐摩工具・光製品等を販売の主力とする株式会社Cominixは、福岡県福岡市で切削工具商社を運営してきた株式会社澤永商店を子会社化しました。
(リリース)株式の取得(子会社化)に関するお知らせ


おわりに

機械器具卸売業は、ものづくり産業を支える産業であり、2021年の商業販売額は106.4兆円という規模を誇る一方、他の産業と同様に後継者不在が大きな課題となっています。後継者不在により、経営者が廃業という選択をしてしまうと、地域経済における取引や従業員の雇用の損失に繋がります。

M&Aは後継者不在の課題解決だけでなく、機械器具卸売の事業者が苦手とする管理業務を含めたバックオフィスの強化や、共同仕入で仕入値を下げることによる利益率の改善等の経営課題の解決に効果を発揮することも可能です。何より、取引先の産業に大きく影響を受ける業態ですが、グループを形成することで、販売先のポートフォリオを形成する等、安定した経営体質へと改善を図ることもできます。

業界においても、M&Aの動きが活発であり、再編が進む中で、それぞれの経営者がどういう選択をするかにより、地域経済の活力が維持されるか、失われるかという結果が待ち構えています。機械器具卸売業の後継者不在や経営戦略に悩まれる場合、当社にご相談頂ければ、様々な事例から専門のコンサルタントがアドバイス致しますので、お気軽にご連絡ください。

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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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