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コラム COLUMN

中小企業白書(2021年版)におけるM&A・事業承継の論点を解説!


中小企業政策を読み解く上で「中小企業白書」は、経済産業省がどのような論点を重要視しているかが読み取れます。2021年4月23日に中小企業庁が公表した2021年版「中小企業白書」では、第2部第3章「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」において、M&A・事業承継が取り上げられており、ここに記載されている論点を解説します。

【出典】経済産業省「2021年版中小企業白書・小規模企業白書をまとめました



記事のポイント

  • 中小企業白書において、事業承継は社会的な課題である一方、M&Aを成長戦略の一つとして捉えている。
  • 黒字企業でも休廃業・解散を選択。経営者の高齢化は売上高・利益に「負の相関」が存在。事業承継実施企業の方がパフォーマンスが高い。
  • 事業承継は「親族への承継」から「親族以外への承継」へのシフトが進む。
  • 中小企業M&Aの件数は増加。M&Aのイメージの改善傾向が目立つ。事業承継引継ぎ支援センター・金融機関・M&A仲介業者等、支援機関ごとに差別化を図っている。

事業承継は「社会的な課題」、M&Aは「成長戦略の一つ」としても関心が高まる

2021年版中小企業白書では、経営者の高齢化が進む中、“事業承継は社会的な課題”として認識されており、日本経済の持続的な成長のためには、“経営資源を次世代に承継”することが重要とされています。加えて、事業承継は単なる経営体制の変更ではなく、“更なる成長・発展を遂げるための一つの転換点になり得る”としており、中小企業にとってのM&Aが成長戦略の一つとして関心が高まっていることを述べています。

第2部第3章「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」は大きく「事業承継を通じた企業の成長・発展 」と「M&Aを通じた経営資源の有効活用」の2つのパートに分かれています。掲載されている内容は以下のとおりです。

「事業承継を通じた企業の成長・発展とM&Aによる経営資源の有効活用」の構成
 
 第1節 事業承継を通じた企業の成長・発展
  1.休廃業・解散の動向と経営者の高齢化
  2.事業承継の現状と事業承継実施企業のパフォーマンス
  3.新型コロナウイルス感染症を踏まえた事業承継意向の変化
 第2節 M&Aを通じた経営資源の有効活用
  1.中小企業のM&Aの動向
  2.M&A実施意向
  3.中小企業のM&Aを支援する機関
 第3節 まとめ


事業承継を通じた企業の成長・発展

休廃業・解散の動向と経営者の高齢化

休廃業・解散の動向

  • 休廃業・解散件数は過去最多、業種関わらず増加。
  • 休廃業・解散企業の95%は従業員20名以下の小規模企業、70代が最も多く、休廃業・解散件数の増加の背景は「経営者の高齢化」。
  • 休廃業・解散企業の約6割は当期純利益が黒字。業績不振企業だけではなく、高利益率企業の廃業が一定数発生。



経営者の高齢化

  • 経営者の年齢は上昇。
  • 売上高・利益共に経営者の年齢に「負の相関」があると考えられる。
  • 経営者年齢が若い程、新事業分野進出・設備投資に積極的であり、試行錯誤を許容する組織風土を持つことが要因か。



事業承継の現状と事業承継実施企業のパフォーマンス

事業承継の現状

  • 規模が小さいほど交代前の経営者の年齢が高く、引き継ぐ経営者の年齢は若いので、より経営者の年齢層が若返る。
  • 親族への承継から、親族以外への承継へのシフトが進む。
  • 後継者有無別の企業パフォーマンスは「無」企業より「有」企業の方が高く、承継方法で準備期間に差が出る。
  • 事業承継の課題については「事業の将来性」の回答割合が一番多い。



事業承継実施企業のパフォーマンス

  • 事業承継実施企業は売上高成長率・当期純利益成長率・従業員成長率において、同業種平均値よりも高い成長率で推移。
  • この傾向は、事業承継時の年齢や、承継方法を問わず同じ傾向。





新型コロナウイルス感染症を踏まえた事業承継意向の変化

  • 新型コロナウイルス感染症流行により16.1%の経営者の心境に変化があり、変化の内容は「事業承継の時期を延期したい」が32.5%と最も高く、次いで「事業承継の時期を前倒したい」が27.4%。
  • 特に「事業承継に向け、後継者決定済み」「事業承継に向け、譲渡・売却・統合(M&A)を検討」とする経営者は、「事業承継の時期を前倒したい」とする割合が高い一方、「事業承継に向け、候補者あり」「事業承継について未検討」とする経営者は「事業承継の時期を延期したい」とする割合が高い。




M&Aを通じた経営資源の有効活用

中小企業のM&Aの動向

  • 中小企業のM&Aの件数は増加。
  • 買収・売却いずれも「プラスのイメージになった」の回答が「マイナスのイメージになった」を大きく上回り、M&Aに対するイメージが向上。この傾向は地方においても同じ。




M&A実施意向

  • 3割程度の中小企業は、何らかの形でM&Aを実施する意向がある。
  • 買手意向企業は相手先について「同業種」を希望する割合が54.7%であり、売手意向企業は44.8%。
  • 買手意向企業は、比較的近隣地域で検討している一方、売手意向企業は広いエリアで相手企業を検討。
  • 相手先の探し方については、買手意向企業・売手意向企業共に金融機関や専門仲介機関に依頼する割合が高い。



買い手としてのM&A実施意向

  • 「M&Aを実施したことがある」「若い経営者である」「従業員規模が大きい」「売上高増加率が高い」程、買手意向が強い。
  • M&Aを検討したきっかけや目的は、水平統合の場合は、ほとんどが「売上・市場シェアの拡大」が目的。垂直統合の場合は「新事業展開・異業種への参入」や「人材の獲得」、「技術・ノウハウの獲得」の割合も高い。
  • M&Aで重視する確認事項は、「事業の成長性や持続性」の割合が高く、M&Aを実施する際の障壁は、「期待する効果が得られるかよく分からない」、「判断材料としての情報が不足している」、「相手先従業員等の理解が得られるか不安がある」等。



売り手としてのM&A実施意向

  • 後継者がいない企業の方が「売手意向あり」の回答割合が高く、売り手としてのM&Aを検討したきっかけや目的は、「従業員の雇用の維持」や「後継者不在」といった事業承継関連の目的が高い一方、「事業の成長・発展」といった成長目的も高い。
  • 経営者年齢が高い企業は事業承継目的が多く、経営者年齢が若い企業は「事業や株式売却による利益確保」目的の回答割合が高い。
  • 重視する確認事項は「従業員の雇用維持」がほとんど。M&Aを実施する際の障壁は「経営者としての責任感や後ろめたさ」が最も高い。
  • 8割以上の企業でM&A実施後も全従業員の雇用を継続。半数以上の企業において、売り手企業の経営者がM&A実施後も何らかの形で事業に関与。


新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた中小企業のM&A実施意向の変化

  • 感染症流行前後での差は大きくはないものの、「買い手として意向あり」とする割合は低下し、「売り手として意向あり」とする割合は高まっている。
  • 買い手は従来の成長戦略からの転換を迫られてM&Aを断念。


中小企業のM&Aを支援する機関

  • 支援機関別、買手企業のM&Aのきっかけや目的は、事業引継ぎ支援センターでは、「人材の獲得」を目的とする買い手企業が最も多く、「売上・市場シェアの拡大」、「新事業の展開・異業種への参入」が上位。事業引継ぎ支援センター以外では、「売上・市場シェアの拡大」の割合が特に高い傾向にある。金融機関やその他支援事業者では、「取引先や同業者の救済」や「地域の産業や雇用の維持」の割合も相対的に高い。
  • 支援機関別、売手企業のM&Aのきっかけや目的は、事業引継ぎ支援センターや金融機関では、「後継者不在」や「従業員の雇用の維持」の割合が特に高い。また、M&A仲介業者やその他支援事業者では「事業や株式売却による利益の確保」や「事業の成長・発展」を目的とする売り手企業も一定程度存在。
  • 支援機関別、売手企業の業績傾向は、事業引継ぎ支援センターでは「赤字傾向」が 56.3%、M&A仲介業者では「黒字傾向」が 47.9%。
  • 支援機関別、売手企業の相談内容は、事業引継ぎ支援センターでは「承継の手法に関する相談」や「承継の相手に関する相談」など、事業承継についてある程度検討が進んだ段階で相談に来るケースが多く、金融機関では、「承継すべきかどうかの相談」の割合が最も高く、事業承継に関わる検討の初期段階で相談を受けている。
  • 民間M&A支援事業者の差別化要素は、M&A仲介業者では、「M&Aの専門性」、金融機関では「話しやすさや相談者への経営理解」「接触頻度」、その他支援事業者では「M&A以外の経営課題に対するサポート」の割合が高い。



おわりに

2021年版中小企業白書における事業承継・M&Aに関する論点をまとめました。これまでも指摘されていたことも多くありましたが、改めて休廃業を選択する黒字企業の多さ等、事業承継が社会的な課題であることを再認識しました。また、事業承継後のパフォーマンスでは、承継した企業の方が高い割合が出ていました。M&Aそのものを成長戦略として捉えている企業も多く、M&Aのイメージの改善に伴い、事業承継・事業成長の両面においてM&Aが注目されている様子が分かりました。あくまでM&Aは手段であるため、その目的をはっきりと持つことはいずれにおいても重要です。こういったマクロ情報も認識しながら、当社でもM&A・事業承継を通じて、地域企業の皆さまをご支援できるよう尽力したいと改めて感じました。




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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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