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コラム COLUMN

無から有を生み、時代を紡ぐ!DX・M&Aを活用した地域運送会社の挑戦|キチナングループ株式会社

山口県宇部市に本社を置き、山口を中心に物流を軸に顧客をサポートする様々な事業を展開するキチナングループ株式会社。現在もM&Aを活用し、事業を多角化。3代に渡り事業を拡大してきた経緯や、スタートアップ経営者を経て、後継ぎとして地域の運送会社のDX推進とオペレーション改革を目指す取組について、同社代表取締役社長 井本 健氏にインタビューしました。

紆余曲折の事業承継、地域運送会社へのチャレンジ

トラック一台で事業をスタート、無から有を生みだし、事業を多角化

キチナングループは山口を中心にロジスティクス事業を展開しています。物流を軸に、原材料の調達から輸送・ 倉庫保管・荷役・製造請負・プラントのメンテナンス、流通加工等のサポート業務に至るまで、あらゆるお客さまの商品の品質と生産性の向上を追求する事業・サービスを展開しています。お客さまに山口の地場産業である化学製品工業やメーカーが多いこともあり、お客さまの本業である企画・開発・販売に注力できるよう、物流以外の付加価値ある事業を取り入れ、M&Aにより拡大し、現在12社の法人がグループに加わっています。

当社を創業したのは、私の祖父です。祖父は現在の山口市の阿知須(あじす)が出身です。自衛隊に勤めていたので、勤務中に取得した運転免許を活かした山口での仕事を考えました。「ものを運ぶ仕事はなくならない」と思い、トラック一台からスタートしたのがきっかけです。戦後だった当時、運送会社は許認可が必要というハードルがありましたが、萩市の運送会社を買収することで、許認可を取得し、法人化して事業を拡げていきました。私の代でも、積極的にM&Aを行っていますが、事業の始まりもM&Aということで、私なりにM&Aを活用するという精神が息づいていると解釈しています。

あまり言葉として残っていませんが、創業者の経営哲学は「無から有を生め」であり、現在もキチナングループの社是として残しています。私も好きな考え方で、事業というのは何もないところから何かを生むことであって、これが当社のマインドとして生き続けています。二代目となる父もその精神を引き継ぎ、運送以外の事業で多角化を行いました。土木・ガラス瓶の再生事業や、専門学校YICグループCという専門学校事業を1990年から立ち上げ、いずれも共通しているのは、何もないところから事業を生み出す「無から有を生む」ことと、「山口になくてはならない事業を生む」という考えです。YICは、元は情報専門学校から始まりました。山口という田舎でも「情報」と「デザイン」であれば戦えるというのが父の持論であり、現在は、専門領域をIT・情報・Webビジネス・販売・ホテル・ブライダル・ペット・医療事務に広げ、県内最大規模となっています。


父に黙ってIT企業を立ち上げ、ケンカ別れして東京で再びチャレンジ

私は大学生のとき、東京のIT企業でインターンをしていました。その時、ITエンジニアリングに関する基本的な内容や、ITビジネスの考え方を学びました。卒業後は、「付加価値を出す」「成長する」の前提として、まずは潰れない会社にすることが重要という考え方に共感し、「潰れない会社」の経営を学ぶため、経営コンサルティングの会社に就職しました。3年経ったタイミングで、父から「帰ってこないか」と言われました。長男だったこともあり、漠然と「自分が会社を継ぐのかな」と思っていたので、特に意思もなく山口に帰ることを決意しました。

山口に戻ったのは2012年のリーマンショックの少し後で、当社も業績が苦しい時代でした。私のミッションは営業に力を入れ、黒字化させることでした。努力の甲斐あって、単月の黒字化を達成し、年間でも利益が出るようになり、1年半で目途を立てることができました。今で言う「アトツギベンチャー」ではないですが、当時の私も、「これまでと同じことをやっていても成長しない」「新しい事業創造が大事」と考えていたので、新規事業にチャレンジしました。当時から運送は非常に“ムダ”が多い業界だと感じていました。運送業界は多重構造であり、実際に事業に関わる中でも、ある仕事を請け、A社に発注したら、更にB社に発注され、巡り巡って自社に返ってくる、という経験もありました。ちょうどランサーズやクラウドワークス等のマッチングプラットフォーム事業が立ち上がり、海外でもUberが展開されていたので「物流版のUberを作ろう!」と思い、プロダクト制作に取り組みました。

終業後に、マクドナルドに籠り、エンジニアを探して、一緒にコードを書くところからスタートしました。大学時代のIT会社のインターン経験から、私自身、ITビジネスの考え方が好きというのもあります。夜な夜な、エンジニアと2人でティザーサイトを立ち上げ、それなりに事業化の見込みが立ったタイミングで、VC(ベンチャーキャピタル)等からの資金調達も見越して、法人化することにしました。それまでは、父には伝えずに取り組んでいましたが、法人化したタイミングで父にばれました。現在は違いますが、当時の父はITビジネスに対する嫌悪感もあったので、「田舎でこんなビジネスしても儲からない」と一蹴されました。私の中では「父は“運送と専門学校”かもしれないが、自分は“運送とIT”だぞ!」という意気込みで何度か掛け合いましたが、最終的にはケンカになってしまい、新しく立ち上げた会社を廃業させるか、会社を辞めるかのどちらか、というところまで決断を迫られました。

結果として、私はキチナンを去ることを決意しました。それまでは、敷かれたレールにのっていた方だったので、まさか父も会社を辞めるとは思ってなかったと思います(笑)。新規事業は当時ユーザー登録が1,000人くらいあり、利益は生んでいませんでしたが、可能性を感じることができました。プライベートでは、そのタイミングで結婚もしていたので、この選択には悩みましたが、インターン時代を通じて、東京に起業家の知り合いもたくさんいたことも後押しされました。今でも感謝していますが、妻も「私が働いたらいいんじゃない。それで生きていけるでしょ。」と背中を押してくれました。色んな後押しもあり、辞めちゃおうと思って、東京に引っ越しました。


スタートアップとしての成長、軽貨物運送のプラットフォームを構築

人生そう上手くはいかなくて、新しいサービスは軌道にはのらず、半年で潰れそうになりました。運送業界は小規模の事業者が多く、小規模事業者の場合、あまり粗利率が高くないため、運送会社を開拓するコストの方が、顧客からいただく報酬より高いので、利益が出しづらいという課題がありました。子供もできていたので、何とかしなければと思い、事業転換することにしました。

これまでは、キチナンと同じような運送会社を支援するため、多重構造を解決するというコンセプトでしたが、一旦そこは諦めました。そこで、私の事業に期待して集まってくれた1,500人のユーザーに何が困っているか聞いてみる、かっこよく言えばユーザーヒアリングをすることにしました。ヒアリングしていくと、ユーザーは8割が個人事業主の方だと分かりました。運送会社の場合、経営者がいて、配車マンがいて、ドライバーがいて、という構造ですが、個人事業主の場合、経営者・配車マン・ドライバーを全部ひとりで兼ねるという働き方なので意思決定が早いという特徴があったので、軽貨物に特化した運送の個人事業主のネットワークを構築することにしました。海外からAmazonが日本でも配送網を構築していたタイミングだったので、直接交渉し、Amazonの事業に関わることができました。当時は配送大手もいましたが、スタートアップである利点として、小回りが利くことと、彼らより抱えている経費が少ないのでコストカットできることを活かして、「我々は大手の半値でやる」という戦略を採用し、東京・横浜・大阪に拠点を構えるまで成長しました。

当時の宅配に関する課題は、再配達でした。配達は、配送が完了することで利益が生まれるビジネスですが、お届け先が不在の場合、何度も往復しないといけないという非効率な仕組みなっていました。現在の「置き配」の仕組みがここまで広がるとは思っていなかったので、新規事業としてオープン型の宅配ボックスに取り掛かることにしました。筐体部分は制作できるのですが、簡単に開けられては困るので鍵の制作が難しいという課題はありましたが、鍵に関する特許を取得した方が広島にいらっしゃったので、その方と一緒に事業を展開しましたが、こちらはあまり上手くいきませんでした。結論をお伝えすると、収益力という点で、自販機と比較され、勝つことができませんでした。当時は、再配達が通常の世界だったので、取りにいくメリットがないため、荷物が滞留して回転しないという構造的な課題がありました。生鮮食品等の受け取り系にシフトする等も色々とチャレンジしてみましたが、なかなか難しかったということが分かりました。それでも「軽貨物の個人事業主を中心としたプラットフォーム」「オープン型宅配ボックス」の2つの新規事業を立ち上げ、会社を成長させていきました。

再び山口へ、フルコミットで地域の運送会社の変革にチャレンジ

事業自体は成長していたのですが、私自身としては「この事業で本当に全国展開できるか、大手に勝てるか」という考えや、元々地域の物流会社を支援したいという想いがあり、地域物流・宅配という分野には思い入れがなかったこともあり、先ゆきを考えた時にモヤモヤしていました。VCからの資金調達の話が出たタイミングで、創業したメンバーと方向性が別れ、ちょうどそのタイミングで父から再び声がかかりました。父が57歳のタイミングで、「どうするのか?」と問われました。私も会社が嫌いで辞めた訳ではなく、地域の運送会社にチャレンジしたいという気持ちもありました。東京・山口の二拠点で関わることも考えましたが、片手間ではできないことも理解していましたし、父も中途半端な関わり方は好ましくないと感じていたと思います。

最終的に再び山口に帰る決断をしましたが、その時に父と一つだけ約束をしました。「自分は他も辞めてフルコミットをするので、父もフルコミットして欲しい。3年で社長になるので、社長になるタイミングで資本を自分が100%持ちたい。経営も所有も完全に外れて欲しい。」と伝えました。なかなか難しいかなと思っていたのですが、父は「分かった」と承諾いただきました。

東京での新規事業の経験を経て、物流業界の課題を目の当たりにする中で、物流のオペレーションを自分達でやらなければと強く思いました。人口減少で労働人材が減少する中、オペレーションの価値は相対的に高くなります。そのため、会社に実働部隊を持ち、オペレーション改革を通じて、本質的に物流会社の価値を高めていくチャレンジは面白そうだと思いました。運ぶこと自体の価値は高まりませんが、ムダをなくし、運送だけでなく、工事や庫内作業、資材の仕入等、一貫して関わることで付加価値を向上させることができます。物流の本質ってやっぱり現場にあるんですよね。そこをやらないと、本当の意味で世の中に必要とされる会社には絶対になれないし、地域にも必要とされません。「物流って面白い」と改めて率直に思いました。加えて、地域の会社は、当たり前のこと、やりたいことがまだまだできていないので、そこに真面目に向き合うことで、きちんと利益を出す会社になることができます。「地域の企業は可能性がある」、きちんと儲かる会社にすることで、お客様に提供する付加価値を高めることができる。物流のオペレーション改革と地域企業の可能性の追求の2軸を実現してみたいと考えていました。


DX推進でオペレーション改革を実現。2024年問題に向けて、採用力の強化を目指す

物流業界では、現在「2024年問題」という、働き方改革法が運送業にも適用が開始されることによる影響が懸念され、DXの推進が求められています。当社でもDXは強力に進めています。基本的な経営哲学として「No1しか残らない」と考えているので、総務・労務・人事・経理等のバックオフィスに関わるところや、顧客管理・営業支援については、業界に特化していないクラウドサービスを利用するようにしています。ツールに合わせて社内の業務フローを変更し、社内にエンジニアを採用することで、それぞれのツールを連携し、情報連携によって価値を創出しています。ただ、お客様対応のところは少し方針を変えています。社内業務であれば我々が変更すればよいですが、お客様対応のところでツールに合わせるやり方を優先してしまうと、お客様に負担を強いることになります。運送だけでなく、工事や機械加工等、様々な業種がグループに存在しているので、業界ごとに対応を変えることが必要になります。そういった場合は、カスタマイズできるような適切なツールを利用するようにしています。

2024年問題は解決しないといけない課題だと思いますが、その中で一番重要になるのは「採用力」だと思います。一人が対応できる時間が短縮化することで、これまでと同じ業務量を同じ人数で対応するのが難しくなってしまいます。採用力を強化することで、同じパフォーマンスができる仕組みを構築していくことで解決していくしか方法はないかなと思っています。加えて、2024年問題や原油高騰の影響も踏まえ、お客様に報酬の部分でご理解いただくことも必要だと思います。運送だけじゃない部分を一つの価値として、選んでいただける存在になる必要があると思いますので、お客様から「キチナンに言えば、運送でも何でもやってくれる。親身になってくれるし、守備範囲が広い。」とおっしゃっていただけるよう、我々なりのオペレーショナル・エクセレンスを追求していく、それが実現できる企業文化を築き上げていくことが重要になるのかなと思います。現場は、昨日と同じに見えて、一日前とは全く違うんですよね。こっちは災害で封鎖されているので別のルートを選択しなきゃいけない等、一緒に見えるけど、いつも同じという訳ではありません。マニュアルだけでは対応できない、現場で判断でき、その判断を活かせる組織になることが求められています。



グループ拡大に伴いMVVを整理、「成長に密着し、可能性をひらく」

社員を巻き込みミッションを整理、キチナンの本質を見つめなおす

キチナングループのミッションを「成長に密着し、可能性をひらく」と新しく定義しました。グループが拡大する中で、グループを束ねる言葉が必要だったので、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を設定しました。新しいミッションを考えるにあたり、元メルカリの人事を勤めた唐澤俊輔さんの著書を拝見した時、唐澤さんの考え方がフィットしたので、「支援して欲しい」とTwitter(現在はX)経由で直接連絡しました。唐澤さんからご紹介いただいたブランドストラテジストの工藤拓真さんにファシリテーションしていただき、このミッションを言語化しました。

社員を巻き込み、200人くらい集まってワークショップ行いました。この言葉に落ち着きましたが、もっともっと色んな案や言葉がありました。工藤さんから「キチナンさんのいいところってお客さまとの近さですよね。お客さまを横で支えつつ、自分達から積極的に関わっていくところにあると思う。」と指摘され、確かにそのとおりだと思い、「密着」という言葉を入れました。キチナンは、お客さまとの距離感は非常に大事にしています。距離感の近さが我々を選んで頂ける理由でもありますし、お客さまに価値を提供するベースになると感じています。例えば、我々が効率化を進めた際に、お客さまと距離が離れてしまったら意味がない、そういう意思決定ができるようになりたいという想いを込めました。お客さまだけでなく、上司と部下の距離感も含めて「密着」という言葉を大事にしたいと思いました。

社員ヒアリングでは、「あきらめない」「断らない」という言葉が多く出てきました。工藤さんから「ひたむきな仕事人」という言葉が出たのですが、しっくりこなかったんですよね。「断らない」の本質は何かを考えたとき、お客さまの期待を超えていくという結論に至りました。祖父の時代に、運送会社としては遅咲きだったキチナンが成長できた背景は、戸田工業という大きな会社の仕事を請けたことでした。戸田工業さまは、当時はインクのトナーや塗料の材料がメインだったので、トラックや制服が汚れてしまうのですが、我々は積極的にそういった仕事を取りに行きました。自分達の成長の分岐点を振り返った時に、お客さまの「可能性をひらく」ことだと感じました。お客さまだけでなく、従業員一人一人に向き合い、いいところを見つけて強みを活かすことを見据えることが非常に大事だと考えているので、その想いも込めました。

山口県No1運送会社から、価値提供をデザインするロジスティクス会社へ

ビジョンとして「山口県No1のロジスティクス企業」を掲げています。私が帰ってきた当時は売上が60億円程度で、150億円規模となることで山口県内No1になれると考えていました。現在、そのゴールとの距離が近くなってきたので、もう少し先の世界観を作り上げる必要があると感じています。まだ上手く言語化できていませんが、ロジスティクスの在り方の意味を変えていきたいです。言われたことだけやる後方支援の会社だと、最終的に生き残ることはできません。商品・サービスは手元に届けられることで初めて価値が発揮されます。我々がロジスティクス会社として、顧客への価値提供までデザインし、伴走できる会社になりたい。ロジスティクスの意味を、価値を届けるという点に主眼を置く経営を実現したいなと思います。強い現場と、テクノロジーを活かす。「自動運転が導入されたらドライバーいらないじゃないか」ではなく、どんどんテクノロジーを取り入れ、「お客さまの付加価値が上がるなら、自分たちの働き方を変えようぜ」と言えるようになりたいですね。

バリューとしては「お客様のために」「スピードと徹底」「全員経営」の3つを掲げています。ミッション・ビジョンを実現するためのカギとなるのは、経営人材の育成です。「強いオペレーションをつくる」という言葉の意味は、「作業効率のよい現場人間を増やす」という意味ではなく、「現場で主体性を持って考え、判断できる人材を増やす」という意味です。部門経営ができる人材を育てるため、アメーバ経営を通じて、経営人材の育成に取り組んでいます。そのために、社長の接待交際費も含め、全社員が情報にアクセスできるような仕組みや、やりたいと思ったことはまずやってみることを推奨する等に取り組んでいます。最新のテクノロジーとして、Chat GPTの活用が広がっていますが、これにより物流はもっと変化すると思うので、こちらについても色々と試しています。そのためにエンジニア採用の強化に取り組むことで、現場の生産性を向上させていきます。


スピードを加速し、歴史を引き継ぐ経営戦略としてのM&A

シェア拡大や付加価値の増大に向けてM&Aを活用

キチナングループがM&Aに取り組む理由は、「時間を買う」という感覚です。短期的な目線では、「No1しか生き残れない」というのは我々も同じです。専門学校事業についても、人口減少時代に入り、マーケットが縮小するので、どんどん他社が廃業せざるを得なくなり、我々のところに生徒が集まってくるという現象が生じています。地域で生き残る手段が、No1というポジションであれば、そのための市場シェア拡大のスピードを速めるための有効な経営戦略だと捉えています。また、付加価値向上のためには、お客さまのサプライチェーンの全てのタッチポイントを抑えることも重要だと考えているので、運送以外の周辺業種を取り入れることを積極的に進めています。時間を買うという意味には、スピードだけでなく、歴史を買うという意味も含まれます。我々は創立42年ですが、グループに創立70年や80年の会社が加わるとそれだけで信用は上がります。信用・信頼は本来決してお金では買えません。信用・信頼が向上する有効な手段であれば、使わない手はないなと思っています。時間を買うというよりは、その会社の歴史を預からせて頂くという感覚です。その歴史にはお金で買う以上の価値があると思っています。

物流や周辺業種については積極的に募集していますが、現在注目しているのは、海運関係や、海外とやり取りをする企業です。我々が、顧客企業のサプライチェーンに関わる中で、海外とやり取りしていない会社はありません。2024年問題や、カーボンニュートラルの流れを見ると、トラックによる陸上輸送ではなく、島国であり港湾の多い日本の特性を生かした海運輸送の比率が高まるのであないかと考えているので、海運関係の業種には注目しています。

もう一つはIT分野です。物流では、物が動く前には、必ず情報が先に動いています。上流の仕事するためには、物ではなく、情報で支援することが必要です。我々は工場のプラント系の会社もグループにありますが、プラント設営に関わることで、次にどのような部品が必要か分かると物流ニーズを把握することができます。目に見えるものだけでなく、お客さまに密着して、その前の情報を入手することで、新しい顧客体験をつくっていく、そのためにはITの技術が必要です。生産管理システム等、サプライチェーン管理する仕組みを取り入れ、製造とロジスティクスが一体化することを視野に、IT分野でグループに加わってくれる企業を希望しています。


DXを推進し、社内環境を整備

当社のグループに参画いただいた場合、これまでは事業承継のケースが多かったので、経営者を派遣する、もしくは私と担当役員が兼務するパターンが多いです。規模や、譲渡の理由に応じて、ケースバイケースで対応しています。父と同じような世代の管理職もいるので、彼らが経営人材として更にステップアップする場としても活用していいます。グループに参画する会社が優れていた経営モデルを採用していた場合、逆に取り入れるようなこともしています。アメーバ経営のやり方が正にそうでした。

バックオフィスについては、DXの仕組みを取り入れているキチナングループに合わせていきます。M&A先の従業員の方としっかり対話すると「自分達もやらないといけないと思っていた」「きっかけがなかった」という声が多いです。なのでシステム導入をする場合も、抵抗なく進めていくことができています。PMI(M&A後の統合)というと難しく聞こえますが、経営課題として、物理的な壁やついたてがあって社内のコミュニケーションが取れていないというケースもあるので、皆で一緒に大掃除をして、職場環境をきれいにし、社内のコミュニケーションが促進されるようにしています。幹部やリーダークラスの人材で一泊二日の研修を年5回開催する等、グループとしての経営人材の育成にも積極的に取り組んでいます。

事業承継には双方の覚悟が必要、地域の誇りを創出できる企業を目指す

私自身が会社を承継して間もない立場ではありますが、事業承継にはいくつかパターンがあると思っています。後継ぎという立場でいうと、自社の事業は「譲り受ける」と捉えるものではなく、むしろ、自分から取りに行くものです。やりたい人はやればいいですし、やる以上は文句を言わない。本気で覚悟を持って取り組まないと、事業を譲り渡す現役社長も、後継者の覚悟を一番見ているのではと感じます。譲り渡す側という立場でいうと、自分の父がそうだったように、潔く渡した方がいいと思いますね。私の父親は珍しいタイプかもしれません。会長という役職はありますが、役員会議には出ていませんし、月1回本社にくるかどうかぐらいの関わり方です。渡す側も、渡される側も腹を決めることが大事です。その上で、地域では、地域をよくしていこうと思う若い経営者が大事だと感じています。サーチファンドのような取組も広がり、そういった若手経営者のネットワークは重要だなと感じます。

地域という視点では、人口減少が進み、今後、所在する県内だけで完結するのは非常に難しいと感じています。マーケットの減少には逆らえません。そのため、マーケットにはこだわらず、全国・世界で戦える会社だけが行き残る時代になると思います。実際に、山口県内で活躍している会社はいずれもグローバルで勝負して、成果を出しています。一方で地域にいる意味として、人材確保や資金調達という点で言えば、東京・大阪で勝負するとここまでできないと思いますので、山口にいる会社だからこそ下駄をはかせてもらえていることが地域で会社経営するメリットだと考えております。最後は経営者の生き様みたいな話になりますが、私は山口発と言えるようになりたいですね。ファーストリテイリングの柳井さんのように、地域から本社を移さない考え方がかっこいいなと思いますし、自分達のカルチャー・ルーツとして大事にしたいと思います。地域で会社を経営し、雇用を生み、「キチナンがあるから山口に誇りが持てる」という存在になれることが本当の意味で地域貢献だと思っています。


概要

会社名キチナングループ株式会社
代表者名代表取締役社長 井本 健
創業年1976年6月
資本金3,000万円
従業員数800人(グループ合計)
本社所在地山口県宇部市大字善和字上瀬戸原189番7
事業内容倉庫業、生産請負業等
HPhttps://www.kichinan.co.jp/



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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