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中国・四国地方の後継者不在率から見る事業承継課題とM&Aの可能性

中国・四国地域における後継者問題

経営者の高齢化が進むなか、全国的に「後継者不在率」の高さが深刻な問題となっています。事業承継は企業の存続に直結する大きな課題であり、特に中小企業にとっては後継者不足が経営を揺るがすリスクとなりかねません。

こうした背景から、第三者承継の選択肢としてM&Aが注目を集めています。本記事では、全国データを踏まえながら、中国・四国地方における後継者問題の現状を比較し、地域ごとの特徴や今後の課題を整理します。

中国・四国地方の後継者不在率

日本全国で経営者の高齢化が進む中、事業承継の大きな課題として「後継者不在率」の高さが注目されています。中国・四国地方も例外ではなく、それぞれの地域で異なる傾向が見られます。本章では、中国地方と四国地方のデータを比較し、事業承継の実態を解説します。

中国地方は後継者不在率が全国2位

地域別の後継者不在率推移グラフ

出典:帝国データバンク「特別企画:全国「後継者不在企業」動向調査(2018 年)」

帝国データバンクの調査によると、中国地方の後継者不在率は全国9ブロックの中で北海道に次いで2番目に高い水準となっています。特に中小企業においては、経営者の平均年齢が上昇している一方で、後継者候補を見つけられない企業が多く、事業承継の不安が広がっています。

また、地域経済の基盤を支える建設業・不動産業・小売業などでも後継者不足が目立ち、廃業リスクの高まりが懸念されています。後継者問題の解決策としては、親族内承継だけでなく第三者承継やM&Aの活用が求められる状況にあります。

四国地方は全国最低水準だが増加傾向

一方、四国地方の後継者不在率は全国で最も低い水準にあります。中国地方と比較すると17ポイント以上の差があり、後継者問題が相対的に軽度であることが分かります。

しかし、近年の推移をみると四国地方は緩やかに不在率が上昇しており、今後は事業承継問題が顕在化する可能性が高まっています。特に建設業では全国同様に後継者不足が深刻で、早期に承継計画を立てる必要があります。

現時点では全国平均より良好な状況にありますが、将来的な人材不足や地域経済の縮小を踏まえると、M&Aを含む多様な承継手段を活用する備えが重要になるでしょう。

業種別の後継者不在率

後継者不在問題は業種によっても深刻度が異なります。全国的には建設業や製造業で高い傾向がありますが、中国・四国地方に目を向けると、特定の業種で顕著な特徴が見られます。

ここでは、中国地方と四国地方における業種別の後継者不在率を整理し、事業承継のリスクを考察します。

中国地方で目立つ不動産・小売業

業種別 後継者不在率(2019)(%)
業種 中国 四国 全国
建設業 76.0 62.8 70.6
製造業 65.4 48.6 67.9
卸売業 67.9 53.7 63.3
小売業 71.3 53.8 66.0
運輸・通信業 68.2 52.4 62.3
サービス業 72.8 54.2 70.2
不動産業 75.3 54.9 68.0
その他 65.5 53.3 54.0
平均 70.3 54.2 65.3

出典:帝国データバンク「特別企画:中国地方 後継者問題に関する企業の実態調査(2019年)」「特別企画:四国地方 後継者問題に関する企業の実態調査(2019年)」を元に当社作成

中国地方では、全国平均と比較して不動産業と小売業における後継者不在率が高い点が特徴です。

特に地方都市では不動産業が地域経済に与える影響が大きく、後継者不足による廃業は取引先や地域社会にも波及リスクをもたらします。また、小売業においても高齢化した経営者が多く、後継者を確保できず店舗を閉鎖するケースが増えています。

こうした状況を背景に、中国地方では親族承継にこだわらず、第三者承継やM&Aを活用して事業を引き継ぐ動きが徐々に拡大しています。特に不動産や小売業は、買い手企業にとってもシナジーを得やすい分野であるため、M&A市場で注目されやすい業種といえます。

四国地方で特に深刻な建設業

一方、四国地方では建設業の後継者不在率が際立って高い状況です。

建設業は地域のインフラ維持に欠かせない産業であり、経営者の高齢化と後継者不足が重なると、地域経済や生活基盤に大きな影響を及ぼす可能性があります。

四国地方の建設業における後継者問題は、全国的な傾向以上に深刻であり、業界全体での事業承継支援が急務です。近年は地場の建設会社を大手企業がM&Aで引き継ぐ事例も見られ、M&Aを通じた承継が有効な解決策の一つとして注目されています。

後継者候補の傾向|親族承継と第三者承継の割合比較

事業承継の形は企業ごとに異なりますが、誰を後継者候補とするかは経営者にとって非常に重要な課題です。

後継者が「子供」などの親族に限られるのか、それとも「第三者」や「M&A」を通じた承継が選ばれるのかによって、今後の経営体制や企業文化の継続性が大きく変わってきます。

ここでは中国地方と全国的な傾向を比較しながら、後継者問題の現状を整理します。

中国・四国地方は「子供」依存度が高い

中国・四国地方と全国の後継者の属性別構成比を比較しました。

後継者の属性別構成比(%)
中国 四国 全国
配偶者 3.0% 7.6% 6.8%
子供 51.8% 40.5% 40.1%
親族 19.5% 27.0% 19.8%
非同族 25.7% 24.9% 33.2%

出典:帝国データバンク「特別企画:中国地方 後継者問題に関する企業の実態調査(2019年)」「特別企画:四国地方 後継者問題に関する企業の実態調査(2019年)

帝国データバンクの調査によると、中国地方の企業は「子供」を後継者に想定する割合が全国平均よりも高い傾向にあります。実際に「子供」が後継者候補となっている割合は約5割を超えており、全国水準と比較しても依存度の高さが際立っています。

一方で、中国地方は全国的にも後継者不在率が2番目に高い地域です。つまり「子供を後継者としたいが適任者がいない」という状況に直面する企業が多く、結果として承継が進まずに廃業リスクを高めている現状があります。今後は親族内承継に固執せず、第三者承継やM&Aの可能性を視野に入れることが重要といえるでしょう。

全国的にはM&A・第三者承継が拡大

全国的に見ると、事業承継において「子供」や「配偶者」といった親族以外に、M&Aや第三者承継を選択する企業が増加傾向にあります。特に後継者不在率が高い業種や地域では、外部の人材や企業に事業を引き継ぐ動きが広がっており、承継方法の多様化が進んでいます。

背景には、事業承継税制の改正やM&A市場の拡大といった制度面の変化があり、これにより「親族に限らない承継」が現実的な選択肢として定着しつつあります。今後も全国的には、M&Aを活用した第三者承継の比率がさらに上昇することが予想されます。

まとめ|中国・四国の後継者不在問題

中国・四国地方の後継者不在率を比較すると、同じエリアでも大きな違いがあることが分かりました。こうした地域差を把握することは、自社の事業承継を考えるうえで重要な視点となります。

事業承継は全国的な課題であり、中国・四国地方も例外ではありません。データを正しく理解することで、自社にどのようなリスクや可能性があるのかを見極め、地域の実情に合った解決策を早めに検討することが大切です。

今後はM&Aや第三者承継といった選択肢も含め、経営を持続させるための実践的な対策が求められるでしょう。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
URL:https://cregio.jp/

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