経営者保証なし融資とは?中国地域の銀行・信用金庫の実績まとめ
経営者保証は、事業承継や創業・事業拡大の場面で長年大きな課題とされてきました。中小企業庁は「経営者保証ガイドライン」を策定し、経営者保証に依存しない融資を広げる取り組みを進めています。
本記事では、中国地域の主要銀行・信用金庫の「経営者保証なし融資」の実績をデータに基づいて比較し、どの金融機関が積極的に取り組んでいるのかを解説します。
目次
経営者保証とは?ガイドラインと課題
経営者保証とは金融機関から融資を受ける際に経営者が個人保証することです。
経営者保証について、中小企業庁は「経営への規律付けや信用補完として資金調達の円滑化に寄与する面がある一方、経営者による思い切った事業展開や、保証後において経営が窮境に陥った場合における早期の事業再生を阻害する要因となっているなど、企業の活力を阻害する面もあり、経営者保証の契約時及び履行時等において様々な課題が存在する。」と位置付けており、2013年12月に「経営者保証ガイドライン」を発表しました。
同ガイドラインでは「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと」等が定められていますが、あくまで「中小企業団体及び金融機関団体共通の自主的自律的な準則」とされています。
事業承継における経営者保証
事業承継においては「事業承継にとって個人保証が大きな障害」と位置付けられています。
旧経営者の保証を残し、新経営者(後継者)からも保証を取るいわゆる「二重徴求」の問題や、後継者が将来的に多額の負債を追う可能性等により、中小企業庁が公表したデータにおいても、事業承継を拒否する理由に59.8%の企業が「個人保証を理由に承継を拒否」と回答しました。
そのため中小企業庁では「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」を打ち出し、その取組の一つとして「金融機関の経営者保証なし融資の実績等(KPI)の公表」を行っています。
政府系金融機関「経営者保証なし融資」実績
直近で公表された新規融資に係る状況は以下のとおりです。
取組を開始した当初から徐々に割合は上がっていますが、令和元年度においては件数ベースで39%、金額ベースで55%となっています。
各項目の意味
- ① 新規に無保証で融資した件数・金額
- ② 新規融資件数・金額
- ③ 新規融資に占める経営者保証に依存しない融資割合(① ÷ ②)
| 年度 | ①件数 | ①金額(億円) | ②件数 | ②金額(億円) | ③件数割合 | ③金額割合 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 平成26年2月〜3月 | 5,634 | 2,479 | 37,345 | 11,428 | 15% | 22% |
| 平成26年度 | 41,860 | 14,801 | 219,099 | 60,457 | 19% | 24% |
| 平成27年度 | 52,911 | 18,950 | 220,628 | 58,795 | 24% | 32% |
| 平成28年度 | 73,210 | 29,638 | 226,266 | 59,484 | 32% | 50% |
| 平成29年度 | 69,801 | 26,189 | 206,926 | 50,646 | 34% | 52% |
| 平成30年度 | 69,295 | 24,921 | 192,091 | 47,326 | 36% | 53% |
| 令和元年度 | 75,017 | 26,207 | 193,017 | 47,616 | 39% | 55% |
| 平成26年2月〜令和2年3月(累計) | 387,728 | 143,183 | 1,295,372 | 335,752 | 30% | 43% |
出典:中小企業庁「政府系金融機関及び信用保証協会におけるガイドラインの活用実績」
中国地域の金融機関別データ比較(西京銀行・広島銀行・中国銀行など)
中国地域の金融機関をピックアップして各金融機関が公表している資料を元にまとめました。金融機関によって取組へのスタンスの違いが分かります。
(新規融資に占める経営者保証に依存しない融資の割合:2019年度)
| 新規で融資 した件数 |
新規に無保証で 融資した件数 |
割合 | |
| 西京銀行 | 6,555 | 4,819 | 73.5% |
| 山陰合同銀行(2019年下期分) | 5,676 | 2,845 | 50.1% |
| 広島銀行(2019年下期分) | 16,798 | 4,033 | 24.0% |
| 中国銀行(2019年下期分) | 8,085 | 1,830 | 22.6% |
| もみじ銀行 | 11,846 | 2,151 | 18.1% |
| 山口銀行 | 12,135 | 2,147 | 17.6% |
| 広島信用金庫 | - | 1,696 | 12.5% |
| 広島市信用組合 | - | 46 | 0.43% |
(出典:各金融機関公表資料をより当社作成)
まとめと今後の展望
経営者保証は事業承継の現場においても非常に重要な論点の一つです。
事業承継だけではなく、創業や事業拡大等、資金ニーズが発生するタイミングにおいても、そのたびに経営者に対して強力なコミットメントを求める形になります。
経営者保証ガイドライン等、行政主導で取組を進めているものの、政府系金融機関も含めその取り組み方は各金融機関ごとにバラつきが見られます。
各金融機関において対象とする法人の規模等の違いはありますが、今後、事業承継の円滑化等に向けて、どこまで取り組みが進むかは注目すべきポイントです。
クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。 URL:https://cregio.jp/
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