令和7年度経済産業省概算要求を解説!地域・中小企業等関連政策のポイントを解説

令和7年度経済産業省概算要求が2024年8月30日に公表されました。公表された施策の中で、地域企業・経営者の皆さまにお役に立ちそうな「中小企業向け」「スタートアップ向け」の施策に加え、予算額の大きい「GX推進対策費」についてピックアップして、ポイントをお伝えします。
目次
概算要求とは?予算編成プロセスの基本
国家予算における概算要求の位置づけ
概算要求とは、各省庁が翌年度に必要とする予算を財務省に提出するプロセスを指します。国家予算は大きく以下の流れで編成されます。
- 概算要求(8月末頃)
各省庁が翌年度に要求したい予算をまとめて提出。
- 予算案(12月末頃)
財務省との調整を経て、政府として国会に提出する案を作成。
- 予算(翌年4月頃)
国会審議を経て正式に成立し、執行される。
このように、概算要求は「最初に公表される予算案のたたき台」として位置づけられています。
概算要求を読み解くメリットと注意点
概算要求の内容はあくまで「各省庁の希望ベース」であり、財務省との折衝を経て大きく修正される可能性があります。そのため、確定情報ではない点に注意が必要です。
しかし一方で、概算要求には次年度の重点分野や政策トレンドが色濃く反映されます。特に地域企業や中小企業の経営者にとっては、
- どの分野に重点が置かれるか
- 補助金や支援施策の方向性がどう変わるか
といった動きを早い段階で把握できる貴重な資料です。
実際に補助金を活用する際は、公募開始時点の詳細情報を必ず確認する必要がありますが、概算要求を読むことで「どんな施策に力を入れていきそうか」を先取りできる点が最大のメリットといえるでしょう。
地域・中小企業向け経済産業施策
「令和7年度概算要求・税制改正要望について」に掲載された施策のうち、特に「地域」「中小企業」に関連すると思われる事業をピックアップしました。(※制度詳細については、各施策を担当する組織へ直接ご確認ください。)
中小企業向け施策
本年度の概算要求から、関連した施策はまとめて掲載されるようになりました。中小企業に関連した施策は「中小企業支援事業」として、①中小企業活性化・事業承継総合支援事業、②中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業、③中小企業連携組織対策推進事業、④小規模事業対策推進 等事業、⑤地方公共団体 による小規模事業者支援推進事業、⑥中堅・中核企業の経営力強化支援事業、⑦地域の人事部支援事業の7つの施策がパッケージで記載されています。

上記で掲載された事業の中で、注目したい施策と、パッケージには入っていませんが、中小企業向けで活用できる施策を、以下のとおりピックアップしています。
中小企業活性化・事業承継総合支援事業
中小企業の再生支援を担う「中小企業活性化協議会」と、事業承継支援を担う「事業承継・引継ぎ支援センター」の運営のための予算事業が継続して計上されています。

小規模事業対策推進等事業
商工会・商工会議所が小規模事業者に伴走支援やセミナー等を開催する費用と共に、指導と共に作成した事業計画に基づく販路開拓を支援する予算となっています。日頃、商工会・商工会議所と関わりある企業は注目したい施策です。

中堅・中核企業の経営力強化支援事業
地域の中堅・中核企業の支援として、中堅・中核企業の課題・ニーズの把握や、ネットワーク構築、専門家派遣等を行う事業です。

中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金
中堅・中小企業向けには、工場や新拠点設立のための設備投資の補助金も計上されています。令和5年度補正予算では1,000億円で計上されていましたが、令和7年度概算要求では20億円と規模が小さくなっており、補助上限が50億円(投資下限額10億円)であることを考えると、採択数はかなり限られそうです。
ただし、令和6年度の補正予算においいて大型計上される可能性もあるので、補正予算の動向を注目したい補助金です。

地域の人事部支援事業
中堅・中小企業の人事機能(人材確保・人材育成・キャリア支援等)を、地域単位で担うことを目指した支援制度です。要求額3億円と小規模ではあるものの、少子高齢化・人口減少に伴い、地域では労働力不足の深刻化が予想されることもあり、実効性に注目したい事業です。

サービス産業・流通業の基盤整備事業
人手不足の課題に対しては、流通・物流における省力化・生産性向上に関する実証事業の予算も計上されています。

成長型中小企業等研究開発支援事業(Go Tech)
中小企業の研究開発については、例年と同様にGo-Tech事業が計上さています。研究開発・試作品開発に係る取組を最大3年間補助する事業等が盛り込まれています。

省エネ設備更新支援(省エネ補助金)
工場等の設備・機器を省エネ性能の高いものへ更新する際の費用を支援する事業等が計上されています。予算規模も300億円と大きく、設備更新を検討している企業にとっては注目したい補助金です。

スタートアップ向け施策の概要
「スタートアップ支援事業」として、①ユニコーン創出支援事業、②ディープテック・スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業、③)医工連携グローバル展開事業、④次世代ヘルステック・スタートアップ育成支援事業、⑤フェムテック等サポートサービス実証事業の4つがパッケージされています。

上記で掲載された事業の中で、注目したい施策と、パッケージには入っていませんが、中小企業向けで活用できる施策を、以下のとおりピックアップしています。
ユニコーン創出支援事業(J-Startup等)
評価額が10億ドル以上のいわゆるユニコーンを生み出す施策として、スタートアップの表彰事業や支援の枠組み(J-Start-up)づくり、シリコンバレーの海外拠点運営事業が計上されています。予算額が13億円となっており、ユニコーンを創出することを目的とするには、少し規模が小ぶりな印象を受けました。

ディープテック・スタートアップ人材確保支援
ディープテック(科学的な発見や革新的な技術)を活用したスタートアップの人材発掘・育成、経営人材確保を目的とした補助金です。

次世代ヘルステック・スタートアップ育成支援事業
ヘルスケア分野のスタートアップについては、研究開発資金の助成を行う補助金が計上されています。

宇宙産業の成長加速に向けた技術開発事業
成長分野として注目される宇宙産業においても、実証事業や研究開発のための事業が計上されています。

フロンティア育成・基盤構築事業(懸賞金型事業含む)
大学の研究シーズを活かしたイノベーション創出のため、①先端研究・懸賞金型事業、②ムーンショット型研究開発事業、③官民による若手研究者発掘支援事業、④産学融合拠点創出企業、⑤デジタル・ロボットシステム技術基盤構築事業の5つが計上されています。これらのうち、「懸賞金型事業」は、国としてクリアすべき課題に対して、魅力的なインセンティブを設計して野心的挑戦を募る取組であり、新しいアプローチです。


GX推進対策費(グリーントランスフォーメーション関連)
GX(グリーントランスフォーメーション)に関しては、他の施策より予算額が大きく経済産業省として注力している様子がうかがえました。以下のとおり、クリーンエネルギーを利用した自動車・蓄電池関連・省エネ設備更新関連が計上されており、GXを推進するスタートアップに対しても幅広い支援施策が計上されています。必ずしも中小企業向けではありませんが、注目していきたい動きです。
クリーンエネルギー自動車導入促進補助金

蓄電池の製造サプライチェーン強靱化支援事業

省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費

GX分野のディープテック・スタートアップ支援事業

まとめ|地域企業・中小企業が注目すべきポイント
令和7年度経済産業省概算要求のうち、「中小企業向け」「スタートアップ向け」に加えて、大型予算が並ぶ「GX推進対策費」において注目したい施策をピックアップし、ポイントをお伝えしました。
大きく目新しい施策は見られませんでしたが、GXについては計上される予算も大きく、経済産業省としても今後産業として注目している様子がうかがえました。
概算要求では政策的予算が計上される傾向が高く、中小企業にとって利用頻度が高い「持続化」「もの補助」「IT導入補助金」等は補正予算で計上されるケースが多いため、秋ごろに公表される補正予算の動向も注視したいと思います。
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