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インタビュー

物流業からクリエイティブ領域へ多角化、老舗のベンチャー企業の挑戦|SRホールディングス

広島県福山市に本社を置き、グループ理念である「Design Your Life」を掲げ、物流・アパレル・商事・ライフサービス・機械・不動産・小売サービス・映像クリエイティブと多角的な経営を展開するSRホールディングス株式会社。

祖業である物流業から積極的なM&Aを活用し、自らを「老舗のベンチャー企業」と定義し、地域との共生とビジネスの成長を両立する同社の経営戦略やM&Aの取組について、同社管理本部 グループ戦略室 マネージャー 草野 貴之氏にインタビューしました。

物流業から事業を多角化、地域と共生し、多様な個性を持つグループへと成長

運送業を祖業とし、クリエイティブ分野に事業を拡大

SRホールディングスは、1954年に現社長である荒木 栄作の父上が創業した「昭和陸運」が母体となっています。約20年前に社長が入社した頃は、事業は実運送のみで従業員数は20名程度でした。

その後ビジネスモデルを拡大転換し、自社保有車輌による実運送に加え傭車や、倉庫業、通関を行う国際事業まで領域を広げ、物流の川上から川下までワンストップソリューションで行う総合物流業へ事業拡大してきました。心掛けて来たのは「あらゆる仕事を断らなかったこと」です。

地域に根差して事業を展開すると、特に福山市という地域には様々な業種の会社が存在しておりますが、規模に関係なく、小さな声にもしっかりと応えて来ました。現在も、食料品から鉄鋼まで、幅広い業種を取り扱っています。


既存事業の物流事業以外の領域でも、業種の枠を超えた様々なフィールドで挑戦を続けています。元々社長が学生時代にデザインを学んだ経験から、クリエイティブな事業に関心があったため、その視点を活かして、多角的に事業拡大を行っています。

現在では、物流・アパレル・商事・ライフサービス・機械・不動産・小売サービス・映像クリエイティブなどの12社を傘下に抱えるホールディングスカンパニーとして、福山を拠点に東京、大阪、岡山、広島、茨城、成田に事業展開しています。グループ全体の従業員数は300名を超えるようになりました。


私自身は、現在グループ全体を管轄しており、M&Aについても担当しています。荒木社長を一言で現すなら「スピード感」です。クリエイティブな感性を活かして、物事を俯瞰して捉えており、その中にデザイン的な思考を取り入れているので、1つ1つの意思決定が素早いことを日々の業務を通じて感じています。

2018年11月にはグループの新社屋を竣工しました。荒木社長のデザイン的な思考を活かし、働きやすさ、異なる企業文化の多様な人材の価値観や個性を生かせる環境を整備しました。

1Fのショールームでは、アパレルの展示会を開催したり、セミナールームを完備し、グループの研修や入社式、イベント等も行っています。また、本社全館フロアではBGMにジャズが流れる中で業務を行っているのも特徴の1つです。

 

多様性を活かし、シナジー創出により成長するグループへ

あらゆる産業の基幹となり、関連が深い物流事業を展開していることは、弊社の強みの1つです。グループ企業の輸送や保管、通関ニーズに幅広く応える事で、物流業を展開している強みを活かすことが出来ます。不動産事業を例に挙げても、物流不動産まで事業領域を広げてビジネスを構築することが可能です。

お伝えしたとおり、当社は現在12社の企業グループであり、多様な事業の集合体となっています。この多様性は、それぞれの事業規模や領域が拡大し、事業の柱をより太くすることで、隣接する事業と相乗効果を生むことが出来ると考えています。

直近の動きとして、2020年12月にグループ内のアパレルカジュアルの製造販売事業と、EC事業それぞれに強みを持つ2社が経営統合し、新たなブランドをスタートしました。お互いの強みを活かし連携が深まった両社が、更なる相乗効果を生むためにひとつになり、成長を続けています。


また、新規事業として、今年度新たにワーキングウェア関連全般の小売業へも参入しています。今後グループ内でのワーキングやカジュアルの製造分野との連携を深めていく予定ですし、小売業はグループにとって新しい取り組みでもあります。

同じく新規事業でFA装置設計製作(工場の生産工程自動化システム)や受配電盤、制御盤や機械フレームの板金加工を行う機械製造の分野にも参入しています。ものづくりを行う製造業(機械系)のコアをグループに持つことで、今後の関連事業での拡大を期待しています。

事業承継で地域文化を守る、異業種の個性が混ざり合う場を創る

当グループの本社は福山市にあり、地域に想いを持っています。地域社会の活性化や共生から描く成長戦略を掲げており、その1つの事例として、2021年4月に地元のイベント機材全般のレンタルを行う企業の事業を譲り受けました。

同社は長年に渡り地域に根差し、地元のお祭りや町内の運動会、自治体が行う大規模イベントの設営までを行い、地域活性化の一翼を担っていました。私自身も同社が運営していたおもちゃ屋に通ってゲームをしていた世代です。

そんな地域に根差した企業も、コロナ禍でリアルなイベント需要減少の煽りを受け、存続について協議がなされていました。

元々社長同士が知り合いだった事もあり、同社の事業承継を引き受ける交渉を進めました。当社はイベントの企画運営や映像配信などのソフト面に強みを持つグループ子会社を有しており、「地域社会から体験型のイベントを無くさない」という強い使命感の中で、ソフト・ハード両面のサービスを実現した相乗効果を発揮しているモデルです。

グループ内の人材も、物流職からアパレルデザイナーや映像クリエイター、機械エンジニア、倉庫管理者など様々な個性が結集しています。当社の経営理念の中には、異なる多様な事業体や個性が混ざり合うことで、「1+1>2」という常識にとらわれない方程式で進化していけるという考えがあります。M&Aは異なる文化が混ざり合い、お互いを認めていくことが重要です。

当グループでは、グループ内報で異業種同士の対談をしたり、アパレル子会社のカタログ撮影をグループの社屋や物流施設で行ったり、グループ内で撮影のモデルを募る等、それぞれの人材の交流を深める取組みを進めています。

M&Aの検討を進める際にシナジーを意識することは重要ですが、実際にシナジーを発揮していくには、一見泥臭いですが、意識的に人材同士の交流の機会を創っていくことが重要だと考えています。

「共感」を通じて同じ道を歩む、ストーリーを真正面から引き継ぐことが事業承継型のM&A

M&Aの方針

M&Aは弊社にとって成長戦略の重要な柱の1つに掲げています。約10年前から着手したM&Aにより8社の企業と一緒になり、事業規模の拡大や多角的に事業展開を行ってきました。対象企業のソーシングは、既存事業との関連性やシナジーに加え、現在保有しているリソースで経営マネジメントが可能かどうかという点が、重要な判断基準となります。

もちろん財務的なリターンやビジネスの将来性を十分に検討しなければいけませんが、大前提としてお互いの理念や文化、人材や事業観などを尊重出来て、共感し合い同じベクトルで進んで行けるかが重要な点であると考えています。

ここ最近、「中小企業の後継者不在による事業承継」という言葉が先行し、世の中に多く事業承継を契機としたM&Aの案件が出る様になったと感じています。私もグループを通じて、M&Aを担当する中で、事業承継に課題を持つ企業は創業オーナーが1代で築き上げられた企業も多く、全身全霊で心血を注いで育てあげた会社の承継は、言葉や数字だけでは表現しきれない多くの哲学やドラマがあると感じています。

引き受ける立場として心掛けていることは、長きにわたるそれらのストーリー全てを真正面から受け入れ、歴史や文化を継承していくことだと考えています。

M&A後は、基本的には後継の経営者をグループ内から派遣する方針です。これまで築かれた企業文化をベースとして、当社グループの一員として理念や取り組みをしっかりと理解して頂き、その他企業との連携を深め相乗効果を発揮して行ける関係を共に築いて行きます。

会社HPのデザインや情報発信については、グループ全体として統一感を出せるよう協力をしています。また、取引先や社員の待遇に関しては、全て従来の取組みを踏襲しています。

買収対象業種

既存業種(物流・アパレル・商事・ライフサービス・機械・不動産・小売サービス・映像クリエイティブ)関連及び新規事業。

買収対象エリア

既存拠点との関連性の高いエリアを優先。

買収対象規模

売上規模20億円程度まで検討可能。

買収フロー

当社とのシナジーに基づき判断し、面談の後、基本合意に至れば、決算書等に基づく質疑応答、デューデリジェンスを行います。

M&A後の対応

経営者はグループ内から派遣することが基本方針です。加えて、売手側の企業の中に改革を担える経営人材がいる事も重要な判断基準としています。社名・雇用やオフィス等は継続する事を想定しています。グループ参画後は、定例の経営会議への参加、グループで横串で行う取組みへの参画等を求めています。

 

これまでのM&A実績

岡山第一ビデオ株式会社(岡山県岡山市)

映像制作(企画・撮影・編集)、ブライダルや企業PR動画事業を展開。新規事業としてM&Aを実施。

株式会社山陽エイブイシー(岡山県岡山市)

テレビ番組のロケ(撮影)等を事業として展開。新規事業としてM&Aを実施。

株式会社SKトレーディング(大阪府中央区)(現SRユナイテッド株式会社)

カジュアルウェアの企画・製造・販売事業を展開。新規事業としてM&Aを実施。

株式会社 KMC(東京都渋谷区)(現SRユナイテッド株式会社)

カジュアルウェアのEC販売を展開。SKトレーディングとのシナジーを見込みM&Aを実施。

協栄商事株式会社(広島県福山市)

金属関連商社・サービス業を展開。福山駅前にある福山ロイヤルホテルを運営する等、地域に根差す様々な事業を展開しており、新規事業・事業領域拡大のためM&Aを実施。

株式会社小倉屋(岡山県倉敷市)

ワーキングユニフォーム製造販売事業を展開。既存のアパレル事業とのシナジーを見込みM&Aを実施。

株式会社シーケンス(広島県福山市)

金属機械製造業を展開。新規事業としてM&Aを実施。

株式会社オキタセンイ(広島県広島市)

ワーキングウェア関連全般の小売事業を展開。既存のアパレル事業とのシナジーを見込みM&Aを実施。

 

「老舗のベンチャー企業」としての挑戦、1人1人の情熱をグループの屋根に結集する

売手経営者へのメッセージ

SRグループは、沢山の方々のご支援のおかげで堅実に企業活動を続けてきた歴史があります。一方で、多角化経営にも積極的に挑戦し、事業規模や領域を拡大させ、成長し続けています。

我々は、積み上げた歴史の重みと、スピート感のある成長を目指す「老舗のベンチャー企業」です。常に変化し続ける事を恐れない柔軟な事業観や、自由と自律を尊重し、多様な価値観と色鮮やかな個性を活かした人材観を併せ持ち、新しい未来を創る企業集団を目指しています。

上記の構想を実現するためには、多くのエネルギーが必要となります。大切にしていることは、M&Aを通じて、お互いを尊重し志を分かち合える企業同士が結び合い、熱量を足し合わせること。

企業文化は異なるかもしれませんが、「社会に役立ちたい」、「みんなでもっと幸せになりたい」といった想いを共有し、成功や失敗を分かち合い、多様な個性や価値観から生まれる1人1人の情熱を、グループの屋根の下に結集し、新しい未来を共に創っていきたいと思います。

 

 

企業情報(2021年7月末時点)

会社名 SRホールディングス株式会社
代表者名 代表取締役CEO 荒木 栄作
創立年 1954年(祖業である昭和陸運)
従業員数 320名(グループ合計)
売上高 75億円(グループ合計)
資本金 1億2,000万円(グループ合計)
事業内容 1. グループ全般の事業戦略策定・経営管理・経営資源の最適配分
2. 物流事業
3. 金属機械製造・販売事業
4. 小売サービス事業
5. アパレル事業
6. ライフサービス事業
7. 不動産事業
8. 貿易事業
9. クリエイティブ事業
10. 有価証券の保有、運用、管理及び売買
本社所在地 広島県福山市引野町4-1-8
HP http://sr-group.jp/

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。 URL  :https://cregio.jp/

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