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コラム COLUMN

補助上限が過去最高、M&Aで使える事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)を解説(2022年度)


「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」は、M&A・事業承継において利用できる補助金です。具体的には、M&AのFA・仲介会社等の専門家への費用について支援を受けることができます。今回は、補助上限額が過去最高の600万円となりました。また、M&AのFA・仲介費用は「M&A支援機関登録制度」に登録された者への費用に限るといった点についても注意が必要です。本コラムでは、令和3年度補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」についてポイントを説明します。

《参考》事業承継・引継ぎ補助金事務局のHPはこちら
 ※公募要領等はこちらからご覧頂けます。
 ※具体的な補助金に関するご質問は、事務局へ直接お問い合わせください。
 (事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)お問い合わせ先)
 【電話】 050-3615-9043

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記事のポイント

  • 令和3年度補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の概要を解説。
  • 補助上限は過去最高の600万円。補助率は2/3。
  • 仲介・FA費用の対象は「登録M&A支援機関」に限定
  • 第1回目公募のみ事前着手が可能(2022年3月31日以降に限る)



事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の特徴

M&Aで利用でき、採択率が高い

「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」は、FA・仲介会社等の専門家への費用に対する支援を受けられる補助金です。令和2年度第1次補正予算より、「経営資源引継ぎ補助金」の名前で登場し、令和2年度補正予算・令和3年度当初予算では「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」として、継続されています。いずれも採択率が80%前後であり、高い採択率となっています。

過去最高の補助上限額、仲介・FA費用の対象は「登録M&A支援機関」に限定

今回新たに公開された事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)は、過去最高の補助上限額である600万円(廃業を伴う場合は+150万円)となっています。前回の補正予算では、補助上限額400万円(廃業を伴う場合は+200万円)でした。

また、令和3年度当初予算と同様に、「委託費」におけるFA・M&A仲介費用については、「M&A支援機関登録制度」に登録された機関へ依頼する費用のみが補助対象経費となります。「M&A支援機関登録制度」は、2021年8月24日に開始されており、経済産業省が「中小M&A推進計画」に基づき、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤を構築することを目的に創設された制度です。
現時点では、2,823社が登録支援機関として登録されています。M&A支援機関の手数料・報酬について本制度を利用しようとした場合、この登録支援機関に依頼する必要があります。M&A登録支援機関は、経済産業省による「中小M&Aガイドライン」の遵守を宣言することが要件となっているため、適切なM&A仲介・FA業務の遂行が期待されます。

(参考)
・中小企業庁:M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の公表(令和3年度2次公募分)について
⇒支援機関を検索する場合はこちら


「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」の概要

制度の主な概要は、過去実施された事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)の内容を踏襲する形になっています。本補助金の対象となる経営資源引継ぎは、補助事業期間中に、経営資源を譲り渡す者と経営資源を譲り受ける者との間で、事業再編・事業統合が着手・もしくは実施される予定であることが必要です。具体的なポイントは以下のとおりです。

売手・買手両方が利用可能、「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」

本補助金は、経営資源を譲り渡す者(売手)と経営資源を譲り受ける者(買手)の両方が支援対象となります。「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」という2つの類型に分かれており、それぞれ以下の要件を満たす必要があります。

買い手支援型(Ⅰ型)

事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受ける予定の中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすことが必要です。

  • 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、シナジーを活かした経営革新等を行うことが見込まれること。
  • 事業再編・事業統合に伴い経営資源を譲り受けた後に、地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業を行うことが見込まれること。

また、経営資源の引継ぎの形態により、以下に分かれます。


売り手支援型(Ⅱ型)

事業再編・事業統合に伴い自社が有する経営資源を譲り渡す予定の中小企業等であり、以下の全ての要件を満たすことが必要です。

  • 地域の雇用をはじめ、地域経済全体を牽引する事業等を行っており、事業再編・事業統合により、これらが第三者により継続されることが見込まれること。

また、経営資源の引継ぎの形態により、以下に分かれます。

(注 1)被承継者が法人又は個人事業主であること
(注 2)共同申請の場合
(注 3)個人事業主を含む
(注 4)第三者割当増資、株式交換、株式移転、新設合併、吸収合併、吸収分割、事業譲渡
※ 対象会社の出資持分の譲渡の場合の類型番号は株式譲渡に準ずる。
※ 新設分割した後に分割承継会社を株式譲渡する場合、分割会社を対象会社とみなし、類型番号は株式譲渡(対象会社の単独申請)に準ずる。
※ 物品・不動産等の物的資産のみの売買は事業譲渡に該当しない。


補助対象者は、最終契約書の当事者となる中小企業

経営資源引継ぎの要件を満たす最終契約書の契約当事者となる中小企業者等が対象となります。ただし、売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡に関しては、経営資源引継ぎの要件を満たす株式譲渡に伴い異動する株式を発行している中小企業と、対象会社と共同申請した対象会社の議決権の過半数を有する株主が対象となります。

「経営資源引継ぎの要件」を満たすことが必要

補助事業期間中に、経営資源を譲り渡す者(=被承継者)と経営資源を譲り受ける者(=承継者)の間で、事業再編・事業統合が着手もしくは実施される予定であること、又は廃業を伴う事業再編・事業統合が行われる予定であることが必要です。

ここで言う「着手」とは、専門家等との補助対象経費にかかる契約締結日が着手時点となり、補助事業期間内に当該契約が締結される必要があります。「実施される予定」とは、補助事業期間内に事業再編・事業統合に関する相手方との基本合意書又は最終契約書が締結されることとなります。

ただし、不動産業を買収する場合は、原則として常時使用する従業員1 名以上の引継ぎが行われることが必要です。単なる不動産売買に該当する場合は、対象外となります。

対象外になる例

以下のように、M&A後に被承継者の議決権が過半数にならない場合や、既に過半数の議決権を保有している会社をM&Aする場合等は、交付申請不可となります。また、いわゆる不動産M&Aと呼ばれるような、不動産売買を目的とするM&Aは対象外となっています。



一つのM&Aについて、売手・買手が利用することも可能

同一の補助対象事業において、「買い手支援型(Ⅰ型)」「売り手支援型(Ⅱ型)」各1社が交付申請が行うことが可能です。簡単に説明すると、一つのM&Aの案件に対して、買い手側・売り手側の両方とも申請することが可能となっています。ただし、同一の者による複数の交付申請は不可となっており、交付申請は原則1申請のみとなっています。売り手支援型(Ⅱ型)で、同一の被承継者が複数の対象会社を異なる承継者に引き継ぐ場合は複数の交付申請が可能となります。

なお、売り手支援型(Ⅱ型)の株式譲渡の場合で、支配株主が交付申請をする場合は対象会社との共同申請が必須となります。

補助事業期間について

交付決定日〜2023年4月30日(日)

事前着手について

今回は第1回公募のみ、事前着手が認められています。申請時点で既に、契約・発注を行っている場合や、交付決定前に契約・発注を行う予定がある場合、申請時い事前着手の届出を申請し、事務局の承認を受けることで、事前着手が可能となります。

事前着手で認められる着手日・着手予定は、2022年3月31日以後に限られます。ただし、第1回公募のみで、今後実施される第2回公募以降は事前着手は認めないとのことです。

補助対象経費について

本補助事業で認められる経費は、以下のとおりです。詳細については、公募要領でご確認ください。

特徴的な経費は、M&AのFA・仲介会社の手数料等が対象となる「委託費」と、M&Aマッチングプラットフォームの登録料・利用料が対象となる「システム利用料」です。表明保証に関する「保険料」も補助対象経費になっています。

「委託費」について

M&AのFA・仲介会社に支払う手数料をはじめとした専門家に支払う経費は「委託費」として計上することとなります。具体的な内容は以下のとおりです。M&Aの手続きにおける「着手金」「基本合意時報酬」「成功報酬」「デューデリジェンスの費用」等に加え、「不動産鑑定評価書の取得費用」「不動産売買の登記費用」といった不動産に関する費用や、「定款変更等の登記費用」「社会保険労務士への費用」等、行政書士・社会保険労務士等の専門家を活用する費用が対象となります。

ただし、「FA 業務又は仲介業務に係る中小 M&A の手続進行に関する総合的な支援に関する手数料」については、「M&A 支援機関登録制度」に登録された者が支援したものに限ります

対象とならない経費は以下のとおりです。デューデリジェンス業務のみの場合の費用は、登録機関に限られませんが、デューデリジェンスが主な内容であるものの、支援内容にマッチングやM&A手続進行に関するものを含み、実質的にFA・仲介業務である場合は、登録機関に限られます。

(対象とならない経費)

  • 再生計画書の作成等のコンサルティング費用
  • 経営資源引継ぎに伴う債務整理(法的整理及び私的整理を含む)手続に係る費用
  • FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用
  • バリューアップのためのコンサルティング費用
  • 経営資源引継ぎを伴わない不動産売買に係る費用

補助上限額・補助率について

補助上限額は600万円(廃業費用を伴う場合は+150万円)となっており、過去最高の上限額です。補助率は2/3となっています。ただし、補助事業期間内に経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は、上限が300万円となることに注意が必要です。


申請期間と申請方法

申請期間

2022年4月22日(金)〜2022年5月31日(火)17:00

※交付決定は、2022年7月中旬~下旬(予定)とのことです。

申請方法

原則、jGrantsを用いた電子申請となります。
申請するためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウント取得には時間を要するため、早めの申請が必要となります。


「相見積」について

補助金は価格の妥当性を証明するため、相見積が必要です。本補助金でも、「原則として2者以上の相見積の取得が必須」とされています。ただし、M&Aについては情報の機密性等の諸事情により、相見積が難しいケースも存在します。本補助金では以下の条件において、相見積が不要となっています。

条件①:補助対象経費において、選定先以外の 2 者以上に見積を依頼したが、全ての専門家・業者から見積を作成できないと断られた

  • 2者以上の専門家・業者から見積を断られた事が確認できる書面(電子メールの写し等)の添付が必須。
  • 明らかに業務外の専門家・業者に見積を依頼している場合(FA・仲介費用の見積を建設会社に依頼する等)は見積として認められない。

条件②:FA・仲介費用において、専門家費用がレーマン表により算出された金額以下

  • FA・仲介の選定専門家の FA・仲介費用見積額が、レーマン表により算出される金額(着手金含む報酬総額)よりも低い金額又は同額の場合は相見積の取得が不要。
  • ただし、以下全てに対応する必要がある。
    ①「関与専門家選定理由書」に譲渡額又は移動総資産に基づくレーマン表での報酬総額の試算額を記載。
    ②譲渡額又は移動総資産が未定の場合は、想定金額を「関与専門家選定理由書」に記載(FA・仲介専門家に確認の上、想定金額の根拠理由を詳細に記載すること。想定金額の根拠理由が未記載又は不明確な場合は、相見積不要な条件に該当しないため注意)。
    ③見積書に記載の FA・仲介費用見積額が譲渡額をベースに算出されている場合は、譲渡額に基づくレーマン表での報酬総額と FA・仲介費用見積額の比較、見積書に記載の FA・仲介費用見積額が移動総資産をベースに算出されている場合は、移動総資産に基づくレーマン表での報酬総額と FA・仲介費用見積額の比較を行う(見積書と委託契約書の FA・仲介費用の算出方法が同じであることが前提)。
    ④FA・仲介費用の最低報酬額がレーマン表での報酬総額を上回らないこと。
    ※ 譲渡額又は移動総資産が少額であり、レーマン表での報酬総額を委託契約書で定められているFA・仲介費用の最低報酬額が上回る場合は、相見積を取得すること。
  • FA・仲介費用は、FA・仲介専門家との委託契約に基づき支払う費用であり、着手金、マーケティング費用、リテーナー費用、基本合意時報酬、成功報酬の費用形態を指します。


条件③:システム利用料において、成功報酬のみの M&A のマッチングサイトに複数登録して、成功報酬を申請する

  • 登録したことを証する複数のマッチングサイトの登録画面等のスクリーンショット等の提出が必須。
  • 成功報酬のみの特定サイト 1 社のみに登録をする場合は、相見積が必要。
  • 着手金等のランニングコストが係るマッチングサイトは、相見積が必要。

条件④:FA・M&A 仲介費用において、2022 年3月31日前に FA・M&A 仲介業者と専任条項がある委任契約を締結し、補助事業期間中に締結した基本合意又は最終契約に基づく中間報酬又は成功報酬

  • 2021年3月31日前に FA・M&A 仲介業者と専任条項がある委任契約を締結しており、相見積を取得することが FA・M&A 仲介業者との契約上困難な場合は、補助事業期間中に相手方と基本合意又は最終契約を締結し、FA・M&A 仲介業者との委任契約に基づく中間報酬・成功報酬を支払う場合、当該補助対象経費に対する相見積の取得は不要。
  • 弁護士及び税理士等の専門家との顧問契約等は、2022年3月31日前に締結していたとしても本条件の対象外。
  • 当該 FA・M&A 仲介業者との契約が実際の業務提供実態と異なる場合等、社会通念上適切な契約でないと事務局が判断した場合は補助対象外。



おわりに

令和3年度補正予算「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用型)」について、概要とポイントを解説しました。今回は、補助上限が過去最高の600万円であり、補助率も2/3と高く、M&Aを活用する中小企業者の負担を大きく軽減することができます。採択率も8割前後となっており、他の補助金と比較して高く、事務負担も比較的楽な補助金です。大きな特徴として、仲介・FA費用については、「登録M&A支援機関」に限定されることとなりますので、ご利用の際は、仲介・FA会社が「登録M&A支援機関」かどうかをご確認ください。

当社も過去本補助金を利用しましたが、支援実績として100%採択されています。本補助金の活用含め、M&A・事業承継について、お気軽に当社にご相談ください。

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所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
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