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M&A事業承継

食品業界M&Aとは?市場動向・事例・メリットをわかりやすく解説

食品業界M&Aとは?市場動向・事例・メリット


食品業界は国内総生産額100兆円超を誇る巨大産業であり、地域経済や雇用を支える重要な分野です。コロナ禍を経て市場構造が変化する中、M&Aはエリア拡大・物流コスト削減・事業承継の解決策として注目されています。

本記事では、食品業界の市場動向、M&Aの目的、地域事例を分かりやすく解説します。

記事のポイント

  • 食品業界は裾野が広く巨大な市場。新型コロナウイルスの影響により、外食の支出が減少し、スーパーの支出が増加。
  • 食品業界のM&Aの主な目的は「エリア・商圏の拡大」「物流コストの削減」「取引先・仕入先・取扱い商品の拡大」「商流の統合」「新事業展開」。
  • 地域においても様々なM&A事例が存在。今後の展開に注目。

食品業界の市場動向と課題

国内生産額と雇用への影響

2019年の食品産業の国内生産額は101.5兆円であり、内訳は食品製造業37.9兆円、関連流通業34.7兆円、外食産業28.9兆円となっており、近年は増加傾向で推移しています。

食品製造業については、各都道府県の全製造業の従業者に占める割合が多くの都道府県において1割を超えており、地域雇用において重要な役割を果たしています。

ただし、食品製造業の労働生産性を見ると、緩やかな上昇傾向にはあるものの依然として低い水準に留まっています。

(出典)農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書

コロナによる消費変化と市場シフト

新型コロナウイルス感染症により、食料消費面で市場は大きく変化しました。外出の自粛や緊急事態宣言により、2020年以降の食料消費支出額では、外食への支出額が大きく減少する一方、生鮮食品への支出額は増加し、高止まりしています。

(出典)農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書

生鮮食品への支出額が増加した要因の一つが自宅での料理機会の増加です。これに伴い、食品スーパーの売上高が増加しています。

(出典)農林水産省「令和2年度 食料・農業・農村白書

食品産業の商流

一般的な食品産業の商流は、農作物等を取り扱う「生産者」と、それを加工する「食品製造業者」、生産物を原材料として仕入れて食品製造事業者に卸したり、加工食品を卸す卸売業者や一般消費者に販売する小売業者等の「流通業者」、食品を仕入れて調理して販売する外食や中食といった事業が存在します。

また、食材だけではなく、食材を販売する際の包装についても、資材の卸売や機器メーカーも存在し、関連した様々な産業が存在する大きな市場です。



食品業界でM&Aが求められる理由

食品業界は、地域経済や雇用を支える大きな産業である一方、競争の激化や消費者ニーズの変化に直面しています。そのため、企業が持続的に成長し、競争力を強化するためにM&Aを活用する動きが広がっています。

主な目的は「エリア・商圏の拡大」「物流コスト削減と効率化」「商流の統合と新事業展開」の3つです。

エリア・商圏の拡大

食品業界のM&Aで最も多い目的の一つが、エリアや商圏の拡大です。小売業や外食・中食産業においては、自社の商圏外にある同業を買収することで、新しい顧客層を取り込み、売上を伸ばすことが可能になります。

特に地方スーパーや飲食チェーンでは、M&Aによって短期間で販路を広げ、地域密着型から広域型への転換を図るケースが増えています。

物流コスト削減と効率化

食品業界では、生鮮食品や加工食品を安定的に届けるための物流コストが経営の大きな課題です。

M&Aによって物流ネットワークを統合すると、配送ルートの効率化や倉庫の共同利用が可能になり、コスト削減とサービス品質の向上を同時に実現できます。

特に、広域展開を進める企業にとっては、物流面でのシナジーが収益力強化に直結します。

商流の統合と新事業展開

食品業界の商流は、生産者・製造業者・卸売業者・小売業者・外食事業者など多岐にわたります。

卸売業が生産者を買収するなど商流を統合するM&Aは、仕入れ先や商品ラインナップを拡充し、顧客への付加価値を高める効果があります。

さらに、既存の業態から新しい業態へ参入する「新事業展開」もM&Aの活用シーンの一つです。たとえば、定食中心の外食チェーンがラーメン店を買収し、多様な業態ポートフォリオを構築するケースも見られます。

食品業界のM&A事例一覧

ブルドックソースがサンフーズを子会社化

2019年10月にソース製造販売のブルドックソース(東京都)が、「ミツワソース」「ヒガシマルソース」等の独自ブランドを有するサンフーズ(広島県)をM&Aにより子会社しました。

参照:https://ir.bulldog.co.jp/ja/ir/news/news-2098749612248363397/main/0/link/191007_1_etc.pdf

ヨシムラ・フード・ホールディングスが香り芽本舗を子会社化

2020年6月に、積極的なM&Aにより食品製造会社のグループ化を図るヨシムラ・フード・ホールディングスは、島根県出雲市のわかめ・ひじき・めかぶ製品の加工・製造・販売を行う香り芽本舗を子会社化しました。

参照:https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/1841987/00.pdf

フジがニチエーを子会社化

2020年1月に、愛媛県松山市に本社を置き、四国地域と広島県・山口県にスーパーマーケットチェーンを展開するフジは、同業のニチエー(広島県福山市)を買収し、子会社化しました。

参照:https://www.the-fuji.com/company/news/docs/20200114_shinsetsu.pdf

神戸物産が洋菓子製造販売サラニの全事業を取得

積極的なM&Aで事業を拡大し、「食の製販一体体制」を目指す神戸物産(兵庫県加古郡稲美町)は、2020年4月に同社グループ会社の株式会社オースターフーズ(兵庫県姫路市)を通じて、岡山県瀬戸内市の洋菓子製造販売会社であるサラニの全事業を引き受けました。

プレスリリース:https://www.kobebussan.co.jp/upload/ir/IRNews/626/626_20200401.pdf

当社が支援した食品業界M&A事例

当社が支援した食品業界M&Aの事例を紹介します。

山口県下関市から神奈川県平塚市の企業へ

食品輸出入やPB商品の製造を手がけるオンガネジャパン(山口県下関市)は、後継者不在や組織体制の強化を課題として抱えていました。事業を次世代につなぎ、さらに海外展開を加速させるため、同社はM&Aを通じて荒井商事株式会社(神奈川県平塚市)グループへの参画を決断しました。

関連記事:食品流通から世界市場へ挑戦|オンガネジャパンが選んだ事業承継とM&Aの決断

広島県福山市の事例

包装資材商社のKPネッツホールディングス(広島県福山市)と真空包装機メーカーの西原製作所(広島県広島市)がM&Aを通じて提携し、販売力と技術力という双方の強みを融合。事業承継を契機に、食品包装業界で「パッケージと機械の融合」を実現し、新たな市場提案と成長を目指す事例。

関連記事:食品業界M&A事例|卸売業と製造業の強みを融合し、新たな成長を実現

まとめ|食品業界M&Aは次の成長戦略と事業承継のカギ

食品業界は市場規模の大きさだけでなく、地域雇用や生活に直結する産業です。消費行動が変化する今、M&Aを活用することで事業承継の課題解決や新規エリア進出など、将来を見据えた戦略を描くことが可能です。

当社では食品業界のM&A支援も豊富で、中国・四国地方を中心に多数の実績を重ねています。地域に根ざした視点で最適なM&Aプランをご提案いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。


クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長をサポートしてきました。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。
URL  :https://cregio.jp/

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