
近年、中小企業におけるM&Aは「会社を売る=ネガティブ」というイメージから、事業承継や成長戦略の手段として前向きに活用されるケースが増えています。
その背景には、全国的な後継者不足や経営環境の変化があり、実際に会社を譲渡する経営者にはそれぞれの理由とストーリーが存在します。本記事では、これまでのM&A支援経験を踏まえ、「なぜ会社を売却するのか」という譲渡背景を分かりやすく解説します。
目次
会社を譲渡するとは?
「会社を譲渡する」とは、会社の所有権を他者に渡して対価を得ることです。会社ごと譲渡する場合は「株式譲渡」、一部事業のみを譲渡する場合は「事業譲渡」と言います。
譲渡に関する背景には、従業員の雇用や取引先の維持、個人保証問題、資金繰りなど、多くの要素が関わってきます。現在、多くの中小企業がM&Aによって会社を譲渡していますが、その背景となる理由は大きく3つあります。
①親族や従業員の中に後継者がいない
②不採算事業又は非主力事業を譲渡したい
③成長速度を加速させたい
会社売却の主な理由
譲渡背景①親族や従業員の中に後継者がいない
加齢による体力・気力の減退を感じる経営者は、後継者がいないことに悩み、会社の譲渡を検討することがあります。
そういった経営者の多くは、事業(得意先・仕入先・外注先等)の維持、従業員の雇用維持のために会社の譲渡を検討していることが多いです。以下は、当社が経営者の方からよくお聞きするお言葉の例示です。
(社長から聞くお言葉)
- 息子が東京の大企業に勤めていたり、地元で公務員を務めていたりする。もう地元である岡山に返ってくる気配はない。
- 会社内に息子が入っているが、(能力・性格的に)後継者にするには厳しいかも知れない。優しすぎるので、経営者に向いていないと思う。
- 息子がいるが、引継ぎ等を考えると時間がかかる。しかし、自分にはその時間はあまり残されていない。
- 従業員に社長にならないかと持ち掛けたところ、「社長はできない。株は買い取れない。」と断られた。
譲渡背景②不採算事業又は非主力事業を譲渡したい
複数の事業を積極的に展開している経営者には、不採算事業を抱えており、自社では黒字化が難しいため当該事業を譲渡することがあります。
また、赤字でなくても、管理が煩雑、利幅が薄い、主力事業とのシナジーが薄い、今後は売上減少が見込まれる等の理由で、事業の一部を譲渡することもあります。
(社長から聞くお言葉)
- 先代が展開してきた事業の赤字が続いている。黒字化が難しく、これ以上資金注入はできないため譲渡したい。
- 本業の傍らで、趣味で始めた事業だった。それなりに伸びてきたが、手間がかかる割に大して儲からない。本業との関連性も薄くて、いま一つ力を入れられない。きちんと経営して伸ばしてくれる方に引き継いで欲しい。
譲渡背景③成長速度を加速させたい
事業を急速に拡大してきた経営者には、組織の管理体制が不十分だったり、会社の成長に与信が追い付かなかったりするケースがあります。
経営者が孤軍奮闘するだけでは企業を成長させることに限界があると感じた時、より資金力の大きな企業のグループ傘下に入ったり、事業の一部を譲渡することで、その後の成長速度を加速させる選択をすることがあります。ご高齢の経営者に限らず、30~50代の比較的若い経営者にも多い譲渡理由です。
(社長から聞くお言葉)
- 市場の成長の波に乗り、順調に事業を拡大させることができた。しかし、その間、社内体制の整備が不十分であり、自分の右腕を育てることができなかった。大手企業や事業承継ファンド等と資本提携し、組織的経営への移行と、将来の経営人材の確保や育成をサポートしてもらいたい。
- 業績を順調に伸ばしてきたが、これからどのぐらいのスピードで伸ばしていくべきか。更に成長を加速するには、自社の資金力・人材だけでは限界がある。海外展開も含めた次の成長のために、大手企業等と組みたい。
会社売却のメリット・デメリット
会社を売却することには、経営者にとって大きなメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。事業承継型M&Aを検討する際には、両面を理解したうえで判断することが重要です。
メリット:人材確保・事業継続・資金調達
会社売却の最大のメリットは、事業の存続と従業員の雇用を守れることです。後継者不在の企業であっても、買収企業の経営基盤を活用することで安定した経営を続けることができます。
また、グループ会社入りすることで人材の採用力が向上し、慢性的な人材不足の解消にもつながります。さらに、会社売却によってまとまった資金を得られるため、経営者のリタイア後の生活資金の確保や、新たな事業資金の調達にも活用できます。
デメリット:経営権の喪失・従業員の不安・統合作業の負担
一方で、会社売却には経営権を手放すことによる意思決定権の喪失というデメリットがあります。経営者自身が企業の舵取りを続けたいと考えている場合には大きな葛藤を伴います。
また、売却が従業員に伝わることで「待遇はどうなるのか」「会社の文化は変わるのか」といった不安が生じ、離職リスクが高まる可能性もあります。
さらに、M&A後の統合作業(PMI)には時間とコストがかかり、シナジー効果を出すまでに一定の期間を要する点にも注意が必要です。
事業承継型M&Aを成功させるポイント
事業承継型M&Aを成功させるには、単に会社を売却するだけではなく、準備や周囲への配慮が欠かせません。以下のポイントを押さえることで、スムーズな事業承継と企業価値の最大化につながります。
早めの準備
会社売却は、経営者が高齢になってから検討するケースが多いですが、遅すぎると買い手が見つからないこともあります。
財務状況の整理や株式の持ち分調整、事業の収益改善など、少なくとも3~5年前から準備を始めるのが理想的です。早めに準備することで、より条件の良い譲渡先を見つけやすくなります。
専門家への相談
M&Aは法務・財務・税務など多くの専門知識を必要とするため、M&A仲介会社や公認会計士、弁護士などの専門家に相談することが不可欠です。
第三者の視点を取り入れることで、自社にとって最適な譲渡方法や条件交渉の戦略を立てることができます。
従業員や取引先への配慮
事業承継型M&Aを成功させるうえで忘れてはならないのが、従業員や取引先への丁寧な説明と配慮です。売却後の不安を軽減するため、待遇や雇用条件の維持を交渉に盛り込むことが大切です。
また、取引先には早めに情報を伝え、信頼関係を維持することがスムーズな統合につながります。
おわりに
経営に悩みは尽きませんが、経営者の年齢やモチベーション、そして事業環境によって、会社を引き継ぐべきタイミングは必ず訪れます。後継者不在や不採算事業の整理、さらなる成長戦略など、会社売却を検討する理由はさまざまですが、いずれのケースでも「早めの準備」と「信頼できる相談相手」が成功のカギとなります。
私たちはこれまで数多くの事業承継型M&Aをサポートしてきました。経営者の想いに寄り添いながら、最適な譲渡先の選定や交渉をお手伝いしております。「会社を売却すべきか迷っている」「事業承継の進め方を知りたい」といった段階でも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立 :2018年4月
事業内容:
・M&Aに関するアドバイザリーサービス
・事業承継に関するアドバイザリーサービス
・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL :https://cregio.jp/
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