増加する「後継者難倒産」、倒産件数の動向をまとめ!
新型コロナウイルスによる経済的な影響が懸念される中、「倒産」件数は経済の状況を把握する指標の一つです。帝国データバンクの調査結果から、「後継者不在」による倒産件数の動向を初め、倒産件数の直近の動向と傾向についてまとめました。
記事のポイント
- 「後継者難」による倒産は年々増加し、2019年は過去最多を記録。件数だけでなく、全国で占める割合も増加。
- 2020年上半期は前年同期比15.5%増。倒産傾向全体は特に宿泊業等の観光業において多く倒産が発生。
- 倒産件数が多い業種は「サービス業」であり、人口集中地域が約4割を占める。
「後継者難」倒産は年々増加傾向
帝国データバンクの調査によると、後継者不在による事業継続の断念などが要因となった「後継者難倒産」は2019年に460件発生し、過去最多を記録しました。同年の全国での倒産件数は8,354件であり、全体の5.5%を占めています。「後継者難倒産」の件数は、2017年以降3年連続で増加しており、全国倒産件数における割合も徐々に増加傾向にあります。
(出典:帝国データバンクより)
2020年上半期の「後継者難倒産」と倒産の傾向
2020年上半期の「後継者難倒産」は238件で、前年同期比15.5%増となっており、下半期も同様に増加すれば、再び過去最多となる可能性があります。また、帝国データバンクのコメントによると、「上半期は、新型コロナ感染拡大により訪日外国人が激減したほか、日本人による旅行や出張のキャンセルも相次いだことなどから、宿泊業の倒産は80件と前年同期(36件)の2.2倍に急増し、半期ベースの過去最多(82件、2011年上半期)に迫る高水準となった。」とされており、新型コロナウィルスに関連した観光産業への影響が懸念されています。
倒産件数が多い業種は「サービス業」、人口集中地域に偏る
2019年の倒産件数は「サービス業」が1,974件(前年比+2.3%)と最多であり、うち「広告・調査・情報サービス業」が最も多く633件(前年比+1.9%)となっています。2番目に倒産件数が多い業種は、小売業であり1,945件(前年比+7.0%)、次いで建設業が1,414件(前年比0.0%)となりました。
地域別にみると倒産件数が多い都道府県は、東京都1,532件(前年比+2.0%)、大阪府1,195件(前年比+8.6%)、愛知県566件(前年比-11.3%)となり、人口が集中する地域に偏っており、全国8,354件のうち、上位3件合計で39.4%を占めています。
おわりに
「後継者難」を起因とした倒産件数は年々増加傾向であり、全国に占める割合も徐々に増加傾向となっています。2020年上半期においても同様の傾向が認められ、このままいくと更に過去最多を更新する可能性が高くなっています。直近では、新型コロナウイルスの影響により、特に観光業関連の倒産件数が増加傾向にあり、業種でいうと「サービス業」が多く、主に首都圏を中心とした人口が集中する都市圏での倒産件数が全国の約4割を占めています。
こういった傾向は、経営者の高齢化や、新型コロナウイルスによる経済への影響を鑑みると、今後も継続することが見込まれます。政府においても、M&Aが事業承継を解決する手段として認められる一方、M&Aは売手だけではなく、買手の動向にも注視が必要です。今後の経済的な影響が買手のマインドにどのような影響をもたらすか動向を把握しつつ、対象とする事業を取得する意味や効果が益々問われることとなり、経営者だけでなく、M&A仲介会社等も含め、M&Aに関わる全ての者において、経済情勢の把握や、早めの対策が問われる状況になることが予測されます。
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