はじめに
地域には様々な産業があり、M&Aを検討する上でも、それぞれの産業特性を考えた上で、売手・買手、双方の状況やニーズ・課題を把握することが必要です。高知県の経済・産業の概況や、休廃業・解散、倒産件数に加え、後継者不在率を全国と比較し、高知経済を俯瞰しつつ、高知地域で実施されたM&A案件をピックアップしました。
高知県経済の概況
高知県は、平成29年度名目県内総生産 2兆4,105億円であり、その成長率は 0.8%となっています。生産面では、第一次産業が対前年度比2.8%と3年ぶりの増加となり、特に水産業がまぐろ類、養殖ぶり等の漁獲量の増加により対前年度比19.1%増と大きく増加しました。第二次産業は前年度比2.6%となり5年連続の増加し、第三次産業は前年度比0.0%減となり、5年ぶりに減少し、卸売・小売業、情報通信業、金融・保険業等が減少しました。
高知県の人口は約69万人(令和2年6月1日時点)です。高知県は、北は四国山地で、愛媛県と徳島県に接しており、南は太平洋に面しています。森林面積が全国で最も高く、豊かな自然環境を有しており、その自然環境が一次産業の比率の高さに繋がり、四万十川流域や室戸ジオパーク等の観光資源になっていることも特徴です。「カツオのたたき」等の地域ならではの食べ物を有しており、土佐和紙・土佐打刃物等の伝統的な産業が未だ息づく地域です。
高知県の休廃業・解散、倒産の状況
2019年の高知県の休廃業・解散件数は163件(前年比18.1%増)であり、全国 23,634件において高知県が占める割合は、0.7%となっています。(出典:帝国データバンク)
倒産件数は、38件(前年度比0.0%)であり、全国 8,383件において、高知県が占める割合は、0.5%です。(出典:東京商工リサーチ)
(出典:帝国データバンク、東京商工リサーチより当社加工)
高知県の後継者不在率
2019年の高知県の後継者不在率58.5%です。また、全国における後継者不在率は、65.2%となっています。
(出典:帝国データバンクより当社加工)
高知地域で起こったM&A事例
直近で高知の地域経済においてインパクトが大きいM&A案件をピックアップしました。
事例① しぎん地域活性化ファンドが土佐清水リゾートに投資実行(2019.10発表)
四国銀行(高知県高知市)が出資し、四銀地域経済研究所(高知県高知市)が運営するしぎん地域活性化ファンドは、土佐清水市にて宿泊施設運営事業を行う土佐清水リゾート(高知県土佐清水市)に投資実行しました。土佐清水リゾートは、皇室がご来館されたことでも知られる老舗観光ホテル「足摺パシフィックホテル花椿」を事業承継した宿泊施設運営会社であり、円滑な事業承継による雇用維持と地域の観光振興の観点から、日本政策金融公庫や高知県信用保証協会と連携し、事業承継の支援を行いました。
事例② ウェルシアHDがよどやを子会社化(2019.10発表)
ドラッグストアチェーンを展開するウェルシアホールディングス(東京都)が、創業200年で高知県内に24店舗(2019年3月末時点)のドラッグストアを展開するよどや(高知県高知市)を子会社化しました。ウェルシアホールディングスは、よどやの高知県における営業ノウハウを取り入れ、共同仕入によるスケールメリットを活かし、四国地方の出店強化を図る形になり、高知県においても調剤薬局業界における業界再編の動きが進んだ事例です。
事例③ 四電工が関西設備を子会社化(2019.8発表)
四国地域を中心に総合設備事業を展開する四電工(香川県高松市)は、高知県内において空調設備工事、給排水・衛生設備工事等を手掛け、多数の工事実績を持つ老舗企業である関西設備(高知県高知市)を子会社化しました。四電工は、子会社化することに営業面・施工面でさらなる協業の促進、収益力・施工力の強化を目指すこととしています。
事例④ 極洋がクロシオ水産に資本参加(2019.8発表)
水産物の養殖事業を展開する極洋(東京都)は、1989 年の創業以来、高知県宿毛湾にて真鯛を主体に積極的に新しい業種の養殖も展開しているクロシオ水産(高知県幡多郡)へ出資持分70%の資本参加を行いました。このM&Aを通じて、極洋は水産物の調達力の多様化や安定供給の維持・拡大を図っています。
事例⑤ 萩原工業が東洋平成ポリマーを子会社化(2018.5発表)
合成樹脂加工製品事業を中心に化学繊維製品を製造・販売を展開する萩原工業(岡山県倉敷市)は、文具から食品、医薬まで幅広い分野で包装用途等に使用されている機能糸・産業資材ラミクロス類・合成樹脂製フィルム製品を手掛ける東洋平成ポリマーを子会社化しました。萩原工業は、合成樹脂加工における技術開発を進め、新市場開拓を図ります。
おわりに
高知県は、全国でも森林面積が広く、四万十川等の豊かな自然環境を活かした一次産業が、伝統産業に特徴がある地域です。休廃業・解散、倒産件数は、全国の1.0%未満であり、後継者不在率については、58.5%となっています。
M&Aでは、地域金融機関による事業承継の支援や、業界再編の動き、設備工事、水産、化学繊維製品等の様々な分野でM&Aを活用した事業展開の動きが見られました。今後、高知県の産業において、どのようにM&A案件が産まれていくか注目されます。
>>M&Aによる「事業承継」を検討される方はこちらからお問合せください。
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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立 :2018年4月
事業内容:
・M&Aに関するアドバイザリーサービス
・事業承継に関するアドバイザリーサービス
・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL :https://cregio.jp/
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