香川県のM&A・事業承継事例|休廃業・倒産状況・後継者不在率まとめ
中国・四国地域には様々な産業があり、M&Aを検討する上でも、それぞれの産業特性を考えた上で、売手・買手、双方の状況やニーズ・課題を把握することが必要です。
本記事では、香川県の経済概況・産業構造・休廃業・倒産件数の動向をデータで整理しつつ、全国との比較で見た後継者不在率の現状をわかりやすく解説します。
また、実際に香川県で行われたM&A事例(事業譲渡・事業売却・会社譲渡)も紹介し、香川におけるM&A動向を総合的にまとめています。
目次
香川県の経済概況|産業構造と成長分野
香川県は、2022年度(令和4年度)の名目県内総生産が約3兆9,722億円となっており、前年度比で+3.2%のプラス成長となっています。
実質GDPも 前年度比で+3.4% となっており、2年連続の経済成長が確認されています。県民所得や1人当たり県民所得も増加傾向にあり、雇用環境や家計所得の改善が進んでいます。これらの結果は、コロナ禍からの経済回復が継続していることを示しています。
香川県の人口は約91万人(2025年9月1日時点)です。香川県は高松市が県庁所在地であり、全国で一番面積の小さい県ですが、「讃岐うどん」が全国的に有名であり、その他にも「和三盆」等、著名な一品が存在します。また、小豆島のオリーブ等、瀬戸内の気候・文化を活かした産業が盛んです。
製造分野では、2017年の帝国データバンクの調査レポートによると「革製手袋製造業」における全国の業者の約7割が香川県に本社が所在していると報告されています。
観光分野では、ベネッセホールディングス、福武財団が展開するアート活動において「直島」が世界的にも著名であり、「瀬戸内国際芸術祭」では多数のインバウンド観光客が訪れます。
こうした観光・製造・食品分野の集積は、事業承継型M&Aや業界内再編が起こりやすい土壌となっています。
香川県の倒産件数・休廃業件数の推移
香川県の倒産件数の推移
| 調査年 | 徳島県 | 香川県 | 愛媛県 | 高知県 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 50件 | 37件 | 40件 | 31件 |
| 2021年 | 27件 | 39件 | 46件 | 17件 |
| 2022年 | 32件 | 27件 | 37件 | 13件 |
| 2023年 | 40件 | 60件 | 60件 | 21件 |
| 2024年 | 46件 | 54件 | 67件 | 46件 |
| 2025年 | 68件 | 65件 | 58件 | 28件 |
参照:日本経済新聞-四国4県の25年倒産219件、過去10年で最多 物価高・人件費増響く
2025年の四国4県の倒産件数(負債1000万円以上)は、前年比7%増の219件です。
債総額は3.6倍の852億2900万円。件数、負債総額ともに過去10年で最多。物価高や人件費の上昇がつづき、価格転嫁できない企業の経営状況が厳しくなっている実態が浮き彫りになりました。
香川県では、倒産件数は2023年以降増加傾向にあり、2025年は65件と高水準となっています。一方、休廃業件数は倒産件数を大きく上回っており、「破綻ではなく自主的な撤退」が多い構造がうかがえます。
香川県の休廃業件数の推移
| 調査年 | 徳島県 | 香川県 | 愛媛県 | 高知県 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年 | 258件 | 447件 | 651件 | 293件 |
| 2021年 | 232件 | 467件 | 600件 | 276件 |
| 2022年 | 226件 | 454件 | 551件 | 279件 |
| 2023年 | 297件 | 507件 | 662件 | 303件 |
| 2024年 | 409件 | 630件 | 736件 | 358件 |
参照:帝国データバンク-四国地区「休廃業・解散動向調査(2024年)
2024年に四国で休業や廃業、解散した企業(個人事業主を含む)は2,133件(前年比20.6%増)、2016年以降で初めて2,000件を上回っています。
2024年の休廃業・解散は全国で約6.9万件と過去最多を記録し、前年比約1.7万件(約16.8%)増加しました。コロナ禍の支援縮小、コスト高騰、経営者の高齢化などが複合的に影響し「資産超過型」や「黒字型」の休廃業が目立ったのが特徴です。
香川県の後継者不在率は全国32位
| 調査年 | 徳島県 | 香川県 | 愛媛県 | 高知県 | 全国平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2018年 | 46.3% | 43.5% | 61.3% | 58.1% | 66.4% |
| 2019年 | 49.0% | 46.1% | 62.0% | 58.5% | 65.2% |
| 2020年 | 50.2% | 47.7% | 62.8% | 59.1% | 65.1% |
| 2021年 | 56.7% | 47.9% | 62.4% | 57.9% | 61.5% |
| 2022年 | 61.6% | 49.0% | 62.1% | 57.5% | 57.2% |
| 2023年 | 61.8% | 49.3% | 62.5% | 57.3% | 53.9% |
| 2024年 | 60.2% | 48.7% | 61.4% | 60.0% | 52.1% |
| 2025年 | 53.0% | 47.5% | 59.2% | 63.2% | 50.1% |
参照:帝国データバンク-四国地区「後継者不在率」動向調査(2025年)
2025年の香川県の後継者不在率は47.5%、全国32位です。
香川県の後継者不在率が相対的に低い背景には「立地」と「事業規模」の2点が大きく影響しています。
四国の中では都市集積が進み、関西圏との人的・経済的な往来も比較的活発なため、親族外から後継者を迎える選択肢が取りやすい環境があります。
また、県内企業は四国他県と比べて中堅規模の企業割合が高く、承継=廃業という二択に陥りにくい点も特徴です。結果として、後継者不在率そのものは抑えられているものの、2025年にかけて再上昇していることから、香川県においても承継問題が「これから本格化する段階」に入りつつあるといえます。
四国4県を比較すると、後継者不在の状況は県ごとに異なるものの、共通して言えるのは親族内承継だけでは限界が見え始めているという点です。特に後継者不在率が高止まりしている県では、「事業は黒字でも、承継できずに廃業する」リスクが現実味を帯びています。
こうした中、M&Aや第三者承継は、事業を次世代につなぐ現実的な選択肢として存在感を増しています。後継者がいないからこそ、早い段階で選択肢を整理し、地域内外の承継ニーズと結びつけていくことが、企業の価値を守るうえで重要になってきています。
香川県のM&A・事業承継の事例一覧
香川県の地域経済において、事業承継や成長戦略の観点から注目されるM&A事例をまとめました。香川県企業が関与した案件や、香川県経済に影響を与えた周辺地域の事例も含めて紹介します。
事例①穴吹興産が祖谷渓温泉観光等を子会社化(2020.6発表)
香川県高松市に本社を置く総合不動産会社である穴吹興産は「和の宿 ホテル祖谷温泉」を運営する祖谷渓温泉観光(徳島県三好市)の株式約98%を取得し子会社化しました。穴吹興産はグループ会社において、宿泊事業・インバウンド向け旅行事業にも注力しています。子会社化されたのは、「和の宿 ホテル祖谷温泉」を運営する祖谷渓温泉観光(徳島県三好市)、同ホテルのケーブルカーの運営を行う祖谷温泉(香川県高松市)の2社であり、両者の代表取締役はこれまでの実績に基づく経験を活かすため、譲渡前経営者が留任する形になります。
事例②折兼がタニモトを子会社化(2019.3発表)
食品包装資材卸の折兼ホールディングス(愛知県名古屋市)は、傘下の折兼を通じて、同業のタニモト(香川県高松市)を子会社しました。タニモトは四国と岡山に拠点を持つ食品包装資材事業を展開しており、事業承継を契機としたM&Aとなっています。結果、折兼は売上高400億円超となり、食品包装業界で2位となりました。
事例③イズミがマルヨシセンターと資本業務提携(2019.11発表)
広島の地場流通大手のイズミ(広島県広島市)は四国三県(香川県、徳島県、愛媛県)を中心に小商圏型店舗のスーパーマーケットを展開するマルヨシセンター(香川県高松市)と資本業務提携を発表しました。イズミにとって、ドミナント戦略における店舗網を形成する上で、その空白部分を補完する企業として、マルヨシセンターは最適な提携先としており、地場スーパーマーケットの業界再編の流れが加速した形となりました。
事例④四電工がアイ電気通信を子会社化(2018.7発表)
四国電力グループの電気設備工事、電力関連工事、電気通信工事等を行う総合設備企業である四電工(香川県高松市)は、電気通信工事のアイ電気通信(大阪府大阪市)を子会社しました。アイ電気通信は、高速道路交通情報システムや、駅構内の通信ネットワーク設備工事など特殊技術を要する各種工事を専門的に担うとともに、工場等の電気通信設備工事なども幅広く手掛けていました。四電工は、四国域外では電気設備工事を主体に事業を展開しており、同社の子会社化により、より付加価値の高いサービスの提供が可能となりました。
事例⑤四国電力、小橋工業等が未来機械へ資本参画(2018.9発表)
四国地域の電力会社である四国電力(香川県高松市)と、岡山で農業用機械・部品製造、販売を行う小橋工業(岡山県岡山市)が、香川大学発ベンチャーでソーラーパネル清掃ロボット開発を手掛ける未来機械(香川県高松市)に出資しました。出資者には、リアルテックファンド、ちゅうぎんイノベーションファンド、いよぎんキャピタル、オプティマ・ベンチャーズ等も参画しています。総額約7億円とされており、海外進出に向けた量産化に着手するとのことです。
香川県M&Aの傾向と今後の注目ポイント
香川県におけるM&Aの動向を整理すると、近年は「倒産型」よりも「承継型」「成長型」のM&Aが中心になりつつある点が大きな特徴です。
香川県は四国4県の中でも後継者不在率が比較的低く、2025年時点では全国32位と中位水準にあります。しかし、2023年以降は再び上昇基調に転じており、経営者の高齢化が進む中で、今後数年で承継課題が一気に顕在化する可能性が高い地域でもあります。
特に、従業員数10〜50名規模の中堅・準中堅企業では、親族内承継が難航し、第三者承継(M&A)を前提とした検討が現実的な選択肢になりつつあります。業種別に見ると、観光・食品・製造業といった地域資源型産業に加え、建設・土木関連、流通・小売分野での業界再編型M&Aが今後も増加すると考えられます。
また、香川県は関西圏・中国地方との距離が近く、県外企業による戦略的買収や、広域ドミナント形成を目的としたM&Aが成立しやすい立地条件も有しています。今後の香川県M&Aの注目ポイントは「廃業の前段階でM&Aという選択肢を検討できるかどうか」にあります。
後継者が不在であっても、事業そのものに価値があれば、地域内外に承継ニーズは存在します。経営者自身が早期に情報収集を行い、M&Aを含めた承継の選択肢を整理することが、企業価値を守り、地域経済を次世代につなぐ重要な一歩となります。
まとめ
香川県は、高松市を中心に、讃岐うどん・和三盆・オリーブといった地域ブランド産業や、革製手袋製造業に代表される全国シェアの高い製造業、観光・サービス産業がバランスよく集積する地域です。こうした産業構造は、事業承継型M&Aや業界再編型M&Aが成立しやすい土壌を形成しています。
一方で、近年は物価高や人件費上昇の影響を受け、倒産件数・休廃業件数ともに増加しており、とりわけ「黒字・資産超過型」の休廃業が全国的にも問題視されています。香川県においても、休廃業件数は倒産件数を大きく上回っており、承継の選択肢が検討されないまま事業が終わっているケースが少なくありません。
後継者不在率は全国平均より低水準にあるものの、2025年にかけて再び上昇傾向が見られ、香川県においても事業承継問題は「これから本格化する段階」に入っています。親族内承継だけに依存せず、第三者承継やM&Aを含めた選択肢を早期に整理することが、今後ますます重要になるでしょう。
M&Aは「会社を売るための手段」ではなく、「事業を未来につなぐための経営戦略の一つ」です。後継者不足や将来の不安を感じた段階で、早めに専門家へ相談し、選択肢を整理することが、企業価値と雇用、地域経済を守る最善策といえます。
香川県でM&A・事業承継を検討されている方は、地域特性を理解した支援機関とともに、早期から具体的な検討を進めていくことをおすすめします。
クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
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