香川県の概況とM&A事例
はじめに
地域には様々な産業があり、M&Aを検討する上でも、それぞれの産業特性を考えた上で、売手・買手、双方の状況やニーズ・課題を把握することが必要です。香川県の経済・産業の概況や、休廃業・解散、倒産件数に加え、後継者不在率を全国と比較し、香川経済を俯瞰しつつ、香川地域で実施されたM&A案件をピックアップしました。
香川県経済の概況
香川県は、平成29年度名目県内総生産 3兆8,459億円であり、その成長率は 1.4%となっています。生産面では、第一次産業が対前年比-3.4%と3年ぶりに減少したものの、第二次産業・第三次産業が増加しました。第二次産業では、製造業が+2.6%となり、運輸・郵便業、不動産業が増加しました。
香川県の人口は約95万人(令和2年6月1日時点)です。香川県は高松市が県庁所在地であり、全国で一番面積の小さい県ですが、「讃岐うどん」が全国的に有名であり、その他にも「和三盆」等、著名な一品が存在します。また、小豆島のオリーブ等、瀬戸内の気候・文化を活かした産業が盛んです。製造分野では、2017年の帝国データバンクの調査レポートによると「革製手袋製造業」における全国の業者の約7割が香川県に本社が所在していると報告されています。観光分野では、ベネッセホールディングス、 福武財団が展開するアート活動において「直島」が世界的にも著名であり、「瀬戸内国際芸術祭」では多数のインバウンド観光客が訪れます。
香川県の休廃業・解散、倒産の状況
2019年の香川県の休廃業・解散件数は249件(前年比4.6%増)であり、全国 23,634件において香川県が占める割合は、1.1%となっています。(出典:帝国データバンク)
倒産件数は、63件(前年度比28.6%増)となっており、四国県内最多の件数となっています。全国 8,383件において、香川県が占める割合は、0.8%です。(出典:東京商工リサーチ)
(出典:帝国デーバンク、東京商工リサーチより当社加工)
香川県の後継者不在率
2019年の香川県の後継者不在率46.1%であり、全国の中で2番目の低さです。全国における後継者不在率は、65.2%となっています。
(出典:帝国デーバンクより当社加工)
香川地域で起こったM&A事例
直近で香川の地域経済においてインパクトが大きいM&A案件をピックアップしました。
事例① 穴吹興産が祖谷渓温泉観光等を子会社化(2020.6発表)
香川県高松市に本社を置く総合不動産会社である穴吹興産は「和の宿 ホテル祖谷温泉」を運営する祖谷渓温泉観光(徳島県三好市)の株式約98%を取得し子会社化しました。穴吹興産はグループ会社において、宿泊事業・インバウンド向け旅行事業にも注力しています。子会社化されたのは、「和の宿 ホテル祖谷温泉」を運営する祖谷渓温泉観光(徳島県三好市)、同ホテルのケーブルカーの運営を行う祖谷温泉(香川県高松市)の2社であり、両者の代表取締役はこれまでの実績に基づく経験を活かすため、譲渡前経営者が留任する形になります。
事例② 折兼がタニモトを子会社化(2019.3発表)
食品包装資材卸の折兼ホールディングス(愛知県名古屋市)は、傘下の折兼を通じて、同業のタニモト(香川県高松市)を子会社しました。タニモトは四国と岡山に拠点を持つ食品包装資材事業を展開しており、事業承継を契機としたM&Aとなっています。結果、折兼は売上高400億円超となり、食品包装業界で2位となりました。
事例③ イズミがマルヨシセンターと資本業務提携(2019.11発表)
広島の地場流通大手のイズミ(広島県広島市)は四国三県(香川県、徳島県、愛媛県)を中心に小商圏型店舗のスーパーマーケットを展開するマルヨシセンター(香川県高松市)と資本業務提携を発表しました。イズミにとって、ドミナント戦略における店舗網を形成する上で、その空白部分を補完する企業として、マルヨシセンターは最適な提携先としており、地場スーパーマーケットの業界再編の流れが加速した形となりました。
事例④ 四電工がアイ電気通信を子会社化(2018.7発表)
四国電力グループの電気設備工事、電力関連工事、電気通信工事等を行う総合設備企業である四電工(香川県高松市)は、電気通信工事のアイ電気通信(大阪府大阪市)を子会社しました。アイ電気通信は、高速道路交通情報システムや、駅構内の通信ネットワーク設備工事など特殊技術を要する各種工事を専門的に担うとともに、工場等の電気通信設備工事なども幅広く手掛けていました。四電工は、四国域外では電気設備工事を主体に事業を展開しており、同社の子会社化により、より付加価値の高いサービスの提供が可能となりました。
事例⑤ 四国電力、小橋工業等が未来機械へ資本参画(2018.9発表)
四国地域の電力会社である四国電力(香川県高松市)と、岡山で農業用機械・部品製造、販売を行う小橋工業(岡山県岡山市)が、香川大学発ベンチャーでソーラーパネル清掃ロボット開発を手掛ける未来機械(香川県高松市)に出資しました。出資者には、リアルテックファンド、ちゅうぎんイノベーションファンド、いよぎんキャピタル、オプティマ・ベンチャーズや個人投資家の 真鍋 康正氏等も参画しています。総額約7億円とされており、海外進出に向けた量産化に着手するとのことです。
おわりに
香川県は、高松市を中心に「讃岐うどん」「和三盆」「オリーブ」等、瀬戸内の文化・気候を活かした産業を有しており、革製手袋製造業等に特徴がありました。休廃業・解散、倒産件数は、全国の1.0%前後であり、後継者不在率については、全国の中でも2番目に低い状況となっています。
M&Aでは、地元不動産会社による観光産業の支援や、業界再編の動き、電力会社系の事業拡大に向けたM&Aや、新産業への出資等の案件がありました。また、全国的には後継者不在率が低い同県においても事業承継を契機とした案件もありました。今後、M&Aを活用し、香川県においてどのような産業形成がされているか注目です。
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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立 :2018年4月
事業内容:
・M&Aに関するアドバイザリーサービス
・事業承継に関するアドバイザリーサービス
・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL :https://cregio.jp/
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