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M&A事業承継

事業承継に関する企業の意識調査2020年まとめ

事業承継に関する企業の意識調査2020年まとめ

帝国データバンクは2020年9月14日、「事業承継に関する企業の意識調査(2020年)」の結果を公表しました。全国の中小企業を対象としたこの調査は、後継者不足の現状や承継方法の選択傾向など、事業承継に関する企業の本音を浮き彫りにしています。

本コラムでは、その調査結果の概要を整理するとともに、中国・四国地域における事業承継の現状や、M&Aの活用可能性についてわかりやすく考察します。

記事のポイント

  • 67.0%の企業が事業承継を経営上の問題と認識。2017年調査よりは減少。
  • 事業承継で苦労したことトップは「後継者の育成」
  • M&Aに関わる可能性がある企業は37.2%
  • 中国四国地域における推計企業数は、事業承継を経営上の問題と認識する企業数23.9万社M&Aに関わる可能性がある企業数は12.5万社


「事業承継に関する企業の意識調査(2020 年)」概要

67.0%の企業が事業承継を経営上の課題と認識しており、前回調査より割合は減少

事業承継に関する企業の意識調査(2020 年)」では、「経営上の問題の一つと認識している」と回答した企業は55.2%、「最優先の経営上の問題と認識している」は11.8%となり、合計すると67.0%が事業承継を経営上の課題と認識している結果になりました。

3年前に実施された「事業承継に関する企業の意識調査(2017 年)」では、同様の質問項目について、「経営上の問題の一つと認識している」と回答した企業は57.5%、「最優先の経営上の問題と認識している」は13.6%となり、合計すると71.1%であり、前回調査より回答割合は低下したものの、約7割の企業が事業承継を経営上の課題と位置付けています。

<「事業承継に関する企業の意識調査」における2020 年と2017 年の比較>

  2020年 2017年
最優先の経営上の問題と認識している 11.8% 13.6%
経営上の問題の一つとして認識している 55.2% 57.5%
経営上の問題として認識していない 21.6% 18.2%
分からない 11.4% 10.8%


企業の4割が事業承継計画を有している

事業承継計画の有無については、「計画があり、進めている」という企業は18.7%、「計画はあるが、まだ進めていない」は21.2%であり、合計すると39.8%は事業承継計画を有している結果となりました。

2017年調査では、「計画があり、進めている」という企業は22.9%、「計画はあるが、まだ進めていない」は21.3%であり、合計して44.2%となっています。

年代別に見ると「計画があり、進めている」又は「計画はあるが、まだ進めていない」と回答した割合は、39歳以下で19.0%、40代で21.6%、50代で36.8%、60代で50.4%、70代で58.9%、80歳以上で55.6%となっており、60代になると50%を超え、年代が上がるにつれて、上昇する傾向になっています。

ただし、前年度と比較すると39歳以下、80代が上昇し、その他の年代では減少する結果となりました。

<「計画があり、進めている」又は「計画はあるが、まだ進めていない」と回答した企業割合の2020年、2017年調査の年代別比較>

  2020年 2017年
39歳以下 19.0% 18.0%
40代 21.6% 26.8%
50代 36.8% 41.6%
60代 50.4% 54.6%
70代 58.9% 60.2%
80代 55.6% 46.5%


事業承継で苦労したことトップは「後継者の育成」

事業承継で「苦労したこと」「苦労しそうなこと」に対する回答はいずれも「後継者の育成」でした。

「苦労したこと」の内訳を見ると、「相続税・贈与税などの税金対策」「自社株など資産の取扱い」「後継者の決定」「後継者への権限移譲」等、様々な課題があります。

第三者譲渡(M&A)は、株式による事業の引継ぎですが、経営者育成の問題、税金関係、資産、従業員マネジメント等、M&Aにおいても課題として挙げられるものもあれば、そうでないものもあり、事業承継には様々な課題が包含されていることが分かります。

(出典:帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020 年)

M&Aに関わる可能性がある企業は37.2%

近い将来におけるM&Aの関わり方について「買い手となる可能性がある」と回答した企業は21.6%であり、「売り手となる可能性がある」と回答した企業は10.5%「買い手・売り手両社の可能性がある」と回答した企業は5.1%であり合計37.2%がM&Aに関わる可能性があると回答しています。

帝国データバンクは同様の調査を2019年6月に実施ており、同年7月に実施した「M&Aに対する企業の意識調査」と比較すると、「売り手となる可能性がある」と回答した企業の割合が2.6%増加しており、M&Aに関わる可能性があると回答した企業割合についても前回調査より増加しています。

(出典:帝国データバンク「事業承継に関する企業の意識調査(2020 年)


(出典:帝国データバンク「M&Aに対する企業の意識調査」

新型コロナウィルス拡大を契機に事業承継への関心が高くなった企業は8.9%

新型コロナウィルス拡大を契機として事業承継への関心について、「高くなった」と回答した企業は8.9%ですが、「変わらない」と回答する企業は75.0%になっています。

調査では経営者の声も取り上げられており、「新型コロナの影響で事業承継どころではなくなってきている。今は会社の存続が当面の課題になっている状況」や「新型コロナの影響が拡がっている現状では事業承継する勇気が出てこない」といった意見も掲載されています。

中国四国地域に事業承継とM&Aの考察

中国四国地域における推計企業数

中小企業庁が公表している「中小企業・小規模事業者の数(2016年6月時点)」では、中国四国地域における企業の総数は33.7万社となっています。

今回の調査を元に推計すると、71.1%である23.9万社が経営上の課題として事業承継を位置づけ37.2%の12.5万社が何らかの形でM&Aに関わることとなります

単純な数値で規模を図ることは難しいですが、中国四国地域においても、多くの企業において事業承継は課題として認識されており、M&Aへの関心も高くなっています。

  企業数 事業承継を経営上の課題と位置付ける企業数 M&Aに関わる可能性がある企業数
中国地域 鳥取県 16,088 11,438 5,984
島根県 22,191 15,777 8,255
岡山県 52,472 37,307 19,519
広島県 83,126 59,102 30,922
山口県 38,987 27,719 14,503
(合計) 212,864 151,343 79,183
四国地域 徳島県 25,369 18,037 9,437
香川県 30,935 21,994 11,507
愛媛県 43,577 30,983 16,210
高知県 25,025 17,792 9,309
(合計) 124,906 88,806 46,463



中国四国地域におけるM&A事例

中国四国地域において、事業承継を契機としたM&A事例を以下のとおりご紹介します。買い手企業、売り手企業、様々なニーズと課題があります。


おわりに

事業承継は今や全国的な経営課題であり、約7割の企業がその対応を経営上の重要テーマと認識しています。さらに、約4割の企業がM&Aに何らかの形で関与していることからも、承継手段としてのM&Aは一般化しつつあるといえます。

こうした潮流の中で、地域企業にとっても「自社の持続的成長をどう実現するか」という視点から、M&Aを経営戦略の一部として捉えることが求められています。後継者問題の解決にとどまらず、事業拡大や競争力強化の手段としても、M&Aを前向きに検討することが今後の地域経済にとって重要な鍵となるでしょう。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長をサポートしてきました。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。
URL  :https://cregio.jp/

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