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コラム COLUMN

広島のイノベーションをリードする、「ひろしまサンドボックス」


イノベーション立県を目指す広島県が強力に推進するイノベーション施策「ひろしまサンドボックス」。何度も試行錯誤できる実験場=砂場(サンドボックス)を意味する同プロジェクトは、2018年の立ち上げから、サンドボックスを起点に様々なプロジェクトを展開。今や広島県のイノベーションをリードする存在となりました。プロジェクト立ち上げ当初から関わる担当者、広島県商工労働局イノベーション推進チーム 尾上 正幸氏に、同プロジェクトの今についてインタビューしました。

作ってはならし、また作る。イノベーション実証フィールド「ひろしまサンドボックス」

デジタル技術普及のために生まれた実証プロジェクト

「ひろしまサンドボックス」を立ち上げた2018年当時は、まだ広島県内でも「デジタル技術が十分に普及していない」という状況でした。広島の地域企業を対象とした「デジタル技術を導入しているか」というアンケート調査でも、「取組中」と回答したのは10.8%に留まっており、デジタル技術ではなく、まだまだマンパワーでどうにかするという状況でした。なぜデジタル技術導入が進まないかをヒアリングしたところ、「費用対効果が分からない」「大手企業に相談したところ、導入コストが2000-3000万円と言われた。この価格が正しいかどうか分からない」という声が多かったです。

この課題を解決するために、プロジェクトの初期段階で広島県がリスクマネーを提供し、「失敗してもいい」ので、チャレンジを促したいという想いでスタートしたのが「ひろしまサンドボックス」でした。予算規模は3年間で10億円とし、「砂場(サンドボックス)」の名前のとおり、「作ってはならし、また作る」というコンセプトのもとに、全国から様々なアイデアを募集し、失敗してもいいチャレンジの砂場を用意しました。県民の皆さまから頂いている大切な県費を、広島県の未来のための実験に使うという大胆なプロジェクトです。



組織内・組織外へ広がるオープンイノベーション、県外からも注目される事業へ

2018年の立ち上がり当初は、3年間の実証事業をモデル化し、横展開することを目的としていました。実際にやってみると、想像以上に全国からチャレンジャーの応募がきました。当時採択できたプロジェクトは9つで、せっかく手を挙げて頂いた方々にどうにか再チャレンジいただけないかと、翌年2019年は挑戦できる機会の裾野を広げることに注力しました。サンドボックスを推進する途中で多くのプラットフォーマーに参画いただけたことと、さらに民間企業の活力によって実証の幅を広げたいと考え、パートナー企業を募集しました。単にボランティアとして参加するのではなく、デジタル化を進めることができるシーズ(技術)を持つパートナー企業が中心となってコンソーシアムを形成し、組織だって新規ビジネスの生成にチャレンジする仕組みづくりが目的です。パートナー企業と共に挑戦したい県内企業を募集し、取組を広げていきました。

サンドボックスの動きを広げることで県庁内の他セクションからも声をかけていただけるようになりました。サンドボックスを運営しているのは商工労働局ですが、連携して「一緒に実証事業に取り組みたい」という局が出てくるようになり、「行政提案型」のプロジェクトがスタートしました。各局が主体となり、サンドボックスの会員であるスタートアップ等の先進的なデジタル技術を持つ企業と連携するプロジェクトを展開しています。最初は「道路」から始まり、「河川」、「鳥獣被害」、「スポーツ」等、商工労働局以外の分野でも実証実験を募集し、現在も実験中です。さらに2021年度には「スマート農業」「不法投棄対策」等の新しい取組が企画・実施されています。
同時期に、デジタル技術活用が広がり、データが蓄積されても、そのデータを扱える人材が必要だということで、AI人材開発プラットフォーム「ひろしまQUEST」を立ち上げました。こちらでは、株式会社SIGNATEと共創し、AI学習のための超実践型オンライン講座や、学ぶための学習の場として「ハンズオン講習会」や「アイデアソン」を実施しました。





2020年になり、新型コロナウイルスの感染が拡大すると、それに伴い地域にも様々な新たな課題が発生しました。それらの課題を解決するために立ち上げたのが「ニューノーマール提案型」の「D-EGGS PROJECT」です。こちらのプロジェクトでは、AI・IoTエンジニアコンサルティングを得意とする株式会社ワクト、創業期~シリーズAのスタートアップを中心に出資・インキュベーションを行うVCである株式会社サムライインキュベート、ローカルにおけるコミュニケーションプラットフォームを構築する株式会社第一エージェンシーと連携し、地域内外のスタートアップに対して、広島県をフィールドに実証事業を行う方を支援する内容となっています。全国から391件の応募があり、最終的に30件のプロジェクトを採択し、地域外からもイノベーションを起こす人材を広島に誘致することができました。




マッチングを加速することで新しいイノベーションを創出、「ひろしまサンドボックスマッチングサイト」

オープンイノベーションを地域でも実装させていくときに、「誰と取り組むか」、「どういった技術を持っているか」を可視化することが重要となります。企業側はデジタル化に課題を抱えています。一方、解決するための技術を持っている事業者は、誰かに技術を使って欲しいと考えています。そこが結びつくには「情報」「与信」が足りていません。その間を繋ぐために、行政の組織が入ることで円滑にそれぞれのマッチングを進めることはできないかと考え、「ひろしまサンドボックスマッチングサイト」を2021年7月に立ち上げました。

これまでは、行政を介して行う企業マッチングは、人的な繋がりで行っていました。ひろしまサンドボックスの取組を展開することで、イノベーション推進チームにも「こういった技術を持っている企業を知らないか?」という問い合わせをたくさん頂きます。ただ、人間がハブとなるネットワークは限界がきており、そういったマッチングこそ、デジタル技術を活用することで加速できるのではないか、という想いでプロジェクトを企画しています。

マッチングサイトは、企業単位で自由にプロジェクト提案が可能となっており、厳しい審査基準は設けていません。課題を持つ企業がプロジェクト提案し、技術を持つ事業者とお互いに関心を持つ形になれば初めてマッチングが成立します。

想定しているユーザーは、例えば自社内にデータはたくさん持っているけど活用できていない・分析ができないという企業で、AIの会社に相談したら非常に高額な見積もりだったので断念したといったケースです。マッチングサイトでは、事前に自社のデータも掲載することが可能なので、そのデータでどういうことができるかを事前に知ることができます。もちろん、データをまだ保有していない企業でも、今後デジタル技術の活用を進めるために何をすればいいかという課題を持っていれば、マッチングサイトの中で出会った企業と一緒に考えることができます。技術提供側は、「D-EGGS PROJECT」で連携した株式会社ワクトをはじめ、様々なAI・IoTの技術を持ったスタートアップにも参加して頂きます。県のような行政組織の役割は「場」を用意して、企業の最初の「与信」の部分をサポートするという機能にすべきだと考えており、業種を問わずオープンイノベーションのきっかけとなるマッチングサイトを目指しています。



「0→1」の与信を支援するのが行政の役割、目指すは広島発グローバルITソリューション事業

「ひろしまサンドボックス」の地域経済における役割は、「0→1」の新規事業創出を支援するところだと感じています。新規事業を実施する際のリスクやハードル、0が1にならない理由に対して、「背中を押せる」「理由づけになる」そんなプロジェクトになって欲しいと考えています。ひろしまサンドボックスに相談すれば、広島県が応援してくれる、同じ志の仲間が見つかる等、チャレンジの理由づけとして機能することで、まだまだ進化していこうと考えています。取組を続けることで、「ヒト・モノ・カネ・情報」が集まり、広島にきたらひろしまサンドボックスにまずは聞いてみようという状況が作れると嬉しく思います。

また、プロジェクトを通じて、全国に広島の意気込みを情報発信ができたのもよかった点です。AI・IoT等の先進的な技術を持った企業が広島に関心を持ち、実際に広島に移住・移転する流れができてきています。そういったチャレンジしたい人が見える化されることで、横に繋がってくれた、シナジーが生まれる一つのトリガーになったというのが嬉しいですね。ただ、そういった成果を定量的に表現することはなかなか難しく、「デジタル化」状況をどう数値化していくかという点は課題も感じています。




将来的には、広島発のITソリューションが世界で展開されるようになって欲しいと思います。例えば、他県において工場のIoT化のノウハウをサービスとして全国展開している企業がありますが、そういった広島から全国に展開できるサービスを持つ企業を広島県にも創りたい。広島県発のサービスが県外に、更には世界に売れるようになることで、県内経済の活性化に繋げていくことが本事業の目指すところの一つです。


社会の変化を感じ、若者が挑戦する場として利用して欲しい

最後になりますが、私が「ひろしまサンドボックス」を通じて感じたのは、素晴らしいデジタル技術を持っている企業が全国に無数に存在するということです。社会のデジタル化が進む中で、それを促進するための技術も進化しています。そういった感度は、企業の中でも、もしかしたら若手の方々の方が高いかもしれません。「ひろしまサンドボックス」は、そういった企業内の若手の方々がチャレンジする場としても利用していただきたいと考えています。地域の企業の皆さまには、サンドボックスを通じて、「若いチャレンジャーが成長する場」、「劇的な世界の変化を感じることができる場」としてもご活用いただけますと幸いです。皆様の積極的なご参加をお待ちしております。





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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
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設立  :2018年4月
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