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M&Aはどのくらい時間がかかる?平均期間とプロセスを徹底解説

M&Aはどのくらい時間がかかる?平均期間とプロセスを徹底解説

M&Aを検討する際、経営者の多くが最初に気にするのが「実際、どのくらい時間がかかるのか」という点です。結論から言うと、M&A仲介会社へ正式に依頼してから譲渡実行までの期間は、平均で約9ヶ月、一般的には6ヶ月〜1年程度が一つの目安となります。

ただし、これはあくまで「標準的なケース」です。事前準備の状況や買手企業との相性、業界特性によっては、数ヶ月で完了するケースもあれば、2年以上かかることも珍しくありません。

本記事では、M&Aのプロセスごとの標準的な期間、期間が短く・長くなる要因、そして実際に長期化した事例を交えながら、経営者が押さえておくべきポイントを整理して解説します。

M&Aの平均期間はどのくらい?

M&A仲介会社へ正式に依頼してから譲渡実行(クロージング)までの期間(※)は、当社の支援実績では6ヶ月〜1年程度が最も多く、平均すると約9ヶ月です。

なお、譲渡実行後には、売手経営者による引継ぎ期間が設けられるのが一般的で、その期間は6ヶ月〜2年程度と幅があります。

つまり、M&Aは「契約を結んで終わり」ではなく、意思決定から完全な引退・引継ぎ完了までを含めると、数年単位のプロジェクトとして捉える必要があります。

(※ここでいう期間は「仲介会社へ正式依頼→相手先決定→最終契約→決済」までを指します)

参考記事:M&A引継ぎ期間の目安|短期・長期パターンと経営者が注意すべき点

M&Aプロセスごとの必要期間

以下は、一般的な中小企業M&Aにおける標準的なプロセスと、それぞれの段階で想定される期間の目安です。

実際には個別事情により前後しますが、全体像を把握することで「どこで時間がかかりやすいのか」「今どのフェーズにいるのか」を客観的に整理できます。

段階 必要期間 実行内容 相手先社数
M&A事前検討 3ヶ月~10年 ・事業承継の選択肢の検討
・M&A仲介会社(複数社)と面談・協議
・企業価値の試算
M&A正式プロセス
(6ヶ月~9ヶ月)
・M&A仲介会社へ正式依頼
1~2ヶ月 ・事業分析、財務分析、詳細資料の準備・作成
・M&A戦略の検討
2週間 ・買手候補先へ匿名で打診 10~30社
1ヶ月 ・関心の強い候補先と機密保持契約書を締結
・詳細な説明
5~10社
1ヶ月 ・買手候補先による詳細検討、質疑応答
・意向表明書提出
1~3社
2週間 ・トップ面談
2週間 ・基本条件の交渉、基本合意書締結 1社
(独占交渉)
1~2ヶ月 ・デューデリジェンス
2週間 ・最終条件交渉、最終契約書の締結
0日~1ヶ月 ・資金調達準備、関係者説明、決済
M&A後引継ぎ 6ヶ月~2年 ・人脈・ノウハウ・技術の引継ぎ
・経営協力

上記はあくまで目安であり、案件の内容や関係者の状況によって短縮も長期化もします。当社の経験では、最短で約3ヶ月、長いケースでは6年以上かかった事例もあります。

M&A期間が短期化する要因

M&Aが比較的スムーズに進み、短期間で成約に至るケースには、いくつか共通点があります。

  • 既存の取引関係や業務提携があり、買手が事業内容を深く理解している
  • 売手・買手双方の目的や条件が明確で一致している
  • 買手企業の戦略上の優先度が高い案件
  • 買手企業がM&A経験豊富で、社内意思決定が早い

特に「誰が意思決定者か」「どこで決裁が止まりやすいか」を早期に把握できている案件ほど、全体期間は短くなる傾向があります。

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M&A期間が長期化する要因

一方で、以下のような事情がある場合、M&Aは想定以上に時間を要することがあります。

  • 売手企業の規模が大きく、関係者・利害調整が複雑
  • 株主が多く、複数の同意取得が必要
  • 上場企業や大企業が買手で、社内決裁プロセスに時間がかかる
  • 会社分割・株式交換など、会社法上の手続きを伴うスキーム
  • 事業譲渡において、許認可や契約承継が必要

M&Aは法務・税務・人の感情が複雑に絡むため、「想定外の調整」が発生することを前提に、余裕を持ったスケジュール設計が重要です。

実際に2年以上かかったM&A事例

M&Aは必ずしも一直線に進むとは限りません。経営者の心情の変化、相続や災害などの外部要因により、やむを得ず中断・延期されるケースもあります。

以下は、当社が関与した中で、M&Aに2年以上を要した代表的な事例です。

事例1:相続発生で親族調整・喪中対応が入り、M&Aが4年に長期化

M&A交渉の途中に、先代に相続が発生しました。遺産分割対応、売手親族内の気持ちの整理、喪が明けるまでは暫く期間を置く、という事情からM&Aの実行まで4年の月日がかかりました。

事例2:災害で案件が白紙に—再探索で追加1年を要したケース

1年近く交渉しM&Aの最終契約の調印式当日に東日本大震災が発生。買手企業が被害を受けたため、売手企業・買手企業において協議し、このM&Aは白紙にすることに。別の買手企業を探し、譲渡するまでに更に1年の期間が必要となりました。

事例3:業務提携で信頼醸成→満を持してM&Aへ(合計4年)

業務提携で3年の期間が経過し、売手企業・買手企業にとってシナジー効果が明確にあることが確認できました。また、お互いの相性・信頼関係を確認し、M&A交渉を正式にスタートしました。業務提携から4年が経過してのM&Aとなりました。

事例4:上場会社との統合に向けた整理・株式交換手続きで2年

上場会社と経営統合する前に、売手企業が所有する複数の賃貸不動産や、譲渡対象外の子会社の整理を1年かけて行いました。更に、株式交換というスキームでのM&Aだったため、上場会社の株主総会決議を取るのに半年ほどの期間を要し、合わせて2年の月日を要しました。

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まとめ|M&Aに必要な期間を正しく把握し逆算で準備する

M&Aは、仲介会社への正式依頼から譲渡実行まで平均で約9ヶ月、一般的には6ヶ月〜1年を要します。意思決定から完了までには、想像以上に時間とエネルギーが必要です。

一方で、条件が整えば短期間で進むこともあれば、調整事項が重なり2年以上かかるケースもあります。重要なのは、「標準期間」を理解したうえで、状況に応じて柔軟に対応できる心構えを持つことです。

M&Aを成功させるためには、早めの準備と適切な専門家への相談が欠かせません。検討段階であっても、一度全体像を整理しておくことで、後悔のない意思決定につながります。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。 URL:https://cregio.jp/

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