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コラム COLUMN

支援制度

2022年度「事業再構築補助金」を、地域中小企業向けに分かりやすく解説


「事業再構築補助金」とは、2021年3月から開始された補助金です。主に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業が事業を転換していくことを支援することが目的で創設された大型の補助金でした。これまで2021年度中には5回公募が行われ、2022年度からは第6回目の公募が開始しています。改めて事業再構築補助金のポイントをお伝えします(こちらのコラムは、2022年4月1日時点の情報です)。

※詳細は以下の事務局HPより、公表されている公募要領をご確認ください。
※具体的な補助金に関するご質問は、以下のコールセンターへお問い合わせください。
(事業再構築補助金事務局コールセンター)
 【ナビダイヤル】 0570-012-088
 【IP電話用】 03-4216-4080

記事のポイント

  • 事業再構築補助金」は中小・中堅企業者が、新しい事業転換を行う際に利用できる補助金。
  • 新型コロナの影響を受け、事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等の事業が対象。
  • 2022年度は第6回公募が開始。売上高減少要件がない「グリーン成長枠」が新設。

「事業再構築補助金」とは

事業再構築補助金とは、新型コロナウイルスの影響により、売上が減少した中小企業等が、思い切った事業再構築を行うことを支援する補助金です。

令和2年度第3次補正予算」で初めて登場し、1兆1,485億円という大きな額で予算計上され、1件当たりの補助上限が最大1億円の枠組みもあるとのことで、非常に注目されました。2021年3月から第1回目の公募が開始され、過去5回公募が行われています。公募を重なるごとに、新たな枠組みの増加、要件の変更等が行われています。

2022年4月現在は、「令和3年度補正予算」として6,123億円が計上されています。過去の公募を引き継ぐ形で、2022年3月28日より、第6回目の公募が開始しています(締切:2022年6月30日)。


「事業再構築補助金」の採択率は?

現在公表されている過去4回における事業再構築補助金の採択状況は以下のとおりです。

全体では、第1回目が36.1%と一番低く、その後、45%程度で落ち着いています。「緊急事態宣言特別枠」「大規模賃金引上枠」「最低賃金枠」では、採択率は比較的高いものの、「通常枠」と補助上限が異なる等について留意が必要となります。そういった補助金の条件と採択率を比較しながら、どの枠組みで申請するのがよいか検討する必要があります。



「事業再構築補助金」の概要

事業再構築補助金の特徴の一つが、非常に読み解くことが難解な点です。また、申請要件や枠組みも頻繁に変更されます。現在の事業再構築補助金の概要は以下のとおりです。

主要な3つの要件

事業再構築補助金を申請するためには、まず「売上高の減少」「事業再構築に取り組むこと」「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること」が必要となります。

「売上高の減少」については、以下のとおり、「2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること」が必要です。

「認定経営革新等支援機関と事業計画を策定すること」については、「中小企業経営力強化支援法」に基づき認定された「認定経営革新等支援機関」と呼ばれる支援機関と連携しなければなりません(認定経営革新等支援機関は、中小企業庁のHPで確認できます)。認定支援機関は多くは税理士や、商工会・商工会議所等の支援機関であり、金融機関も含まれます。事業再構築補助金では、「補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関も参加して計画を策定する」こととなっているため、規模が大きい事業を検討する場合、まず金融機関に相談することをお勧めします。

「事業再構築」とは

事業再構築補助金をややこしくしている一つの要因は、“事業再構築”の定義が分かりづらいことです。事業再構築補助金における“事業再構築”は、「事業再構築指針」に定義されています。「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つに分かれており、それぞれに要件が設定されています。

(出典:中小企業庁「事業再構築指針の手引き」)


「新分野展開」「事業転換」「業種転換」

①製品等の新規性要件、②市場の新規性要件を満たした上で、補助事業による新製品の売上高がどれだけ成長するかにより「新分野展開」「事業転換」「業種転換」の3つに分かれます。新製品の売上高が、総売上高の10%以上になる場合は「新分野展開」、新製品の売上高が事業単位で最も高い割合を占める場合は「事業転換」、業種単位で最も高い割合を占める場合は「業種転換」となります。

①製品等の新規性要件とは、「過去に製造等した実績がない」「設備変更を行う」「定量的に性能又は効能が異なる(但し、計測できる場合に限る)」を満たすこととなります。

②市場の新規性要件とは、「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」となります。

ざっくり説明すると、これまでやったことがない事業で、設備投資を伴い、新規の顧客を開拓する事業であれば、事業再構築補助金の要件を満たす可能性が高くなります。新しく始める事業がどれだけ成長するかで、「新分野展開」「事業転換」「業種転換」のいずれに当てはまるという整理になります。

「業態転換」「事業再編」

「業態転換」とは、新たな取組の中で、必ずしも製品の製造を伴わない事業を想定した分類です。上記の3類型とは異なり、製造方法等を相当程度変更することで要件を満たします。設備投資が必要であることや、売上高に関する要件は、上記3類型とほぼ同じです。

「事業再編」とは、会社法上の組織再編行為(=合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)を行った上で、上記で説明した事業再構築を実施することが必要となります。



事業再構築の5つの枠組み

事業再構築補助金を更にややこしくしているのは「枠組み」です。

第6回公募より新しく「通常枠」「大規模賃金引上枠」「回復・再生応援枠」「最低賃金枠」「グリーン成長枠」の5つの枠組みに再編されました。枠組みによって、補助上限が異なり、過去の採択状況を見ると、採択率も異なりますので、目的や規模に応じてどの枠組みで申請するかを考える必要があります。特に「通常枠」以外の枠組みは、再審査の制度があります。

「グリーン成長枠」は、他と異なり、売上高減少要件が課されないという特徴があります。加えて、事業再構築補助金は、通常1回しか利用できませんが、「グリーン成長枠」に限り、2回目の申請を行うことが可能です。


補助対象経費について

事業再構築補助金では、以下の経費を補助対象とすることができます。「建物費」では、以前と異なり、構築物に係る経費は対象外となりました。その他にも、従業員の人件費・旅費・不動産・公道を走る車両・汎用品等、補助対象外の経費があることに注意が必要です。


採択のためには審査項目・加点項目を読み解く

事業再構築補助金では、審査項目・加点項目が明示されています。採択されるためには、これらの項目に合致するかという視点で、申請書を作り込む必要があります。公募要領のP37を読み解き、申請書からそれぞれの点が読み解けるかを確認しましょう。どれだけ詳細に書くかではなく、審査員が見て、分かりやすいかどうかという視点も重要です。


その他のポイント

補助事業実施期間について

原則「交付決定日~12 か月以内(ただし、採択発表日から 14 か月後の日まで)となっています。但し、「グリーン成長枠」については「交付決定日から14か月以内(ただし、採択発表日から16か月後の日まで)」となっています。

収益納付について

「収益納付」は簡単に言うと、補助金額以上の利益が出た場合のみですが、返還しないといけないという制度です。今回の公募要領でも、以下のとおり記載があります。

事業化状況の報告から、本事業の成果の事業化又は知的財産権の譲渡又は実施権設定及びその他当該事業の実施結果の他への供与により収益が得られたと認められる場合には、受領した補助金の額を上限として収益納付しなければなりません(事業化状況等報告の該当年度の決算が赤字の場合は免除されます)。

令和二年度第三次補正・令和三年度補正事業再構築補助金 公募要領(第6回)

他の補助金では、要件を満たすことで免除となる補助制度もありますが、今回は免除されるのは「該当年度の決算が赤字の場合のみ」となります。大きな利益をあげた場合、補助金額を限度として納付することが「補助事業者の義務」として規定されていますので、ご留意ください。

申請期間・申請方法

第6回公募の公募期間は「2022年3月28日(月)~6月30日(木)18:00」となっています。2022年中に更に3回の公募を実施予定とのことです。

申請方法は電子システムからの申請となります。申請するためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウント取得には時間を要するため、早めの申請が必要となります。


おわりに

「事業再構築補助金」が立ち上がった第1回目は、その内容の難解さに加えて、思ったより採択率が振るわなかったことや、採択から交付決定までの事務手続きが煩雑だったりと、様々な面で議論を呼んでいました。新しい年度となり、第6回公募では、企業の規模により補助上限が設定され、「グリーン成長枠」のような、必ずしも売上高減少要件を必要としない、成長を応援する枠組みが新設される等、補助金の目的が少しずつ変化している様子が窺えます。

様々な制度の変更が実施される一方、地域経営者の中で、補助金の公募要領を読み解き、申請書を作成し、補助金の事務をこなすことができる方は非常に稀です。大体が士業やコンサル、金融機関に依頼しています。いずれにしても認定経営革新等支援機関との連携が必要となりますので、補助金活用を検討される方は、顧問税理士や取引のある金融機関に相談してみることをおススメします。

また、補助金は「採択されたら終わり」ではありません。採択された後には、補助事業執行の実務が待っています。コンサルに依頼する際は、報酬設定も含めて、どこまで何をお願いするのかを見定めることが必要です。制度は難解ですが、メリット・デメリットや補助金の成立を理解・把握した上で、賢く、有効に活用することが求められます。


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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
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URL  :https://cregio.jp/

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