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コラム COLUMN

M&A事業承継

買手企業がお得意先の場合はどうするの?取引先とのM&Aのポイントを解説!


M&Aによる事業の引継ぎの中で、買手企業は様々なケースがあります。中には、これまでお得意先だった取引先企業が、その事業に関心を示し、M&Aに合意するケースもあります。今回はお得意先がM&Aの買手企業となるケースを中心にそのポイントをお伝えします。

記事のポイント

  • 買手企業候補が得意先である場合、「事業面」「M&A交渉面」メリット・デメリットが存在。
  • メリットは、これまでの信頼関係からの理解の早さや、事業の加速化。ただし、M&A交渉では直接言いづらいケースも存在。
  • M&A仲介会社等に交渉を依頼することでデメリットやリスクを軽減することが可能。

お得意先とのM&A、メリット・デメリット

ご相談内容の中で、「後継者がおらず、事業承継のためにM&Aを考えています。何十年とお世話になっている得意先に引き継いでもらうのが一番ではないかと考えています。いかがでしょうか?」というお話を受けることがあります。お得意先がM&Aの買手企業である場合のメリット・デメリット「事業面」「交渉面」に分けると以下のとおりに整理することができます。

  メリット デメリット
事業面 ①売手企業の受注の増加
②買手企業にとっての内製化
①親会社(買手企業)の業務が優先される
②親会社(買手企業)の競合取引先からの受注減少
M&A交渉面 ①理解が早い
②信頼関係がある
①希望を言いづらい
②後戻りしづらい
③他の候補先に打診しにくい
④噂が漏れる



「事業面」におけるメリット・デメリット

事業面におけるメリット

(1)売手企業の受注の増加
売手はM&A前から買手からの受注がありますが、M&A後は買手からの受注が増加する可能性があります。これまで買手が他社に発注していた分を、売手(子会社)に発注する可能性があるからです。買手(親会社)としては、外部に発注するより売手(子会社)に発注する方が、グループ利益確保につながります。売手にとっては営業コストのない受注が増加し、売上と収益が安定するメリットがあります。

(2)買手にとっての内製化
買手としては売手を子会社化し、グループとして内製化することで、以下のメリットがあります。
自社案件を優先して対応してもらえる
品質や納期をコントロールしやす
・親子会社の関係で、距離が近い、相談しやすい、情報格差が少ない、など親会社側のノウハウが上がりやすい
・結果として、買手グループとしてお客様により良いサービス・商品を提供する体制ができる

事業面におけるデメリット

(1)親会社の業務が優先される、親会社の仕事に縛られる
上記の「メリット(1)売手企業の受注の増加」の裏返しですが、親会社から依頼される仕事が多い場合、親会社の業務を優先せざるを得ず他の取引先の仕事を減らさなければいけないことがあります。

(2)親会社の競合取引先からの受注減少
売手の取引先に買手の競合がある場合、M&A後に当該取引先からの受注が減少する可能性があります。

これらのデメリットは、売手の事業のスタンスや取引先との取引継続など、事業の根幹にかかわるものです。売手経営者としては、このようなデメリット・リスクも理解したうえで、M&A相手先を選定する必要があります。また、買手企業としても、M&A後(大株主変更後)も他の取引先との取引が続くかどうかの見極めや、継続するための慎重な対応が重要となります。




「M&A交渉面」におけるメリット・デメリット

M&A交渉面におけるメリット

(1)理解が早い
既に取引関係があるため、買手企業が売手企業の事業内容、技術・業務レベルをある程度知っており、M&A交渉を進める上での理解が早いです。また、売手経営者も買手企業の事業内容、社風などをある程度知っており、双方においてM&Aの趣旨や目的への理解が早まります。

(2)信頼関係
取引関係を通じて、M&A交渉以前からそもそも一定の信頼関係がある場合が多く、その点は交渉においても有利に働くと思います。

M&A交渉面におけるデメリット

(1)希望を言いづらい
売手企業にとって、買手企業候補が大事なお客様(得意先)である場合、交渉内容には売却価格やM&A後の売手経営者の関わり方、従業員の雇用等、込み入った内容が多く、利益が対立する項目も含まれるため、これまでの関係性から、M&Aの希望条件を十分に主張しにくいことがあります。直接交渉の場合は特にそうでしょう。

参考:M&Aを買手に直接相談しても大丈夫?直接交渉のメリット・デメリット

(2)後戻りしにくい
もし得意先とのM&Aの交渉が決裂した場合、両社の関係にしこりが残る可能性があります。決裂事由によっては、もともとの取引関係に亀裂が入る可能性もあります。また、売手経営者の事業承継問題や売却意向が伝わるため、買手がリスクヘッジのために、他の発注先を探したり発注をシフトしてしまうかも知れません。そういった不安が重圧となって、売手が譲歩をしてでもM&Aをまとめたくなる心理が働きます。

(3)他の候補先に同時に打診しにくい。
中小企業M&Aでは、基本的に複数の候補先に同時に打診することをお勧めしています。一つの候補先に絞ってしまうことで、その選択肢が狭まってしまい、最終的にM&Aが不可能になるという結果を避けるため、成功確率を上げることが必要です。これは候補先が得意先の場合も同様で、確率論を考えると、基本的には複数社に同時に打診をするのが望ましいと考えます。しかし、相手が得意先の場合、これまでの関係性から「同時並行で他社にも打診します」と言いにくいものです。特に、売手経営者の口からは言いづらいことが多いと思います。

(4)情報漏洩リスク
売手企業と買手企業が取引関係にある場合、役職員同士が顔見知りの場合が多いです。M&Aの検討過程で、買手企業の役職員から売手企業の役職員に情報が漏れてしまうリスクがあります。そのため、通常以上に慎重かつ入念な秘密厳守が求められます。そもそも買手企業に買収ニーズがない場合、可能性がないのに情報だけ漏れてしまうことになりかねません。得意先に打診する場合は、相手方の経営状況、事業戦略、買収ニーズなどについて事前の情報収集を入念に行う必要があります。


デメリットを避けるためのM&Aアドバイザーの賢い利用方法

上記のとおり、得意先とのM&Aは様々なメリット・デメリットがありますが、デメリットを少しでも減らすために外部のM&Aアドバイザーを利用して、そのリスクを減らすことが可能です。

デメリット M&Aアドバイザーを利用した場合の対処例
(1)希望を言いづらい
  • 株価について 「M&A専門家として算出した客観的かつ適正な企業価値」として伝えることができる。
(2)後戻りしづらい
  • 条件が折り合わなさそうな場合、売手から断らず買手から断るように展開したり、買手が納得しやすい理由で交渉終了させるなど、なるべく禍根を残さない交渉方法や交渉終了方法を助言し、実行できる。
(3)他の候補先に同時に打診しにくい
  • M&Aアドバイザーとして、M&Aを成功させるために、複数社に打診することは当然であるため、複数候補への打診について、角が立ちにくい。
(4)情報漏洩リスク
  • 売手企業のM&A意向を打診する前に、買手企業の事業戦略、買収ニーズのヒアリングから入ることが可能。



おわりに

M&Aの買手企業が得意先である場合について、メリットとデメリットを「事業面」「M&A交渉面」に分けてまとめてみました。相手側が得意先の場合、これまでの信頼関係が基盤になって双方の理解が早い等のメリットもありますが、ささいなことが原因で交渉が上手く進まくなった場合、これからの関係に亀裂が入ってしまうケースも少なくありません。M&A仲介会社等に交渉を依頼することで、リスクを少しでも減らすことができますが、直接交渉の場合においても、相手先との関係性を今後も上手く維持していくための工夫が必要となります。



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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