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後継者難倒産はなぜ増える?倒産件数の推移と事業承継問題

増加する後継者難倒産|倒産件数の動向まとめ

近年、中小企業の「後継者不足」が深刻な社会問題となっています。経営は黒字で安定しているにもかかわらず、事業を引き継ぐ後継者が見つからず、やむなく廃業や倒産に至る「後継者難倒産」も増加しています。

帝国データバンクの調査によると、後継者不在を理由とする倒産は年々増加しており、日本経済にとっても無視できない問題となっています。

本記事では、帝国データバンクの調査データをもとに、後継者難倒産の件数推移や業種別・地域別の傾向を整理するとともに、なぜ後継者不足が深刻化しているのか、その背景についてわかりやすく解説します。

記事のポイント

  • 「後継者難」による倒産は年々増加し、2019年は過去最多を記録。
  • 2020年上半期は前年同期比15.5%増。倒産傾向全体は特に宿泊業等の観光業において多い。
  • 倒産件数が多い業種は「サービス業」であり、人口集中地域が約4割を占める。

後継者難倒産とは

後継者難倒産とは、経営者の高齢化や後継者不在により、事業自体は継続可能であるにもかかわらず、経営を引き継ぐ人材が見つからないために廃業や倒産に至るケースを指します。

日本では中小企業経営者の高齢化が進んでおり、帝国データバンクの調査でも多くの企業が後継者問題を抱えていることが明らかになっています。

「後継者難」倒産は年々増加傾向

後継者難倒産の推移(帝国データバンク調査)

帝国データバンクの調査によると、後継者不在による事業継続の断念などが要因となった「後継者難倒産」は2019年に460件発生し、過去最多を記録しました。

同年の全国倒産件数は8,354件で、そのうち約20社に1社が「後継者不在」を理由とした倒産となっています。つまり、経営悪化ではなく「事業承継問題」が倒産原因となるケースが一定数存在していることを示しています。

「後継者難倒産」の件数は、2017年以降3年連続で増加しており、全国倒産件数における割合も徐々に増加傾向にあります。

2020年上半期の「後継者難倒産」と倒産の傾向

2020年上半期の「後継者難倒産」は238件で、前年同期比15.5%増となっており、下半期も同様に増加すれば、再び過去最多となる可能性があります。

また、帝国データバンクのコメントによると、「上半期は、新型コロナ感染拡大により訪日外国人が激減したほか、日本人による旅行や出張のキャンセルも相次いだことなどから、宿泊業の倒産は80件と前年同期(36件)の2.2倍に急増し、半期ベースの過去最多(82件、2011年上半期)に迫る高水準となった。」とされており、新型コロナウイルスに関連した観光産業への影響が懸念されています。

倒産件数が多い業種は「サービス業」、人口集中地域に偏る

2019年の倒産件数は「サービス業」が1,974件(前年比+2.3%)と最多であり、うち「広告・調査・情報サービス業」が最も多く633件(前年比+1.9%)となっています。2番目に倒産件数が多い業種は、小売業であり1,945件(前年比+7.0%)、次いで建設業が1,414件(前年比0.0%)となりました。

地域別にみると倒産件数が多い都道府県は、東京都1,532件(前年比+2.0%)、大阪府1,195件(前年比+8.6%)、愛知県566件(前年比-11.3%)となり、人口が集中する地域に偏っており、全国8,354件のうち、上位3都府県合計で39.4%を占めています。

後継者不足が増えている理由

近年「後継者難倒産」が増加している背景には、日本の中小企業が抱える構造的な課題があります。特に大きいのが、経営者の高齢化です。中小企業では経営者の平均年齢が年々上昇しており、引退時期を迎えても後継者が決まっていない企業が少なくありません。事業自体は黒字であっても、経営を引き継ぐ人材がいないために廃業や倒産を選択せざるを得ないケースも増えています。

また、従来は子どもや親族が事業を継ぐ「親族承継」が一般的でしたが、近年は価値観の変化や就職環境の多様化により、親族が事業を継がないケースが増えています。後継者候補が都市部で就職するなど、地方企業ほど後継者を見つけることが難しい状況になっています。

さらに、中小企業の多くが事業承継の準備を十分に進めていないことも課題です。事業承継には株式の整理や経営体制の整備など、数年単位での準備が必要になりますが、実際には経営者の高齢化が進んでから検討を始める企業も多く、結果として承継が間に合わないケースも見られます。

こうした背景から、後継者不足は個別企業の問題にとどまらず、日本全体の中小企業政策や地域経済に関わる大きな課題となっています。

まとめ

「後継者難」を起因とした倒産件数は年々増加傾向であり、全国に占める割合も徐々に増加傾向となっています。2020年上半期においても同様の傾向が認められ、このままいくと更に過去最多を更新する可能性が高くなっています。

直近では、新型コロナウイルスの影響により、特に観光業関連の倒産件数が増加傾向にあり、業種でいうと「サービス業」が多く、主に首都圏を中心とした人口が集中する都市圏での倒産件数が全国の約4割を占めています。

こういった傾向は、経営者の高齢化や、新型コロナウイルスによる経済への影響を鑑みると、今後も継続することが見込まれます。政府においても、M&Aが事業承継を解決する手段として認められる一方、M&Aは売手だけではなく、買手の動向にも注視が必要です。

今後の経済的な影響が買手のマインドにどのような影響をもたらすか動向を把握しつつ、買収する事業の価値やシナジーを、これまで以上に慎重に見極める必要があります。経営者だけでなく、M&A仲介会社等も含め、M&Aに関わる全ての者において、経済情勢の把握や、早めの対策が問われる状況になることが予測されます。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
URL:https://cregio.jp/

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