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コラム COLUMN

M&A事業承継

産業廃棄物処理業界のM&Aをまとめ!持続可能なビジネスを実現する経営戦略は


産業廃棄物処理業界は、人口減少や、環境配慮への意識の高まり等により、総排出量が大きく増加が見込まれず、許認可を要するビジネスであるため大胆な経営拡大が難しい業界です。日本の静脈物流を維持するため、人材不足や技術の承継といった課題を乗り越える必要があり、経営戦略としてM&Aも有効な手段であり、環境省においてもその有効性が伝えられています。本コラムでは、産業廃棄物処理業界におけるM&Aのポイントをまとめました。

記事のポイント

  • 産業廃棄物処理業界の課題は、「新規参入・エリア拡大が難しい」「人材の育成・確保」「技術力の維持・継承」。
  • M&Aを通じて「商圏の拡大」「採用・人材育成の統一による効率化」「デジタル等の最新技術の導入」が可能。
  • 環境省もM&Aを有効な経営戦略として位置づけ。硬直化しやすい市場だからこそ、M&Aも含めた、長期的な経営戦略が必要。

産業廃棄物処理業の概要

「産業廃棄物処理業」とは、事業活動に伴い発生する産業廃棄物を収集・運搬、処理(中間処理、最終処分)する事業であり、家庭や事業所から排出される一般廃棄物を、収集・運搬・処分する「一般廃棄物処理業」とは区別されています。環境省が公表する産業廃棄物の排出・処理状況は、2022年度(実績)において、総排出量は約3.7億トン(前年度比-180万トン、0.5%減)であり、過去20年で大きく増減はしておらず、全体的に微減の傾向となっています(出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度実績)について」)。この背景について、環境省は「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言(2017年5月公表)」において、「人口減少」や「ストック型社会への転換」であり、これらの影響を受けて総排出量は今後減少していく見方もあると指摘しています。産業廃棄物処理業を含む循環型社会ビジネスの市場規模については「第五次循環型社会形成推進基本計画」において、2030年までに80兆円規模までの拡大を目標とするものの、産業廃棄物処理業については、国際的な環境意識の高まりも踏まえ、今後大きく排出量が拡大することは難しいと考えられます。

(出典:環境省「産業廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度実績)について」より当社加工)

産業廃棄物処理業の構造

事業活動において廃棄物を排出する事業者は、産業廃棄物を自らの責任において適正に処理することが「廃棄物処理法」において義務付けられています。排出業者からの産業廃棄物を適正に処理されるまでには、廃棄物を収集運搬する「収集運搬業者」、中間処分する「中間処理業者」、埋め立て等の最終処分を行う「最終処分業者」といった形で、それぞれの委託事業者が適正に処理する流れとなります。

全体の流れ


収集運搬業者

収集運搬業者は、事業者が排出した産業廃棄物を、中間処理施設や最終処分場へ運搬する役割を担います。

中間処理業者

中間処理とは、最終処分を行うために、脱水や焼却・中和等を行うことです。中間処理業者は、廃棄物の分別、粉砕による減量化等、最終処分・リサイクルを行います。

最終処分業者

最終処分業者は、中間処理を経た上で、土に埋め立てたり、海に投棄する等、産業廃棄物を周囲の環境に影響を及ぼさないよう保管し続けます。



産業廃棄物処理業の課題

環境省による「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」では、実施したアンケート調査において、産業廃棄物処理業が抱える主要な課題認識として「同業者との競争が厳しいこと」「廃棄物等の発生量が減少していること」「人材の確保が難しいこと」「技術力を維持・継承すること」等が挙げられています。上位である「同業者との競争が厳しいこと」について、産業廃棄物処理業の事業者は、「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和4年度実績等)について」において、産業廃棄物処理業の許可件数は2022年実績で 241,906件(前年度比+7,181件、3.1%増)となっており、産業廃棄物の総排出量が全体的に微減であることや、アンケート回答における「廃棄物等の発生量が減少していること」ことを踏まえると、市場の硬直化や、そもそも許認可事業であることもあり、新規参入・エリア拡大が難しい状況であることが予想されます。

新規参入・エリア拡大が難しい

産業廃棄物処理業は都道府県による許認可が必要なビジネスであり、必要な知識・技能だけでなく、適切な処理施設等が求められるため、参入障壁が高いことが特徴です。その上、総排出量の推移を見ても、今後の市場拡大が大きく望めないこともあり、他エリアの拡大も含め、新規に参入することが難しいことが課題の一つです。

人材の育成・確保

日本における少子高齢化の影響だけでなく、産業廃棄物処理業界はいわゆる3K(きつい・きたない・危険)のイメージがつきまとう産業であり、他の業界と比較して、より採用がしづらいということが課題となります。そもそもの採用母数が少ないため、育成やマネジメントを充分に行うことが難しくなります。

技術力の維持・継承

収集運搬、公害防止、焼却能力、感染性廃棄物といった危険物の処理、リサイクル等、産業廃棄物処理業には施設への設備投資だけでなく、それを取り扱う技術・システムが必要です。上記の人材の育成・確保の課題や、施設・システムの構築・更新費用等が必要であり、事業継続のための技術力の維持・継承が課題の一つです。



産業廃棄物処理業におけるM&A

M&Aによる課題解決

環境省の「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」において、その有効性が指摘されています。同宣言の産業廃棄物処理業者が挑むべき事業戦略の方向性において、「企業連携・業務提携・M&A」は、「シナジー効果創出」「排出事業者からみた信頼性の向上」「動静脈連携促進」「地域産業としての機能強化」の視点から、既存リソースを活かして個社では短期に実現困難な領域への参入により成長を目指すための手段であると整理されています。これらも踏まえて、上記に記載した産業廃棄物処理業の課題を踏まえ、M&Aで解決できる経営課題として「商圏の拡大」「採用・人材育成の統一による効率化」「デジタル等の最新技術の導入」が挙げられます。


商圏の拡大

株式譲渡によるM&Aの場合、対象会社が持っている許認可ごと、自社グループに取り込むことが可能であるため、新規参入・エリア拡大が難しい産業廃棄物処理業において、事業成長のためには非常に有効な手段となります。地域の場合、既に特定の会社が長く、対象エリアの事業を請け負うような状況もあり、商圏を拡大するためにはM&Aあ有効な手段の一つとなります。

採用・人材育成の統一による効率化

組織力のある企業がグループにおいて、ブランド力のある採用活動や、人材育成手法を統一化し、効率よく展開することで、人材の育成・確保の課題が解決されます。採用・人材に関する投資は、規模が小さい企業や、企業単体では取り組みづらい側面があり、グループで統一的に展開することで、競争力を高めることが可能です。

デジタル等の最新技術の導入

産業廃棄物処理業においても、運搬ルートにおけるAIを活用した最適化や、焼却能力向上のための最新設備・技術の導入といった設備・デジタル投資が必要となります。これらの投資は、規模が小さい企業や、企業単体では取り組みづらい側面があり、先行して投資をした企業のノウハウが展開されることで、M&Aを通じて、自社の設備・デジタル投資を加速されることが可能となります。


産業廃棄物処理業界におけるM&A事例

インテックスホールディングス

産業廃棄物処理、不用品・粗大ごみ回収・買取・処理等の事業を展開するインテックスグループ(岡山県)は、2020年に建設系産業廃棄物収集運搬・中間処理業の西日本マックス(岡山県)、2024年に産業廃棄物の中間処理施設を運営する泉建設株式会社(岡山県)を買収する等、積極的にM&Aを活用し産業廃棄物処理業における事業を拡大しています。

(リリース)
株式会社西日本マックスが仲間入りしました。
M&Aのご報告 泉建設株式会社(岡山市南区新保)

松田産業

貴金属のリサイクルや食品関連事業を展開する上場企業である松田産業は、産業廃棄物処理、収集運搬の山陽レック(広島県)、非鉄金属回収、卸売のフラップリソース(広島県)の2社を、リチウムイオン電池のリサイクル事業等における地域的補完も含むマーケット領域の拡大や売の拡大に相乗効果を見込み、株式を取得しました。
(リリース)株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

J-CIRCULARS(日本成長投資アライアンス投資先)

ファンドである日本成長投資アライアンス(J-GIA、東京)の投資先であり、産業廃棄物収集運搬などのJ-CIRCULARS(愛知県)は、産業廃棄物収集運搬・中間処理・再資源化の木村産業(富山県)をグループ会社化し、営業エリアを北陸圏に拡大しました。
(リリース)木村産業株式会社と資本提携いたしました。

TOAシブル

産業廃棄物収集運搬、中間処理などのTOAシブル(千葉県)は、サービスエリアの拡大、配送効率の向上、顧客ニーズへの対応力強化を目的に、一般貨物自動車運送業のエナジートランスポーター(千葉県)を買収しました。
(リリース)株式会社エナジートランスポーターの株式譲受に関するお知らせ



おわりに

産業廃棄物処理業は、日本の静脈物流の重要な産業です。近年の人口減少や、環境配慮への意識の高まり等を背景に総排出量が大きく増加することは見込まれず、許認可が必要なビジネスなので、市場が硬直している傾向があり、新規参入・リア拡大が難しい一方で、人材不足や技術の承継に対応するため、デジタル投資を含め、持続可能なビジネスへの転換が求められています。

産業廃棄物処理業におけるM&Aは、環境省の提言においても「既存リソースを活かして個社では短期に実現困難な領域への参入により成長を目指すための手段」と位置づけられており、業界内での事業拡大・生産性向上のみならず、近隣業種を獲得し、サプライチェーンを統合することによる生産性の向上や、他業種への展開も含めて、経営戦略として取り組む重要性が増しています。

こういった背景も踏まえ、既存業務への対応だけでなく、長期的な目線を持って、自社の未来を見つめていくことが求められており、事業を加速し、業界の中で持続可能なビジネスとするためには、M&Aも有効な手段の一つです。事業の維持・拡大、資本を通じた経営の強化に課題を有する際は、ぜひ当社までご相談ください。実績ある専門のコンサルタントが、貴社の未来をともに考えるお手伝いをいたします。

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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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