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島根県のM&A事例まとめ|経済概況・後継者不在率・倒産状況

島根県のM&A事例まとめ

人口減少や後継者不在の問題が深刻化する島根県では、事業承継やM&Aのニーズが高まっています。

本記事では、島根県の経済状況や後継者不在率、休廃業・解散の動向をデータで整理し、地域で実際に行われたM&A事例をピックアップしました。

金融、食品、ITなど多様な業種のM&Aから、島根県におけるM&Aの特徴や今後の展望を読み解きます。島根県でのM&A戦略を考える経営者・投資家にとって必見の内容です。

島根県の経済概況|産業構造と成長分野

島根県は、平成29年度名目県内総生産 2兆4,729億円であり、その成長率は -0.5%となっています。生産面では、製造業が+0.7%だったものの、建設業が-1.2%となっており、二次産業が全体で-0.5%となりました。

島根県の人口は約66万人(令和2年6月1日時点)です。島根県は、大きく出雲・石見・隠岐に分かれ、それぞれに固有の産業を有しています。出雲地域では、出雲・松江・安来等を中心にものづくりや情報通信業が発達しています。

隠岐地域は、近年は世界ジオパークに認定される等、日本海の離島ならではのダイナミックな自然景観と漁業に特徴があります。石見地域は、石見銀山やたたら製鉄等、ものづくりの歴史を秘めている地域です。また、島根県は近年はプログラミング言語Rubyを中心としたIT産業の振興にも力を入れています。

島根県の休廃業・解散、倒産の状況

2019年の島根県の休廃業・解散件数は147件であり、前年比-23.8%と2年ぶりに減少しました。また倒産件数は、40件であり、対前年比+60.0%となり増加しました。

業種別では、「運輸・通信業」「製造業」「卸売業」「小売業」の順に減少率が高く、「その他」が最も高い+150.0%となりました。件数では「建設業」が最も多く、次いで「サービス業」「小売業」と続きました。

全国における2019年度の休廃業・解散件数は 23,634件であり、島根県が占める割合は、0.6%となっています。倒産件数については、全国では 8,354件であり、島根県が占める割合は、0.5%となっています。(出典:帝国データバンク調査より)

(出典:帝国デーバンクより当社加工)

島根県の後継者不在率

2019年の島根県の後継者不在率は70.9%であり、全国の中で7番目に位置しています。業種別では、「不動産業」がトップで77.8%となっており、次いで「サービス業」が74.8%となりました。全国における後継者不在率は、65.2%であり、「建設業」がトップで70.6%となっています。

(出典:帝国デーバンクより当社加工)

島根県のM&A事例まとめ

直近で島根県の地域経済においてインパクトが大きいM&A案件をピックアップしました。

事例①フォーバルがえすみを子会社化(2020.4発表)

企業経営支援のフォーバル(東京都)が、オフィス機器、オフィス家具、文房具用品の販売・保守を行うえすみ(島根県雲南市)を完全子会社化しました。えすみの持つ中小企業の顧客基盤をフォーバルが獲得する形になり、自社展開のみだと参入が難しい地域市場に対してM&Aを上手く活用した事例です。

事例②SBI証券が島根銀行の投資信託・債券事業を譲受(2020.2発表)

ソフトバンクフループのSBIホールディングス傘下、SBI証券(東京都)が、島根県では有数の上場企業であり、第二地方銀行である島根銀行(島根県松江市)の投資信託・債券の取扱いに係る事業を譲受しました。島根銀行はSBIのノウハウ活用を通じ、より高品質なサービス提供を可能とし、双方のノウハウと島根銀行が培ってきた地域産業と生活に密着した営業活動の融合を図り、地方創生に寄与することを目指す形になりました。島根銀行が2020年7月30日発表した2020年4~6月期の決算によると、本業の儲けを示すコア業務純益は1億5000万円の黒字化し、16年ぶりの第1四半期の黒字化を達成しました。このことからも、SBIグループとの提携が功を奏していることが窺えます。

事例③ヨシムラフードHDが香り芽本舗を子会社化(2020.3発表)

食品の製造及び販売を行う中小企業の支援を目指すヨシムラフードHD(東京都)が、わかめ・ひじき・めかぶを使用した商品製造を行う香り芽本舗(島根県出雲市)を子会社しました。ヨシムラフードHDは、経営理念に「中小企業が集まり、相互補完することで、グループ全体を活性化」することを掲げており、その理念を実現するために戦略的にM&Aを活用しています。わかめ製品を中心に地域で食品製造を行う香り芽本舗がグループ参入する形となり、ヨシムラフードHDの今後の展開が注目されます。

事例④バンダイナムコが山陰スポーツネットワークを買収(2019.8発表)

バンダイナムコHD傘下で、家庭用ゲームコンテンツ等を企画・開発・販売するバンダイナムコエンターテイメントが、男子プロバスケットボールBリーグ1部チーム「スサノオマジック」を運営する山陰スポーツネットワーク(島根県松江市)の株式の56.5%を取得しました。バンダイナムコエンターテイメントとしては、スポーツという新たなエンターテイメント領域への進出となり、地域のプロバスケットボールチームの株式取得を通じて行うところが非常に興味深いM&Aとなりました。

事例⑤スギヤスが益田クリーンテックを買収(2018.6発表)

自動車整備用リフトや物流機器、環境機器を取り扱い、住宅福祉事業も行うスギヤス(愛知県)が、「開発・設計・ 営業・工務」の多能力を担い「クリーン塗装システム」の専 門メーカーとして1988年に創業した益田クリーンテック(島根県益田市)の株式を100%取得し子会社化しました。後継者不在であり、従来より取引のあったスギヤスに事業が引き継がれる形となる事業承継型のM&Aの事例です。

事例⑥テクノプロがプロビズモを買収(2018.1発表)

機械、電気、電子、情報システム、バイオ、医薬、新素材等、各種技術分野において技術サービスを提供するテクノプロHD(東京都)が、アプリケーションの開発保守等を行うテクノプロを通じて、東京・島根・鳥取・大阪を拠点にIT分野における請負受託事業を展開するプロビズモ(島根県出雲市)を買収しました。プロビズモは、Ruby,Java等の120名のエンジニアを有しており、テクノプロHDは、IT分野エンジニア派遣事業の顧客基盤と人材採用基盤を獲得することになりました。

事例⑦タカハシ包装センターがキョウワを子会社(2018.1発表)

食品包装資材・機器の企画・販売を行うタカハシ包装センター(島根県浜田市)が、商業印刷を関東で行うキョウワ(東京都)を子会社化しました。地域企業が関東進出する際にM&Aを活用した事例です。

島根県M&A市場の今後の展望

島根県のM&A市場は、人口減少や後継者不在といった課題が深刻化する中で、今後さらに拡大していくと考えられます。特に、後継者不在率が全国平均を上回っており、不動産業をはじめとする多くの業種で事業承継のニーズが高まっています。

また、これまでの事例からも分かるように、島根県では地域金融機関や食品メーカー、IT企業といった多様な業種でM&Aが活用されてきました。地方銀行による金融再編や、地域資源を活かした食品産業のグループ化、RubyをはじめとするIT産業での人材獲得型M&Aは、今後も注目分野となるでしょう。

一方で、人口減少に伴う市場縮小リスクや人材不足といった地域特有の課題に直面しているため、M&Aを単なる事業承継の手段にとどめず、地域経済の持続的発展につなげる戦略的活用が求められます。地元企業と大手企業、行政や金融機関が連携することで、地方創生に直結するM&Aモデルが今後さらに増える可能性があります。

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まとめ

島根県は、出雲・石見・隠岐の3地域それぞれに固有の産業を持ち、歴史や文化と結びついた多様な経済基盤を有しています。休廃業・倒産件数は全国の0.5%前後と小規模ながら、後継者不在率は全国7位と高く、特に不動産業では約8割の企業が後継者を確保できていない現状があります。

M&A事例としては、島根銀行のSBIグループ入りに象徴される金融再編、スポーツチーム買収というユニークな案件、食品製造業やIT産業のグループ化など、地域経済の特性を反映した多彩な事例が見られました。さらに、既存の取引関係を活かした事業承継型M&Aも進んでおり、地域に根差した承継手法として注目されています。

今後の島根県におけるM&Aは、後継者不在問題の解消とともに、地域資源を生かした新しい産業価値の創出に向けた重要な手段となるでしょう。地方創生の観点からも、島根県のM&A動向は他地域にとっても参考となる取り組みであり、今後の展開が期待されます。

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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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