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事業承継

M&Aで従業員は退職する?雇用継続の実態と不安への対応策

M&Aで従業員は退職する?雇用継続の実態と不安への対応策

M&Aを検討する経営者にとって、従業員の雇用継続は大きな課題です。

経営者同士が「雇用を守る」と合意していても、実際に働く従業員は「退職すべきか」「会社の将来はどうなるのか」と不安を抱えることが少なくありません。調査によれば、M&A発表後に42%の従業員が転職を検討し、3年以内に20%が退職しています。

本記事では、従業員がM&Aに対して感じる不安や離職リスクの実態を解説するとともに、買手企業が従業員流出を防ぐために取り組むべき雇用継続の施策やPMI対応について詳しく紹介します。

記事のポイント

  • M&A発表後、42%の従業員が転職を検討するというデータが存在する
  • 従業員が感じる不安は「会社の方向性」「処遇の変化」が中心
  • M&A成功には、買手企業が早期に不安を取り除くコミュニケーションが不可欠
  • PMI(統合プロセス)が従業員流出を防ぐ鍵となる

従業員から見たM&Aの実態|雇用継続はどうなる?

M&Aで最も重要なのは「人材を活かせるか」という点です。

企業が持つ経営資源の多くは従業員に紐づくため、売手企業・買手企業ともに従業員の継続勤務を望んでいます。

しかし、当事者である従業員は必ずしも同じ気持ちではありません。会社がM&Aされると聞いたとき、多くの従業員は

  • 職場の雰囲気はどう変わるのか
  • 部署や役職は変わるのか
  • 自分の給与は下がらないか
  • 買手企業はどんな文化なのか

といった不安を抱えながら働くことになります。こうした心理的ストレスが放置されると、自然と「転職活動」という選択肢が生まれます。

アンケート調査に見る従業員の退職率と転職意向

人事コンサルティング大手のクレイア・コンサルティング株式会社が2016年に実施した調査によると、被買収企業の正社員400名のうち、

  • 42%がM&Aの発表を聞いて転職を考えた
  • 3年以内に20%が退職した

というデータが示されています。

参考:意識調査2016:被買収企業、M&Aの発表を聞いて転職を考える人は4割以上

M&Aの発表から、1年未満で退職した人が10%、1~3年で退職した人が10%とのことです。20%が3年以内に退職したことになります。

ちなみに、日本全体の平均離職率は約11%(平成30年)です。それと比較すると、M&A後の離職率は明確に高く、従業員が強い心理的不安を感じていることがわかります。

参考:厚生労働省「平成30年雇用動向調査結果」

M&Aで従業員が抱える不安とは

従業員が転職を検討する背景にはさまざまな感情がありますが、最も大きな要因は「将来への不安」です。特に、買手企業の方針や自分の処遇が不透明な状態が続くと、離職意向は急速に高まります。

実際に、本調査においても、全体の「不安に感じた」割合より、転職を考えた人の「不安に感じた」割合の方が総じて高くなっています。

出典:「意識調査2016分析結果:被買収企業、M&Aの発表を聞いて転職を考える人は4割以上」

また、「不安に感じた」項目のうち、全体では「自分の給与・賞与がどうなるか」が1位であるのに対して、転職を考えた人は「会社や事業の方向性がどうなるのか」が1位である点も興味深いです。

買手企業は、「経営方針」「組織体制」や「各人の所属・役職・処遇や業務内容」について、早めに説明をし、少しでも売手企業に勤務している従業員の不安を減らすことが、人材の流出防止に繋がります。

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従業員流出を防ぐために企業がすべき対応(PMIの重要性)

M&Aの成否はPMI(買収後の経営・業務・意識の統合プロセス)によるところが大きく、PMIの成否は「PMIの事前計画による」と言われます。

経営資源である従業員の流出防止の観点からも、M&A実行前にM&A後の経営方針や人事詳細についても検討・計画しておき、なるべく早い段階で従業員に伝えられる準備をしておくことが大事です。

出典:「意識調査2016分析結果:被買収企業、M&Aの発表を聞いて転職を考える人は4割以上」

PMIが機能しないと、

  • キーパーソンの退職
  • 業務フローの混乱
  • 企業文化の衝突
  • 目標未達
  • シナジー効果の毀損

などが発生し、買手企業にとって重大な損失を生みます。

特に従業員対応では、

  • M&A前に経営方針・処遇を検討
  • 早い段階で個別に説明
  • 「何が変わり、何が変わらないのか」を明確に伝える
  • 質問できる場をつくる(1on1面談)
  • 初期100日プランを作成し、不安の可視化と解消を行う

などの準備が不可欠です。

統合準備が遅れるほど従業員の不安は増し、退職意向は強まります。だからこそ PMIは「M&A後に考えるもの」ではなく「M&A前から設計するもの」 なのです。

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まとめ|M&A成功の鍵は従業員への配慮

M&Aの成功は、売手企業の従業員がM&A後も安心して働き、能力を発揮できるかどうかにかかっています。アンケート調査からもわかるように、従業員は「給与」や「事業の方向性」への不安を抱え、場合によっては退職を選ぶケースもあります。

買手企業は、M&A前から経営方針や人事制度を丁寧に説明し、従業員との信頼関係を築くことが不可欠です。PMI計画を事前に整え、不安を軽減する取り組みを行うことで、人材流出を防ぎシナジー効果を最大化できます。

M&Aを成功に導くためには、経営者だけでなく従業員にとっても納得感のあるプロセスを設計することが重要です。

クレジオ・パートナーズでは、事業承継やM&Aにおける従業員対応やPMI計画のご相談を承っております。従業員の不安を最小限に抑え、スムーズな統合を進めたい経営者の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。
URL:https://cregio.jp/

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