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M&A事業承継

会社を売却するなら同業?非同業?メリット・デメリットを徹底解説

会社を売却するなら同業?非同業?メリット・デメリット

会社を売却・承継する際、経営者が必ず直面するのが「同業に譲渡すべきか、それとも非同業に譲渡すべきか」という選択です。

M&Aにおいて買い手は大きく①同業、②非同業、③ファンドの3つに分けられ、それぞれ期待できるシナジー効果や譲渡後の経営環境は大きく異なります。複数の候補先が現れた場合、自社にとってどのパートナーが最も適しているのかを判断することは簡単ではありません。

本記事では、売り手企業の視点から「同業」と「非同業」に譲渡する場合のメリット・デメリットを整理し、後悔しないM&Aの意思決定に役立つポイントを解説します。

会社売却における買い手の種類と特徴

M&Aにおいて、売り手企業から見た買い手は大きく①同業、②非同業、③ファンドの3つに分類されます。それぞれ期待できるシナジー効果や譲渡後の経営環境は異なり、候補先の選定は会社売却・事業承継の成否を左右する重要なポイントです。

複数の候補先が現れた場合、自社の事業や社風、オーナー社長の意向を踏まえたうえで、どのパートナーが最適かを慎重に判断する必要があります。

同業への売却

「同業」とは、産業分類の細かなレベルで同じ業種に属する企業を指します。例えば「空調設備工事業」と「給排水・衛生設備工事業」のように近接業界でも分類が異なれば非同業となりますが、同一の業種であれば同業と位置付けられます。

特に調剤薬局、医療機器卸、食品卸・小売、運送業など、スケールメリット(同種の事業を集約することで効率性や収益性を高められる効果)が大きい業種では、同業間のM&Aが活発です。実際、後継者不在の解決というよりも、大手企業との統合による効率化や市場シェア拡大を目的とするケースが目立ちます。

メリット

  • スケールメリットを獲得でき、競争力や収益性が高まりやすい
  • 業界知識があるため、買い手の事業理解が早い
  • 後任経営者として経験豊富な人材を派遣してもらいやすい

デメリット

  • 買い手の経営理念や社風が強く反映され、売り手の文化やスタンスが維持されにくい

非同業への売却

「非同業」とは、隣接・周辺業界やサプライチェーンの異なる機能を担う企業など、事業領域が異なる相手先を指します。完全に異業種というよりは、売り手事業と接点のある業界が多いのが特徴です。

非同業への譲渡では、売り手企業の経営理念や社風が尊重されやすく、自主性が維持されやすい傾向があります。その一方で、後任経営者を派遣してもらえない可能性もあるため、承継体制をどう整えるかが重要です。

メリット

  • 経営理念や社風が尊重されやすい
  • 同業とは異なるシナジー効果を得られる(例:異なる顧客層へのクロスセル)
  • カニバリゼーションが少なく、事業をそのまま活かしやすい

デメリット

  • 買い手に任せきりにされる場合がある
  • 後任経営者を派遣してもらえないことがある
  • スケールメリットを得にくい

ファンドへの売却

ファンド(投資ファンド・PEファンド)への売却は、同業・非同業とは異なる選択肢です。ファンドは事業承継や成長投資を目的として企業に出資し、一定期間の経営支援を行った後に株式売却(エグジット)を目指します。

後継者がいない中小企業の承継先としてファンドが活用されるケースも増えており、専門的なノウハウや経営管理体制の強化を期待できます。ただし、投資回収を前提とするため、中長期的に安定的な経営を望む場合には注意が必要です。

「同業」へ譲渡する場合のメリット・デメリット

同業企業への譲渡は、M&Aにおいて最も一般的なケースの一つです。

特に調剤薬局、医療機器卸、食品卸・小売、運送業といった業種では、同業同士の統合によるスケールメリット(同じ種類の事業をまとめることで単体以上の効果を発揮すること)が大きく、業界再編の動きが活発化しています。

現場感覚としても、こうした業界では「後継者問題を解決するための事業承継」よりも、「大手企業との統合による効率化やシェア拡大」を目的に同業へ譲渡されるケースが多く見られます。

メリット

  • スケールメリットを獲得でき、競争力や収益性が高まりやすい
  • 買い手が業界事情に精通しているため、事業理解が早い
  • 後任経営者として、業界経験や経営経験のある人材を派遣してもらいやすい

デメリット

  • 買い手企業の経営理念や社風が強く反映されやすく、売り手企業の文化や商売スタンスが維持されにくい場合がある

「非同業」へ譲渡する場合のメリット・デメリット

非同業へ譲渡する場合は、以下のようなメリット・デメリットが挙げられます。

特に大きいと考えられるメリットは、「売り手企業の経営理念、社風、商売スタンス等や自主性が尊重されやすい」点です。買い手は、売り手事業の経営経験がないため、売り手の経営理念や商売スタンス等が継続されるケースが多いです。

  • 売り手企業No.2である専務への株式承継(MBO)までは難しいが、専務に経営能力がありM&A後も十分に経営を任せられるし任せて欲しい。
  • 売り手の強みが独自の経営理念、社風、商売スタンスであり、M&A後もこれを継続して欲しい。

上記のようなケースは、相手先は非同業の方が適切なこともあります。一方で、非同業のM&Aでは、後任経営者(業界経験、経営経験のある人材)を派遣してもらえない可能性もあります。

売り手企業の社内に後継経営者として適切な人材がおらず、後継社長を買い手企業から派遣してもらいたいという場合には、その旨をしっかり伝えた上で、買い手企業と認識のズレがないようにする必要があります。

メリット デメリット
① 売り手企業の経営理念、社風、商売スタンス等が継続されやすい
② 同業とは異なるシナジー効果が期待できる
例:買い手企業の取引先(売り手企業と異なる属性の顧客層)へのクロスセル
③ 売り手企業の事業と買い手企業の事業のカニバリゼーションが少ない
① 任せっぱなしにされることがある
② 後任経営者を出してもらえないことがある
③ スケールメリットを得にくい


おわりに

今回は買い手企業が同業・非同業だった場合に分けて、そのメリット・デメリットを整理しました。

買い手企業のニーズが様々であるように、売り手企業のニーズも、単純に後継者がいないという課題だけでなく、社員の雇用継続や事業の独自性維持など、多面的な経営課題と結びついています。そのため、どの企業に事業を引き継いでもらうかの判断は、オーナー経営者にとって非常に難しいテーマです。

ただでさえ日々多忙な経営者が一人で悩み続けるのは現実的ではありません。俯瞰的な視点を持つ専門家やM&A仲介会社に早めに相談することで、候補先の幅広い可能性や過去の成功事例を参考にしながら、自社に合った最適な選択肢を見つけることができます。

後悔しない会社売却・事業承継のために、まずは信頼できる相談先に一歩踏み出してみてはいかがでしょうか。



クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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