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M&A事業承継

自動車教習所業界のM&Aをまとめ!少子高齢化時代に求められる経営戦略とは?

自動車教習所業界は、少子高齢化や若年層を中心としたライフスタイルの変化等により、需要・供給共に減少し、デジタル化への対応等、新たな対応が求められている業界です。時代の変化に応じて発生する経営課題を解決するためには、単独ではなく、外部との連携が重要であり、M&Aの活用が注目されています。本コラムでは、自動車教習所業界におけるM&Aのポイントをまとめました。

記事のポイント

  • 自動車教習所業界の課題は、「少子高齢化による教習生の減少」「設備・車輛への投資」「指導員人材の育成・確保」「オンライン学科への対応」。
  • M&Aを通じて「商圏拡大による教習生・人材の確保」「バックオフィスの統合化等によるコストの軽減」「デジタル化の推進」が可能。
  • 今後も環境は変化。だからこそ、自社の経営資源や課題を改めて見つめ直し、外部との連携を柔軟に取り入れる姿勢が重要。

自動車教習所業界の概要

警察庁が公表している「令和5年版 運転免許統計」によると、指定教習所数は年々減少しており、2023年時点では、1,291所となっています。他方、卒業者数は2018年まで増加傾向でしたが、翌年~2021年まで増加傾向であり、2022年以降から減少し、2023年時点で1,528千人となっています。卒業者数の一時的な増加の要因については、コロナ禍において、ソーシャルディスタンスを保つために自家用車の利用ニーズが増加したことを指摘する記事もあります(出典:株式会社メディア・ヴァーグMerkmal「運転免許保有者が減っているのに、「教習所の卒業生」が増えている理由」)。一方で、人口減少・少子高齢化により、受験者や指導員の減少に伴い、長期的なトレンドとしては、いずれも減少が継続する可能性があります。一方で、物流業の2024年問題を背景に、準中型免許(車両総重量3.5t以上7.5t未満、最大積載量2t以上4.5t未満の自動車を運転するための免許)の取得が注目されています。



自動車教習所業界の課題

自動車教習所業界の課題として、「少子高齢化による教習生の減少」「設備・車輛への投資」「指導員人材の育成・確保」「オンライン学科への対応」が挙げられます。


少子高齢化等による教習生の確保

令和5年版 運転免許統計」によると、2023年の年代別運転免許保有者数は、50代が20.5%と一番多く、次いで40代19.2%、60代15.8%となっており、20代・30代の割合は比較して少なくなっており、都市部の若い年代では免許を必要としないといったライフスタイルが変化している様子がうかがえます。今後の日本において、少子高齢化により、若年層は更に減少する見込みであり、そういった時代背景も含め、教習生をいかに確保するかが重要な課題となります。

設備・車輛への投資

自動車教習事業は、コスト構造において、施設・教習車等の減価償却費の割合が高く、典型的な装置産業モデルです。事業継続には、設備更新の費用が必要であり、設備・車輛への投資を継続していくために、必要な資金を調達し、利益を創出していくことが求められます。

指導員人材の育成・確保

自動車教習事業は、コスト構造においてもう一つ大きな割合を占めるのは人件費であり、事業運営において、教習生を指導する「自動車教習指導員」が必要です。自動車教習指導員になるためには、国家資格である「指定自動車教習所指導員」の取得が必要となっています。「令和5年版 運転免許統計」によると、2023年の教習指導員数は30,673人であり、2014年の32,608人から比較して、年々減少しており、指導員人材の育成・確保も大きな課題です。

オンライン学科への対応

2020年10月の警察庁通達により、インターネットを通じて学科講習を受けることができるオンライン学科教習が解禁されました。録画配信等を用いて、24時間、オンデマンドで講習を受けることができる等、各社で新しいサービスを提供しています。自動車教習業界においても、このようなデジタル化の流れに対応していくことが求められます。


自動車教習所業界におけるM&A

M&Aによる課題解決

自動車教習所業界において、M&Aで解決できる経営課題は「商圏拡大による教習生・人材の確保」「バックオフィスの統合化等によるコストの軽減」「デジタル化の推進」が挙げられます。

商圏拡大による教習生・人材の確保

少子高齢化が進む中、自動車教習事業は装置産業となりため、教習場があるエリアに商圏が限られてしまうという構造的な課題があります。M&Aにより、自社以外のエリアを商圏に持つ企業と連携し、商圏を拡大することができれば、教習生の流入を確保する有力な手段となり、広域的なブランド展開やマーケティング投資の効率化にも繋がります。また、複数拠点を有することで、採用できるエリア拡大により、指導員の採用力を強化するだけでなく、指導員の柔軟な配置により、繁忙期における人材不足対策等も可能となります。

バックオフィスの統合化等によるコストの軽減

自動車教習以外のバックオフィス(総務・経理・人事・労務等)を、親会社が一括して担うことで、グループに加わる企業のバックオフィスの負担を軽減することが可能です。バックオフィス業務を本部に集約し、業務の標準化等を進めることで、間接コストの削減に繋がる可能性があります。収益性を高めながら持続的可能な事業を運営を目指す中で、M&Aを通じた生産性の向上は検討すべき手法の一つです。

デジタル化の推進

オンライン学科教習をはじめ、バックオフィスのデジタル化、生成AIの活用等、自動車教習所業界でもデジタル化が急速に進む中、今後はどのような規模の企業であってもデジタル投資の加速が求められます。一方で、デジタル投資には、ツール選定・初期費用・運用ノウハウが必要であり、中小企業が単独で取り組むには高いハードルとなっています。M&Aでグループを形成した場合、親会社がデジタル投資を積極的に進め、ノウハウをグループ内に展開することで、単独で行うよりもスムーズにデジタル化を推進できる可能性があります。



自動車教習所業界におけるM&A事例

RT ホールディングス

広島県福山市に本社を置き、自動車教習事業である「ロイヤルドライビングスクール」をはじめ、クレーン・船舶・ドローン等も含めた総合ライセンス事業を展開するRTホールディングスは、2025年1月に愛知県江南市に所在する江南自動車学校と資本提携を行い、同年3月に神奈川県横浜市に所在する三ツ境⾃動⾞教習所を子会社化する等、相次いでグループを拡大しています。
(リリース)江南⾃動⾞学校と資本業務提携
(リリース)三ツ境⾃動⾞教習所の株式を取得(完全⼦会社化)

リアライズコーポレーション

「トラックファンド」等、運送会社へ「借りる」という新たな車輛調達手段を提供するリアライズコーポレーション(東京都)は、2024年2月に福島県郡山市の富久山自動車教習所の全株式を取得し、新たに自動車教習事業に参画しました。
(リリース)リアライズコーポレーションが自動車教習所事業に参画

モトヤユナイテッド

自動車教習所だけでなく、運送・外食・広告・不動産等、事業を多角的に展開する岡山のモトヤユナイテッドは、グループ子会社であるモトヤエデュケイツを通じて、2024年4月に岐阜県関自動車学校株式会社(岐阜県)の株式を取得しました。
(リリース)M&Aについてのお知らせ



おわりに

自動車教習所業界は、地域の交通インフラを支える重要な存在である一方で、少子高齢化や若年層の免許取得率低下といった社会構造の変化、さらにはDX・AI活用をはじめとするデジタル化への対応など、複合的な課題に直面しています。これらに対し、持続可能な形での解決策が求められています。

自動車教習所におけるM&Aは、もはや後継者不在への対応にとどまらず、商圏の拡大、経営効率の向上、デジタル投資の加速といった経営全般の高度化を実現する有効な選択肢となりつつあります。M&Aを通じて、新しい時代の教習事業の姿を構築し、地域社会とともに持続的に成長していくことが可能です。

今後も業界を取り巻く環境変化は続くことが予想されます。だからこそ、自社の経営資源や課題を改めて見つめ直し、外部との連携を柔軟に取り入れる姿勢が重要です。後継者不在や経営戦略にお悩みの際は、ぜひ当社までご相談ください。実績ある専門のコンサルタントが、貴社の未来をともに考えるお手伝いをいたします。

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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル6階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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