島根県のM&A・事業承継事例|休廃業・倒産状況・後継者不在率まとめ
島根県では、人口減少や後継者不在(後継者募集)の問題が深刻化しており、事業承継やM&Aのニーズが高まっています。
本記事では、島根県の経済概況・産業構造・休廃業・倒産件数の動向をデータで整理しつつ、全国との比較で見た後継者不在率の現状をわかりやすく解説します。
また、実際に島根県で行われたM&A事例(事業譲渡・事業売却・会社譲渡)も紹介し、島根におけるM&A動向を総合的にまとめています。
目次
島根県の経済概況|産業構造と成長分野
島根県の最新の県内総生産(名目GDP)を見ると、令和4年度(2022年度)の推計で県内総生産は約2兆7,527億円となり、前年度比で約+3.1%の増加となっています。
また、実質GDPや県民所得も2年連続でプラス成長を記録しており、経済活動は回復基調にあります。1人当たり県民所得も約303万円と前年度比で増加しました。
島根県の人口は約63万人(2025年12月1日時点)で、県内は大きく出雲地域・石見地域・隠岐地域の3地域に分かれ、それぞれ異なる産業構造を形成しています。
出雲市・松江市・安来市を中心とする出雲地域では、機械・金属加工などのものづくり産業に加え、情報通信業やIT関連産業が集積しており、県内経済の中核を担っています。
隠岐地域は、日本海に浮かぶ離島地域として、漁業を中心とした一次産業が基幹産業です。近年は世界ジオパークに認定された自然景観を活かし、観光業との連携による地域振興も進んでいます。
石見地域は、石見銀山やたたら製鉄に代表される歴史的なものづくり文化を背景に、製造業や地場産業が根付く地域です。近年では、観光資源と地場産業を組み合わせた取り組みも見られます。
また島根県全体としては、プログラミング言語Rubyを軸としたIT産業振興にも力を入れており、エンジニア育成やIT企業誘致を通じて、地方発のデジタル産業創出を目指しています。これらの取り組みは、人口減少下における新たな成長分野として注目されています。
島根県の倒産件数・休廃業件数の推移
| 年度 | 倒産件数(法的整理) | 休廃業・解散件数 |
|---|---|---|
| 2018年 | 25件 | 312件 |
| 2019年 | 40件 | 305件 |
| 2020年 | 32件 | 308件 |
| 2021年 | 34件 | 330件 |
| 2022年 | 28件 | 340件 |
| 2023年 | 54件 | 326件 |
| 2024年 | 50件 | 336件 |
参照:帝国データバンク-島根県「企業の休廃業・解散動向調査(2024年)」
島根県では、法的整理による倒産件数よりも、休廃業・解散件数(個人事業主を含む)が圧倒的に多い状態が一貫して続いている点が大きな特徴です。
特に2020年以降、休廃業・解散件数が急増しており、コロナ禍を契機に「倒産する前に事業を畳む」という選択をした企業が増えたことが読み取れます。2021年は倒産件数が一時的に減少した一方、休廃業は高止まりしており、実態としては経営継続を断念する企業が多かった年といえます。
その後、2023年〜2024年にかけては倒産件数・休廃業件数ともに増加しており、コロナ関連支援策の縮小、物価高、人手不足、後継者不在といった複合的な要因が、企業経営を圧迫している状況がうかがえます。
島根県のように中小・零細企業の比率が高い地域では「倒産=経営失敗」ではなく、事業承継問題や経営者高齢化を背景とした“静かな退出”が主流になっている点が、数字からも明確に表れています。
島根県の後継者不在率は全国2位
| 調査年 | 後継者不在率 | 全国順位 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2018年 | 71.2% | 8位 | 7割超で全国上位 |
| 2019年 | 70.9% | 7位 | 横ばい(高水準が継続) |
| 2020年 | 73.5% | 4位 | 再上昇し上位入り |
| 2021年 | 72.4% | 3位 | 改善するも依然高水準 |
| 2022年 | 75.1% | 1位 | 2年ぶりに上昇し全国最も高い |
| 2023年 | 69.2% | 3位 | 初めて7割を下回る |
| 2024年 | 66.5% | 3位 | 調査開始以降で最低水準 |
| 2025年 | 64.2% | 2位 | 3年連続で低下も全国上位 |
参照:帝国データバンク-島根県「後継者不在率」動向調査(2025年)
2025年の島根県の後継者不在率は64.2%、全国2位の高さです。
島根県の後継者不在率は、2022年に全国1位(75.1%)まで悪化した一方で、2023年以降は3年連続で低下し、2025年は64.2%まで改善しています。
ただし、都道府県順位は2025年も全国2位と依然として高く、「改善は進んでいるが、全国的には深刻度が高い県」という位置づけです。
島根県のM&A・事業承継の事例一覧
島根県の地域経済において、事業承継や成長戦略の観点から注目されるM&A事例をまとめました。
事例①フォーバルがえすみを子会社化(2020.4発表)
企業経営支援のフォーバル(東京都)が、オフィス機器、オフィス家具、文房具用品の販売・保守を行うえすみ(島根県雲南市)を完全子会社化しました。えすみの持つ中小企業の顧客基盤をフォーバルが獲得する形になり、自社展開のみだと参入が難しい地域市場に対してM&Aを上手く活用した事例です。
事例②SBI証券が島根銀行の投資信託・債券事業を譲受(2020.2発表)
ソフトバンクフループのSBIホールディングス傘下、SBI証券(東京都)が、島根県では有数の上場企業であり、第二地方銀行である島根銀行(島根県松江市)の投資信託・債券の取扱いに係る事業を譲受しました。
島根銀行はSBIのノウハウ活用を通じ、より高品質なサービス提供を可能とし、双方のノウハウと島根銀行が培ってきた地域産業と生活に密着した営業活動の融合を図り、地方創生に寄与することを目指す形になりました。
島根銀行が2020年7月30日発表した2020年4~6月期の決算によると、本業の儲けを示すコア業務純益は1億5000万円の黒字化し、16年ぶりの第1四半期の黒字化を達成しました。このことからも、SBIグループとの提携が功を奏していることが窺えます。
事例③ヨシムラフードHDが香り芽本舗を子会社化(2020.3発表)
食品の製造及び販売を行う中小企業の支援を目指すヨシムラフードHD(東京都)が、わかめ・ひじき・めかぶを使用した商品製造を行う香り芽本舗(島根県出雲市)を子会社しました。
ヨシムラフードHDは、経営理念に「中小企業が集まり、相互補完することで、グループ全体を活性化」することを掲げており、その理念を実現するために戦略的にM&Aを活用しています。わかめ製品を中心に地域で食品製造を行う香り芽本舗がグループ参入する形となり、ヨシムラフードHDの今後の展開が注目されます。
事例④バンダイナムコが山陰スポーツネットワークを買収(2019.8発表)
バンダイナムコHD傘下で、家庭用ゲームコンテンツ等を企画・開発・販売するバンダイナムコエンターテイメントが、男子プロバスケットボールBリーグ1部チーム「スサノオマジック」を運営する山陰スポーツネットワーク(島根県松江市)の株式の56.5%を取得しました。
バンダイナムコエンターテイメントとしては、スポーツという新たなエンターテイメント領域への進出となり、地域のプロバスケットボールチームの株式取得を通じて行うところが非常に興味深いM&Aとなりました。
事例⑤スギヤスが益田クリーンテックを買収(2018.6発表)
自動車整備用リフトや物流機器、環境機器を取り扱い、住宅福祉事業も行うスギヤス(愛知県)が、「開発・設計・ 営業・工務」の多能力を担い「クリーン塗装システム」の専 門メーカーとして1988年に創業した益田クリーンテック(島根県益田市)の株式を100%取得し子会社化しました。
後継者不在であり、従来より取引のあったスギヤスに事業が引き継がれる形となる事業承継型のM&Aの事例です。
事例⑥テクノプロがプロビズモを買収(2018.1発表)
機械、電気、電子、情報システム、バイオ、医薬、新素材等、各種技術分野において技術サービスを提供するテクノプロHD(東京都)が、アプリケーションの開発保守等を行うテクノプロを通じて、東京・島根・鳥取・大阪を拠点にIT分野における請負受託事業を展開するプロビズモ(島根県出雲市)を買収しました。
プロビズモは、Ruby,Java等の120名のエンジニアを有しており、テクノプロHDは、IT分野エンジニア派遣事業の顧客基盤と人材採用基盤を獲得することになりました。
事例⑦タカハシ包装センターがキョウワを子会社(2018.1発表)
食品包装資材・機器の企画・販売を行うタカハシ包装センター(島根県浜田市)が、商業印刷を関東で行うキョウワ(東京都)を子会社化しました。地域企業が関東進出する際にM&Aを活用した事例です。
島根県のM&A・事業承継動向の展望
島根県のM&A・事業承継市場は、後継者不在率が全国上位で推移している現状を背景に、今後も安定的にニーズが拡大していくと見込まれます。2025年時点で後継者不在率は64.2%まで低下したものの、全国順位では依然として2位と高水準にあり、「改善傾向にあるが、依然として深刻」というのが実態です。
特に、製造業、建設業、卸売・小売業、サービス業といった地域経済を支える中小企業では、経営者の高齢化と人材不足が同時進行しており、親族内承継だけでの対応が難しくなっています。その結果、第三者への事業承継としてM&Aを検討するケースが年々増加しています。
島根県の特徴として、単なる株式譲渡型のM&Aだけでなく、既存の取引先や同業他社との関係性を活かした「事業承継型M&A」が多い点が挙げられます。実際に、製造業や食品関連企業などでは、人材・技術・顧客基盤を引き継ぐことを目的としたM&Aが進んでいます。
また、地域金融機関や支援機関が関与するケースも増えており、M&Aを単なる企業売買ではなく、地域経済を維持・再編するための仕組みとして位置づける動きが広がっています。特に人材獲得型M&Aや、食品産業・観光資源を軸としたグループ化は、今後も注目される分野といえるでしょう。
今後の島根県におけるM&Aは、「後継者不在の解消」という守りの目的に加え、「事業の成長」「地域資源の活用」「雇用の維持」といった攻めの視点を含めた活用がより重要になります。M&Aを早期に選択肢として検討し、戦略的に活用できるかどうかが、企業の将来を左右する局面が増えていくと考えられます。
まとめ
島根県は、出雲・石見・隠岐という3つの地域それぞれに特色ある産業を持ち、製造業、一次産業、IT産業、観光業などが地域経済を支えています。一方で、人口減少や経営者の高齢化が進行しており、倒産件数以上に休廃業・解散件数が多い「静かな退出」が続いている点が大きな課題です。
後継者不在率は2025年に64.2%まで改善したものの、全国では依然として2位と高水準にあり、島根県における事業承継問題の深刻さは続いています。このような環境下で、M&Aは単なる企業売却の手段ではなく、雇用や技術、地域資源を次世代へ引き継ぐための重要な選択肢として位置づけられています。
実際に島根県では、金融機関の再編、食品製造業やIT企業のグループ化、既存取引関係を活かした事業承継型M&Aなど、地域特性を反映した多様な事例が積み重なっています。これらは、地域経済の持続性を高める実践的な取り組みとして、今後さらに広がっていくことが期待されます。
今後の島根県におけるM&A・事業承継は、「いつか考えるもの」ではなく、「早期に準備し、選択肢を持つこと」が重要なテーマとなります。後継者不在や将来不安を抱える経営者にとって、M&Aは事業を終わらせる手段ではなく、事業を次につなげるための現実的な解決策です。地域に根差した企業が持続的に発展していくためにも、島根県におけるM&A・事業承継の動向は今後ますます注目されていくでしょう。
クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を、仲介およびアドバイザリーの両面から支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見も活かし、経営者に寄り添った伴走型の支援を提供しています。
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