社員にはいつ相談する?M&Aで会社を売却
社員にはいつ相談する?M&Aで会社を売却
M&Aを進める中で必ず必要なポイントは、「社員にいつM&Aの情報を開示するか」という点です。過去の事例を振り返りつつ、最適と思われるM&Aの社員への開示のタイミングをお伝えします。
記事のポイント
- 社長の右腕人材には、遅すぎないタイミングでM&Aを伝える。
- 全社員にM&Aを伝えるのは、最終契約直後。慎重に。
事例1:最終契約直前に副社長へ相談し、破談
A社社長は、自身が高齢だったこともあり、事業承継について検討を始め、M&A仲介会社に相談することを考えました。ただ、会社売却の相談を副社長(非親族)にすることが忍びなく、「社員全員の雇用・処遇を守る相手先を見つけることが社長の責務」と考え、一人で仲介会社に相談しました。「従業員全員の雇用継続」にくわえて「副社長を社長として継続すること」を絶対条件として相手先を探しました。
仲介会社とやり取りを進めるうちに、X社が強い関心を示し、交渉は順調に進みました。「副社長を社長とし役員報酬も増額」の条件まで取り付けたところで、社長は満を持して副社長に相談しました。副社長は「こんな大事なことを自分に相談せずに進めるなんて許せない!」と激高し、社長は数日かけて説明と誠意を尽くしましたが、副社長の不信感は収まりませんでした。その結果、X社との交渉は中止をせざるを得ませんでした。
事例2:M&A仲介会社への依頼前に全社員に説明し、反対を受け中止
B社社長は、息子は東京でIT会社に勤務し、娘は神奈川に嫁いでおり、親族内承継を検討することが難しい状況であり、とある事業承継セミナーに通ううちに、M&Aによる第三者承継の可能性を検討する必要を感じました。M&A仲介会社に相談する際に、「うちの会社は家族経営で、社員は家族そのものだ。家族に内緒でM&Aを進める訳には行かない。」と考え、社長は全社会議で、事業承継のために会社売却を検討すること、そのためにM&A仲介会社に依頼することを伝えました。社員からの声は、「社長、寂しいです。」「まだまだ元気じゃないですか。」「社長だからついてきたのに!」「社長と一緒に辞めます!!」といった社長を慕う声が多く、結果としてB社社長はM&A仲介会社への依頼を断念し、事業承継の課題を先送りせざるを得なくなりました。
2つの事例から学ぶこと
右腕の方には遅すぎないタイミングで伝えよう
経営者の中には「右腕」と呼ばれる側近の方がいらっしゃるケースが多いです。そういった方にはM&Aによる会社売却の意向があることを遅すぎないタイミングで伝えるのが良いと思います。経験として、早ければM&A仲介会社への依頼前、遅くとも基本合意締結前に伝えるケースが多いです。その主な理由としては以下のとおりです。
- 社長を支える側近の方に対する道義。
- M&Aそのものに反対でなくとも、進め方に対する反発・不信感が生じないようにする。
- M&Aそのものに反対(例:専務自身がMBOにより事業承継の意向がある等)の場合、買手との交渉が無駄になり情報だけ漏れてしまうことになる。
従業員全員に伝える時は慎重に
従業員の方にもきちんと話しておきたいという気持ちは分かりますが、早い段階での伝達は、上記のようなケースが想定されます。また情報漏洩リスクも大きくなります。全従業員には、最終契約締結の当日~翌日に話すことが原則です。説明する際のポイントは、以下のとおりです。
- 相手先の●社は●県にある●業をしている売上●億の会社です。
当社はX社の子会社になります。 - 「社員の雇用・処遇」は継続します。
- 「社名」は継続します。
- 「取引先との取引」は継続します。
全社員に、最終契約締結まで話すべきでない理由は以下のとおりです。
- M&Aプロセスの早いタイミングでM&Aの意向を伝えてしまうと、従業員の立場では、「相手先が不明」「当社の先行きが不明」「自分の今後の立場が不明」という状況になり、従業員から反対や抵抗が起こりやすくなります。社長の立場上、反対されるとM&Aプロセスが進められなくなります。
- 取引先や金融機関等に噂が漏れると、信用不安が起きたり、M&Aプロセスに影響が出ることもあります。
- 最終契約締結までは何が起こるか分かりません。当然、交渉中止の可能性も常にゼロにはなりません。
当社もオーナー経営者から「社員に内緒で進めたくない」とご相談を受けることも多く、経営者の気持ちも理解できます。しかし、早すぎる伝達はいたずらに不安を呼ぶだけです。従業員の皆さまには、相手先を決め、会社・雇用の継続を確保した後に伝えるべきです。「社長は孤独」とよく言われますが、「事業承継」においても社長の孤独な決断は続きます。
M&Aの従業員説明パターン
M&Aの時間軸と従業員への説明タイミングのパターンは以下のとおりです。
時期 | イベント | 伝える相手 | 伝え方 |
M&A完了から 1~5年前 |
事業承継の方向性の前振り | 取締役 | あらゆる選択肢を検討する(M&Aも排除しない) |
M&A完了から 1年前 |
仲介会社に正式依頼 | 専務・常務 又は誰にも言わない |
‐ |
M&A完了から 2か月前 |
買手と基本合意(仮契約) | 専務・常務 | ・買手の概要 ・雇用、社名、取引の継続 |
M&A完了 (当日~翌日) |
最終契約 | 全従業員 | ・買手の概要 ・雇用、社名、取引の継続 |
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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介 代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立 :2018年4月
事業内容:
・M&Aに関するアドバイザリーサービス
・事業承継に関するアドバイザリーサービス
・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL :https://cregio.jp/
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