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M&Aの満足度は本当に高い?2024年「中小企業白書」から読み解く成功企業の共通点

M&Aの満足度は?2024年「中小企業白書」から見るM&Aの実態

中小企業にとってM&Aは、本当に「やって良かった」と言える経営判断なのでしょうか。事業承継や成長戦略の選択肢としてM&Aが語られる機会は増えていますが、その一方で、「失敗するのではないか」「後悔するのではないか」といった不安の声も根強くあります。

2024年版「中小企業白書」では、こうした疑問に対して、中小企業が実際に行ったM&Aの満足度や成果、取り組み方の違いに着目した調査結果が示されています。注目すべきは、買手・売手ともに5割以上がM&Aの結果に「満足」と回答している点です。M&Aは一部の成功企業だけの特別な施策ではなく、中小企業においても現実的で受け入れられた経営戦略になりつつあることが読み取れます。

さらに白書では、満足度の高低を分ける要因として、相手先の探索姿勢やPMIにおける考え方の違いなど、実務に直結する示唆も明らかにされています。ただ単にM&Aを実行したかどうかではなく、「どのように準備し、どう向き合ったか」が結果を左右している点は見逃せません。

本記事では、2024年版「中小企業白書」のデータをもとに、中小企業のM&Aがどのように評価されているのか、満足度が高い企業に共通する特徴は何かを整理しながら、これからM&Aを検討する経営者が押さえておくべきポイントを読み解いていきます。

M&Aに満足した割合は?国内アンケート調査結果

買手・売手共に5割以上が「満足」と回答

「M&A実施効果について満足度」について、「他社事業の譲受・買収」=買手、「自社事業の譲渡・売却」=売手、それぞれに、相手先が同業種・異業種であった場合、それぞれ満足度に関するアンケート調査が行われています。

調査結果では、それぞれ「満足」「やや満足」と回答した割合は、買手で同業種を譲受・買収した場合は63.5%、異業種を譲受・買収した場合は56.5%となっており、いずれも半数以上が満足という回答結果になってる一方で、同業を譲受・買収した方が満足と回答した割合が高くなっており、同業種の方が「シナジー効果を見込みやすいといった要因が考えられる」と指摘しています。

また、売手では、同業種へ譲渡・売却した場合は58.8%、異業種へ譲渡・売却した場合は60.2%となっており、こちらもいずれの場合でも半数以上が満足したという回答結果になっています。

出典:中小企業庁「2024年版「中小企業白書」

この結果から読み取れる重要なポイントは、M&Aそのものが失敗しやすい施策ではないという点です。少なくとも中小企業においては、M&Aは「やってみたが後悔している」という経営判断ではなく、一定の成果や納得感を得られているケースが多数派であることが分かります。

特に同業種M&Aにおいて満足度が高い点は、事業理解・人材・顧客の共通性が、統合後の摩擦を小さくしていることを示唆しています。裏を返せば、異業種M&Aであっても、シナジーの描き方や統合設計が不十分であれば、満足度は下がりやすいとも言えるでしょう。

「探索」が満足度のカギ、特に売手側で顕著

2024年版「中小企業白書」では、M&A実施時における相手先の探索姿勢と満足度の関係についても分析が行われています。相手先の探索意向別に満足度を確認すると、M&Aの結果に対する評価は、事前の探索活動の取り組み方によって大きく左右されていることが分かります。

買手側では、「積極的に探索した」と回答した企業の満足度は70.0%であるのに対し、「どちらともいえない」は55.4%、「探索には消極的だった」は56.8%となっており、探索に前向きであった企業ほど満足度が高い傾向が見られます。一方で、探索に消極的であっても一定の満足度が保たれている点は、買手側が比較的複数の選択肢を持ちやすい立場にあることを反映しているとも考えられます。

より顕著なのが売手側の結果です。売手側では、「積極的に探索した」と回答した企業の満足度は71.7%であるのに対し、「どちらともいえない」は49.6%、「探索には消極的だった」は37.4%と、大きな差が生じています。この結果から、売手企業にとって相手先の探索を主体的に行うかどうかが、M&Aの納得感や満足度を大きく左右していることが読み取れます。

売手にとってM&Aは、単なる事業取引ではなく、会社や従業員、取引先の将来を左右する重要な意思決定です。そのため、紹介された相手先をそのまま受け入れるのではなく、自社の価値観や経営方針、従業員の将来像に合致する相手かどうかを比較・検討するプロセスが欠かせません。探索に積極的な企業ほど、複数の候補先と対話を重ねた上で判断しているケースが多く、その結果として「納得して決断できた」という満足感につながっていると考えられます。

この調査結果は、M&Aの満足度が「条件の良し悪し」だけで決まるものではないことも示唆しています。探索段階から主体的に関与し、自社にとって何を優先すべきかを整理した上で相手先を選定することが、結果的にM&A後の評価を高める要因になっているのです。

中小企業のM&Aにおいては、金融機関やM&A仲介会社といった外部機関の支援を活用しながらも、最終的な判断は経営者自身が行う必要があります。今回の白書データは、「探索を他人任せにしないこと」こそが、満足度の高いM&Aにつながる重要なポイントであることを、客観的に裏付けていると言えるでしょう。

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M&Aが経営戦略として中小企業に拡大

中小企業でM&Aが活発化、M&Aは売上高・経常利益・生産性に効果

経済産業省「企業活動基本調査」において、企業規模別に子会社・関連会社が増加した企業割合の推移を見ると、大企業では横ばいであるのに対し、中小企業では増加傾向であることが分かり、中小企業においてもM&Aが経営戦略として広がっていることが分かります。

また、M&Aを「2017年度に実施した企業」と「2017~2021年度の間一切実施していない企業の売上高・経常利益・労働生産性を比較すると、実施した企業の方が3つの項目で実施していない企業より、向上していることが分かり、M&Aの活用が売上高・経常利益・労働生産性にプラスの影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。

同業M&Aが比較的多い、異業種の場合もシナジーを意識

M&Aの相手先については、相手先が同業である場合が買手の場合は73.2%、売手の場合は65.5%と、同業同士のM&Aの方が多く実施されています。

異業種でのM&Aを見ると、特に割合が高い組み合わせは「卸売業」×「製造業」、「宿泊業」×「飲食サービス業」であり、「卸売業」×「製造業」は川上と川下のバリューチェーンの強化を目的とするケースや、「宿泊業」×「飲食サービス業」はそれぞれの顧客に、それぞれのサービスを提供する等、いずれもシナジー効果が出しやすい組み合わせの割合が高くなっています。

買手は金融機関を、売手はM&A会社を活用

M&Aにおいて活用した外部機関では、「金融機関」「M&A仲介業者」「税理士・公認会計士」の割合が多くなっており、買手側は特に金融機関が多く、売手側では特にM&A仲介業者が多いという結果となり、買手・売手双方で、活用機関の差異がありました。

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PMIで重要なのは「相互理解」、成長のためにM&Aを活用

M&Aの成否を左右するPMI(=Post Merger Integration=合併後の統合)に関しては、M&A成立前・成立後共に、重点的に実施した項目は、「相手先経営者」又は「相手先従業員」とのコミュニケーションを通じた相互理解でした。

PMIにおいて最も重視されているのが「相互理解」である点は、非常に示唆的です。

制度やシステムの統合よりも先に、経営者同士・従業員同士が「なぜこのM&Aを行ったのか」を共有することが、統合後の混乱を防ぎ、成果につながりやすいことを示しています。中小企業のM&Aでは、経営者やキーパーソンの影響力が大きいため、数字では測れない信頼関係の構築が、PMI成功の前提条件になっていると言えるでしょう。

また、M&Aによる譲受・買収の狙い・目的の中で一番回答割合が多かったのは「市場シェアの拡大」であり、続いて「経営資源(人材)の共有」「販売先等、取引先の共有」「経営資源(技術・ノウハウ)の共有」でした。自社の成長や経営課題を解決するための手段としてM&Aを活用しようとしている様子が確認できました。

まとめ

M&Aはこれまで、一部の成長企業や大企業の戦略というイメージが強い分野でしたが、2024年版「中小企業白書」の分析からは、中小企業においても現実的かつ有効な成長戦略として定着しつつある姿が明らかになりました。とりわけ、M&Aの「満足度」に焦点を当てた公的データはこれまで多くなく、本白書の調査結果は中小企業経営者にとって貴重な判断材料と言えるでしょう。

これまで国内で参照されることの多かったM&Aの成功・失敗に関するデータは、クロスボーダーM&Aを対象とした民間調査が中心であり、中小企業の実態とは必ずしも重なりませんでした。その点、今回の白書では、買手・売手の双方で半数以上がM&Aの結果に「満足」と回答しており、中小企業にとってもM&Aが過度にリスクの高い選択肢ではないことが客観的に示されています。

さらに、満足度の高低を分ける要因として、相手先の探索姿勢や、M&A後のPMIにおける相互理解の重要性など、実務に直結する示唆が数多く示されている点も見逃せません。単にM&Aを実行したかどうかではなく、どのような準備を行い、どのような姿勢で臨んだかが、その後の評価や成果に大きな影響を与えていることが読み取れます。

売上高や経常利益、労働生産性といった指標においても、M&Aを実施した企業が一定の成果を示していることを踏まえると、M&Aは事業承継や課題解決のための「最後の手段」ではなく、企業の将来を見据えた前向きな経営判断の一つとして捉えるべき局面に来ていると言えるでしょう。

もし本記事の内容を踏まえ、自社にとってのM&Aの活用方法や進め方について具体的に検討したいとお考えでしたら、お気軽に当社までご相談ください。中小企業の実情を踏まえた視点で、経営課題や将来像に沿った選択肢をご一緒に整理させていただきます。

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