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コラム COLUMN

ユーザーが主役のデータドリブン物流の実現、DXを通じてものづくり企業を支える|株式会社オンザリンクス


広島県広島市に本社を置き、中堅製造業向けのオープンソース型WMS(Warehouse Management System=倉庫管理システム)「INTER-STOCK(インターストック)」、物流最適化システム「輸快通快(ゆかいつうかい)」等を展開するソフトウェア開発企業である株式会社オンザリンクス。お客様のニーズを解決することを第一に考え、ユーザーが主役のデータドリブン物流の実現を目指す物流テック企業です。同社の創業の経緯や現在展開しているサービス、成長戦略や実現に向けての想いを、同社代表取締役 東 聖也氏にインタビューしました。

顧客貢献を目指し独立、社会貢献を実現するためソフトウェア会社へ

コピー機セールスから独立、頼まれたら断らない

一般的な創業のストーリーだと、学生時代から起業を志して、「世の中にこんな貢献がしたい!」みたいな熱い想いがあるかもしれませんが、私の場合はそういったものはありませんでした。父は牡蠣の水産事業者向けの設備機械の製造やメンテナンスを行う会社を営んでいます。私が高校を卒業する頃、父の会社は立ち上げたばかりで事業がまだ不安定な状況でした。私は双子だったので、両親から「二人を同時に大学に行かせることが難しい」と言われ、双子の弟と相談して「それなら二人とも就職しよう」となりました。

最初に就職したのは、自動車メーカーの一次サプライヤーでした。その会社を選んだ理由は、給料が一次サプライヤーの中でトップクラスだったからという単純な理由です。しかし、その会社は社長交代と共に、会社の将来性に不安を感じるようになり4年で退職しました。退職後は、コピー機等の事務機のセールスマンになりました。そこそこ営業成績はよかったのですが、社長と折り合いが合わず、独立して売りたいと考えるようになりました。社長に退職の意思を伝えると、「営業が足りなくなる」と慰留されました。仕方なく続けていましたが、私の後任として入った社員が、現在の当社会長である守藤でした。一緒に営業をしていたのですが、守藤も会社を辞めたいと口にしていたので、私が一緒に独立しないかと誘い、結局2人で、コピー機販売事業を主業に独立しました。


当時は「会社を作ってこんなことがしたい」というビジョンや事業計画は全くありませんでした。お客様のニーズに基づき、欲しいと言われたものは探す、無ければ作る。計画性はゼロです。営業スタイルも、飛び込み営業だったので、お客様からご要望されたことは、一切断らないというスタンスでした。消火器、セキュリティ機器、エアコン、テレビ、何でも売りました。都会は信用で物を買いますが、地域は人柄で買ってくれますので、自然と営業エリアは都市部から離れた過疎地になり、少しずつですが買って頂けるようになりました。いきなり飛び込みでくる私を少しかわいそうと思ってくれた部分もあったんじゃないかなと思います。

独立して以前の職場と同様にコピー機の販売を始めましたが、思うように売れませんでした。会社の看板があってこそ売れていたという当たり前の事実に気づかされました。一方で、Windows98などのパソコンが普及し始めた時代でもあったので、「パソコンを持ってきたら買ってあげるよ」と言われました。そこで早速、家電量販店から仕入れて、設置料を利益として頂戴し、パソコンやプリンターなど、求められたものを何でも販売しました。そのうち、「ソフトウェアは作れないの?」という相談が舞い込むようになりました。当時の私はパソコンとワープロの違いすら分かっていなかったのですが、現会長の守藤が少しパソコンに詳しかったため、二人で必死に勉強して販売管理ソフトや酒税計算ソフトなど、お客様から「欲しい」と言われたものを作りました。

会社の事務所は守藤の自宅でしたので、営業活動が終わると20時頃に彼の自宅兼事務所に戻り、守藤のご家族と一緒に夕食を取り、その後深夜2時頃までプログラムを書くという生活を続けました。守藤のご家族からすると、他人が毎日のように夕飯から深夜まで家の中で仕事しているので、随分迷惑だったと思うのですが、奥様やお子さんには寛大な心で多くの支援を頂き、嫌な顔一つされませんでした。今でもそれはとても感謝しています。

ソフトウェア関連の業務が増え始めたきっかけは、キーエンスのハンディを取り扱ったことでした。ハードウェアはキーエンスが担当し、バーコード管理のソフトウェア部分は当社が手掛けるという形で一緒に営業しました。キーエンスの営業マンからは「初めての開発でありながら、最後まで自己完結して作り上げた開発会社は初めてだ」と高く技術力を評価されました。キーエンスは基本的にハードウェアの会社なので、ソフトウェアでなんでも作ってくれる弊社のような会社とは組み易かったのだと思います。
私の基本スタンスは「頼まれたら断らない」なので、キーエンスの営業マンとしても「何でもできます」とお客様に自信を持ってハードとソフトを提案できるため、すぐに大阪、福岡、東京など全国の営業マンから、私の携帯が鳴るようになり、沢山の仕事を頂けるようになりました。

依頼されたものであれば何でも作る受託開発型で、ハードウェアメーカーを中心に下請けとしてソフトウェア開発を行うようになり仕事は広がっていきましたが、ひとつだけ気になっていることがありました。それは、ソフトウェア開発には大量のコードを書かなければならず、時間と労力を要する大変な作業であるにも関わらず、仕上がったソフトウェアは一社にしか利用されないという点です。オーダーメイドなので仕方ないと言えばそれまでなのですが、労力をかけた割には、貢献できる範囲が小さいことに、どこかはがゆい思いを感じながら続けていました。
また、事業が拡大し社員も増えるにつれて、一人で開発していた頃と同じ単価では対応できなくなってきました。価格競争に巻き込まれ、提供する技術力やサービスの質ではなく、価格で選ばれることも増えていきました。このような問題に直面しながら、私たちはさらなる工夫と改善が必要であると感じていました。

震災をきっかけに見つめ直す、パッケージソフト会社へ転換の決意

自分の中で大きなきっかけになったのは2011年の東日本大震災です。震災が起こった1か月後、知人と一緒に石巻市へ被災地支援に向かいました。ただ、被災地にいっても、自分が何かをできるわけではありませんでした。私は広島出身なので、原爆が投下された後のような光景を目の当たりにして、自分の無力さを感じると同時に、もっと大きな社会課題を解決するような仕事がしたいと強く感じました。帰りの飛行機の中で色々なことを考えた結果、これまでのような受託開発ではなく、物流課題を解決するパッケージメーカーになることを決意しました。


モデルケースを学ぶために、船井総研が提供するアメリカ・ツアーに申し込み、AppleやGoogleなどの名だたるIT企業を見学しました。その中でも特に心を動かされたのはセールスフォースでした。ビジネスモデルやサービス・ソフトウェア、当時新しかったクラウドの考え方やマーケティング手法、どれも素晴らしいものでしたが、彼らの「世の中を変えてやる」という勢いに特に感銘を受けました。

決意を新たにするために、10年以上お世話になった社名も変更しました。当時は「SNQ」という社名でしたが、「ONZALINX(オンザリンクス)」に改めました。受託開発からパッケージソフトウェア会社への転換は、私にとって新たに起業するような気持でした。それまでは個人事業として、家族経営的な感覚で自分たちの生活のために仕事をしていましたが、この時初めて、起業家として新たなスタートを切ったという実感が湧きました。



主役はユーザー、オープンソースでチャレンジする倉庫管理システムトップ企業

業界の課題をITで解決、あらゆるソフトを開発

新たな企業に生まれ変わることを決意し、全てのお客さまに「今後、当社は受託開発を行いません」という手紙を送りました。頼まれてしまうとどうしても引き受けてしまう性分なので、頼まれない環境を作りたかったのです。周りからは随分反対もされました。

実はそれまでも、色々なソフトウェアを開発していました。美容室向け顧客管理ソフト「INTER SALON(インターサロン)」、酒税計算のパッケージソフト、タクシーの運行管理ソフト、小売業の店舗管理ソフト「INTER STORE(インターストア)」、アパレル店の店舗管理ソフト「INTER FASHION(インターファッション)」等。本来は、開発前に市場調査をすると思います。私は、たまたま相談された先で困っているという課題を聞いては、それを開発してパッケージ化していました。それぞれの市場の成長性やお客様の状況等もあり、なかなか伸びる事業に成長するまでは至りませんでした。最終的に辿り着いたのが、現在の主力サービスである倉庫管理システム「INTER-STOCK(インターストック)」です。

これまで開発した自社商品に共通しているのは、各業界で「社会的な課題があること」です。各業界には未だ解決できていない根深い課題が多く存在しています。物流業についても、現在のように「物流の2024年問題」のような形で顕在化している訳ではありませんでしたが、多くの課題が存在していました。また、販売管理ソフトでは「弥生会計」等、パっと思いつく、いわゆるリーダー企業が存在しますが、物流管理ソフトではそのような企業が見当たらなかったこともあり、自分達でもチャレンジできるのではという想いもありました。

現在、私たちのメインクライアントは物流業ではなく製造業のお客様です、商品を尖らせて、業界のトップになることを考えた時、製造業向けのWMS(Warehouse Management System=倉庫管理システム)に絞ろうと考えました。現在は、「ものづくり物流」をデジタルで解決すべく、サービス開発を強化しています。

ユーザーが主役の製造業向け倉庫管理システム「INTER-STOCK(インターストック)」

私たちの強みは、「ユーザーが主役のデータドリブン物流」というコアコンセプトにあります。このアプローチによって、製造業のものづくり物流のデジタル化を推進し、業界に革新をもたらす企業として成長を目指しています。現在多くの製造業が物流の課題に直面していますが、私たちはこれを独自のテクノロジーで解決しています。

INTER-STOCK(インターストック)」は、成長戦略を描いている中堅の製造業向けのWMSです。主な特徴はソースを完全公開し、内製化支援を行っている点です。想いとしては、「徹底的した顧客志向」の実現です。ソフトウェアは、導入した当初はお客さまのニーズは満たしていても、徐々に「こんな風に変えたい」というカスタマイズのご要望が出てきます。私たちは、あくまで主役はユーザーと考えているので、最終的な理想としてはWMSをユーザー自身が内製化して、自社内でカスタマイズできる環境になることを目指しています。そのため、成長志向であり、社内にシステム管理の担当者がいる企業が対象となります。もちろん、システム会社に全て任せたいと考えているお客様がいることも理解はしていますが、パッケージでありつつも、柔軟性・拡張性を持ち、ユーザー自身が自由にカスタマイズできるというビジョンを実現するために、「セミスクラッチ型」でソフトウェアを提供しています。100%の内製化が難しい場合は、当社と提携している外部のエンジニアリング・パートナーが伴走して支援するメニューも用意しています。


創業以来、私が一貫して大切にしているのは「お客さまのご要望を聞き、そのニーズを実現させること」です。お客様をシステムに依存させて囲い込み、メンテナンスやカスタマイズで利益を上げ続けるビジネスモデルは、今では「ベンダーロックイン」と呼ばれ、DXの大きな障害になると言われています。それはユーザーが望んでいることではありません。私たちは、ソースを公開することで、パートナーの活用も含めて、あくまでユーザーが主役でカスタマイズできる自由なソフトウェアを目指しています。お客様が求めることをひたすらやり続けた当社だからこその考え方だと思います。最初にお伝えしたように、私はエアコンでも売りましたから。家電屋さんに行けば普通に買えるものを、私に頼んでくれた、そのことが嬉しかったのです。そういう気持ちを大切にしています。

WMSがシステムとして求められることは「倉庫内オペレーションの効率化」、「倉庫内管理の品質向上」「在庫の管理」です。倉庫内の非効率な業務をOCRやQRコード等のデジタル技術を活用してオペレーションを最適化させ、出荷ミスを減らし、クレームを少なくします。製造業の最大の課題は「在庫管理」です。端的に言うと、帳簿と在庫の数が合わないケースが多発しています。小売業・流通業は在庫管理を徹底しています。一方、製造業は在庫管理への取組が十分ではありません。よく考えてみて欲しいのですが、製造業では一つ一つの在庫の価格が数万円する場合が多く、他業界より高単価です。その上、その在庫がないことで、生産ラインそのものが止まってしまう可能性もあります。明らかに他業界と比較して在庫管理の重要性が高いにも関わらず、十分な取組がなされていないのが実状です。

現在、INTER-STOCKはメジャーアップデートを開発中であり、ユーザーが主役のデータドリブン物流のコアコンセプトを基本にフレームワークを設計し、よりユーザーが中心の世界観に近づきつつあります。お客様としては、中堅から大手企業までいらっしゃいますが、特に大手企業のお客さまからは、当社のコンセプトについて高く評価をいただき、数ある候補の中から、当社を名指しで選んでくれるお客さまや、業務提携し一緒に新しいサービスを開発することをご提案いただくお客さまも増えています。

物流業のDXを推進し、効率化を実現「輸快通快(ゆかいつうかい)」

経済産業省が示した「DXレポート2.0」で示された、DXの進め方を簡単に説明すると、①Digitization(デジタイゼーション)=アナログ・物理データのデジタルデータ化、②Digitalization(デジタライゼ―ション)=業務・製造プロセスの効率化・最適化、③Digital Transformation(デジタル トランスフォーメーション)=”顧客起点の価値創出”のための変革、の3ステップとなります。

当社のサービスに当てはめると、INTER-STOCKが製造業の倉庫内の在庫等のアナログデータをデジタルデータ化するデジタイゼーションの段階になります。次のデジタライゼ―ションによる最適化を実現するためのサービスとして、新しく「輸快通快(ゆかいつうかい)」の実証を、全国的に楽器販売を展開する島村楽器様と連携して行っています。物流データを活用することで、在庫配置を最適化し、物流で大きな課題となっている「横持ち(工場・店舗・支店間の在庫の移動)」を最小化することで、コストの最適化を実現させます。世の中でDXが進むことで、デジタル化は進んでいますが、データの活用は思ったように進んでいません。データ活用において日本は完全に後進国です。データの活用に至るには、まだノウハウがなく、汎用化されていないというのが現実なので、私たちがこの領域において、初めての汎用化にチャレンジしています。



DXでものづくり産業を支える、ユーザーが主役のデータドリブン物流の実現

売上高100億円規模、DXを通じた物流の効率化

目指している規模としては売上100億円企業です。広島県内のソフトウェア企業では、100億円企業はありません。まず私たちがそうなりたいと思っています。そのため、まずはWMSという製造業のデジタル物流支援の分野でトップ企業を目指します。WMS市場には業界大手と言える競合他社は存在していないので、まだまだチャンスがあると思っています。「ユーザーが主役のデータドリブン物流」、これが私たちが実現したい世界観です。私たちが実現するというよりは、ユーザー自らが挑戦し、私たちがサポートしていくことで、この世界観が実現できると思っています。

ECの成長によって、最終消費者に商品を届けるラストワンマイルをどうするかといったB to Cの課題が注目されていますが、実は物流のほとんどはB to Bであり、その物流を担っているのが中小の物流会社による幹線物流です。国や大手企業の取り組みによって、そこを繋ぎ合わせるために共同配送などの取り組みも盛んに行われてはいますが、起点がデジタルでないため、時間がかかっている印象です。大手の物流会社が中心でフィジカルインターネットを構想する際、どうしても物理的なリソースから着想してしまうんですね。そこをデジタル起点で考えることができるのは、私たちのようなテック企業だと思うので、私たちのアイデアと技術力で、少しでも国が構想するフィジカルインターネット実現に貢献したいと考えています。

オンザリンクスの大きな課題の一つは資金です。商品開発が追いついておらず、質の高いエンジニアを積極的に雇用する必要があります。ビジネスモデルが先行投資型なので、人的資源の確保に向けた資金が必要となります。加えて、採用も大きな課題です。私たちの理念や実現したい世界観に賛同していただける、優秀なトップエンジニアと一緒に開発することで、少しでも早くビジョンを実現したいと考えています。システム開発を外注することもできますが、軸となるシステムは社内で開発したいと考えています。加えて、リモートでの採用ももちろん考えますが、できれば、一緒に顔を突き合わせて創りたいですね。一緒の物理空間で仕事をしたい。その方が楽しいじゃないですか。一緒に働く方とは、楽しみを共有したいと思っています。

広島発!強いものづくり産業とリーダーを育成

広島は、原爆が落ち、焼け野原となり、一度全てを失った町です。それでも、ものづくりで現在までの復興を先代の方々が成し遂げて下さいました。原爆が投下されたのは、世界で長崎と広島だけです。ものづくり産業で復興した街は広島しかありません。日本の競争力が失われつつある中、もう一度強くなる時は、ものづくり産業がきっかけになると信じています。そのためにも、私たちの技術・サービスで、ものづくり企業を強くしたい。広島でものづくり企業に貢献するため、元気にチャレンジしている企業があると少しでも多くの方に知ってもらいたいです。これからも実績を作り、私たちのサービスやリリースに注目が集まるくらいに影響力を大きくして、業界のスタンダードと言える程に成長することを目指します。

また、常々、日本にはリーダーが不足していることが課題だと感じています。リーダーとは、起業家や経営者という意味だけでなく、次世代の日本を担うリーダーシップを持った人材という意味です。私自身、リーダーを育成することに強い関心を持っており、将来的にはそのために必要な取組も展開していきたいと思います。ただ、リーダー育成を行うためには、事業で結果を残し、私自身の影響力を高めないといけないと感じています。人に何かを伝えるのは好きなので、リーダーシップとは何かを伝えられるような存在になりたいです。



概要

会社名株式会社オンザリンクス
代表者名代表取締役 東 聖也
創業年1999年11月
資本金10百万円
従業員数20名
本社所在地広島市中区大手町2-8-2フージャース広島大手町ビル8F
事業内容・ロジスティクス領域のIT活用支援
・実践的な倉庫・在庫改善リアルシステムコンサルティング
・倉庫・在庫改善に特化した工学的アプローチによるシステムの研究&開発
HPhttps://www.onzalinx.co.jp/index.html



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クレジオ・パートナーズ株式会社のご紹介代表者 :代表取締役 李 志翔
所在地 :広島市中区紙屋町1丁目1番17号 広島ミッドタウンビル3階
設立  :2018年4月
事業内容:
 ・M&Aに関するアドバイザリーサービス
 ・事業承継に関するアドバイザリーサービス
 ・資本政策、企業再編に関するアドバイザリーサービス 等
URL  :https://cregio.jp/

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