「事業承継・引継ぎ補助金」とは、令和2年度第三次補正予算に計上されており、事業承継を契機に新しい事業展開を支援する「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」と、M&Aを行う際に必要な専門家の費用を対象とした「事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)」の2種類が存在します。今回は、事業承継を契機に、新規事業を支援する「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」活用のポイントを解説します。
⇒6/22(火)13:00より、オンラインセミナーで解説します。
https://cregio.jp/event/seminar_jigyoshoukeihojokinr2/
《参考》事業承継・引継ぎ補助金 事務局HP
https://jsh.go.jp/r2h/
※公募要領等はこちらからご覧頂けます。
※具体的な補助金に関するご質問は、事務局へ直接お問い合わせください。
(事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)お問い合わせ先)
【電話】 03-6625-8046
記事のポイント
- 「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」は、事業承継を契機に、新しい事業を行う場合を支援。
- 「創業支援型(Ⅰ型)」「経営者交代型(Ⅱ型)」「M&A型(Ⅲ型)」の3つに分かれ、承継者・被承継者によって様々な類型に分かれる。
- 「認定経営革新等支援機関の確認」「特定創業支援事業」を受けること等が必要。
- 補助対象経費は幅広く、人件費も含まれる。
「事業承継・引継ぎ補助金」の概要
「事業承継・引継ぎ補助金」は、中小企業者等の「事業承継・引継ぎを契機とする新たな取り組みや廃業に係る費用」と「事業再編、事業統合に伴う経営資源の引継ぎに要する経費」の一部を補助することで、経済の新陳代謝を加速させ、日本経済の活性化を図ることが目的となっています。
本補助金は、2つのタイプに分かれています。事業承継を契機とした新しい事業を支援する「経営革新型」と、M&Aの手数料を対象として事業引継ぎに関する専門家の費用を支援する「専門家活用型」に分かれています。
①事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)
事業承継を契機とした新しい事業を支援する補助金です。「創業支援型(Ⅰ型)」、「経営者交代型(Ⅱ型)」、「M&A型(Ⅲ型)」の3種類に分かれています。
②事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用)
M&A等、経営資源引継ぎを行う際に専門家活用に要する経費を支援する補助金です。「買い手支援型」「売り手支援型」の2種類があります。
こちらのコラムでは、主に「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」について解説しています。
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」のポイント
誰が使えるの?補助対象者について
中小企業者等が対象となります。特定非営利活動法人についても、一部の要件を満たす事業者については対象となりますが、「社会福祉法人」、「医療法人」、「一般社団・財団法人」、「公益社団・財団法人」、「学校法人」、「農事組合法人」、「組合(農業協同組合、生活協同組合、中小企業等協同組合法に基づく組合等)」は対象になりませんので注意が必要です。
対象となる事業承継は?
以下の 3つの 類型の事業承継が対象となります。
創業支援型(Ⅰ型)
廃業を予定している者等から有機的一体として機能する経営資源を引き継いで創業して間もない中小企業者等であり、以下の①及び②の要件を満たすことが必要となります。
① 創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。
② 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
このように、廃業者から経営資源を引き継ごうとする創業者が対象となります。
経営者交代型(Ⅱ型)
事業承継(事業再生を伴うものを含む)を行う中小企業者等であり、以下の①~③のすべての要件を満たすことが必要となります。
① 事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
② 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
③ 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業など、創業を契機として、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等に取り組む者であること。
ただし、経営者交代型(Ⅱ型)における承継者が法人の場合、事業譲渡や株式譲渡等による承継は原則として対象とならないとされています。
M&A 型(Ⅲ型)
事業再編・事業統合等を行う中小企業者等であり、以下の①~③のすべての要件を満たすことが必要とされています。
① 事業再編・事業統合等を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
② 産業競争力強化法に基づく認定市区町村又は認定連携創業支援事業者により特定創業支援事業を受ける者等、一定の実績や知識等を有している者であること。
③ 地域の雇用をはじめ、地域経済全般を牽引する事業など、事業承継を契機として、経営革新等に取り組む者であること。
いずれも「特定創業支援事業」を受けることに注意が必要です。「特定創業支援事業」については、各市町村の創業支援担当へ実施状況を確認する必要があります。
事業承継の要件は?
期間
補助対象事業となる事業承継は、2017 年 4 月 1 日から補助事業期間終了日または、2021 年 12 月 31 日のいずれか早い日までに、中小企業者等間における事業を引き継がせる者(以下、「被承継者」という。)と事業を引き継ぐ者(以下、「承継者」という。)の間で M&A 等を含む事業の引き継ぎを行った又は行うことが必要です。
また、承継者と被承継者による実質的な事業承継が行われていない(例:グループ内の事業再編、物品・不動産等のみを保有する事業の承継等)又は承継者側に承継前に事業を経営していた実態がない(Ⅲ型に限る。)と事務局が判断した場合は対象外となります。
事業承継形態に係る区分整理
本補助金は、事業承継の形態により区分が分かれていることも特徴です。自分はどの区分に該当するかを確認して、必要な申請書類を確認していくことが必要になります。
創業支援型(Ⅰ型)
経営者交代型(Ⅱ型)
M&A 型(Ⅲ型)
何の事業が対象になるの?補助対象事業について
対象となる事業は以下を満たす必要があります。
(1) 中小企業者等である被承継者から事業を引き継いだ中小企業者等である承継者による経営革新等に
係る取組であること。
(2) 補助対象事業は、以下に例示する内容を伴うものであり、補助事業期間を通じた事業計画の実行支援について、認定経営革新等支援機関の記名・押印がある確認書により確認される事業であること。
① 新商品の開発又は生産
② 新役務の開発又は提供
③ 商品の新たな生産又は販売の方式の導入
④ 役務の新たな提供の方式の導入
⑤ 事業転換による新分野への進出
⑥ 上記によらず、その他の新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上等、事業の活性化につながる取組等
(3) 経営者交代型(Ⅱ型)又は M&A 型(Ⅲ型)で申請をする場合、以下の要件①新事業展開等要件もしくは要件②生産性向上要件を満たすこと。
要件① 新事業展開等要件
以下の要件を全て満たすこと。
・ 上記の(2)に記載の補助対象事業に係る例示のうち、①新商品の開発又は生産、②新役務の開発又は提供、もしくは⑤事業転換による新分野への進出のいずれかの内容を伴う事業計画であること。
・ 事務局が定める期間において従業員数を 1 名以上増加させる計画であること。
要件② 生産性向上要件
・ 承継者が 2017 年 4 月 1 日以降から交付申請日までの間に本補助事業において申請を行う事業と同一の内容で「先端設備等導入計画」又は「経営革新計画」いずれかの認定を受けていること。
なお、申請単位は原則「承継者が補助対象者として申請すること」となっています。
補助金はいくら?補助上限額・補助率について
いずれの類型の場合も、補助率は2/3、補助下限額は100万円となっています。補助上限額については、創業支援型(Ⅰ型)、経営者交代型(Ⅱ型)は400万円、M&A型は800万円となっており、廃業費用を伴う場合、いずれの類型でも200万円の上乗せ額があります。
何の経費が対象になるの?補助対象経費について
個別の費目については、以下のとおりです。詳細は公募要領をご覧ください。
Ⅰ.事業費 | 人件費 | 補助対象事業に要する賃金 |
店舗等借入費 | 国内の店舗・事務所・駐車場の賃借料・共益費・仲介手数料 | |
設備費 | 国内の店舗・事務所の工事、国内で使用する機械器具等調達費用 | |
原材料費 | 試供品・サンプル品の製作に係る経費(原材料費) | |
産業財産権等関連経費 | 補助対象事業実施における特許権等取得に要する弁理士費用 | |
謝金 | 補助対象事業実施のために謝金として依頼した専門家等に支払う経費 | |
旅費 | 販路開拓等を目的とした国内外出張に係る交通費、宿泊費 | |
マーケティング調査費 | 自社で行うマーケティング調査に係る費用 | |
広報費 | 自社で行う広報に係る費用 | |
会場借料費 | 販路開拓や広報活動に係る説明会等での一時的な会場借料費 | |
外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費 | |
委託費 | 業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費 | |
Ⅱ.廃業費 | 廃業登記費 | 廃業に関する登記申請手続きに伴う司法書士等に支払う作成経費 |
在庫処分費 | 既存の事業商品在庫を専門業者に依頼して処分した際の経費 | |
解体費 | 既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体・処分費 | |
現状回復費 | 借りていた設備等を返却する際に義務となっていた原状回復費用 | |
移転・移設費用(Ⅰ型及びⅢ型のみ計上可) | 効率化のため設備等を移転・移設するために支払われる経費 |
いつまでが対象なの?補助事業実施期間について
交付決定日~2021年12月31日
※2021年5月24日以後については、事前着手が認められる場合があります。
申請期間と申請方法
申請期間
一次公募:2021年6月11日(金)~2021年7月12日(月)18:00まで
※一次公募締切後準備が整い次第、二次公募を実施予定。
(2021年7月中旬~2021年8月中旬(予定))
交付決定日:2021年8月中旬(予定)
申請方法
電子システムからの申請となります。申請するためには、「GビズIDプライムアカウント」の取得が必要です。アカウント取得には時間を要するため、早めの申請が必要となります。
過去の採択事例
令和元年度補正予算事業における事例集は以下からご覧いただけます。
Ⅰ型、Ⅱ型の意味はそれぞれの年度の補助事業によって内容が異なりますので、ご注意ください。
おわりに
「事業承継・引継ぎ補助金(経営革新)」については、補助対象経費の幅が広く、様々な新事業に取り組める一方で、事業承継を契機とする必要があります。事業承継の類型や区分も様々に分類されており、これらのどの類型に合致するかを確かめる必要があります。加えて、「認定支援機関の確認書」や「特定創業支援事業を受けること」等の要件も付されています。その他、細かい要件もありますので、申請される場合は必ず公募要領をご覧ください。
また、最近はM&Aによる事業引継ぎだけではなく、「アトツギベンチャー」と称されるような事業承継を契機とした新事業展開がクローズアップされており、そういった機会に活用できる補助金となります。
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