M&A支援機関登録制度を解説｜全国の最終公表結果と中国・四国地域の一覧

中小M&Aの環境整備を目的に創設された「M&A支援機関登録制度」について、中小企業庁は2021年10月7日に登録機関を最終公表しました。

全国で登録されたM&A支援機関の地域別の件数や内訳をまとめ、中国・四国地域の登録M&A支援機関の一覧を掲載しました。登録状況から見える中小M&Aの支援環境について考察しました。

全国の登録M&A支援機関の概要

全国で2,278件が登録、最多は東京都の814件

最終公表では、全国で2,278件の登録があったと発表されました。各都道府県での登録数と、登録数を元にマップ化したものが以下のとおりとなります。

最多は東京都の814件（全体の35.7%）であり、次いで大阪府の246件、愛知県の138件となっており、最少は鳥取県・島根県で各2件となっています。

特に東京都に集中している様子が分かります。更に、都道府県別件数をマップに落とし込んでみると、地域ごとに登録数に濃淡があることが分かります。

出典：中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」を元に当社作成

出典：中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」を元に当社作成

地域別では東京都に極端に集中し、後継者不在率の高い地域では登録数が少ない

続いて、各ブロック毎の登録数と後継者不在率（2020年）を比較しました。登録数が多いブロックは、関東地域の1,074件ですが、東京都の登録数が814であったことを考えると、東京都以外で260件となり、東京に極端に集中している様子が分かります。

後継者不在率が特に高い北海道地域（72.4%）における登録数は66件であり、中国地域（70.8%）における登録数は88件となっており、後継者不在率が高い地域に十分に登録機関があるとは言えない状況であることが分かります。

出典：中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」、帝国データバンク「全国企業「後継者不在率」動向調査（2020年）」を元に当社作成

登録されたM&A支援機関の内訳

最終公表では、登録されたフィナンシャルアドバイザー（FA）及びM&A仲介会社は、2,253件でした。このうち、法人登録は1684件（74.7%）であり、個人事業主は569件（25.3%）とされています。

種別ごとでは、M&A専門業者（仲介）が539件、M&A専門業者（FA）が391件、税理士が505件、公認会計士が231件、地方銀行が75件、信用金庫・信用組合が50件等となりました。

更に、専従者数では、0～2名の規模が最も多く1538件（68.7%）となっており、9名以下の機関が2,149件（95.3%）となっています。登録機関と言っても、専従者については比較的少ない機関が大多数であることが分かります。

加えて、設立年代別では、2010年以降に設立された機関が1,933件（85.7%）であることからも、中小M&A市場は直近10年前後で急速に成長してきた市場である様子が分かります。

出典：中小企業庁「M&A支援機関登録制度に係る登録ファイナンシャルアドバイザー及び仲介業者の最終公表について」

中国・四国地方の登録M&A支援機関数

中国・四国地域の登録M&A支援機関数は以下のとおりです。

中国地域では、広島県が最多の42件であり、鳥取県・島根県は全国でも一番低い件数の2件ずつとなっています。また、四国地域では、愛媛県が22件で最多であり、徳島県・高知県は7件ずつとなっています。

中国・四国地域の登録M&A支援機関一覧

中国・四国地域の登録M&A支援機関の一覧は以下のとおりです。

広島県の登録M&A支援機関

岡山県の登録M&A支援機関

山口県の登録M&A支援機関

徳島県の登録M&A支援機関

香川県の登録M&A支援機関

愛媛県の登録M&A支援機関

高知県の登録M&A支援機関

鳥取県の登録M&A支援機関

島根県の登録M&A支援機関

おわりに

M&A支援機関は、登録の際に「中小M&Aガイドライン」を遵守することとなっており、中小M&A市場の環境整備だけでなく、登録することで事業承継・引継ぎ補助金を利用できる等の登録した支援者にとってもメリットを有する制度です。

全体の概要を見ると、東京に集中しており、後継者不在率が高く、事業承継の課題を有する地域には、必ずしも支援機関が多く所在していないことが分かります。

加えて、全体では専従者が少なく、2010年以降に設立された若い機関が多い一方、中国・四国地域の登録機関の具体的な登録機関を見ると、地域で以前から事業をしている地域金融機関・税理士・公認会計士・コンサルティング会社等が多いことからも、最近になって設立された中小M&A支援会社の多くは東京に存在していると推察できます。

M&A支援機関の登録制度の普及と共に全国での中小M&A環境の整備が期待されますが、登録数が多い首都圏等の人口密集地より、後継者不在率が高止まりし、経営者の高齢化が進む地域において、中小M&A支援機関の活躍が期待されます。

クレジオ・パートナーズ株式会社広島を拠点に、中国・四国地方を中心とした地域企業のM&A・事業承継を専門に支援しています。資本政策や企業再編のアドバイザリーにも強みを持ち、地域金融機関や専門家と連携しながら、中小企業の持続的な成長と後継者募集をサポート。補助金や制度活用の知見を活かし、経営者に寄り添った実務的な支援を提供しています。 URL　　：https://cregio.jp/