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コラム COLUMN

M&A事業承継

M&Aの満足度は?2024年「中小企業白書」から見るM&Aの実態


中小企業白書とは、中小企業基本法に基づき、政府が毎年国会に提出する「中小企業の動向及び政府が中小企業に関して講じた施策に関する報告」です。2024年版「中小企業白書」では、中小企業が環境変化を乗り越え、経営資源を確保して生産性の向上に繋げていくための取組や、成長に繋がる投資行動とそのための資金調達、支援機関の役割と体制の強化等について分析されています。その中でも、成長に繋がる投資行動の一つに「M&A」が取り上げられており、中小企業におけるM&Aの実態が掲載されています。こちらについてポイントをまとめました。(本コラムの資料出典:中小企業庁「2024年版「中小企業白書」」)

M&Aに満足した割合は?国内でアンケート調査を実施

買手・売手共に5割以上が「満足」と回答

「M&A実施効果について満足度」について、「他社事業の譲受・買収」=買手、「自社事業の譲渡・売却」=売手、それぞれに、相手先が同業種・異業種であった場合、それぞれ満足度に関するアンケート調査が行われています。調査結果では、それぞれ「満足」「やや満足」と回答した割合は、買手で同業種を譲受・買収した場合は63.5%、異業種を譲受・買収した場合は56.5%となっており、いずれも半数以上が満足という回答結果になってる一方で、同業を譲受・買収した方が満足と回答した割合が高くなっており、同業種の方が「シナジー効果を見込みやすいといった要因が考えられる」と指摘しています。

また、売手では、同業種へ譲渡・売却した場合は58.8%、異業種へ譲渡・売却した場合は60.2%となっており、こちらもいずれの場合でも半数以上が満足したという回答結果になっています。


「探索」が満足度のカギ、特に売手側で顕著

M&A実施時における相手先の探索意向別に、買手・売手を「積極的に探索した」「どちらともいえない」「探索には消極的だった」という3つの分類でそれぞれの満足度を調査したところ、買手側では満足と回答した割合が「積極的に探索した」「どちらともいえない」「探索には消極的だった」それぞれで70.0%、55.4%、56.8%となっている一方、売手側では71.7%、49.6%、37.4%となっており、M&A時の探索活動が満足度に少なからず影響を及ぼしていることが分かります。中でも、売手側の場合、「積極的に探索した」と「探索には消極的だった」の差が、買手側と比較しても著しく乖離していることが分かります。


M&Aが経営戦略として中小企業に拡大

中小企業でM&Aが活発化、M&Aは売上高・経常利益・生産性に効果

経済産業省「企業活動基本調査」において、企業規模別に子会社・関連会社が増加した企業割合の推移を見ると、大企業では横ばいであるのに対し、中小企業では増加傾向であることが分かり、中小企業においてもM&Aが経営戦略として広がっていることが分かります。


また、M&Aを「2017年度に実施した企業」と「2017~2021年度の間一切実施していない企業の売上高・経常利益・労働生産性を比較すると、実施した企業の方が3つの項目で実施していない企業より、向上していることが分かり、M&Aの活用が売上高・経常利益・労働生産性にプラスの影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。


「同業」M&Aが比較的多い、「異業種」の場合もシナジーを意識

M&Aの相手先については、相手先が同業である場合が買手の場合は73.2%、売手の場合は65.5%と、同業同士のM&Aの方が多く実施されています。

異業種でのM&Aを見ると、特に割合が高い組み合わせは「卸売業」×「製造業」、「宿泊業」×「飲食サービス業」であり、「卸売業」×「製造業」は川上と川下のバリューチェーンの強化を目的とするケースや、「宿泊業」×「飲食サービス業」はそれぞれの顧客に、それぞれのサービスを提供する等、いずれもシナジー効果が出しやすい組み合わせの割合が高くなっています。



買手は金融機関を、売手はM&A会社を活用

M&Aにおいて活用した外部機関では、「金融機関」「M&A仲介業者」「税理士・公認会計士」の割合が多くなっており、買手側は特に金融機関が多く、売手側では特にM&A仲介業者が多いという結果となり、買手・売手双方で、活用機関の差異がありました。


PMIで重要なのは「相互理解」、成長のためにM&Aを活用

M&Aの成否を左右するPMI(=Post Merger Integration=合併後の統合)に関しては、M&A成立前・成立後共に、重点的に実施した項目は、「相手先経営者」又は「相手先従業員」とのコミュニケーションを通じた相互理解でした。財務・会計、人事・労務、社内システムといった組織間ルールのテクニカルな統合業務よりも、まず重要なのは「相互理解」であることが分かります。


また、M&Aによる譲受・買収の狙い・目的の中で一番回答割合が多かったのは「市場シェアの拡大」であり、続いて「経営資源(人材)の共有」「販売先等、取引先の共有」「経営資源(技術・ノウハウ)の共有」でした。自社の成長や経営課題を解決するための手段としてM&Aを活用しようとしている様子が確認できました。


さいごに

M&Aは中小企業の成長戦略としてクローズアップされており、2024年版「中小企業白書」においてその実態についてレポートされました。特に「M&Aの満足度」に関するレポートは少なく、これまではデロイト・トーマツ・ファイナンシャル・アドバイザリーがインタビューにおいて公表している、クロスボーダーM&Aについて、M&Aの成功を目標達成度を80%超と定義した上で、成功企業は36%、中間企業は48%というレポートのみでした(出典:デロイト・トーマツ・ファイナンシャル・アドバイザリー「拡大する日本企業のクロスボーダーM&A CFOの戦略的な能力向上がカギ」)。

今回の中小企業白書では、満足度については、買手・売手共に50%以上は「満足」と回答しており、M&Aが中小企業にとっても受け入れられている様子が確認できました。その他にも、M&A実施時における探索活動と満足度の相関や、M&Aを行わなかった企業と比較して、売上高・経常利益・労働生産性における効果や、PMIにおいて重要なのは「相互理解」等、気づきの多いデータが掲載されていました。M&Aの活用を検討する方々にとって、ぜひご一読いただきたい内容だと思います。


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