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実績 PERFORMANCE

CASE 21

事業承継による社会貢献、
地域に根ざす建設会社の新たな挑戦

広島県広島市に本社を置き、自社工場を有する強みを活かし、内装・外装工事・鈑金加工等の建設業を中心に様々な事業を営む山建。「困っている人を助けたい」という想いを軸に事業を展開する中で、承継課題に悩む兵庫県の井戸工事会社を譲り受け。同社の取組とM&A・事業承継に関わる想いを伺った。

  • 譲渡企業

    株式会社井戸竹

    兵庫県

    業種 さく井工事・井戸改修工事業等
    譲渡理由 後継者不在
  • 譲受企業

    株式会社山建

    広島県 / 代表取締役 山村 眞介

    業種 建設業
    譲受理由 事業継続

譲受側である山村様、寄立様にお伺いします。
山建の概要や強みについて、教えてください。

山村

 私は20歳の時に一度独立しました。それまでは、解体工事・土木工事・シロアリ駆除、何でもやっていましたが、ある時叔父が「儲かる事業がある」と、外壁工事を教えてもらい、技術・ノウハウを学び、会社として立ち上げました。
 その後、26歳で一度事業を辞めました。思い返すと、仕事もせずに過ごしたアウトローな時期だったなと思います。子供が生まれ、保育園に入るために、しっかりとした経歴が求められたので、30歳の時に改めて会社を立ち上げました。その時できたのが、現在の「山建」です。

寄立

 山建は建設業を中心に事業展開をしています。住宅や工場等の内装工事・外装工事・屋根工事・鈑金加工等、建築物の基礎以外は全て手掛けています。当社の強みは、工場を持ち、鉄の折り曲げ機等の機械設備を有することです。鉄や部材等が自社で加工可能なので、お客様のニーズに合わせてカスタマイズして、思うように取り付けることができます。もし発注時に想像したものと違う形状の部材が送られてきた場合、本来であれば、メーカーに依頼して部材の修正をお願いするので、その分時間がかかってしまいます。当社では、自社に加工ができる技術者もいるので、短期間で加工し、納品できますので、納期を短縮し、コストを下げることができます。九州地域の鈑金屋は、こういった機械設備を有しているところが多いようですが、広島では希少なこともあり、お客様に提供する付加価値向上に繋がっています。

山村

 新規事業として、バイク事業も立ち上げました。通常のバイクショップが取り扱わない旧車のカスタムがメインです。立ち上げたきっかけは、寄立も自分も、バイクが趣味で4年程前から夜な夜なバイクを磨いたりしていました。ある時、職人さんが、勝手に二人のバイクいじり出しました。「バイク高いし、やめてよー」と言っていたのですが、非常にバイクに詳しく、難しい部分も修理してしまったところを見て、「それじゃったら、バイクに専念したらいいじゃないか」ということで、事業として立ち上げました。
 また、水素を活用したカーボンクリーニングも、新しく取り扱いを開始しました。水素ガスを利用してエンジン燃焼室内のカーボン除去を行うことで、エンジンを本来の性能に戻すことができます。これにより、運送会社が利用しているトラックのランニングコストの削減に繋げることができます。カーボンクリーニングは立ち上げたばかりなので、お客様の依頼が入るよう、流れを作っていきたいなと思っています。

寄立

 私は山村のお姉さんと結婚しているので、義理の兄弟となります。家が近所なので、中学生時代に面識はありました。結婚して、義理の家族となることで、山建のことは気にかけていましたが、当時は別の建築会社に勤めていたので、山建から工事施工の発注をもらうような関係でした。
 勤めていた会社を辞める時、「他人よりも信頼できるのは家族」と思い、山建に入りました。当時、山建は土地も、工場も保有していたので、山建に来れば何でも仕事にできると考えていました。ただ、その時、事務所はなかったので「せっかく土地があるのにもったいない!」と思い、一番初めの仕事はこの事務所を整備することでした。

山村

 私はこれまでの経験から、屋根・壁等の外壁に強みがあります。また現場に行くことが好きです。寄立は、職人の皆さんにやり方を伝えて実際に現場を動かしていくことが得意です。

寄立

 私は、何でも説明書みたいに行程を分解して、皆に伝えるのが好きですね(笑)。どちらかというと現場を上手く回していくタイプです。
 社長は現場が好きなので、よく現場に足を運んでくれます。職人さんにとっては、やっぱり社長が現場にくると喜んでくれます。職人さんは、いい空気感だと、最高の仕事をしてくれますね。

山建の事業に懸ける想いや、今後の事業展開について教えてください。

山村

 事業に共通している想いは、「困っている人を助けたい」ですね。元々そういう性分なんだと思います。例えば、バイク事業の場合、バイクショップで旧車のカスタムやメンテナンスを依頼すると通常は断られてしまいます。当社では難しい部分も引き受けますので、お客様はとても喜んで頂けます。カーボンクリーニングも同様です。運送会社の方は、トラックの運送コストに困っているので、クリーニングすることで喜んでくれます。困っている人がいたら、何とかしてあげたいという想いを事業にしています。

寄立

 私がいつも考えているのは、「10年後に豊かな人間になりたい」です。豊かさとは、もちろん経済的な余裕という意味もありますが、それだけではありません。月に1度外食して家族と時間を過ごしたい、困っている人がいたら何かをしてあげたい。例えば、家に泥棒に入られたとき、「その人も何か事情があったんじゃないか」と考えて、「いいから持っていけ、成功したらビッグになって返してくれ」と言えるような人間になりたいですね。誰かを許すことのできる、そういう余裕を持った人間になりたいです。

山村

 財力がないと、人を豊かにすることもできないし、自分も豊かできません。ただ、それだけではなく、気心のしれた“ええ人間”と一緒にいたいですね。そういう人間と一緒にいるとリラックスできる。豊かで、誰かから感謝される、そういう人間になりたいと思います。

寄立

 10年で目標を実現することを目指して、自分を奮い立たせるために、なるべく人に言うようにはしていますね(笑)
 そのためにホールディングス化やM&Aの活用は、手段として有効だと思っています。10年という短い期間で、一から事業を育てるのは難しいですが、M&Aを活用すれば、成長の加速度を上げることができます。一人の力ではたかがしれているので、グループで取り組みたいと思っています。

今回のM&Aの経緯や感想を教えてください。

寄立

 最初にご提案があった時、興味を持てなかったというのが卒直な感想でした。
 井戸工事という業種自体が我々にとってはやったことがない異業種です。井戸竹という会社そのものだけではなく、事業承継で困っている会社があるということにピンときていませんでした。ただ、色々と話を聞いたり、調べていくうちに、井戸竹という会社を事業承継することで、社会貢献ができるのではと考えるようになりました。

山村

 M&Aを行うにあたり、広島で井戸工事をしている会社を探しましたが、ほとんどありませんでした。“井戸仕舞い”と呼ばれる井戸を潰す工事をしているところはありましたが、井戸は昔から神聖な場所と考えられているので、工事に取り掛かると祟りがあるという話や、実際に職人さんに不幸が降りかかったという話を聞きました。
 また、井戸竹がなくなると、神戸市に困る人がいるのではと考えるようになりました。神戸には、阪神・淡路大震災の経験者が多数いらっしゃいます。被災した当時、水不足に苦しんだ方も多く、「井戸水じゃないと嫌だ、地震がきたときにどうするのか」というお客さまもいらっしゃいます。井戸竹は、地域にとってなくしてはいけない事業なんじゃないかと思いました。

寄立

 後任になる社長人材が見つかったことも、井戸竹のM&Aを決めたきっかけでした。
 井戸竹に後任社長として着任している中島は、以前の職場で、私とご縁がありました。関西に移り、トラック運転手としてやっていくと聞き、離れてからもちょくちょく連絡は取り合っていました。元々営業マンで、雰囲気はやんわりしており、トラック運転手よりは、井戸竹の社長を務める方が本人のためにもいいんじゃないかと思い、私から声をかけました。

寄立

 井戸竹は現在「井戸竹」という、ネーミングで仕事が舞い込むことが多いと聞いているので、しっかり営業をすれば事業として更に伸びる余地があると感じています。作業自体もアナログな部分が多く、現在、中島社長を中心にシステムの利用や導入を進めています。従業員の環境整備と若手の採用・育成の仕組みを整えれば、色々な可能性が広がると思います。
 異業種である井戸竹の事業承継が上手く進めば、どんな業種でも譲受できるのではと思っています。もちろん、鈑金塗装や職人さんがいる会社等、自分達の軸の事業とシナジーが見込める事業が嬉しいですが、困っている人が喜んでくれるなら、どんな業種でも構いません。事業の収益性も重要ですが、大前提として“漢”として、困った人を助けたいですね。

M&A仲介会社として、クレジオ・パートナーズを利用してみて、
いかがでしたでしょうか。

山村

 クレジオ・パートナーズは、率直に身近な存在に感じることができました。いわゆる業者という感じではなく、M&Aが進んでいく中でも親近感を感じました。進藤さんはまだ若いので、最初は「大丈夫?」と思っていましたが、最終的には山建の社員かと思うくらい親身になってくれました。井戸工事のこともしっかり調べてくれて、山建のことを考えてくれているなという想いが伝わりました。

進藤

 私にとっても、初めて最初から最後まで担当させて頂いた案件でした。金融機関に事業承継のご挨拶に一緒に伺う等、初めての経験も多く、思い入れが深かったです。特に田んぼで従業員説明会を行ったのは、これからも忘れられないと思います。

寄立

 承継してすぐに現場でしたね。進藤さんは、神戸で小さい居酒屋にもお付き合いしていただきました。

最後に、今後M&Aを考えている方へメッセージをいただけますか。

寄立

 事業承継に課題を抱えている方は、厳しいようですが、今一度、本気で事業承継に取り組むことが大切ではないかと思います。なくしてはいけない事業であれば、身内も含めて誰か手を差し伸べてくれる。ただ、手を尽くしても、誰も助けてくれず、本当に困っているのであれば、我々が何か力になりたい、そう考えています。

山村

 会社の一番の価値は、従業員です。事業承継は、急に社長が変わるので、従業員にとっては突然のことだと思います。山建自身はまだ若い会社なので、他の会社を譲り受け、会社の価値である従業員の可能性を引き出すことで、社会貢献を実現していきたいと思っています。