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実績 PERFORMANCE

CASE 22

M&Aで加速するラーメン業界の成長戦略、
共創が生み出す新たな食ビジネスの可能性

東京都に本社を置き、これまでのラーメン屋の固定概念を超えて、独自の商品・店舗開発によりラーメンを楽しむ人の裾野を拡大させてきたソラノイロ。神奈川県に本社を置き、スーパーを祖業としつつ、「日本の食を届け 新たな文化をつくり 世界の人を健やかに」をビジョンに掲げ、全国・グローバルで食のテーマパーク創出を目指すOICグループ。M&Aによる共創を通じ、事業成長を目指す両社に、その背景や想い、M&Aに込める可能性について伺った。

  • 譲渡企業

    株式会社ソラノイロ

    東京都 / 代表取締役 宮﨑 千尋

    業種 ラーメン・飲食店経営・コンサル等
    譲渡理由 事業成長
  • 譲受企業

    株式会社eatopiaホールディングス
    (株式会社OICグループ子会社)

    神奈川県 / 代表取締役 伊藤 永

    業種 飲食店経営
    譲受理由 事業成長

はじめに、譲渡側である宮崎様にお伺いします。
ソラノイロの事業内容や会社の沿革について教えてください。

宮﨑

 ソラノイロは2011年に創業し、麹町駅近くのフラッグシップショップ「ソラノイロ ARTISAN NOODLES」をはじめ、東京駅地下にある東京駅ラーメンストリートの「そらのいろ NIPPON」「家系ラーメン 革新家TOKYO」等のラーメン店を運営しています。
 私は、元々「一風堂(力の源ホールディングス)」の2番弟子として修行していました。社名「ソラノイロ」も、一風堂の経営理念「変わらないために変わり続ける」を忘れないためという意味があります。般若心教の「色即是空・空即是色」は、物質的なもの(「色(シキ)」は実体を持たず(「空(クウ)」)、実体を持つが変化し続けるという意味で、一つの所に止まることなく、変化し続ける、という意味で、ソラノイロと名付けました。

宮﨑

 この理念をベースにしつつ、近年は、まだ見ぬお客様にラーメンの魅力を届け、ラーメンの裾野を広げたいという考え方にシフトしています。女性、ビーガン、ベジタリアン、アスリート等、一見、ラーメンと距離があり、接する機会が少ないお客様にもラーメンを楽しんでもらえるよう、商品・店舗を開発しています。これまでもビーガン、グルテンフリーをテーマにラーメン創作に取り組んだ方もいらっしゃるので、自分が初めてやったとは思っていません。ただ、そういったラーメンがあることを、どういう切り口で認知して頂き、食べて頂くか。WEB・SNSも活用しつつ、マーケティング的な視点も含めて事業を展開しています。

宮﨑

 本は読みますが、マーケティングは本格的に学んではいません。専門にしている友人達との会話からヒントをもらいました。マーケティングを取り入れる理由は、事業において、どこか自分を信じていないところがあるからです。こだわりを持ってラーメンを作り込んでも、実際売れないこともあります。私の師匠である「ちばき屋」の千葉さんからは「ラーメンをお出しした後、お客様に“いかがですか?”と聞くスタンスを持ち続けろ」とずっと言われていました。職人目線だと「自分のラーメンはどうだ?おいしいでしょ?」と、自分の想いを押しつけがちになりますが、お客様の反応を見ながら変化し続ける柔軟性が大事だと思っています。

宮﨑

 ラーメンの商品開発では、再現性を重視しています。独立後、製麺機を製造している大和製作所から「デジタルクッキング」という、数値化・定量化することで、誰が作っても、味をぶれないようにする考え方を学びました。
食材の仕入は、生産者へ自分で出向き、直接仕入れることで、安くて、良いものを仕入れています。トマトは季節が被らないよう、北海道・愛媛から仕入れ、熊本の地鶏「天草大王」は天草商工会からコンサルティングの依頼があったことがきっかけで出会うことができました。いずれもご縁や繋がりで良い食材に巡り合っています。

宮﨑

 独立時の想いとしては、「夢を持てば現実になる」ということを、私がお店を出すことで示したかったですね。私自身がやりたいと思ったことを現実にすることで、周囲の人に何かいい影響を与えたいと考えていました。
 昔ながらのラーメン屋は、「腕を組んで、タオルを頭に巻いたこだわりオヤジ」が作るというイメージですよね。私としては、何か違うなと思い、写真では腕を組まないと決めました。「女性はダメ」「ベジタリアンは入らないで」等、ラーメン屋目線のルールや固定概念を押し付けることなく、よりたくさんの方にラーメンを楽しんでもらいたい。元々、ラーメンはもっと自由な料理です。色んな考え方があっていいと思いますが、そう思うなら自分がお店としてやってやろうと決めました。
 日本のラーメンはコンテンツとしても世界から求められています。グローバルで考えると、オーストラリアでは、ラーメンはファストフードではなく、食事として楽しまれています。日本の価値観だけでラーメンを捉えてはいけないと思います。

M&Aを考えたきっかけや理由について教えてください。

宮﨑

 実は6、7年前にも一度M&Aを検討したことがありました。買手候補もいくつかあり、実際に面談もしましたが、成約には至りませんでした。
 M&Aを考えた理由の一つは、家族が会社の事務で大変になっている姿を見て、「事業を成長させることが、果たして自分にとって本当に幸せなのか?」と思うようになったことです。特にコロナ禍の時はきつかったです。売上は伸びない、利益は出ない、スタッフは辞めていく、それでも銀行にお金を返し続ける。事業が成長しても、自由な時間がなく、家族と一緒に過ごせない。これがあと何年続くのかなと思いました。
 日本の社会は、株式投資等、実体のないお金の動きへと興味が移っていると感じます。それでもラーメンは「一杯いくら」の商売です。戦争・円安で原価が高騰し、雇用を維持するため人件費も高く設定しなければいけない。日本そのものが、個人で事業を伸ばすことができる構造になっていないと思います。そうであれば、協力して多くの力を借りながら成長していく方が得策なんじゃないかと当時から思っていました。

宮﨑

 今回のM&Aがリリースされ、たくさんの方から連絡がありました。「いくらで売れたか」「大手企業の傘下に入るので経営が不自由になるのでは」、それぞれの人がそれぞれの解釈でM&Aの意味を見出しているんだなと感じました。
 私にとってM&Aの本質は、事業を成長させるために大企業と共創し、よりダイナミックな展開をする可能性を切り拓くことだと思っています。既に相手先のOICグループからは様々な協業のご提案を頂いています。
 ただ、本当の意味で今回の決断がよかったかどうかは、引継ぎが終わった後、家族や従業員が、どういう状況になるかによって決まると思います。

M&Aの交渉の様子や、
事業の引き受け先を選ばれた理由を教えてください。

宮﨑

 一番大変だと感じたのは、デューデリジェンス時の資料提出です。成約のために必要な取組みとはいえ、海外出張等も重なり、タイトなスケジュールの中、財務・法務等、たくさんの書類提出や質問対応を行いました。正直、財務や経理の体制が整っていないラーメン屋では対応できないんじゃないかなと思いました。
 一方で、不安に思ったことはありませんでした。「嫌だったら止めればいい」、そう思っていました。「無理をしてでも、今すぐにM&Aしなければならない」という理由はなかったので。

見目

 私からも、宮﨑さんに「難しいと思ったら途中で止めていいです」と、常にお伝えしていました。

宮﨑

 引き受け先については、相手先の会社の規模ではなく、ソラノイロを評価して、価値を見出してくれる企業であって欲しいと考えていました。また、その企業に、どういう人が働いて、どういう考えを持っているかを大事にしたいと思っていました。
 OICグループとの初回面談は、正直に言うとコミュニケーションがスムーズじゃなかった部分もあり満点ではありませんでした。一番のターニングポイントは、協議を重ねる中で、OICグループM&A担当役員が外食グループ社長へ意見していた時です。
 外食グループ社長がM&Aについて「売る」「買う」といった表現を使った時、OICグループM&A担当役員が「その表現は違うと思う。OICグループはM&Aを、魅力的な企業と協業し、仲間になってもらい、“チームとして一緒に頑張る”ということを掲げている。なので、その表現はやめてもらっていいですか。」と発言され、私が理想と考えるM&Aの形に近いと思いました。どちらかが売る・買うではなく、仲間になって、協業することで一緒にビジネスを拡げようと言って頂けることに共感しました。

M&Aを終えた感想や今後の方向性について教えてください。

宮﨑

 まずは尽力してくれた見目さん・再東さんに感謝しています。
 「M&Aでいくら資金を得たか」がよく注目されますが、私にとって一番嬉しく思っているのは、連帯保証が外れ、借入の責任がなくなったことです。連帯保証があると、借入した金額の2倍のプレッシャーが掛かる感覚がありました。その責任がなくなることで、「肩の荷が下りたな」と感じます。
 今後の方向性として、事業の面では、ソラノイロは現在の取締役に代表となることを目指してもらいつつ、私はOICグループの商品・店舗開発をサポートしていきたいと勝手に思っています。OICグループ側でも考えていることはたくさんあると思いますし、台湾への海外展開や、袋麺の開発等、協業できる部分は多いと思っているので、少しでも多くの世界中の人たちにラーメンを届けることに力を注ぎたいと思います。
 個人の面では、妻の希望もあり、岡山に拠点を移したので、より家族との時間を大切にしたいと思います。畑で野菜を育てたり、東京ではできない体験を楽しみたいですね。

続いて、譲受側であるOICグループ様にお伺いします。
事業の概要や、M&Aに関する取組について教えてください。

石川

 OICグループの概要は、端的にお伝えすると「食の総合流通業」です。中核である食品専門スーパーマーケットのロピアをはじめ、食品の生産・製造・貿易・卸・外食等、幅広い機能をグループに有し、食品の企画・生産・販売までの機能をグループ内で手掛ける「食のSPA」を展開しています。
 OICの意味は「Oishii Is Culture」の略であり、「日本の食を届け 新たな文化をつくり 世界の人を健やかに」をビジョンに掲げ事業に取り組んでいます。日本食が世界でもすごくおいしいということは、日本人なら納得していただけると思うのですが、世界ではまだ知らない方も多く、日本食を通じた感動を、我々がお届けしたいと思っています。将来的には、日本食だけでなく、世界の食をお届けすることも目指しています。

石川

 グループとして「食のテーマパークをつくる」ことを目指しています。テーマパークに込めた想いとしては、前提として「日常的なお買い物は、お客様にとって苦痛である」という考えがあります。主婦層のお客様は共感して頂けると思いますが、同じような商品が並び、何を買おうか悩み、スーパーから家まで重たい荷物を持ち運びする。お買い物が日常のルーチンワークとなってしまい、必ずしも楽しいものではありません。
 そこで我々は、スーパーをテーマパークのように楽しい空間にすることで、もっと能動的にお買い物を楽しんで頂きたいと考えました。実際に、現在の事業の中でも、スーパーの近くにバーベキュー場や焼肉等の外食施設を併設するといった工夫をすることで、お客様がいつでも楽しいと思って頂ける空間にしています。

石川

 OICグループの歴史は、1971年に創業した「肉の宝屋藤沢店」から始まります。
 肉屋というビジネスモデルは、仕入値が季節変動するため、いっとき利益が出ても、別のタイミングでその利益を取り崩す必要があり、経営としては不安定です。利益を平準化していくためにスーパーマーケットという業態を選びました。
 スーパーマーケット事業を始める際に、最初は「スーパーの商店街化」を目指しました。当社が商店街の会長のような存在となり、肉屋は自分達で運営する一方、魚屋は別のお店に担って頂くといった形で、色んな会社に協力を仰ぎました。
 現在も、この経営スタイルは活きています。当社グループでは、各店舗に精肉・鮮魚・青果・惣菜・食品の5つの売り場がありますが、各売り場のチーフが経営者としての最小単位であり、それぞれが権限を有しています。一般的なスーパーだと本部に権限が集約されているトップダウンですが、我々は現場主義を徹底するボトムアップのスタイルです。

石川

 売上目標としては、2031年度に2兆円規模を目指しています。
 このビジョンを実現するための重要な手段の一つとしてM&Aを位置づけています。グループインする企業が増加することで、新たに加わって頂く会社も、既にグループにいる会社も、双方が幸せになるような、多くのシナジーを創出したいと考えています。
 M&Aで感じた効果としては、例えば少量多品種の惣菜・パン・デザートを得意とする利恵産業のグループインでは、様々なヒット商品を独自開発できるようになり、結果として競合店と大きく差別化することができました。
我々がM&Aに期待することは、経営者も含め各企業にいらっしゃる方々の特別な知見・ノウハウがOICグループの中で活きることです。これにより、売り場の魅力が増し、集客数が更に増えるという好循環が生まれます。これからも魅力ある方々がOICグループに加わり、活躍して頂けることを期待しています。

今回のM&Aについて、きっかけや交渉の様子を教えてください。

伊藤

 ジャンルとして、ラーメンは以前から取り組みたいと考えていました。グループ内に外食事業を手掛けるeatopiaホールディングスがあり、今回のM&Aでも、ソラノイロはeatopiaの子会社という位置づけになりました。eatopiaが主に展開しているのは、顧客単価1万円以上の高単価領域の外食事業です。ラーメンは、顧客層が幅広く、日本を代表する料理の一つであり、国内だけではなく、海外でも勝負できるので、事業領域を拡大するために注目していました。
 最終的に今回のM&Aを決定した理由は、事業だけではなく、宮崎社長そのものに大きな魅力を感じたからです。「ベジソバ」という既成概念を覆す商品を開発してこられたアイデア力と商品開発力は、ラーメンだけでなく、当社の外食・小売の商品開発でも発揮してくれるのではと期待しました。また、宮崎社長のスタンスが、守りよりもチャレンジを優先される方だったので、我々が求める人材像にぴったりでした。

伊藤

 実際に、最初にご面談した時、既に当社の店舗にご来店いただき、宮崎さんの視点で、良いところ・悪いところを指摘してくれました。指摘するだけではなく、「自分だったらこうする」と、改善策までお伝えいただきました。アドバイスも的確で、我々にない視点だったので、グループに加わって頂いた後も、積極的に事業に関わって頂けると容易に想像できました。

見目

 「ラーメン業態で利用している食材を、焼肉業態に使ったら、こんなこともできる」と、初めてのお顔合わせでしたが、本当に具体的な商品開発のお話をしていましたよね。

伊藤

 はい、そうでしたね(笑)。なので、我々が一番懸念していたのも、宮崎さんがグループに加わったときに、ご活躍しやすい環境を提供できるかというところでした。
 宮崎さんに期待したことは、宮崎さんが持つ商品の企画力を、我々のグループで活かし、可能性を広げて頂くことです。スーパーが祖業である我々の場合、競合の価格設定を意識しながら、お客様の付加価値を向上させることを考えますが、宮崎さんであれば、「余っている食材をトッピングして、お客様の満足度を上げることで付加価値を高める」というような、我々とは異なる視点で提案してくれると感じており、これまでの知識・経験を最大限活かして欲しいと思っています。

石川

 また、新卒2年目の社員向けに、宮崎さんのキャリアをお話していただく研修も予定しています。将来のキャリアや、どう働きたいかについて悩みを持つ社員達に、突き抜けた経験を持つ宮崎さんのキャリア観をお話しいただくことで、若手社員の方々に仕事のモチベーションを高く持っていただくことが狙いです。ちなみに、この企画は、人材開発部からの提案です。M&Aの担当部署だけではなく、グループ全体として、M&Aの効果を最大限に活かそうとする文化を築いています。

皆さまにお伺いします。クレジオ・パートナーズを利用した感想を
教えてください。宮﨑さま、いかがでしょうか。

宮﨑

 クレジオは担当の税理士からのご紹介で知り合いました。評価といってもクレジオしか利用したことなので、比較をすることはできません。ただ、猪突猛進の見目さん、冷静沈着の再東さん、チームのバランスはよかったですね。私は、どんな仕事でも情熱が必要だと考えています。見目さんは、M&Aが進む中で「僕が緊張して寝れません!」みたいなことを言っていましたね(笑)。

見目

 逆じゃないですか?見目の言うセリフじゃないですよね。

宮﨑

 面談の時も見目さんが一番オーラを放っていました。凄く気持ちが入っていて、彼のガッツが伝わりました。M&Aが終わった後、皆で総括もしたんですよ。合う、合わないはあると思いますが、私はすごく好きなタイプです。レスポンスが早いこともよかったですね。

宮﨑

 敢えて言うと、デューデリジェンスの時に、前もって、どういう準備が必要かをもう少し教えてくれていたら、もっとスムーズになったと思います。デューデリジェンスに入ると、クレジオも担当が新たに増え、急にフェーズが変わった感覚がありました。
 クレジオはM&Aについてよく知っているので、M&Aを分かっている前提で進めてしまっているのではないでしょうか。そうするとお客様側は不親切に感じるので、M&A経験がない初心者と同じ目線に立って導いて欲しいと思います。事前に税理士と連携する等の段取りがあれば、余裕を持って進められたのではと思います。

宮﨑

 M&Aが終わってから、「私の人生を変えてくれたのは見目さんです。」というメッセージを送りました。家族と過ごす時間が取れるようになり、家族が幸せに近づけたなら、それは見目さんのお陰です。クレジオ・パートナーズの皆さんには、「自分達は経営者の人生を変える仕事をしている」と自覚して、プライドを持って取り組んで欲しいと思います。
 私たちラーメンも、人の命を預かる仕事です。たかが一食ですが、海外のお客様であれば「日本でこんなおいしいものが食べることができた!」と、感動を与える仕事だと思っています。仕事を素晴らしいものにするかは、仕事を“作業”ではなく、素晴らしいものと思って取り組めるかが重要だと思っています。

続いてOICグループ様、いかがでしょうか。

石川

 まずよかった点は、フットワーク軽く、素早く動いて頂いた点です。案件が進行している時は、見目さんと毎日LINEでやりとりをして、おやすみなさいを言うような関係でした。今後の論点や進め方を、現場レベルで細かくやりとりして、進められたことはありがたかったです。
 今後、期待したい点としては、仲介という立場なので、買手・売手、それぞれの話を聞きながらで大変だとは思いますが、我々に情報提供して頂く際は、もう少し情報を整理して欲しいなと感じるところはありました。今ではいい思い出ですね(笑)。

見目

 当時は、猛省いたしました。私自身も、OICグループ様に頼っているという自覚もありました。

石川

 クレジオ・パートナーズとして期待することの一つは、地域という強みを更に活かすことです。今回は東京の案件でしたが、中国地域に基盤を持つ、クレジオならではのご相談があると思います。地場の情報を入手できることはとても貴重です。築き上げたネットワークを活かして欲しいと思います。
 もう一つは、我々の経営戦略をご理解いただいた上で、幅広く情報提供頂けるような関係性でいて欲しいと思います。我々のエリア戦略やビジョンを実現させるために必要なことを理解し、その一歩先の提案をしてくれるような、距離が近い関係を今後も継続して欲しいと思っています。

最後に、事業承継・M&Aに課題を抱える経営者に向けて
メッセージをお願いします。

宮﨑

 M&Aを考える前に、自社の現在地を知ることが大事です。会社の通知表だと思って、自分の会社の現在の価値を知ることですね。事業承継を考えた時、会社としての段階があると思います。業績だけでなく、財務・労務・法務・人事・組織等、様々な視点で、自分の会社のステージを把握する。その上で、M&Aも選択肢になるよう、会社としてのレベルを上げることが大事だと思います。
 飲食業全体では、M&Aを活用して、大企業と共に成長を目指すという選択をする企業は増えるのではないでしょうか。特にラーメンは、競合が多く、サイクルが早い業界なので、継続が難しいビジネスです。成長・継続を目指すためには、私のように大企業と協業するやり方や、規模は大きくせずとも、オリジナリティを追求して突き抜けるやり方があるのではと思います。
 現在地を知るために相談してみるのはありなんじゃないかなと思います。相談先として、クレジオがよいのかは、比べていないのでわかりません。他のM&A会社も見て欲しいと思います。ただ、クレジオはご縁を大事にビジネスしている会社ですよね。もっとその部分を打ち出していいんじゃないかなと思います。私にとっては、クレジオはよいパートナーだったので、クレジオのことをもっと知って欲しいという気持ちがありますね。

伊藤

 M&Aは、経営者の考え方が変わるきっかけになると思っています。
 日本では、少子高齢化による市場縮小の影響を日々意識し、経営していても後ろ向きの考えになってしまうことがありますが、世界に目を向けると、人口も増加し、市場も成長している国が多くあります。ただ、成長する世界市場に挑戦しようとしても、自分の会社単体だと難しいと考えてしまい、挑戦するという選択肢そのものを外してしまう経営者は多いのではないでしょうか。
 M&Aにより、資本を通じて他の企業と連携することは、経営者として活躍の場が広がることに繋がります。そうすると、これまでとは違う市場に目を向けることができ、新しい視界が開けてくるのではないでしょうか。成長を目指す若手の経営者にとっても、高齢で最後にもう数年頑張ってみようという経営者にとっても、チャレンジしたいという気持ちがあれば、そのチャレンジを後押しするのが我々の役割だと思っています。