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実績 PERFORMANCE

CASE 20

「地域で輝く100年企業」の礎、経営課題解決に向けた
ホールディング形成

広島県広島市に本社を置き、リフォーム事業を中心としたマエダハウジングは、M&Aも活用しつつ、不動産・メディア・人材業等、事業領域を拡大。経営人材の育成・生産性の向上・事業承継・事業成長といった様々な経営課題に取り組む基盤づくりのためホールディングス化を行った背景や想いについて伺った。

  • 企業概要

    株式会社マエダハウジングホールディングス

    広島県広島市 / 代表取締役 前田 政登己

    業種 リフォーム事業等
    ホールディングス化の目的 事業成長

マエダハウジングホールディングス 前田様にお伺いします。
現在、貴社が取り組まれている事業について教えて頂けますか。

前田

 中核であるマエダハウジングを中心に現在、住宅リフォーム・新築、不動産事業、広告・人材事業等を展開しています。マエダハウジングは、「人の喜びは自分達の喜びである」、「絶対に潰れない会社にする」、「価値観‧ビジョンを共有する」という3つの想いを胸に私が立ち上げました。
 私は自動車メーカーに勤めていましたが、リフォーム業界に転職し、先輩に誘われる形で独立しました。紆余曲折を経て、1993年1月にマエダハウジングを創業、1995年4月に有限会社化しましたが、人に纏わる様々な苦労を経験し、価値観‧ビジョンが共有できるメンバーを集めることで事業を拡大し、2017年には経済産業省から「地域未来牽引企業」にも選出いただきました。

前田

 マエダハウジングの現在の強みは「性能向上リノベーション」です。具体的には、リノベーションを通じて、一戸建て住宅の断熱性・耐震性を向上させます。
 取り組んだきっかけは、私がMBA(Master of Business Administration=経営学修士)を取得するため、広島県立大学のHBMS(Hiroshima Business and Management School)へ、2018年に入学した際、CSV(=Creating Shared Value)の概念を学んだことです。CSVとは、企業が事業活動を通じて、社会課題を解決し、社会価値と経済価値を同時に追求する経営フレームワークです。

前田

 最終発表に向けて、「自分が解決すべき社会課題とは何か」を突き詰めたところ、断熱性・耐震性を向上させるリフォームにいきつきました。
 断熱性に注目したきっかけは、最初に家庭内の不慮の事故に伴う「家庭内事故死」について調べたからでした。調べた当時、年間17,000人の規模で発生しており、交通事故死の約5倍でした。一番多い要因がヒートショックです。ヒートショックの県別割合では、香川県が1位で、寒いはずの北海道は46番目となっていました。私は、原因は外気温ではなく、家の断熱性ではないかと仮説を立てました。住宅の断熱性と健康に関する権威である近畿大学の岩前教授のところで断熱性能の高い住宅に引っ越すことで、アトピーや喘息等の症状が改善されるという研究結果を聞き、確信しました。
 耐震性については、2016年の熊本地震がきっかけです。被災支援等のため益城町に伺いましたが、耐震等級3の家屋は16棟のうち、14棟は無傷、2棟は少し傷が程度という被災状況でした。耐震性能が低い住宅は、人命は助かっているものの、住宅が傾いている等、継続して住める状況ではなかったため、建て替えか、引っ越ししか選択肢がないため、二重ローン問題が発生してしまいます。震度6-7相当の地震でも倒れない家を、新築ではなく、リフォームで行うことが我々のミッションだと感じました。

前田

 HBMSの最終発表では、優秀賞に選ばれたものの、地震の少ない広島県民の意識を変え、断熱・耐震工事に費用をかけるよう意識を変えるのは難しいのではという指摘がありました。事前のマーケティング調査では、若年層かつ子育て世代の女性が断熱性・耐震性に圧倒的に意識が高いことは把握できていたので、ロゴの変更や、SNSの活用等、リブランディングに取り組みました。YKK APと連携し、断熱性の高い樹脂窓の積極導入やモデルハウス「三入の家」の公開等も行っています。
 自分達が常識と思っていたことが実は非常識であり、社会課題を変えるための取組とは何かから紐解き、新しい強みを築いていきました。

ホールディングス化を目指した理由や目的について教えて頂けますでしょうか。

前田

 ホールディングス化の目的は「経営人材の育成」「本部のシェアードサービス化による生産性の向上」です。
 マエダハウジングはビジョンとして「地域で輝く100年企業になる」を掲げています。もう少し身近な目標として「2030年目標 グループ10社、300名、売上100億円、社長10名」としていますが、ビジョン実現に向けて、一番の課題は「経営幹部の育成」です。
 私は、会社という“組織”と、社員という“個人”のビジョンを擦り合わせることが重要だと考えています。入社した社員には、自分と同じように夢を見て、実現して欲しいと思っています。
 自分がトップセールスとして店長兼社長をやっていた時、このままでは社員は夢を見ることはできないと感じました。そのため、店舗を増やし、事業を増やし、近年はM&Aも活用し、個人のビジョンを実現できる器としての会社を増やしています。
 経営人材の育成のため、「社長塾」に取り組んでいます。参加した幹部候補からは、新規事業をやりたいという声が挙がり、プレゼンや事業計画の作成を通じて、磨き上げを行っています。一つの事例として、東広島市のリノベーションによる街づくりがあります。社員の声をきっかけに、東広島市・近畿大学がJR西高屋駅前通りをフィールドに展開するTown(街)とGown(大学)が連携して地域共創に取り組む「Town & Gown 構想」に賛同し、大学生と連携し、空き家店舗をコミュニティスペース・カフェ、シェアハウスへと変えるリノベーション事業に取り組んでいます。

 ただ、マエダハウジングとして全ての事業を展開してしまうと、何でも屋になってしまいます。事業によって、評価制度の考え方も、人材育成の方法も異なるので、事業ごとに会社を分けたいと考えおり、ホールディングスの仕組みに注目していました。

前田

 ホールディングス化には生産性向上の効果も期待しています。6年前からM&Aによりグループを拡大していますが、小さな会社でも、経理・総務の事務が1人在籍し、業務をブラックボックス化している状況を目の当たりにしました。そのため、ホールディングス形成を通じて、親会社がバックオフィスやマーケティング等の業務をシェアードサービス化し、グループ全体の生産性向上を図る取組を実施しています。
 また、自分自身の事業承継についても、どのような方向にもいけるような体制がつくりたいと思っていました。

資本政策のアドバイザーとして、クレジオ・パートナーズを利用した感想を教えてください。

前田

 元々、「将来この会社をどうすればいいのか」という漠然とした不安を抱えていました。潰れない会社を目指し、自己資本比率を上げ、様々な情報が集まるようになり、事業規模は拡大していきました。
 一方で、「この会社を最後どうすればいいのか」という疑問は唯一残ったままでした。色んな方に相談しましたが、未だ結論は出ていません。
 この状態で「今打つべき手はあるのか」と考えた時の一つがホールディングス化でした。クレジオにも事前に意見を聞いていましたが、自分が知らない、本を読んでも分からない、現場経験に基づいた、的確な情報を持っていると感じていました。クレジオが広島の他の経営者からも評価されていたことも一つのポイントでした。
 一方で家族のことを考えた時、親としての一番の想いは「子供達にずっと仲良くして欲しい」です。現在はすごく仲がいいのですが、仮に自分に何かあった時、ケンカになってしまい、誰かが不幸になるような、そんな事業承継は避けたいと考えていました。
 そういったクライアントのニーズを引き出し、それを超える提案をすることが、地域で資本政策コンサルティングを展開するクレジオ・パートナーズに求められることだと思います。

塩田

 今回のホールディングス化を担当させていただく中で、前田さんは緻密に検討を重ね、ご自身でも情報収集されていたので、より良いディスカッションができたのは非常にありがたかったです。

前田

 塩田さんに質問すると、何でも返答していただきました。たくさんの見識・知識をお持ちだと感じました。

ホールディングス化を終えて、今後の目標や方向性を教えてください。

前田

 組織としては、グループ全体の理念・ビジョンが必要だと感じています。グループ内で個別にビジョン・ミッションを有している法人もありますが、グループ全体としてはまだ定められていません。グループが、どこを目指すのかをしっかり定める必要があると感じています。
 個人としては、ずっと昔から言っていますが、書店はいつか出してみたいですね。これは変わりません。
以前は、60歳でリタイアしたら、障害がある方向けに何かしたいと言っていました。3年前、この業界のビジネスの立ち上げには関わることはできました。これもいつかまた関わってみたいと考えています。
 現在は、60歳には社長職を譲ることで権限移譲を推し進め、65歳までは会長職として在籍しつつ、グループ全体の新規事業やM&Aを推進する役割を担うことを目指しています。その後も、個人としてやりたいことはたくさんありますが、ゆっくりしたいという気持ちもあります。

最後に地域で資本を活用して事業成長を目指す経営者に向けてメッセージをお願い致します。

前田

 私の場合、経営目標達成として掲げた「2030年目標 グループ10社、300名、売上100億円」を達成したとしても、自分自身の成功としてはまだ50%だと思っています。残りの50%の要素は、事業承継を上手くいかせることです。
クレジオ・パートナーズからも、事業承継においては、何も準備せず、自然に任せた事業承継は避けた方がいいとアドバイスをいただきます。かといって、早すぎてもいけないと感じます。
 事業承継を上手く進めるためには、親子・家族・経営幹部と対話し、良い関係を築くことが大切だと思います。
「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」
 明治の政治家後藤新平氏が遺した言葉のとおり、私が今からできる仕事は「人をつくること」、これに尽きると思っています。
 事業承継に取り組むのは、皆さん初めてのことです。初めてやる人は不安であり、誰か寄り添うパートナーが必要です。どんな方法、手法でやるかより、誰とやるかが大事です。地域の経営者の皆さんには、そういったパートナーを見つけて欲しいと願います。