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実績 PERFORMANCE

CASE 19

困っている人を助けたい、M&A・事業承継を通じて、
医師から経営者へ

鳥取県米子市に本社を置き、小児科・内科・訪問看護・企業主導型保育園等、幅広く医療を中心に事業を展開する田本会。「困っている方の力になりたい」という想いから、兵庫県のグループホームを譲受。現在の取組とM&A・事業承継に関わる想いを伺った。

  • 譲渡企業

    X社

    兵庫県

    業種 福祉・介護業
    譲渡理由 後継者不在
  • 譲受企業

    田本会グループ

    鳥取県 / 代表 田本 直弘

    業種 医療・介護業
    譲受理由 事業拡大

事業を譲受された田本様にお伺いします。
これまでの田本様のご経歴について、教えて頂けますでしょうか。

田本

 私は2000年に鳥取大学医学部に入学しました。その後、鳥取大学の小児科へ入局し、小児がんや白血病について診療及び研究をしていました。松江市立病院等での勤務経験を経て、大学院在学中の2012年に「米子こどもクリニック」を開業しました。
 小児科を選んだ理由は、「子どもが好き」という想いからです。小学校の先生を目指したこともあり、大学時代はボランティアやアルバイトで地元の小学生と関わったりしていました。医療という目線でいうと、将来に大きな可能性を持つ子どもを治療することは、大人を治療することに比べて、自分の中で100%情熱を傾けることができると考え、小児科を選択しました。子供が大好きなのはプライベートでも同じで、現在7人の子供がいます。

田本

 最初は小児科だけを取り扱っていましたが、子供の両親や祖父母からも相談を受けるようになり、治療したいと思う幅が広がったため、当時、松江市で働いていた内科医と一緒にファミリー内科のクリニックを立ち上げました。私は、一人でも多くの患者さんの役に立ちたい、治療したいと強く思っていました。一方で、その想いを実現するために、自分の理想の枠にヒトをはめ込んでしまうタイプの人間でした。自分の理想を押し付けるあまり、ファミリークリニックの院長とはどんどん距離が離れてしまい、結果的にこの院は6か月で閉院になりました。

田本

 この経験を通じて、私の中でマネジメントに対する考え方が大きく変わりました。元々、プレーヤーとして手腕を発揮する考えが強かったのですが、「人に任せる」というスタンスに変化していきました。
 考え方が変わるきっかけは、家庭にもありました。私が3人兄弟で育ったので、子供を3人産むまでは既定路線と考えていたので、それまでは家庭の中でも妻に対して、自分の正しいと思う枠に当てはめようとする傾向が強かったと思います。4人目が産まれたタイミングで、「自分自身ではコントロールできない」という感覚になりました。自分の中の変なこだわりがなくなり、肩の力がどんどん抜けて、理想論をぶつけなくなりました。妻と振り返ってみると、子供が産まれる度に、家族関係がよくなることを実感していました。
 子供が7人いれば、それぞれ色が違います。「自分は赤が好きだから、全員赤を好きにさせよう」ではなく、7色バラバラで、それぞれの子供のいいところを活かしてあげたい、私の役割はそれぞれの色を虹のようにまとめること、という考え方に代わりました。家庭だけでなく、経営面でも任せるスタイルとなり、事業が上手く進むようになりました。

田本

 ファミリークリニックを閉院した後、「米子内科糖尿病clinic」として別の医師の方と再スタートを切りました。その後、当院の看護師さん向けに企業主導型保育園を立ち上げ、子供の頃からネイティブの英語を話す外国人に触れ合うことが当たり前な環境をつくりたいと思い、2019年に「米子えいご保育園」をスタートしました。
 同じ時期に、訪問看護ステーション事業も立ち上げました。元々、松江市内の建設会社が事業を終了させることを決定し、利用者さんも解約してしまった後で、一人残った看護師の方と出会いました。彼女は、まだ情熱は持っていたので、一緒に再スタートしました。本当にゼロからのスタートだったので大変でしたが、現在は市役所から講演を依頼されるまで成長しました。
 いずれも、それぞれの方に、任せることで、事業が成長しています。

チャンネル登録者数5.7万人越えのYouTubeチャンネル
「ゆび先生&ひかちゃんねる」や歌手としてCDデビュー等、
マルチなご活躍と伺っています。

田本

 YouTubeの目的は販路開拓ではありません。YouTubeを見て来院されるケースはかなり限られています。YouTubeを始めたきっかけは、「正しい医療知識を伝えたい」と思ったからです。来院される方に、医療の説明を繰り返すときに、動画見てもらえば一度の説明で済むと考えました。加えて、コロナ禍で受診控えが起こったことも重なり、来院される方が減少した時間を使えたことも大きかったです。
 実際にやってみるとYouTubeユーザーはあまり真面目な話を好まない、ということでした。動画の撮影・編集も、全て私が行っていますが、現在のモチベーションは、一緒に出演している「ひかちゃん」ですね。ひかちゃんはクリニックでも、明るくて、関わる人が幸せになっています。「YouTubeを通じて、もっとひかちゃんに関わる人が増えて欲しい」、そんな想いでYouTubeを続けています。歌手活動は、コロナ禍もあり、現在は少し控えていますが、ライブの時はたくさんの方にお集まり頂きました。

田本先生が注力されていることや、M&Aの位置づけについて教えてください。

田本

 現在、クリニックでは、医療脱毛も手掛けています。医療脱毛を始めたきっかけは一人の女の子でした。「毛がもじゃもじゃでいじめられる」という相談を受け、脱毛を提案したのですが、「痛いから嫌だ」と言われました。
 痛くない方法があるかどうかを調べたところ、最新の脱毛方法「ソプラノシリーズ」にたどり着きました。私自身が医療脱毛に興味があったこともあり、埼玉県浦和市在住の先生に詳しい話を聞きにいきました。私も試してみたところ、本当に痛くなかったので、相談してくれた女の子にも勧めることができました。施術の結果、女の子も非常に喜んでくれ、徐々にお母さんや、色んな方へ利用が広がっていきました。

田本

 医療脱毛を取り扱うためには医師免許が必要です。ただし、医師の管理下でしっかりとマニュアルを整備することを前提に、施術に関しては大部分を看護師の方にお任せすることができます。
 ちょうど神奈川県在住のクリニックの先生が「閉院するが、所有しているクリニックの物件にテナントで入ってくれる先を募集したい」という情報がありました。私は、先生は管理だけをして頂き、医療脱毛の施術を提供できれば、双方にメリットがあるのではと考えました。これがM&A活用のきっかけです。

田本

 M&Aについて情報収集するうちに、例えば、長崎の産婦人科の医院では、「医師としては活躍したい気持ちはあるものの、経営の全責任を負うプレッシャーに耐えられないので事業承継したい」というニーズがありました。
 私は医師なので、気持ちがよく分かります。医師はなるべく責任を減らすように大学で指導されるので、経営でリスクを取ることに慣れていません。
 私は、メンタルが強い方だと自負しています。メンタルが強い自分が経営責任を負う体制ができれば、経営責任に負担を感じる医師とWin-Winの関係が築け、より治療に集中することができます。
 現在は、クリニックだけではなく、どのような事業に対しても「困っている方がいれば、私が矢を防ぐ盾になりたい」と考えています。最終的には、困っている全ての会社の全ての責任を負いたいですね。

今回のM&Aの経緯について教えてください。

田本

 ご相談を頂いた際、医療と介護の領域は近いこともあり関心を持ちました。こちらの案件をご相談頂く前に、自分でも認知症に関する対応は何かしたいと思い、グループホームを立ち上げるため、従業員を集め、準備した経験がありました。クリニックで小児科診療をする中で、ご縁があり、介護判定の審査員にも携わった経験も活かせると思いました。
 先方から「後継者不在で困っており、子供はいるが継ぐ予定はなく、いずれはなくなってしまう。従業員に継がせるにも、株を買い取ることも難しい。誰かにお願いしないといけない」という状況を伺ったとき、その気持ちは理解できたので、僕でよければ力になりたいと率直に思いました。

田本

 M&Aを進める中で、一番不安だったのは、従業員の中に「のっとりだ」と思われる方がいるかもしれないということでした。M&Aの後に、上手く引き継ぐことができるかが不安でしたね。実際に引き継いでみると、スタッフの皆さんは意識が高く、よい関係性を築けていると感じています。

M&Aの仲介会社の中からクレジオ・パートナーズを利用してみて、
悪かった点や改善すべき点も含めて、率直な感想を教えてください。

田本

 悪いところは、何もないですね(笑)。再東さん、すごくいいですよ。
 M&Aを進めるにあたって、金融機関や、先方のオーナーさんとのやり取りもスムーズで、一つ一つ丁寧に、しっかり対応してくれました。M&Aが終わった後も、色々と相談に乗ってもらっています。強いてお願いするなら、ぜひ、このままの再東さんでいて欲しいですね。このままの再東さんでいてくれたら、きっと関わる人々が皆幸せになるんじゃないかなと思います。

最後に、M&A・事業承継を考えている方へメッセージをいただけますか。

田本

 私が引き継ぐ場合は、現在会社を担っている経営者の方と、最初は二人三脚で進めたいです。経営の責任は私が負う体制をつくり、引継ぎをしながら、仕組みや体制を整えていきたいですね。
 私は、患者さんとお話する時は、対面で向き合う関係ではなく、患者さんの横に座り、目の前の病気に対して、どうするか一緒に考えましょうというスタンスで臨んでいます。治療の選択を患者さんに寄せるのではなく、私も責任を取るということを意識しています。経営においても、私が責任を負うことで、チームで取り組みたいなと思います。